2020/07/22 のログ
ご案内:「宗教施設群」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
日ノ岡 あかね > 人気のない、廃墟。朽ち果てた教会。
最早、何を奉じていたかも分からない打ち捨てられた教会の片隅で……あかねは歌をうたっていた。
長椅子に座って、賛美歌を。
異国語のそれを朗々と歌いながら、あかねは一人時を待つ。

『デバイス』が『真理』に接続するその時を。

ご案内:「宗教施設群」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 >  
其の囀りは差ながら潺の様な清らかさだと男は思った。
『約束の日』。男は静かに、其の場に現れた。
全てを果たすべく、『真理』を、引いては『知識』のみを彼女たちに渡すために

『死』を斬る。

但し、其の表情に険しさは無い。
其れこそ陽の如き穏やかさ。
何時もの竹刀袋の"中身"を其の手に持ち
男は歌姫の傍へと静かに近寄る。

日ノ岡 あかね > 歌をうたい終え、あかねは溜息を吐く。
長椅子に座り、横目で剱菊の顔を見ながら、あかねは軽く肩を竦める。

「私の傍ばかりじゃ、他の人達は助けられないと思うけど?」

既に『トゥルーバイツ』は『デバイス』を片手に島中に散っている。
こうしている間にも……知らず、人知れぬところで『真理』に挑んでいる隊員も恐らくいるだろう。
余計な犠牲者及び、生徒会介入の口実を与えない為、『デバイス』の半径5m以内に使用者以外の生体反応があれば接続しないセーフティも掛けてある。
故に、もう……『トゥルーバイツ』が一ヵ所に集まる事はもう二度とない。
全員が陽動で、全員が本命。
互いが互いを元より利用する関係。
身を寄せ合う時は終わったのだ。

「大団円なんて今更期待しないほうがいいわよ」

全て、事は済んでいる。
あとは、それぞれが『真理』に挑むだけ。

紫陽花 剱菊 >  
男は静かに二本指を立て、会釈する。
あかねを顔を見やった。

「……同じ場所に何度もいる訳では無い。
 公安の立場も、時には便利なものだ。」

調査の基本は足、自分の場合は雷。
文字通り稲光と成りて島中を駆け巡った。
一人だけの捜査網。……最も全て見つけれたかは怪しい。
……手遅れだった人間ももしかしたらいたかもしれない。
彼女の言葉も尤もだ。
其れでも尚彼女に元についたのは、所詮自分もそう言う人間だと卑しさを感じる。
聞いているかは別として、其れでも尚言葉を続ける。

「……"成すべきを成す"。其れだけの事……。」

思ったよりも彼女の展開は早かった。
まさに蜘蛛の子を散らしたか、策としては良く出来ている。
其れでも尚、そう言い返す。

「……邪魔をしたなら、素直に謝ろう。其の方の状況や如何に?」

日ノ岡 あかね > 「決めた事だろうからもう余計な事は言わないつもりだったけど、ミックスジュースを無理に分離するような真似はしないでね」

乾いた笑いを漏らしながら、あかねは呟く。
男子を窘めるような笑み。
黒い瞳を細めて、あかねは続ける。

「分かってると思うけど、『その辺の方法論』はもう全部『トゥルーサイト』の時に試してるから」

思いつく限り、試せる限りは既に試している。
それで、ダメだった。

「『死』を無理に遠ざけて、『願い』も遠ざかるなら何の意味もないからね……進捗はまずまずよ。コンギクさんは分かってると思うけど、普通の通話デバイスじゃ『私はダメ』だから、専用の使ってるの。多分まだまだ掛かるわ。数日掛かるかも」

あかねの『デバイス』だけは諸事情で特別仕様だ。
既に起動はしているし、接続は今も続けている。
……だが、いつ『真理』に届くかはわからない。

「まぁ、接続しそうになったら『5m離れて』っていうから安心してね」

コロコロ笑う。
まだ、その時ではない。

日ノ岡 あかね >  
 
「もう何人か『挑んで』、『負けた』みたい。報告だけあがってるわ。全員生還は既に達成不能よ」
 
 

日ノ岡 あかね > それだけは……笑いもせずに告げた。
どこか、あかねの瞳は遠くを見つめていた。
その先にあるのは……崩れた天井から見える蒼天。
空は……どこまでも青かった。

日ノ岡 あかね >  
通信端末に、隊員たちの状況がある程度知らされてくる。
断片的な情報。
それ以上はもう、必要ない。
http://guest-land.sakura.ne.jp/tokoyo/pclist/list.cgi?id=369&mode=show
 

紫陽花 剱菊 >  
「……如才無く、つづがなく……承知の上だ……。」

其の上で、言ってみせた。
"自分は上手く行く"、等とは根拠無き虚勢。
其れこそ理屈じゃない男の理屈かもしれない。
彼女に嗤われるかもしれない。
だが、"自分はそうでない"と言ってみせる。

