2022/01/08 のログ
ご案内:「異邦人街」に『調香師』さんが現れました。
ご案内:「異邦人街」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「異邦人街」に『調香師』さんが現れました。
ご案内:「異邦人街」に黛 薫さんが現れました。
■『調香師』 > 少女曰く、『魔法の事はどれくらい詳しいのかな?材料を探しているの』
それ以上の事も大して語られず。お店に呼んだその後に、
お出かけ用のバスケットを手に貴女を連れて異邦街の入口へ
「たまにやってくるんだけど。用事がないと、買いたい物を決められないんだよね」
荷物の中にある、辞書の様に分厚い本を引っ張り出そう
異世界の香りは魔法由来、不思議な効果を及ぼすそうだ
不思議じゃない効果を持つ芳香なら調合可能な知識は持つが
『設定されていない事』には強くない。まだまだ学習の余地
「薫さま、この辺りって来る?」
本から顔を上げ、目を向ける
■黛 薫 >
「ときどき。学生街や商店街の品物は安全基準が
しっかりしてる分、一定以上の危険性があるか
入手性に難があるモノは、身元を確認した上で
取り寄せてもらぅ必要がある。
あーしはそこで弾かれるから……欲しい品物に
よっちゃ、非正規のルートに頼るしかねーのな。
異邦人街は落第街より安全だけぉ、その代わり
仕入れは安定しなぃんだわ」
黛薫の装いは普段と随分異なっている。
金糸で魔術的な紋様が刻まれた漆黒のブラウス、
スリットが入ったベージュのコルセットスカート。
いざというときに顔を隠せるようにお気に入りの
パーカーも身に付けているが、羽織るだけ。
「んで、よーするにあーしは魔法関連の品物の
仕入れとか目利きの手伝ぃとして呼ばれたって
認識で宜し?何の目的でどんな品が欲しぃか
教ぇてくれたら、力にはなれる……はず」
■『調香師』 > 「確かに、だね。仕入れの面での難は私も感じた事あるもん
薫さまの為に作った香りの為の素材も、私は取り寄せてもらったし
今日欲しいのは...うん。幻覚の作用、精神の不安定化
或いは魂の扱い方。心を切り離す手段、そして夢の様に覚める方法」
欲しい内容、物騒にも聞こえるそれらを諳んじ彼女は本を閉ざした
この道中もであるが、彼女は時々貴女の方を、格好を見てはくすりと声を漏らす
格好の変わり映えのしない機械少女の自分と違って
香りも格好も、日々によって変わる事は生きていれば然るべき
それでも『違う貴女』は新鮮なもので。その瞬間に出会えるのは、今日の私が幸運だという証拠
「ダメだったら。もっと別の所を探してみればいいかなって
だから今日もお出かけかな?んひひ
私は話したい事あるよ。今日の薫さまは何か話したい事あるかな?」
■黛 薫 >
「魂、心、夢」
曖昧な要望からキーワードをそっと摘み上げて
舌の上に乗せる。瞼を伏せ、味わい、飲み込む。
それから首を動かして、目的の方向を定めた。
こっち、と小さく呟いてあなたを招く。
「幽体離脱、自己像幻視、アストラル投射。
一口に言っても種類は色々ある。
幻覚に起因するモノなら曖昧な意識の中から
拾い上げた断片を無意識に繋ぎ上げた虚像。
内容を制御された夢、と言い換えても良ぃ。
この世界でかつて使われた例を挙げるなら
シャーマニズムか。
或いは脳の電気信号から生まれた意識じゃなぃ、
心、魂……表現の仕方はまあどれでもイィけぉ。
ともかく、物質として存在しなぃ霊的な自己を
肉体から切り離すモノ。意識体の浮遊、離脱、
時には拐かし。物理法則から離れた霊的自我の
自覚、制御。
いずれにしても『香り』は手段としては上々。
カタチが無ぃってのは大事だな?」
人の多い大通り……目を惹くキャッチーな品売りが
幅を利かせる区画から離れ、実益を度外視した店が
並ぶ方へ。方向としては落第街に程近く。
■『調香師』 > 「どんな場所にも静かに滑り込む、毒も薬も芳香の形ならね
本当に、夢を見せるだけなら簡単なんだけどね
私の望みは休んで貰う事。でもその人は、意識だけは休められないんだって
反する注文だと思うよ。でも私、香りの事は『出来る事』だから
確かにしておきたい物は切り離す。私も考えたなって思うけど
それなら人の、『異能』という物は。一体どこに宿るんだろうね?」
異能とは、身体の『特徴』なのか。それとも意識の『本質』なのか
お客様の前では当然の様に提案しておきながらも、
不安材料は事欠かない。それでも、用意出来なければはじめの一歩も存在しない
彼女達は脇の道へと逸れる。随分と慣れた道のり
自分のお店もそういえば、路地裏に在るのだっけ。どこも裏側に近づけば似通ったものか
「まずは、最初のお話
今日の薫さま。普段よりちょっと、大人っぽくなりたがり?」
普段と違う格好の事。今まで来るまでに、何度でも聞くタイミングはあったものだが、
これは幾つか尋ねてみたい事の序。お互いに楽しく盛り上がりたいタイミングというのか
■黛 薫 >
「意識を休められなぃ。だから休んでもらぅ為に
切り離す。休めなぃのは、どーしてなんだろ?
