2022/10/19 のログ
ご案内:「異邦人街」にマルレーネさんが現れました。
ご案内:「異邦人街」にパラドックスさんが現れました。
ご案内:「異邦人街」からマルレーネさんが去りました。
ご案内:「異邦人街」にマルレーネさんが現れました。
■マルレーネ > 「はい、はい、すみません………」
異邦人街には様々な施設がある。まるで違う文化の料理を再現した小料理屋やら、何に使うのか分からない祭具を売る商店。逆にこちらの世界の文化を中心とした書店………。
そういった中心街から少し離れた場所に、その修道院はあった。
もはや祈りの届かぬ神に祈りを捧げ続ける小さな修道院。
元々はこちらの世界の宗教のために作られたものではあるが。
その中央でぺちぺちと怒られているのが、ここの所有者であるシスター、マルレーネである。
異世界の冒険者でもあった彼女は、こちらの世界になんだかんだと馴染んできているわけだが。
■マルレーネ > 「はい………、いえ、ハロウィンコーナー担当ということでなんとなく用意されたものを着てしまって……。
あ、はい、うっかりしていました………。」
百貨店のハロウィンコーナーで悪魔衣装を身に着けているところを。現地シスターに見つかって散々恥をかいた上でのお小言。
恥ずかしいやら情けないやら、中央で只管年配のシスターから小言を貰い続けているのであった。
■パラドックス >
それはなんてことはない、他愛ない日常の一幕だったのだろう。
ちょっとした人生の谷。谷と言うには余りにも浅い。
そんなシスターの一幕をバン!と強く開かれた扉が最初の亀裂だったのだろう。
乱暴に開けられた扉の先には、スキンヘッドの長身の男。
やや細身であり、胡乱な双眸をした異質な男は、その場の注目を引くには充分だった。
「……ある種の"掃き溜め"のような場所でも神には縋る、か」
その場に置いて、紛れもない冒涜の言葉。
男には一切の信仰心を感じさせない。
一本に続く通路をゆっくり、ゆっくりとした足取りで踏みしめる。
「お前はこんな場所でさえ、未だ信仰を捨てないのか?」
投げかける言葉の剛速球。
全員の注目をよそに、シスター・マルレーネに男は問う。
■マルレーネ > 扉は自分のDIYである。正直自信が無いから、激しい音にビクッ、と身体を揺らして。
「わ、っと。 扉あんまり丈夫じゃない……、ので……。」
言葉が止まる。
彼女は、穏やかそうな見た目とは裏腹に、ギリギリの戦いを生き延びてきた人間である。
同時期に冒険者となったシスターの集団は、3年を待たずして彼女以外全滅した。
唯一人、茫洋として果てのない草原を歩き続けてきた女だ。
「………シスター。アレン。下がってください。」
………だからこそ、自然と前に出た。
彼女は、信仰心が無い人を責めることは無い。
少しだけ困った顔を向けてから。
「それが私の在り方故。このような場所に何か御用でしょうか。」
落ち着いた口調で、そう返した。
■パラドックス >
ふ、と返答を鼻で笑い飛ばした。
「虚言だな」
根拠はないが、何処か確信めいた物言いだった。
<クォンタムドライバー……!>
シスターの問いかけには、無機質な電子音が代わりのように答えた。
気づけば男の腰には、デジタル時計を模したベルトが装着されていた。
歩みを止める事は無く、男の周囲には年号めいたホログラムが周囲を飛び交う。
「安心しろ。その幻ごと、お前らを葬り去る。……私の名はパラドックス」
「この時代の"破壊者"だ。────変身」
<クォンタムタイム!>
全てのホログラムが砂となり、全てを巻き上げる小竜巻が男を包む。
纏わりつく砂を振り払い、中から現れたのは全身黒いケーブルを巻き付けたかのような怪人。
無数のデジタル数字が全身に浮かび上がり、瞳の思わしき赤は「0:0」と記されている。
近未来の融合体。それは、"人型の怪人"ともいうべき風体だった。
<クォンタムウィズパラドクス……!>
時代を破壊する怪物の名。
全身に絡みつくケーブルから蒼いエネルギーが右拳に集まり、怪人が大きく飛び上がる。
『フン!』
破壊のエネルギーを纏った拳が三人目掛けて叩きつけられる。
叩きつけると同時に小規模の爆発を起こす凶拳。
直撃すればただでは済まない────。
■マルレーネ > 「かもしれません。」
少しだけ目を細めて、そう返した。
もう祈りは届かない。神はいない。それを最もよく分かっているのは彼女自身であり。
その上で、もう一度。
「シスター、アレン。……まっすぐ後ろの扉から出るんです。 早く。」
彼女は待たない。
電子音の時点で、目線を離さずに声だけを挙げる。相手の動作が終わるまで待つようなことは一切しない。
「早く!!」
次の言葉は先ほどとは真逆。怒りをぶつけるような声。
相手の姿が異形へと変わっていくことにも、驚きを見せない。
「走って、出来るだけ離れ……。っ……!」
相手の生み出したエネルギーの塊にも、特に動じることは無い。
三つ首の龍が吐き出した火球とイメージが重なり、バックステップとフットワークで回避する。
横には避けられない。あくまでも後ろで逃げ出すシスターと少年の壁になることを選択して、ただまっすぐに下がりながら。激しい音と共に長椅子が吹き飛んで、床に大穴が開く。
「………時代を破壊するならば、ここではないような気がしますが?
