2021/10/17 のログ
ご案内:「異邦人街」にヒメさんが現れました。
■ヒメ >
「……わからぬ」
皇は首を捻った。
この世界に来て、新鮮なことは多い。
なにより、ヒトの姿を得たことで降りかかる不自由が不可思議で逆に楽しい。
……の、だが
「……どうにも、ヒトの風習はたまに分からぬのじゃ」
再び首を傾げる。
その意味不明さが可愛いといえば可愛いのだが……
「結局、はろうぃん、とはなんなのじゃろうな?」
■ヒメ >
自分が得ている情報は、仮装、なるものをして歩き回ること。
それと、とりっくおあとりーと、なる呪文を唱えることで菓子が手に入る、ということ。
「……祭り、というものは最近なんとなく理解したのじゃが。
しかし……祭り、というにはやや地味な気がするな……?」
自分の認識している祭り、というのは賑やかに騒ぐこと、のはずである。
しかし、だ。
そもそも仮装、なるものは普段と異なる装束を纏うことらしいが……
此処ではあまり代わり映えがしていない、ようにも見える。
いまいち、その賑やかさ、というものがない……気がする。
「ふむぅ……?」
ご案内:「異邦人街」にリロイさんが現れました。
■リロイ >
乾いた音。
分厚いボディの中は空洞の、アコースティック・ギターを爪弾く音が響く。
短い旋律だ。呼びかける声の代わり。
「少女よ。
その疑問に答えるには
おれからも問わねばならないことがある」
そこに乗ったのはハスキーヴォイス。
ギターを構えて闊歩する、常人の形をしたものは、眠たげな碧眼を向けて語る。
「おれは耳がいい。
それなりにな。
ああ、だから、少女よ。
その疑問に、おれなりのこたえをくれてやることはできる。
交換条件だ。 どうだろうか?」
■ヒメ >
「……む?」
何者かが、声をあげる。
まあそもそも、その辺で誰も彼もが声をあげているので、別に珍しいことでもない。
ない、のだが……
どうも、自分に向けられている気がする。
少女、といのも……確かに、この姿はヒトの子の姿であったはず。
まれにそのような呼ばれ方もした記憶もないではない。
で、あれば。
この存在が自分に語りかけているらしいというのも、間違いではないか?
「……それは、世に向けて言っているのか?」
皇はそれでも慎重に応えることにした。
「そうであれば……そうじゃな。問いを立てることを許可するのじゃ」
そして、鷹揚にうなずいた。
■リロイ >
「イエス。
間違いなく、おまえのことだ。
おれの耳を欹てたなら、
多くの少女を感じ取ることはできるだろうが、
おれがいま話しかけている少女は、おまえだけ」
上機嫌なワンフレーズを爪弾く。
静かな貌から、掠れた音律が乗った。
「感謝(サンクス)――しかし。
しかしだ。少女よ。
ギャランティは、終わったあとに求めるべきだ。
おれの問いは、おれがおまえに有益なこたえを返せた時に。
改めて謳わせてもらう――」
ストローク。
陰鬱な和音が響いた。
問わせてもらうのは、最後でいい。
困っている相手と、そういう契約を結ぶ。
「ハロウィン。
少女よ。ハロウィンの何が知りたい。
"Trick or Treat!"
そう願わば菓子がもらえる。
菓子をくれてやらなければ、悪戯をされる。
そのような悪童こそ、祭りの主役。
掲げられた名に反して――
邪気を尊ぶ、このサバトの――何を識りたい?」
彼女の横に並び。
ギターを爪弾いた。
視線は彼女が見ていたものを見つめた。
■ヒメ >
「……」
皇は考える。数少ないヒトとの出会いはあれど、そう差異はない、気がした。
が、どうもこのヒトはナニカ違う、気もする。
――愉快
脳裏に走ったのはその一言だった。
「汝の言の葉は解しづらいのじゃが……まあ、よかろう。
その程度、対応してくれようぞ。」
皇はおおらかに頷く。
「世が知りたいことか。
ふむ……一言で言えば、じゃ。
この、はろうぃん、なる催しの勘所、じゃな。
なにゆえ、このような営みを行うのか。
菓子と、仮装、なる行為の繋がりがいまいち分からぬのじゃ」
皇の眺める先には、ハロウィンのグッズが並んでいた。
■リロイ >
「最高の演奏(ギグ)は――麻薬(クスリ)なんかメじゃない」
天を仰ぎ、陶酔したように溜息が溢れた。
「前提だ。
これは人間たちの祭り。
人間という種族を、少女よ。
おまえがどう感じているかは知らない。
だが。
これは人間という種族が編んだ文化だ。
弱さと優しさの歌だ。
判るか。判らなくてもいい。感じろ――」
仰いだ顎を戻すと、視線を向ける。
異邦人街。
人間と違うモノたちが集う場所。
こんな場所を女は知らなかった。
「少女よ。
人間が恐ろしいモノにであった時。
人間は恐ろしいモノに対して、何をすべきだろう」
これは彼女の問いに対する答えの前奏(イントロダクション)――
■ヒメ >
「世から見れば、ヒトなど儚きものじゃ。
じゃが、汝も含め、ヒトはよく囀る。
その囀りこそが、汝らの価値であり、世の愉悦なのじゃ。」
傲慢、とも言えるその言葉を事も無げに吐き出す。
けして侮るでもなく、ただ当然のこととして。
「そして……そうじゃな。
弱きが故の、営みである、というのは……十分に解するうちじゃ。
汝らは弱きが故に、様々なことを成す。
それは、世の眷属たちにも行えぬことやもしれぬ」
このヒトの言うことは尤もである。
それは、これまでに学んできたこと。
「……ふむ?
面白い問じゃな。
汝ら弱きモノ、儚きモノが恐ろしいモノに対した時、か……」
ふむ、と思考する。
が、摂理としては選ぶべき道は多くはない。
「一つ。諦めて、己が命を差し出す。
一つ。己が誇りに賭け、儚き抵抗を示す。
選べるのはその2つであろう?
すべき、というのであれば……誇りを賭けるべきじゃとは思うが。
その場合は、なんとしても逃げる、という道もあろうか?」
考えたことを口にした。
■リロイ >
「ヴァイオレンス――いや違う。
違うな。
この形容はノット・グッドだ。
原始的(プリミティブ)――力強い。
少女よ。お前がその存在を唄うたびに、
おれの下腹に重たく響く――低い音だ」
低音弦を弾く。
表情は憂いを帯びたまま。
唇は持って回った歌声を紡ぎ続けた。
「おまえが恐ろしいモノで在った世界があったのか」
機嫌よく、カッティング。
スタッカートの効いたストロークで、感情を謳う。
「実にクールだ。
少女よ。恐ろしいモノよ。
だがこの時節、彼らの家の扉を叩くのは。
強いモノとは違う。
大きいモノでもなければ偉いモノでもなかった。
ジーザス。
向こう側から帰ってきた、
遠い場所にいった家族とともに。
彼らは地獄の蓋を開けてきた。
それは――狂騒(ライヴ)だった」
遠くを見つめた。
あの夜を思い出すように。
「見えざるモノ。
触れざるモノ。
彼らは命を求めてきたかもしれない。
餓えたるモノ。
いやしきモノ。
人間に彼らと戦う選択はなかった。
牙を抜かれた者たちの文化だったからだ。
ロックではなかった――
迫る魔に、人はこう言った」
「これで勘弁してくれないか」
ポケットから紙包みに包まったチョコレートを取り出した。
要るかと問うように、少女に揺らして見せる。