その理由如何で取るべき手段は変わってくる。
気ぃ張って休めなぃ、ってワケじゃねーんだろ。
そんなら複雑な手段を踏まなくても、すっきり
眠れる香りがあればイィ。
休むコト自体が疲弊の原因になってる?
そーじゃなかったら……休むコトで途切れる
切らしちゃダメな何かがある、とか?」
知り合いの顔を思い出す。自分より輪をかけて
深刻な身体機能の欠如。眠るときすら生命維持の
魔術を切らせず、眠ったまま行使する術を修めて
命を繋いでいる女性。
「異能、体質。まだまだ研究途上の分野だかんな。
例えば魂、自我に結び付く異能なら別の身体に
意識だけ移し替えても使ぇたりするとか。
でも、身体に宿る異能や体質はそーじゃなぃ。
逆に誰かに乗っ取られた場合とか、他者にも
使ぇたりするケースはあんだけどな」
裏路地、後ろ暗い区画に向かうけれど落第街には
近寄り過ぎない。実のところ、あの辺りは風紀の
手入れが多くてお行儀の良い店しか残っていない。
認可が怪しい異世界の品を手に入れたいのならば
探すべきは秩序と混沌の境界線。
幸いにも車椅子なので先導する道行がブレたりは
しないけれど。言うタイミングを待っていたと
言わんばかりの問いにはごくごく僅かにレバーの
操作を誤り、車輪が揺らいで。
「……そーーですけぉ。あーしだってそーゆー
気分の日くらぃありますが?あーたの方から
誘ってくれる日なんか滅多にねーワケですし、
ちょっとくらぃ、気合ぃ入れたっておかしか
ねーでしょーよ」
■『調香師』 > 「私が誘ってくれたから、『そういう気分』になったんだ?」
表情にこそ表せない彼女だが。隣から覗き込んでくる瞳はそれはそれはもう、
貴女の事をくすぐらんとするばかりの興味好奇の色
そしてそのまま、声と共に跳ねてしまいそうな調子
貴女の推理も正しい部分はあるのだが、こういう部分はプライバシーとして慎重に?1/3くらいがそんな気持ち
なによりも優先したくなる程、戸惑って意地を張る貴女の事が可愛いのが悪いのだ
「私の場合は。この異能は定義の裏返しって、最初のマスターが言ってたんだ
だからどうなんだろうね?元々持っていた物じゃないからわかんないや」
■黛 薫 >
「確認でも二度は繰り返さねーですよ、もぅ」
張りぼての不機嫌ではにかみを隠す迂遠な肯定。
辿り着いた区画は表通りとはまた違った賑やかさ、
歯に衣着せず言うならごちゃごちゃした無秩序な
喧騒に支配されていた。
元々この辺りは無認可の露店が多く、異世界から
流れてきて先立つ物を持たなかった異邦人たちを
積極的に受け入れてきた区画。無許可の店も大抵
悪気がなく、摘発するにもキリがない……という
理由から無許可の店が半ば諦め気味に黙認された
自由市の趣。
……そんな区画の更に一部。お目溢しを悪用して
表では簡単に扱えない品物を並ぶ店が存在する。
本日の狙いはその辺り。
「裏返し、反転。逆を定義して表を補強してる?
在り方と真逆の行いが『不可能』なら最初から
考慮の外になる。でも敢えて『出来るように』
してあれば『裏』を忌避する感情が生まれる。
それは『定義』の補強と言ぇるのかもな?」
ま、当てずっぽだけぉ、と付け足して。
乾燥した薬草を売る店の前で動きを止めた。
見窄らしい身なりの女性店員は黛薫の顔を見て
無言のまま身振りで問いかけ、首を傾げる。
黛薫もまた無言で首を横に振り……かけて一度
悩む様子を見せ。ぎこちないジェスチャーで
何か要望を伝えているようだ。
■『調香師』 > 「うん。それは随分と違うかな?