ここは"時代遅れ"もいいところですが。」
声をかける。周囲にせわしなく視線を向けながら、意図をもって言葉を紡ぎ。
■パラドックス >
標的を砕かずとも床を砕いた青い爆炎の中、悠然と立ち上がる鉄の怪人。
黒煙に揺らぐ姿の中、血のように赤い双眸が怪しく光る。
『この島にあるだけで、充分すぎる理由だ』
流れに流され、流浪者が身を寄せ合う時代の掃き溜め。
故に身を寄せ合う不自然な時針の流れでさえ
常世と言う時計盤にあればそれは怪人のとっての"敵"だ。
健気にも自分以外のものを庇い、注意を引こうとするシスターマルレーネ。
<クォンタムシューター!>
だが、怪人は逐一選り好みなどしない。
蒼い光と共に握られた、歪なライフル。
無作法に垂れている不気味なケーブルが刻を刻むように怪しく揺れる。
『誰一人逃がすつもりはない。……ここで殺す』
機械的に、無機質に、向けられた無骨な銃口。
躊躇いも無く引かれたトリガーにより、銃口から放たれる蒼い閃光。
万物を貫き、焼き切る科学の結晶蒼いレーザー。
強烈な熱線が二発、逃げる二人の背中目掛けて放たれる!
■マルレーネ > ああ、なるほど。彼は戦なのか。
自分の中で納得を得れば、彼女は口を閉じた。
その場所にいた罪で殺される人を、数多に見てきたが故の納得。
「………さあ、どうでしょうか。」
固定していなくてよかった。教会の長椅子を握り締める。
本来ならば武器にしても防具にしても適さない、3人から4人は座ることができる木製のそれを握り締めた。
彼女の能力は聖属性の付与。言うなれば、物質強化のエンチャントだ。
金属には通りが少し悪いが、身体に触れてさえいれば可能。
それ自身が光り輝く聖具となり、木の枝が鋼となり、布が鉄板の強さを得られる。
当然、長椅子自体がぼう、と全て光り輝いて………それが、思いっきりライフルを構えた男にぶん投げられる。射撃する前であれば僥倖。射撃をした後だとしても、迫りくる長椅子は貫かれない限りは盾になろう。
唸りを上げて投げられたそれは、明確な殺意すらあるような攻撃。射線を遮りながら動きを止めるには、もう先に"殺す"しかない。
地面を蹴って、前へ。
腹をくくる速度に関しては、やはり彼女は現代とは違う世界に住まう者。長椅子の向こう側には、聖職者とは思えない殺意の瞳。
■パラドックス >
既に放たれた熱線は本来であれば容易に長椅子を貫いていたはずだった。
だが、その見た目とは裏腹にレーザーと干渉し合い爆発を起こし木っ端微塵だ。
鋼さえ焼き切る熱が、たかが長椅子に相殺された。
材質の問題ではない。アーマーの瞳からリアルタイムに送られるデータは
あの時、あの気に食わない赤女と同じ力を感知する。"魔力"だ。
『魔術か……』
己のいた場所では聞く事の無い文字通りのまぼろしだ。
あの聖職者は魔術を使う。ただものではないと思った矢先
なんと、木っ端と爆炎を搔い潜って自ら"前"に出てくるのだ。
『……面白い』
<スラッシュ!>
か弱いシスターとは程遠い殺意を、死線をくぐったものの"目"だ。
てっきり後ろの連中と逃げると思ったが、予想外だ。
だが、関係ない。殺す順番が前後するだけの話。
ライフルの刀身が青白い光に包まれ、瞬く間にレーザーブレードに早変わり。
そのまま迫りくるシスター目掛け、素早く刀身を突き出した!
無防備に当たればその身を焼き、その身を二枚に割られることになる────!
