2022/08/17 のログ
ご案内:「異邦人街/修道院」に深見 透悟さんが現れました。
■深見 透悟 > 世間は夏休み、一応の学生である深見 透悟も例に漏れず休暇を持て余し当ての無い散策へと繰り出していた。
否、当てはあるにはある。しかしそれは余りにも不明確な当てで、傍から見れば当てなど無いも同然だった。
だから自覚的に当ても無く、気の向くままに彷徨い歩いて修道院へと辿り着いたというわけで。
「異国情緒というか何というか、異邦人街ってだけあって独特な雰囲気って感じだったけど……
この建物は少しだけ懐かしい気もするなー……元の世界の修道院に似てるんかしら」
器を得たとはいえ本質は魂のみの存在であるからして、修道院内部に足を踏み入れるのは憚られ。
見学がてら、ぶらりと建物の外を回ろうとすれば人の声が聞こえた気がして。
ふらふらと声のした方へと歩いてゆけば、一人の修道女が何やら鍛錬に励んでいるように見える場へと行き着いた。
「おおっと、はろはろー お姉さん、ここの人?
あ、勝手に入っちゃ拙かったりする?しない?しないと良いな~って思うんだけど」
黙って立ち去るのも後ろめたい事でもあるかのように思え、努めて気楽そうに声を掛けてみたのだった。
■マルレーネ > 「……………っふ………ふー………っ」
気合は最初だけ。
後は、無言で、ほとんど呼吸もせずに連続で。
くぐもった打撃音と、重々しい風切り音だけが響き。
地面には体重移動とステップで、無数の足跡が残る。
本当に、限界の限界、呼吸が苦しくなったところで………棍を取り落として。
「………へぁ、ふぅ、ふぅ………」
魂そのものをぶつけるような、鍛錬と呼ぶにはその身を全て投げ打つような。
それが終わった後の汗だくの修道女が、呆けたような声を向けて。
「………へ? ぁ、………あはは、何か御用でしたか? すみません、五月蠅かったでしょうか。」
へにゃり、と少しだけ疲弊しているからか、普段よりもちょっと柔らかい笑顔で、首をちょい、と傾げて。
■深見 透悟 > 「あーいやいや、特に用とかは無いんだけども
ふらっと立ち寄ってみたら何だか物音がしたから何かなー餅つきかなーと思って
したらお姉さんが居たから、黙って帰っちゃうのも何だしーと思いましてですね」
どーもどーもこんにちはー、とひらひらと手を振った後は特に迷惑がっていた素振りも悪びれる気配も無く言葉を連ね。
ふむん、と少し思案気に視線を巡らせ、一人でこくんとひとつ頷くと
「この辺りに来るのは初めてでさー、色々見て回ってたんだけど
用と言えば、ううんそうだなあ……ここ一年くらいの間に身元不明の男の子の遺体が漂着したのを弔った記録とかあるとことか知ってたりしない?」
こんな感じの仏さんなんだけど、とキメ顔で自分自身を指し示し、真似をする様にちょい、と首を傾げた。
■マルレーネ > 「あ、あはは………。
こほん。餅つきの練習、………というわけではないんですが。
いわゆる武術というやつですね、はい。」
こほんこほん。武術と呼ぶには無謀で、乱暴で、がむしゃらに過ぎるけれど、それはそれ。
ダイエットです、ダイエット、なんてころころと笑って付け加えて。
その上で、相手の言葉に首を傾げる。
「………ここ1年くらいの間、ですか?
………ここは異邦人しか集まらない修道院ですから、その世界の人物であると分かればここに来ることもあるでしょうけれども。
………それこそ、お医者さんに聞く方がよいのではないですか?