「いみじくも、返す言葉は無い。……が、だとしても"成すべきを成す"。
 ……かつて、"雷神"とまで誹られた男。『真理』、物の怪、相対て相違無し。
 ……遠ざける、のでは無い。"斬る"のだ。無論、初めての試み故、どうなるか手前、想像もつかない。」

飽く迄残すは『願い』のみ。
荒唐無稽、第弐之刃を以てして如何様に通じるかは分からない。
未だ、『トゥルーサイト』と面々を見ても、未だつじつま合わず"視えない"以上何が起こるか分からない。
斬れなければ其れ迄。彼女の言うように、願い事斬れば然もありなん。
ともすれば、見える時は『真理』に接続した瞬間のみ。

「……信じろとは言わない。今更希望を持て、と酷な事は言わない。」

如何にして彼女がどれほどの希望に縋って、
それらに打ちのめされ、自らの力で這いあがってきたか分からない。
そして今、最期の大一番が、此処。
其の報告を聞けば、剱菊の表情も憂いに曇る。

「……左様か……やはり、"視間違い"では無かったか……。」

あの時、動かなかった構成員の一人は……"斬れる"と視界が語っていた。
即ち其れは、生命に非ず、ただの肉。
同じくして、見上げた蒼天の空。
……如何して、今もこうして命を賭したものがいるのに、世界は如何にも残酷なのか。

「……十架に詫びる必要が、出来てしまったな……。」

"絶対は此処に果たされなかった"。
静かに頭を振り、黒糸が揺れる。
が、尚も水底の双眸からは光は失わない。

「……だが、まだ全てが終わった訳では無い。然れど、速さ比べて負けたのは初めてだな……。」

雷神の弐つ名は、そろそろ返上すべきか。

日ノ岡 あかね > 「例え光の速さで動けたって一人じゃ限界があるわよ」

小さく笑う。一人は一人でしかない。
出来ることは常に限られていて、常に一人に出来ることは一人分だけ。
だから、人は群れるのだ。他者に頼るのだ。
時に……『真理』にすらも。

「私達も半端な『真理』に頼ったつもりはないから、『斬る』って発想からして少しズレてると私は思うけどね」

苦言を呈す。
だが、それは自分の為だけではない。
あかねは……真面目な顔で告げた。

「……無茶は、コンギクさんもしないでよね。『自己犠牲』とか言ったら張り倒すわよ」

そう、『真理』に干渉した人間の末路を……あかねは誰よりも良く知っている。
『真理』に挑む邪魔をする誰某を相手にするなら、あかねも此処まで心配はしない。
だが、傍らの彼が『斬ろう』としているのは……どうみても理外の『それ』だ。
『真理』の与える『死』が、ただの『死』であろうはずもない。
それに……触れようというのだ。
あかねが最も恐れた『余計な犠牲』になりかねない。

「私が死んでもそれは私以外に責任なんてないんだけど、アナタが死んだら私の『せい』なんだからね……覚えといて」

きつく拳を握り締めて、あかねは呟いた。

紫陽花 剱菊 >  
「…………。」

言葉を返しはしなかった。
全く以て、其の通りだと思ったからだ。

「……生半可に成るかはさておき、"半端"を渡す気は無い。
 飽く迄試した時は"私がいない時"の話……。
 ……一念、『真理』さえ通す。其れは其方等も同じはず。」

幾らか前回よりは成功率が上がったとはいえ、負け戦も等しい今、藁にも縋るは誰も同じはず。
前回とは状況が違う。虚勢さえ、豪語してみせる。
だが、事実自分と同じ者が来ていたならばかくも、そうでなければ"可能性"は在る。
綺麗事と言われればそれまでだが、だからこそ実現させる、させてみせる。
通信端末とデバイスに意識を傾け、今も"刹那々刻"を辿っている。

そんな時、あかねの言葉途中でその口元に人差し指を立てた。
唇の手前、あの時の意趣返しのようだ。

「……侮らないで頂きたい。私が此処にいるのも、島を駆けるのも、『共に明日(つぎ)を迎える為』だ。
 憐れみでは無い、"成すべきを成す"……元より、民草の為の剣が、我が道理。」