私は誰にも知られなかった。だから誰にも知られないままで在る事を可能にされた
結局、私はその人にひどい事を命じられたから。人の為と定義しても、他の人の表情が簡単に矛盾させる
だったら忘れられたままで居たかった。そう思った時期もあったっけなぁ」
それはもう、随分と昔のお話にさせて貰えたという口調
こうしてお出かけ出来る将来があったなら。当時の自分にこそっと囁いてみたいものだ
さて。露店を眺めながらも車椅子が作る道をともに歩いて辿り着いたそのお店
素人目に見れば、他のお店と変わらない。でも薫は目的をもってそこに辿り着いていた
調香師、無言でジェスチャーを繰り返す二人の間に立って、いつも通りの笑みを浮かべる
右が動けば首を傾け、反対が動けばその逆に。つまり、雰囲気だけが合わせようと
それでもお互い、何を求めているのかは分からない
自慢の嗅覚も、未知が漂うここら一帯。機能させるには時間がかかる
■黛 薫 >
「……あーしも酷ぃコトした手前、どの面下げて
っつー話だけぉ。あーしは忘れてやんねーから」
黛薫は横目で貴女を見ながらそう口にして。
店員は軽く周囲を見渡してから後ろを向いた。
「……魔法の行使は、所謂物理現象とは違ぅ」
店員がごそごそと背後の荷物を漁っている間、
黛薫はぽつぽつと独り言のように呟く。
「知られざる領域、或いは未知のまま空白として
定められた境界の先。色のない場所に色を塗る。
中身が分からないお陰で逆に何が入っていても
おかしくない箱の中身を『そうあれかし』と
定めて取り出す。
だから魔法は未知と無知の境界で発展しやすぃ。
科学と理論の光が未知を照らし出してしまぅと
不可知……『神秘』の入る余地がなくなるから。
科学が発展するにつれて魔法が忘れられたのも
そーゆー理由。異世界っつー広大な『未知』の
お陰で持ち直せてっけぉ」
店員が持ってきたのは密閉された袋に閉じ込めた
植物の葉と実。地球の植生には存在しない植物。
「だから、まあ。『未知』が幅を利かせてる世界で
人の意識や心、魂や夢に干渉出来る植物ってのは
『既知』に当てはめると、要するに麻薬なんだわ。
あんま大きぃ声じゃ言えねーけぉ」
店員は最大限周囲を警戒した上で僅かに袋の口を
開いて、調香師の前に差し出す。本来この世界に
存在しない香りは鮮烈で……そして、それ以上に
機械であれど『意識を揺らす』実感があるはずだ。
■『調香師』 > 「薫さまのひどい事は、ちょっと許せるひどい事だからね。えへ」
相互の意思疎通を眺めた後に、二人の間の一人はその場から離れる
残った貴女の言葉を耳にしながら、唇に手を当てて考える
貴女の言う通りの話ならば。『空虚』を定める働きかけが『魔法』を生む
形がない物に形を想う。香りの様に、それであって『それ』としか語れない領域
私は言葉でその輪郭を、欲しがるものを探るけれど
それがどのくらい貴女の思惑と近いのか
『出来ない事』と思っていた世界、その輪郭に貴女の魔法が接するとすれば
それが『出来る事』に至る事があり得るのだろうか?
人形は今まで。その可能性そのものを考えた事は無かった
「麻薬」
ひそりと、その言葉を反芻。態度に驚きの様子はない、或いは取る前に
嗅ぎ寄せた香りに、混沌とした香空間に強烈な指向性を植え付けられてしまったのだから
「ん...」
知らない筈の香り、成分もその多数が理解できない筈の香り
それがまるで『故郷』を想わせる誘引性を抱き、もう一度、それを求めて吸気を求めて
■黛 薫 >
二度目の感覚は一度目より些か弱く。
店員が袋を閉じて没収してしまったから。
「直接嗅ぐだけならそんな神経質になんなくても
イィのかもだけぉ、あっちにも立場ってもんが
あっからな。万が一があったら困んだわ。
このハーブは離脱の香……あー、えっと、魂に
ケガレを残すタイプの病や霊障の治療のために
魂を身体から引き離す煙の材料に使われる。
本来燃やして使ぅんだけぉ、これは若ぃから
実ならすり潰して1粒、葉なら3枚半までなら
安全のはず。実が萎れてたら少量でも強すぎて
危険だから専門家以外使ぇなくて、逆に葉は
育ち過ぎると不純物が増えて用途に適さなぃ。
ポピュラーなレシピだと、他にコレとコレと
コレ……それから店頭にないハーブが2種類、
薬草が3種類要る。安全な許容量と使い方は
後で渡すとして、効果を残しつつイィ香りに
仕上げられっかはあーたの腕次第。
あと別のアプローチに使ぇそーな品もいくつか
考ぇてっから、それも含めて在庫あるかどーか
聞ぃてみる。少し待ってて」
招かれた当初は目的を聞かされていなかったから、
これらの説明は事前に用意したものではないはず。
にも関わらずすらすらと淀みなく。彼女の見識の
深さを窺わせるには十分だった。
あと、普段と比較して早口で口数も多い。
興味を持った分野を語らせると長くなりそう。
さておき、黛薫は符牒、暗号と思しき手の動きで
店員と会話を始めた。ハーブ1種類と薬草3種類、
在庫がなかったらしい1品を除いたまとめ売りと
別に分けたハーブ数種類が台に置かれる。
それからも店員はいくつか品を取り出して見せて、
黛薫はその度に同じ仕草で返し、店員は品をしまう。
恐らくだが、ついでにコレもと売り付けられていて
その悉くを断っているらしい。
黛薫が1回だけ、差し出された品を見て明らかに
符牒とは無関係な罵倒のジェスチャーを返して。
けらけらと店員が笑ったのを最後にセールスは
終わったようだ。