………弟さんとか?」
相手の話しぶりから、重い様子は感じない。
ただ、相談の集まる場所だ。相手の話しぶりだけでは想像ができないのも当たり前。軽く予想を相手に投げかけ。
■深見 透悟 > 「だよねえ、餅つきにはまだ半年近く早いや
なーるほど武術。俺ってば根っからの魔術師だから、そっちの方はてんでシロートで
なるほど武術でダイエット。そういうのもあるのか
その割には別にそんなん気にしなくて良さそーな見た目だけどもおねーさん」
武術体術には明るくないと自称する通り、やや強引な相手の回答もすんなりと受け入れて信じてしまう。
そこまで武術に興味関心があるわけでも無い事の裏返してもあるのだが。
「そーそー、ここ1年くらい
異邦人の事だからむしろ此処の方が適してっかなーって思ってさ
……お医者さんかあ……ええと、何だっけあそこ…そう、転移荒野に流れ着いた遺体でも、やっぱりお医者さんが診てから埋めたり焼いたりするのかしらん?」
帰って来た言葉にあっけらかんと応じて、だとしたら病院かー、と俄かに表情を曇らせる。
それから最後に投げられた問いに、はたと我に返って。
「ああいや、違う違う。俺そのもの
こう見えてこの島にやって来た時から幽霊でさー、今はどうにかこうしてオリジナルの容れ物作って入ってるんだけど
兄弟とか……いない訳じゃねーけども、まあ流石にこっちにゃ来てないと思うし」
そんなヘマする様なのは俺くらいなもんだし、とやはりふわふわと無重力な語り口で身の上を告げる。
要約すると、シスターの前に立っているのは、自分の死体を探しに来た幽霊、ということになる。
■マルレーネ > 「ふふふ、いやあ、こっちの世界は食事が美味しくて多いので、ついつい……。」
遠い目になる。正直全身いろいろ変わったのは事実だ。
筋肉が落ちたことで、若干身体が柔らかくなった気もするし。
「…………そうですね。場所によってはですが、死んでいるような状態のままで移動し、移動先で“蘇生”して動き始めるような種も存在します。
見た目だけで死んでいると思ったとしても、おそらくは学園が動くと思いますよ。」
相手の疑問に、それなりの予測と共に理論建てて言葉を連ねる。
ここの医学は自分が知っている医学と比べても、明らかに進んでいるようだ。
「………なるほど幽霊。
いや、まあ、ちょっと待ってくださいね。」
一瞬頭の中がぐるぐると回って、理解を拒みかけたので、掌を突き出して落ち着く。
そう言う人も、きっといるのだろう。
「……………なるほど。
分からないのは、なぜ探されているんです? そのお身体が長く持たないとか、そういう…?」
首を傾げる。幽霊を理解することがしきれないのだから、身体を探す理由も掴み切れない。
■深見 透悟 > 「ほーん、なるほど……そういうことならまあ、納得?」
納得はするけど引き続き必要性は感じない。
が、そこはそれ、男女では危機感を覚えるラインというのも違うのだろうと呑み下して。
「なるほど……丁度空になって手頃な遺体に別の魂が入ったりとか……
あるいは完全に抜けきってなくて半端に残った魂が片割れを求めて……とか」
彼女の口にした現象に思い当たるフシがあるのか初めて真剣な面持ちで頷く。
しかしすぐに(=△=)みたいな顔になって、そんな事になってたら嫌だなー、と苦言を溢した。
「おおっと、ごっめーん混乱した?
悪い悪い、初対面の人にする話でも無かったのは分かってたけど、ここってお悩み相談とかするとこっしょ?
こーゆー話も、稀によくあったりするんかなーと思って、サ!」
ちょっと待ってと言われ、やっぱり悪びれた様子もなくカラカラと笑いながら暫し待ち。
これまで割とすんなり幽霊としての己を受け入れて貰えていたから、考えがちょっと甘くなってたわと反省しつつ。
「何故ってそりゃ……俺自身、自分が完っっ全に死んでるって自信が持ててなくって。
間違いなく魂だけにはなってんだけど、その割にゃ色々しっかりしてるっつーか、もしかしたら俺は生霊で、体はまだ生きてんのかなーとかとか
よーするに死んでるなら死んでるで、死んでるって言う確証を得たいってとこ!」
生きてるなら、それはそれで今後の目標も立てやすいから、と。
■マルレーネ > 「………いやそんな相談なかなかないですよ。」
いやいや、と掌をツッコミのように向けながら遠い目をする。
あれー現世から解放されるとかそういう話になるようになんかこうお話してたんですけど。
解放されてないんですがこういう時なんてお話すればいいんでしょうか。
あれーこれも試練かなぁ。私この仕事向いてないんじゃないでしょうか。
幽霊に相談されて、思わず遠い目になってしまうシスター。
宗教観とかそういうのをぶっ壊す存在に、ノックアウト寸前だ。
まあ、この世界に飛んできたせいですっかり耐性のついていた彼女はそれをなんとか踏みとどまる。
「………………。」
おそらく。
「おそらく、それをもし確認したとしても、死んだ実感は持てないのではないかなと………。
そうなると、次は「なぜここにいるんだろう」になって。
それはきっと、どこまで行っても解決しないことですから。」
元の世界の私は死んだのか。
それを否定するものは何も存在しない。
幽霊であるという明確な枠がある分、相手の方がはっきり輪郭があるように見えて。
……いや。首を横に振る。
他人との相談中に己のことに思いを馳せるなんて、失格だ。
「………でも、もしも生きているとしたら、探したいのは分かります。
異世界からの移動であれば、おそらく共同墓地の管理者に連絡するのがいいかもしれません。
私はほら、………若いですから、まだまだ管理者とか無理なので。」
てへ、と舌を出しておどけて見せる。
■深見 透悟 > 「そぉっか……何かとトンチキな世界らしいから、俺自身の置かれた状況もさほど珍しいもんじゃないのかと……」
何だか悪い事してしまったなあと、バツが悪そうに後頭部を掻き掻き。
しかし彼女もまた、幽霊を自称する己をそういうものとして受け止めているように思えて、何やかんや良い人なんだろうなと勝手に印象を結論付ける。
「そうかなあ、そういうもんかしら
自分が死んでるのを見れば、ああホントに俺ってば死んじゃってんだなあ、って自覚は持てるっしょ?
