2020/07/10 のログ
■マルレーネ > ちょっと疲れていた。 うん、ほんのちょっと。
知らない場所、知らない気候、知らない街、知らない人。
全て旅慣れた彼女にとっては当たり前のものだから、うん、ほんのちょっと。
生きるためのお仕事。
元々ワーカホリックの気のある女だ。働かないと落ち着かない彼女なのだから、やっぱり、ほんのちょっと。
全く知らない学問、今まで聞いたこともないような技術。教育。
学が無いだけで勤勉な彼女のことだ、時間はかかれども理解は及ぶ。今までやらなかった分をやっているだけなのだから、これも、ほんのちょっと。
悩み、恨み、煩悶、祈り、絶望。
こういった場所で話を伺うにあたって、たくさん持ち込まれる感情。お仕事なのだから、それを受け止めるのもまたお仕事。慣れているはずなのだから、これもまた、ほんのちょっと。
ほんのちょっとが、ほんのちょっとずつ積みあがる。
異邦人の親が、残された子供を思って嘆き。
何故こんな目に遭うのかを彼女に問い。
神などいないと吐き捨てる。
そんな泥はもう幾度となく、数えきれないくらい浴びてきたはずなのに。
誰もいない懺悔室で、ぱふん、っとうつ伏せに卓に倒れ。
艶やかな金色の髪が卓に広がり、流れ落ち。
明確に、彼女は疲弊していた。
ご案内:「宗教施設群-修道院」に因幡幸子さんが現れました。
■マルレーネ > なんでだろう。分からない。
分からないまま、意識を半ば手放して。
誰かが来たのを理解しないまま、夢を見る。
何もない場所だった。
鮮やかな緑色の草原と青い空が、どこまでもどこまでも続いている。
凄く気分のいい場所だなあ、なんて思いながらなびく髪の毛を掻き上げようとして。
その手がぽろりと崩れる。
干上がった沼のようなひび割れがその手には広がっていて、動かすたびにぽろり、ぽろりとはがれて落ちる。
思わず悲鳴をあげようとするも、それは声にはならず。
崩れ落ちたそれは地面に落ちる前に、さらりさらりと溶けるように風に消える。
見れば、髪の毛もまたその金色の先の方から、さらりさらりと溶けだして。
まるで全身が風化してしまったかのように、さらり、さらり。
砂にもなれずに消えていく。
何かになりたかったわけでは無いけど。
それでも、ただただ悲しくて。
懺悔室を覗けば、シスターがぽろり、ぽろりと涙を零しながらうなされているのが見えるだろうか。
何かを求めるように手を伸ばしながらも、卓をかり、かりとひっかくだけ。
普段、座学で安らかに寝ちゃっている姿とは全く別の。
■因幡幸子 > 気が付けば明日から前期期末が始まります!
おおテスト!学生ならば何よりも恐れる恐怖の行事!
ただ、そういった文化や概念が薄い方々──異邦人さんに多いのですが、そういった方達は結構のんびりしておられます。
のんびりしておられるので、うっかりテストの日に来なかったりします。
必然、そういった文化や概念に厚い側がフォローをしたりしなかったりするもので、
今回は常世学園二回目の一年生を謳歌しているこの私!因幡幸子が請け負っていたりします。
具体的には連絡事項とかお伝えしたりとか、そういう感じです。
「もしも~し……おや、誰も居ませんね!此方にいらっしゃると聞いたんですが」
学校帰りに立ち寄った修道院。その戸が開き、私の元気良い声がぐわーんと響きます!
幸い何方の姿も見えず咎められる事は無く、
不幸にもマルレーネさんの姿は見えずじまいで項垂れる。
けれども音がしました。音が聴こえてしまいました。
私、耳が良いので。
「………?」
視線を其方に、足が追う。向かう先は小さな小部屋。
ノックをするけれど、返事がないので、失礼を承知で開けました。
「もしも~し」
それから、教室で寝ている生徒を起こす先生のよーに、とまでは解りませんが何気な~く肩を揺さぶり起こそうと。
それでも起きて頂けないなら頬っぺたを抓んで差し上げましょう!
■マルレーネ > 「………ぁ。」
青空が、ゆらんゆらんと揺れる。
揺れながら、静かに声が聞こえる。ほわん、ほわんと世界全体が融解するように消えていって。
頬をつままれて、ふぁえぅ、っと妙な声を出して目を覚ます。
「………ぁ、あ、あれっ!?
