2024/03/10 のログ
ご案内:「異邦人街 公園」にホロウさんが現れました。
■ホロウ > 異邦人街にひしめく住宅らの間に、ねじ込まれたように設置された公園…と言えるかも少々怪しい、柵で囲まれたベンチと殆ど禿げた芝生。
そのベンチに、三角形の異質な物体を腰に持つ少女が座っていた。
本来なら妙だと注目を引くその物体も、ここではそこまで悪目立ちしていなかった。
お陰でか、昼間の人通りだというのに少女に向けられる視線は瞬き程のものばかりであった。
その少女の視線はというと、手元の一冊の冊子に向けられていた。
「……果たして私に仕事など出来るのでしょうか」
不安げに呟く彼女は『求人』と書かれた表紙の冊子をゆっくりと捲り、1頁ずつ目を通していく。
その視線には不安や心配といった感情が見てとれ、まるで明日を憂うその日暮らしの労働者のようであった。
■ホロウ > 「狭い場所での行動はあまり得意ではないですしね……
出来れば広い場所での勤務が望ましいですが……」
ぶつぶつと呟きながら頁を捲っていく。
仕事を選ぶという初めての経験に思考回路が十全に機能しない。
本来そんな表現方法を持たない筈にも関わらず、少女の眼は定まっていない様にも見えた。
「私に働くという行為は難易度が高すぎるのでしょうか
私には私が働く姿を全くイメージできません」
ぱたんと求人誌を閉じ天を仰ぐ。
観測を得意とし、様々な状況を見てきた筈の自身の脳が自分の姿一つ想像できないとは、滑稽な気がした。
鼻で笑ってしまえるような状況に、普段自由に飛んでいる広い空が、自身の唯一の居場所であると感じられ、どこか不自由を感じる。
「おかしいですね。彼方に居た頃はこんな疑問を抱くことは無かったのですが」
自由とは何なのか考えさせられる。
そう思った。
■ホロウ > 「成熟した人は働く上で勤労の義務を果たしていると言います。
学びの最中にある者は学業を生業とするとも言いますが、私は当てはまらないでしょう
であれば、私も働くのが道理かと思ったのですが、誤りなのでしょうか」
人としての可能性を追う。
その為に最適な手段は人を模倣することであると考えたのだが、人ではないこの身に人の模倣は困難なのだろうか。
そもそも、可能性を追うという行為で他者の模倣を行う事がそもそもの誤りなのか。
分らない。どれも少女には初めての経験であった。
「もっと具体性を伴って行動すべきですね。
根本的に考え直す必要がありそうです」
求人誌を脇に置き、立ち上がる。
「それに、間もなく"春"がやってきます。新しい営みが始まる季節です
それに便乗できれば…何か掴めるかもしれません」
僅かな期待と大きく漠然とした不安を抱き、足を動かす。
流石に人目がある中で飛び立つ訳にはいかないと、人目がないところまで歩き、飛び立つだろう。
ご案内:「異邦人街 公園」からホロウさんが去りました。