そしたらその先は成仏するかどうかしかないじゃない
……何故ここにいるんだろう、なんて悩みはそんなん死んででも生きてても変わんないしさー? その辺はまあパスよパス
現状、俺は生きてるのか死んでるのか分からないから、いま魂としてこうして留まってんのかもーって思ったわけだから。いわゆる未練ってやつ?
それをひとつ解消してみりゃ何か変わるのかと思ってネ!」
まあそんなことは実際死んだり幽霊になったりしてみた身の上じゃなきゃ分かんないよな、と結んで。
魂だけが生身に模した器に入ってるだけの己と違い、生者である相手に全てを理解して貰おうとも思わない。ただ、軽い相談を聞いて貰えればそれで良かったのだけれども。
どうやら私的な部分で相手が悪かったらしい。
「なるほど共同墓地、ね。ふむふむ今度連絡して行ってみよう
ありがとーね、お姉さん! 幽霊の相談なんて唐突に受けて貰っちゃって
ところでお姉さんも異世界から来たお仲間さん? それともこっちの人?」
こっからはただの雑談なんだけど、とケラケラ笑いながらとりあえず日陰にでも如何?と促してみたり
ぶっちゃけ幽霊でも暑いもんは暑い。
■マルレーネ > 「いや珍しいですよ。……存在自体は珍しくないにしても、そのまま会話して、そのまま生活しているというのはなかなか。」
アンデッドと戦ったことは数多い。
でも、その幽霊と会話してまったり過ごす、というのはなかなか無い。
「未練、ですか。
………なるほど、そうかもしれませんね。
貴方はもう、その状態で長いのですか?」
そう尋ねる。割り切ることができるというものもまた強さだ。
なんだかんだ唸って、悩んで、苦しんでしまう自分には足りない強さだ。
「いえいえ、ここはほら、看板には誰でも歓迎と書いてますからね?
除霊は請け負ってないので、いつでもどうぞ?」
なんて、冗談まで交えてぱちり、とウィンク一つ。
「……あー、元々別の世界ですよ。それなりに名前も知られていたんですが、いつの間にかこちらへ。」
苦笑いを向けて。「いや珍しいですよ。……存在自体は珍しくないにしても、そのまま会話して、そのまま生活しているというのはなかなか。」
アンデッドと戦ったことは数多い。
でも、その幽霊と会話してまったり過ごす、というのはなかなか無い。
「未練、ですか。
………なるほど、そうかもしれませんね。
貴方はもう、その状態で長いのですか?」
そう尋ねる。割り切ることができるというものもまた強さだ。
なんだかんだ唸って、悩んで、苦しんでしまう自分には足りない強さだ。
「いえいえ、ここはほら、看板には誰でも歓迎と書いてますからね?
除霊は請け負ってないので、いつでもどうぞ?」
なんて、冗談まで交えてぱちり、とウィンク一つ。
「……あー、元々別の世界ですよ。それなりに名前も知られていたんですが、いつの間にかこちらへ。」
苦笑いを向けて。
■深見 透悟 > 「こう見えてそれなりに苦労したんでね!