す、すいません…………ご、ご相談ですか? お話ならなんでも……!」
慌てて口走りかけて、目の前のうさ耳に目をぱちぱち、っと。
異邦人としては先輩の同級生。うさ耳の幸子さん。
「……え、あ、……あの、幸子さん? 何か………?」
何故ここにいるんだろう、といった疑問符もあり、寝起きの頭はパニック状態。
目を瞬かせて……泣いていることに気が付いて、ごしごしと袖で擦る。
■因幡幸子 > 「いや~おはようございます!寝る時はきちんとベッドで寝ないと駄目ですよ」
「ちゃんと寝ないと疲れも取れませんし、変な夢だって見てしまうかもしれません」
「明日から試験だってのにそれじゃあ後々苦労しますよお~!私みたいに!」
「はい、という訳で幸子さんです!何か?じゃあないですよ~明日からテストですよテ・ス・ト!」
「マルレーネさん、今日学校にいらっしゃらなかったので、色々レジュメとかお渡ししに来ました」
留年生ジョーク!これは決まった。とウィンクと共にお送りするのは諸々の書類。
教室移動のあれこれとかそういうのとか、テストの時間とか諸々です。
「御相談に乗るのも大事ですけど、御自分の事も大事にしないと駄目ですよ」
「あ、気分転換に触ります?」
真っ赤なお目目を細めながらにマルレーネさんの肩を叩いて、それから耳をひょいと差し出すように頭を垂れる。
触ろうとしたら逃げますけど、耳。
■マルレーネ > 「あ、あはは、そうですね。………明日の試験のせいで、眠れなかったのかなー。
今日はちょっとその、ご相談があったので、そちらを優先させてもらってまして。
……あ、ありがとうございます。 ……学が無いって、本当辛いですよねー。」
あはは、と笑いながらその書類を受け取り。
「もちろんです。ちゃんとよく寝てよく食べて、とやっていますよ。」
触ってもいいなら、と手を伸ばせば、その手をひょい、と耳が避けて行って。
もぅ、なんてふくれっ面をして見せて、くすくすと笑う。
■因幡幸子 > 「ふっふっふそう簡単には触らせませんよ……ただー……そうだな……」
多分に私より年長だろうに頬を膨らませる様子が良く似合う。
多分口にすると怒られそうなので、怒られる前にその両頬に手を添えて窄めて脱気させてしまう。ぶしゅー。
「……いや、ですから。人の御相談を受けている場合ではないんじゃないかな~と」
「ええと……確か元の世界でも宗教家でらしたとか。其処でも同じようにしておられたのだと思うんですが」
数度頬を揉むようにしてから手を離し、目線を合わせるようにしゃがむ。
赤い瞳が見上げるように碧眼を視る。
「懺悔、告解。御相談。誰かに告げて楽になりたいと思うこと。当然、受ける側は負荷ですよね」
「様々な人の辛い話を聞く事は、大半の人には向かないものですから」
「宗教家は、その負荷を信仰と教義で受け流す事が出来るのだと思います」
「寄る辺があるから、耐えられる。『私には精神の支柱があるのだから』。無い人の話を受け止めてあげられる」
言葉を一度切る。
「──でも、そういうのも限界ありますよねー。どんなに頑強な建物だって崩れるときゃ崩れます」
「柱だって折れるときゃ折れるんですよ!違法建築はだーめ☆」
そうして、言葉の最後を跳ね上げるようにして視線を上に。
恰も不可視のボールが跳ね上がって、また落ちて来るかのように視線が伴う。
「と、まあ私個人の思うとこ、告白してみたりするんですが──不遜でしょうか。怒られちゃいますかね」
「ただほら~マルレーネさんったらウソが下手糞なもんでついつい。試験の所為で眠れないのに、ちゃんと寝てるってどの口が言うんですか!」
この口ですか!と、立ち上がって、手がもう一度伸びて、唇を抓んでやろうかと思います!