■マルレーネ > レーザーブレード。
彼女は当然それが何かを知ることは無い。
「………っつ……!」
それでも、気配は感じ取れる。あれはただ殺意だけを抽出したような武器である。
チェインメイルを身に着けてこなかったことへの後悔を忘れてしまうほどに。
地面に足を叩きつけるようにしてブレーキをかける。みしみしと木の板が悲鳴を上げて、足首も同じように軋む。
全力疾走からの急ブレーキをかけながら、相手の刺突を身を翻してかわすが。
修道服の濃紺の服が裂けて、左肩が僅かに裂けて血が散って。
「………ああ、もうっ。」
相手の剣の間合いのギリギリ外にまで。
後ろに目を向ければ噛みつける、そんな場所に留まる。
有利になることは無い。プレッシャーに息が詰まりそうになる。
それでも、二人の姿が見えなくなるまで立ちはだかる心づもり。
■パラドックス >
一歩遅れたがそれでも紙一重で一撃を躱した。
一撃カウンターを見舞うと思ってはいたが飽くまで防戦。
彼女が向ける気は自分より更に向こう側。即ち背後。
『そこまでして護りたいか。それも信仰心の成すものか?』
<クォンタムバースト!スラッシュブレイク!!>
他者の為に身を犠牲にする心意気。
生憎それを、天晴と称賛する気兼ねは怪人にはない。
あるのは無慈悲に、無情に全てを破壊する鉄の心。
ライフルに垂れていたケーブルがベルトに直結し、電子音声が修道院に鳴り響く。
より一層、妖しく蒼く輝いた。
『────全て無意味だな。理想(マボロシ)の淵に沈め』
ならば此方は一切合切の暴力で全てを破壊する。
踏み止まるその場ごと、叩き斬る。
大きく振りかぶり横一線に振り払われるブレード。
間合いの外、だが放たれるのは文字通り"飛ぶ斬撃"。
三日月状となったレーザーがシスターマルレーネに迫りくる。
巨大なエネルギーの本流。
焼けて消えるか、真っ二つか。
その背中にある何もかもごと磨り潰してくれる……!
■マルレーネ > 「さあ、どうしてでしょう。」
自分でも理解が及んでいない。本能というか、染みついた教義が身体を突き動かした。
ああ、もう。私だって逃げたいんですけど。
心中のボヤきが僅かに宙を舞ってひらひらと落ちる。
「………そ、れはちょっと。」
僅かに表情が引きつる。地面を蹴るまでもなく、視界一杯に広がる光がうなりを上げる。
思い切り近づいたせいで、手元に盾になるようなものはない。
そのエネルギーを体で受け止められると信じられるほど、馬鹿でもない。
「……伏せて…っ!!!」
叫ぶしかできなかった。自分は横っ飛びに伏せながら地面を転がってそれを避ける。
流石にこれ以上は、遠くまで行ってくれていることを祈るしかない。
■パラドックス >
長椅子も建物も何もかもを薙ぎ払い、聖女の叫びさえ掻き消す"力"。
暴力である蒼い刃光は止まる事はなく少年とシスターの背中へと迫り
強烈な青白い閃光が爆炎となって響き渡った。
周囲の木っ端をまき散らし、暴風が荒れ狂うその中でさえ
<ショット!>
───────鳴り響く電子音声が、"暴力"は止まらないと知らせてくる。
『フン……』
罪なき無辜の民であっただろうとも怪人には関係ない。
この時代に足をつけるもの全てが敵だ。
ブレード部分が消え、再び本来のライフルの姿となったそれを
無造作に薙ぎ払うと同時に銃口から乱射される青白いエネルギー弾。
鉛の銃弾よりも熱く、全てを焼き爆ぜさせる暴力の乱射。
命だけではない。この建物も、象徴も何もかも。
全てを炎に包まんと放たれた。
■マルレーネ > 「………。」
ああ、最悪を覚悟する。
あれだけ背後を確認していたはずの女は、振り向くことなく膝を立てて立ち上がる。
生死は分からない。届いたのか、怪我をしたのか、それともすでにこの世にいないのか。
何もかも分からないまま、一端思考から切り離す。
「………ああ。」
僅かに声が漏れた。燃え上がる修道院と崩れ落ちる建物。もう信仰の拠り所は何もなかったとはいえ、蹂躙される姿に胸は………
いや、痛まない。それどころではない。
エネルギーの奔流が壁を、地面を、天井をえぐり、崩落する建物。相対していたシスターはその弾丸とがれきを避けながら、必死に建物から逃げ出そうとする。
脆弱な、ほとんど手作りのような建物は見事に燃え上がり、崩れ落ちて。