あ、今こそこうして面と向かって話せる状態まで持ち込んだんだけどもね?
声を掛けてもしこたま驚かれたり、移動に制限はついてるわ昼間はしんどくて動けないわで学校で地縛霊みたいになってたんだけどどうにか体を造って……あ」
そこでふと気付く。もしかすると初っ端に自分は幽霊ですなんて自己紹介をしたから、今こうして対面しているのが霊体だと彼女は思っているのでは。
だとしたらそれは誤解なのが、さてその誤解はどう解いたものかと頭を捻り。
「そそ、未練。いやもっと年頃の男子として色々未練は抱えてはいるんだけどもサ
目下、俺が幽霊になった理由はその辺なのかなーって。後は単純に探究心
この状態……幽霊になってからは、1年経ってないくらいのはず!」
まだまだ幽霊としてはニュービーだ、と自負しているものの
何かときな臭い出来事の起こる地域から続々と新人幽霊が湧いたりしているのでそろそろ先輩風を吹かせても良さそうな頃合いかもしれず。
「いやー、誰でもとは書いてあったけど生死問わずとは無かった気がしたからさー、なんつって
除霊はまあ……うん、踏ん切りがついたらお願いするつもりの当てはあるからサ!」
かんらからから。気さくに笑う姿は生者そのもの。
下手をすればそこらの生者よりも生者らしいまでありそうなほど。
「ほーん、異邦人側のお仲間ってことか。
大変だよねえ、元居た世界と何かと勝手の違うトコロでやってくのって……」
お困りごとは無いですかね、と逆にお悩み相談を受けようとする始末。
■マルレーネ > 「そりゃそうですよ………。
いやまあ、零体になった経験とか無いんですけど。
身体を作る、……というと、ええと、何で出来てるんですか?」
はて、と首を傾げて覗き込む。
流石に霊体だとは思っていないようだが、それでも………本当に人形なのか、という顔で。
「未練、未練ですか。
いやまあ、流石にこの修道院で果たせるような未練なんて無いとは思いますけど………
何かほかにあったりするんですか?
いやまあ、こうやって会話できるならばいくらでも。
別にどんな宗教とか、そういうのもありませんしね。 この世界で私の神を信じているのは私だけってものですし。」
明るく楽しく。特に幽霊であっても受け入れる構えの女。
苦笑しながらすっかり落ち着いた様子なのは、受け入れるキャパが広いのだろう。
「……そうですねぇ、まあ私はいろいろと助けてもらったので、すっかり慣れたものですけれど。
後は、身体一つでやっていくタイプの人間だったので、そこは楽ですね。
ほら、前の世界で……こっちで言う法律家だったりすると、知識が役に立たないとかあるじゃないですか。」
■深見 透悟 > 「まあ、よく考えてみりゃあそうホイホイ幽霊経験のある人が居られちゃ俺もアイデンティティが危ういもんな!
……何で、と言われると基本は土塊に魔力で疑似神経を造ってそれから……」
ああ、霊体だとは思われてない様だと察すればほっと胸を撫で下ろす。
覗き込まれれば流石に照れた様に視線を逸らし、軽く自身の頬に手を当てて。
そのまま簡単な説明を始めるも、魔術的な用語がつらつらと並んでいき。
「そりゃあこれから青春を謳歌しようって年頃だもの、未練なんて山の様に!