■マルレーネ > ぷしゅー。頬を掌で押されれば、くすくすと笑ってしまって。
毒気を抜くのがうまい人だ。 すっかり抜けてしまえば目を細めて。
「……はい、もともとの世界でも大体似たようなことをしておりました。
ですから、これは慣れたものなんですよ。」
指をぴ、っと立てて微笑みかけ、ウィンク一つしようとして。
ちょっと目が腫れていたのか、うまくできずにこほんと一つ咳払い。
「………。」
相手の言葉がちくりと刺さる。
寄る辺があるから。
私の寄る辺はどこなのかしら。
「………あ、はは。 そうですね。 そうかもしれません。」
へにゃ、っと、ちょっと弱く笑ってしまって。
頬をぷに、っと摘ままれればあぅー、っと変な声が漏れる。
「それでも、私はこれくらいしか、前の場所でもさせて貰えてないので、他のお仕事はできないんですよね。
同じ神様を見ていた人も、まあ、いないわけですし………。」
■因幡幸子 > 「ああ、やっぱり。似たような事なら、慣れていると思えるので出来ますよね、わかります」
「ただ、それ──似たような事であって、同じじゃあないですよね」
「私の世界にも宗教、ありましたよ。此方の世界と同じキリスト教。宗教画の御耳はこうでしたけど」
微笑みと空咳に微笑みを返し己の耳を指す。
そう詳しい訳では無かったんですが、きっと教義もほぼ同一だったのだろうと思います。
少なくとも、目の前で萎れた青菜のようなマルレーネさんのものよりは。
「他のお仕事……ん~、アルバイトとかならあるかとも思いますが……多分ニュアンスが違いますよね」
「宗教的な……信仰と教義、分かち合うお仲間が居ない。なら……いっそ広めてしまうとか、どうです?」
「この世界的には新興宗教って事になるのかもしれませんけど、賛同者、増えると気持ちも楽になるんじゃないかな~と!」
「まあ人が増えるとそれはそれで問題もあるものですが、孤独よりはずっと良いと思いますし」
「私なんかもロケット研究会のお仲間探しですとか、お友達は随時募集──あ、もしよかったら友達どうですかね!」
「今なら先着200名様に明日使える耳より情報があったりなかったりするのも吝かではない可能性が無きにしもあらず!」
信じるもの。の形はその実良く解りません。
私が口にしたのは、私が思う一般論だと思うもの。そこにマルレーネさんの事情は入ってません。斟酌しておりません。
だから怒られるかと思ったのに、怒らない。普通なら、ただのクラスメイト風情に言われたら怒るだろう事に、何も言えない。
言葉の抑揚を落として、ともすれば俯き加減になる彼女の顎をくいっと持ち上げ、仕草だけなら大層気障にしてみせる。異なる世界に落とされた悪夢を誤魔化すように。
とはいえ、いやーこれ、誰かに視られたら滅茶苦茶勘違いされそうです!
■マルレーネ > 「似たようなことでも、同じじゃない。」
それは、とても優しくて、とても残酷な言葉。
くい、と顎を持ち上げられながら、次第にその瞳に涙がじんわりと溜まっていって、ぽろり、ぽろりと流れ落ちる。
「私は、……私は、その、学が、無くて。
ダメなんです。 当たり前に、信じるもの、だって。 ずっと思って、いて。
だから、誰かに、上手く言えない、から。」
ぽろり、ぽろり。
涙が零れる。言葉もとぎれとぎれになって、表情をくしゃくしゃにして。
いつだって笑顔で、明るく、冗談に冗談で返して、男子のセクハラに箒を握り締めて追いかけ、アルバイトで面白い恰好をしてはおどけて見せる彼女の姿はそこには無い。
「分からないんです。分からないんです。
でも、でも、前と同じことを、して、わすれないようにって。
わすれないように、って。」
彼女は、確かに信仰に縋っていた。
ただし、それはもう実態の無い陽炎。
ぼろぼろと泣きながら、目の前の幸子さんに、懺悔室で思いの丈が零れ落ちる。
大声は出さない。
自分の肩を震わせたまま、幸子さんの肩に頭を預ける。
■因幡幸子 > マルレーネさんの青い瞳から涙が溢れる。氾濫するようにとめどなく、止まる事を知らないように。
凭れる彼女の体は、重い。私の軽口なんかじゃ退いてくれない。
「御免なさい、泣かせるつもりはなかったんですけど」
「いやー……その……ただ、分からなくてもいいんじゃないかなあ~って、思うんですよね」
それでも私の口はまだ動く。
「違う世界から来たんですから、そりゃ~違いに困惑する事もあるでしょう」
「私の世界は此処と殆ど変らない所でしたけど、それでも困惑する事はあります」
「とは言え困惑した結果、馴染めない方などは彼方此方に散ってしまわれる事も多々あるそうで」
「その辺の事を考えると私は相当に運が良いんだと思いますし、貴方も運が良いと思います」
凭れるマルレーネさんの顔を上げさせ、目線を交わし、唇をにんまりと歪めて目を細める。
多分に胡散臭い笑顔というものをばっちりお送りし、思わせぶりに言葉を切る。
傍から見たら懺悔室におわします敬虔なシスターを襲撃する不良学生の如し。
傍から見る誰かは居ないのでこれ幸いと、ちょっと悪そうな恰好をしてみせる。