例えば――あー、まあ、そりゃあもう山の様によ!」
例えば、の辺りで視線を巡らせた先に修道服越しでも主張する膨らみが過ぎる。
幽霊になっても思春期の男子、未練と言えばその手の物がどうしても頭を掠めるが、思い止まって言葉を濁し同じ言葉を繰り返した。
「真っ当に会話が出来るってのはホント大事なんだなあ
あーうん、宗教に関しては……何だろ、俺はどっちかと言えば宗教の敵、みたいな側の人間だし……」
神秘があれば分析解体し詳らかにする。いわゆる真理の探究を旨とする魔術師である故に、たはは、と苦笑を浮かべざるを得なかった。
自称幽霊が属した世界では魔術師もその性質は限りなく科学者に近しいものらしい。
「なるほどね、人との縁……俺も思い当たるフシが多々あるわー。
身体一つで。なるほどなるほどー、それでさっきの武術を。
確かに知識の齟齬は混乱の素になったりするする。でもまあ、似たようなものを知ってるだけで応用が利いたりもするから、一概に役に立たないってもんでもないぜ?」
なんせ天っっっ才魔術師ですから、とえっへんと胸を張って。
■マルレーネ > 「そうですねぇ、ホイホイたくさんいらっしゃったら、多分真面目な教会の方が頭を抱えるかと。
いろいろと話の整合性取れなくなりますしね。
まあ、神の奇跡って言い張れる方は大丈夫でしょうけれど………。」
私ももうちょっと以前だったら危うかった。
いやあ、幽霊ってこんなに話すんだなあ、なんて。
「……山のように。
まあ、未練が何かあるなら教えてくださいね。どこへだって行けますし、手伝えますしね。」
相手の視線なんて気が付くようなら、この仕事はしていない。
というか最初は気が付いていたが、すっかり麻痺した。職業病である。
「……あー。………
私は魔術は分かりませんが、その実、私のところは魔術と信仰、それなりに譲歩し合って、譲れない場所は見て見ぬふりをして、上手くやっていましたけどねぇ。」
大人の事情とかそういうやつ。教会でも敬虔過ぎるような人は、もう殆どいなかったから。
「…………ふっふっふ。文字をこちらに来てから正しい順序があると知った田舎娘ですから!!
応用も何も基礎からちんぷんかんぷんですよ!」
学校の成績は実地活動で補填するタイプのアクティブ学生。
■深見 透悟 > 「なるほど、教会の人の事は考えてなかった
生前……前の世界でも、あんまり意識したこと無かったから……というか、引き籠って魔術の研究ばかりしてたからなー。天才だったけど
なもんで自分と同種の人間しか知らなかったし、幽霊になってから多様性を知るってのも変な話よねー」
あっはらっはっは、と高らかに笑う。
幽霊経験のある生者が珍しいだけで、幽霊自体はわりとほいほい居るという事は伏せといた方が良い気がしたので話題の舵をぐいっと曲げて。
「そうそうそりゃあもうこんもりどたぷんと……うぇっほえほけほ
……あはー、じゃあまたお話ししたりして貰ったりしちゃおかな! ほら今夏休みじゃん?せっかく出来た友達もめいめい夏休みを満喫してて暇で暇で」
そうすりゃ未練も幾つか解消するかもしれないし、しないかもしれない。しない説がややかなりだいぶ有力。
とはいえ話し相手が欲しいのは紛れもない事実なので、にぱーと笑ってお願いしてみるのだった。
「まあ、その辺は世界ごとに違うだろうし、宗教ごとにもまた違うんだろうなーってのは俺でも分かる!
世の中には信仰と魔術自体が密になってる事だってあるわけだし、その辺は上手い事折り合いつけてかねーとなー……」
この世界もどちらかと言えば魔術は神秘側の色が強い、というのをそれなりに学んだりもした。
「知識なんて学びから得るものばかりじゃねーもんですよ。
例えば体を傾けて足を前に出せば前進するでしょ、それをより早く行えば走りになって早く進む。これも応用みたいなもんだし」
現象事象の数だけ基礎があって、基礎があれば応用もある。
その基礎に気付くために学があるのだ、と俺自身は理解をしている、と幽霊は得意げに宣うのだった。
■マルレーネ > 「それは似たようなものです。私も一人で外に出られるまで、教会の人としか話したことが無いようなもので。
外に出るようになってから、初めていろいろなことを知りましたからね。
まあ、それからの経験もそれなりに長いんで、人生経験は豊富と言えるかもしれませんけど。」
からからと笑う相手に苦笑しながら、汗を拭う。
自分よりよっぽどよく笑うし、明るいように見受けられる。
ある意味、もう達観しているのだろう。
「………あ、なるほど。
別に構いませんよ、夏であろうと冬であろうと、こういった場所でお仕事をしていますから。
いわゆる此方の世界の普通の教会でも仕事をさせてもらっていますからね。
いつでもどうぞ。………とはいえ、普段はここが一番多いんですけど。」
「………私の故郷では、キノコは青いものは食べたらダメで赤いものは食べてもOKとかそんな感じですね?」
はっ、と顎を撫でて頭のよさそうなことを言おうとしてとっても頭の悪い答えを返す。
野生のシスター。
■深見 透悟 > 「ほーうほう、まあそれこそ珍しくない類の事なのかもしれないね
いつだって世界はだだっ広くて、知らない事は無尽蔵にあっても、切っ掛けが無いとそれすら知る事が無いように出来てる。よーく出来てるもんだなあ
はは、俺だって人生経験は及ばないけど幽霊経験が豊富だかんね!」
笑って胸を張る……が、そもそも豊富と言うには期間が足りないとか、その経験が何に活かせるのかとかは不明である。
それこそ達観しているように見えるのが、幽霊経験の豊富さ故……かもしれない。
「わはーい、良かったー。あんまり退屈だと自分を見失いそうになっちまうもんでね!
じゃあまた自分探しに疲れたら遊びに来させてもらおーっと。教会を探して回れば見つかるんだね、立場上……いや、何だろう……幽霊上ちょっと忌避感あるけど、頑張ってみるかぁ!
まあ基本はここ、ということで。そいやお姉さんのお名前は? 俺は天っっっっ才魔術師の深見 透悟。トーゴって呼んで!」
もし探すことになった場合、名前を知らないというのは不便だから。
よもや金髪ボインのフィジカル系シスターお姉さん知りませんか?なんて尋ねて探し当てられるとも思えない。
「そーそー、それが基礎。んで、食べられないキノコでも火を通したりとか、水でさらせば食べれる様になるのもある、ってのが応用。」
そういう意味じゃ料理って基本と応用のオンパレードなんだよね、と頭の悪い答えにパパッと手で丸を作り。
まあ料理しないんだけど俺、とオチもしっかりつけた。
■マルレーネ > 「いやあ、幽霊経験………そりゃあまあ確かに世の中の人のほとんどが0ですからねえ……」
遠い目をする。
これに対して笑っていいのかすら分からないのです。主よ、どうすればいいんでしょうか。
ゴーストジョークって難しい。それこそ経験不足。
「ああ、……そういう意味なら、どうでしょう。ここの裏手に小屋がありますけど、そちらに住んでますから、そちらへどうぞ。
まあ、何にもないですけどね。この修道院も別に何かそういう道具があるのかと言われれば無いですし。
私の除霊も、思いっきりそれっぽい武器で叩くとかそんな感じですし。
…あ、私ですか? シスター・マルレーネ。 マリーでいいですよ。トーゴさん。」
割とその聞き方で通るのだった。
フィジカル凄いシスターは少ないのだ。決してスタイルではない。
「………………。
そういうのなら、なんとか。 料理はするんですけどねぇ、おおざっぱなもんで。」
てへへ、と頭をかいて苦笑い。
物事を細かく覚えるのは苦手なようだ。感覚派シスター。
■深見 透悟 > 「だよねえ、死ぬだけでも一筋縄じゃ行かないってのに。更に生き返ったりしなきゃなんねーんだから!
ま、俺生き返ってるわけじゃねーけど!」
基本的にジョークのつもりが有っても無くても笑われる事に目くじらを立てる性分でもない。
その笑いの中に嘲りや侮蔑が含まれているかどうかくらいは察する事が出来る為だ。
しかし初対面の相手がそれを知っているはずもないことは重々承知の上。今後知って貰えればそれで良いやなお気楽幽霊。
「えっ……うら若き乙女のお宅にお邪魔するのもそれはそれで……とはいえ背に腹は変えられないわね!
お着替え中とかはそれとなく分かるようにしておいていただけると助かる!
……こう、物理的に何も無くても雰囲気とか空気とかがね……
ま、そうあれかしとして作られてるところだから無理も無い……ってわお、パワフルな除霊……
はいはーい、マルレーネ……マリーさんね。マルさんの方が可愛くない? いや良いんだけど」
曲線多めな意味でも覚えやすいし、と思いこそすれど口には出さず。いいですよ、と言われたのならばマリーさんと呼ぶだろう。
それはそれとして、シスターの知り合いというのは幽霊的にもレア度高いのでは、と得意げである。
「その、おおざっぱも、過去の経験から成り立つものでしょ
失敗したという基礎があって、失敗を避ける応用が利く
得てしてそういうもんよ、考え方というか物の見方の違いってやつ?
それじゃ、俺は帰ろっかな!じゃーねマリーさん、汗、ちゃんとキレイにしといた方がいーよ!」
そんなに卑下なされるない、とケラケラ笑う陽気な自称幽霊。
ぴっと人差し指を立てて忠告した後、気儘な足取りで修道院を後にするのだった。
ご案内:「異邦人街/修道院」からマルレーネさんが去りました。
ご案内:「異邦人街/修道院」から深見 透悟さんが去りました。