「な・ぜ・な・ら。此処に私が居るからでーす!」
「そう、この私には精神の支柱があるのだから、貴方の言葉も受け止めてあげられるんですよ……」
嘘です。
そんなもんありません。
でも、嘘だって最後まで通せば本当です。空元気だって死ぬまで続けば本物です。
その内容に毒が無いのなら、平穏であるのなら真実は隠蔽されたっていいんです。
「いや~懺悔、してみます?私の耳は一言一句、逃さず聞いちゃえますけど!」
「あ、でも本職じゃないからアドバイスとかはちょっと難しいかもしれないな……えー、あれですか」
「さしずめ言い捨て御免のロバの耳ならぬ兎の耳──ってロバの耳の御話、知ってますかね?」
どうです?と眩い笑顔を作ってみせて問いかけました。
■マルレーネ > 「………すい、ません。」
小さく唇が動く。相手の言葉に心が揺れたのではない。
相手の笑顔に、大きな声に、おどけた仕草に、そしてその身に不相応なくらいのハッタリに。
普段自分が心掛けているその全てを、目の前で披露された。
相手の言葉は本能的に嘘だと分かった。
嘘だってそれを信じ切れば本当。
それが例え真実で無くても、万華鏡は美しくて。
普段の自分と重なって。
またそれが偶然、……己のしていることは、誤っていないと思わせてくれる。
「………懺悔、ですか。
ふ、ふふ、テスト勉強、してないです。」
ぐしり、と袖で涙を拭いて、えへ、と笑って見せる、真っ赤な目をしたシスター。
ぺろ、っと舌を出しておどけて見せた。
■因幡幸子 > 「なぁ~んのこの因幡幸子、常世島2年目のベテランですよベテラン!」
「異邦人同士のよしみという奴です。困った事があったら軽く相談してくれていいんですよ!」
謝るマルレーネさんに対しHAHAHA!と高笑いが修道院に木霊する。
多分、上手く行った……と思います。
頑張れ私、昔話に語られる因幡の白兎は最後に嘘がバレて皮を剥がされてしまいましたが、
私はヒトです。兎じゃない。化け皮は最後まで通してみせましょう!
「ってテスト勉強してねーんですか!明日なんですけど試験!?」
「ええと基本科目くらいは赤点避けないと夏休みがヤベー事になりますよ……」
泣き止んでくれた事に心裡で安堵の息を吐き、表情で恐ろしいものを見たような顔をする。
具体的にはテストの結果が悪かった生徒の末路を予感させるようなもので、真実去年の私が陥った奴です。
見よ、この10人が見たら13人くらいが苦悶の表情と表すだろう顔! かーらーのー
「……夏休み。学校もありませんしね、クラスの皆さんは大体はお友達と遊んだり……帰れる人は里帰りとかします」
「私は帰る場所が無いので島に居ます。そんな時に一緒に遊んだりする相手が地獄の補習三昧だなんて退屈じゃあないですか」
「幸い今日はアルバイトもありませんし?マルレーネさんが良ければ一夜漬けのお手伝い、などなど如何ですかね!」
「ちなみに一夜漬け。というのは一晩で試験を何とか攻略すべく奮闘する行為の事を言います!」
くるりと顔色を変えてウィンクをばちこーん!と、マルレーネさんの真っ赤なお目目にシュート!
■マルレーネ > なんとなく分かる。2年目だからって何も世界は変わらない。
ただそれに慣れるすべを身に着けただけだろう。
「……大丈夫ですよ、こう見えても毎日勉強してますからね。
赤点だけなら避けられ……。多分。」
拳をぎゅ、っと握る。
学は無いがバカではない。そして何より学問を楽しむ心を持つ。
難しい話は眠くなるけど。
「あはは、そうですね。
アルバイト、私もしないといけませんから。
………じゃあ、折角ですし? 一晩がんばりましょうか。」
ウィンクにこちらもウィンクを返して、ぺろ、っと舌を出して笑って見せる。
いつもの彼女に戻れば、がたりっと立ち上がる。
「じゃあ、まずはお茶とか食べ物でも準備しますね!」
……―――雑談がほとんどの夜が始まろうとしている。
■因幡幸子 > 「えっ、毎日勉強してるんです?」
「な~んだそれなら余裕ですよ余裕余裕!むしろ私の方がやばい気してきたな……」
「あとアルバイトも色々ありますからね。ああでもマルレーネさんなら」
この世界のヒトと同じ見た目だし。そんな言葉が滑りそうになって、なんとか止まる。
胸に手を当てて、瞳を瞬く。危ない所でした。
「……マルレーネさんなら大体の奴は大丈夫そうじゃないかなあ~真面目そうだし~」
「あ、それとも実は荒ぶる一面とかあったりします?夜な夜な獲物を求め彷徨う殺人鬼だったりとか」
くっだらない冗談で言葉と身体を流して、立ち上がる彼女に道を開ける。
誰も居なくなった小さな懺悔室を一瞥する。薄暗くて、狭い。趣味じゃないな、と肩を竦める。
「え~いいんですか~というかお家此処だったんですか!そこまでは知らなかったな……」
声に振り返り、素っ頓狂な声を返す。誰かに聞かれたら咎められそうな声。
いつか、そうした御行儀悪が彼女の神様に咎められるなら、それはそれで素敵かもしれませんね。
ご案内:「宗教施設群-修道院」から因幡幸子さんが去りました。
ご案内:「宗教施設群-修道院」からマルレーネさんが去りました。