其の顔を見返す眼光は刃の如き鋭さ。
"心外だ"。そう言わんばかりの、僅かな憤りも感じる。

「……君にも、私の他に幾度の『縁』が……他の同志にもきっと、其れは同じ。
 皆が其れを果たす為に、此処にいる。……其れに……。」

ふ、と噴き出す様にはにかんだ。
其れは陽の様に穏やかで、場に不釣り合いな笑顔。

「『約束』が在る。其方との約束の為に、私は『共に明日を生きる』」

屋上で確かに"告げた"、あの約束を。

「だから、『離れはしない』。君も、残った同志も、必ず……。」

「……だから、『繋がった』時は構わず私を『呼んでくれ』」

離れて、と言われて其の程度で離れるはずも無い。
帰る時は皆一緒だ。死に場所を求めている訳では無い。
生憎の見当違いだ。だからこそ、言ってやった。
指を下ろせば、また"流れ"に静かに集中する。
ある程度辺りをつければ、またあかねとは離れねばなるまい。
全く以て、巧妙な仕掛けだ。おかげで、護る立場で在る上に探さねばならないこの身が憎らしい。

日ノ岡 あかね > 嬉しそうに、軽く頬を朱に染めて……あかねは笑った。
勇気付けるために言ってくれている事はわかっている。
そして……彼が本気で言っていることも。
崩れた廃墟の天井から差し込む陽光を受けながら、二人は見つめ合う。
空気中の塵埃が、陽光を照らしてキラキラと輝いた。

「ありがと、コンギクさん……そこまで言ってくれるなら、私も少し気が楽になるわ」

お互いに、譲れないモノがある。
それを彼は理解した上で……踏み止まってくれている。
どちらも無謀に挑むは同じこと。
だからこそ……あかねは、満面の笑みを返す。

「まぁ、でも、呼ばないと来ないなんてつれない事いわないでね? 呼ばなくても来てね。手一杯かもしれないから」

敢えて、冗談めかして、そう嘯いた。
努めて軽い口調で、明るく楽しそうに。
帰る場所を守ってくれるのだから。

「ねぇ、コンギクさん。『もしも』の話をするんだけど」

だから、あかねはそう悪戯っぽく微笑む。
最初、夜に出会った時と同じように。

「『もしも』……世界がずっと夜のままだったら、コンギクさんはどうする?」

小首を傾げる。
笑いながら。

「深い意味はないわ、ただ、夜だけになったらどうするかなって聞いてるだけ。軽く答えて」

あかねは、笑った。

紫陽花 剱菊 >  
共に死地へと向かうはずなのにさながら其の光は『祝福』のように見えた。
日天子の微笑みか。其れとも此れは手向けか。
何であろうと、今は其れを甘んじて受けよう。
あかねの笑顔に、剱菊も少しばかり胸を撫でおろした。

「……此れから挑む相手を考えれば、些事だ。……が、敢えて言うなれば……懸想抱く成れば、当然の事。」

例え其処が底の国か、渦中凶火か。
或いは死地、そうであっても彼女が許す限り、"其の隣"と決めている。
あの時、漸く彼女へと手を伸ばせたあの日から、惹かれ始めた此の想いに変わりはない。
故に…────。

「……嗚呼……必ずや駆け付ける──────。」

何時もの様に飄々と猫の様な魔性さを持つ其の言葉にも
当然と返した。この役割だけは、誰にも渡さない。
必ず、共に帰るのだ、と。

そんな中、聞こえた『もしも』の話。
きっと、"知らなければ"深く悩むことなく答えのかもしれない。
其の質問の意図を理解した。
だからこそ、少しばかり困ったように眉を下げて。

「…………。」

一刻、間を置いた。そして

「……然るに、其れが"今の私"と同じ状態から始まったとすれば……、……。」

「……東雲を、御天道の輝きを求めて如何なる手段も手繰り寄せるだろう。」

「……例え其れが、"理外の物の怪の知恵"で在ろうと、手を伸ばすかもしれない……。」

「其れでも尚叶わねば、『夜を斬る』事に生涯を費やしてしまうだろうな……。」

其れが如何なる夜かは分からない。
だけどきっと、誰しもが朝日を願う。
明けぬ夜に、暗闇に怯え、月星にせせら嗤われる暗闇を嫌う。
明けない夜明けを変えるために、きっと一心不乱に、走るだろう。

「然りとて、……もし、もしも……隣に歩く人間が、何処にもいかぬものがいれば……」

「"私は其れを希望としてしまうかもしれない"。」

「……私は、武士の如き剛毅を手にしていないが故に……。」

……そう、飽く迄例え話。
"例え話に乗せた、今更過ぎる自分の我儘"。
全てが遅いし、彼女の決断を無碍には出来ない。
故に、此の言葉に意味は無く、隙間風にゆるりと消えるのみ。

「……否、済まなんだ。思うよりは真面目に答えてしまった。大事前に、考える事では無かったな……。」

日ノ岡 あかね > 「……」

剱菊の言葉。
その答え。
軽く、と言ったにも関わらず……大真面目に、真摯に、しっかりと考えてくれた彼の言葉。
それを全て、しっかりと……顔を見て、目を見て、あかねは聞き終えて。

「あはははははははははは!!」

笑った。
嬉しそうに、楽しそうに。
うっすらと……目の端に雫を浮かべて。

「すてきな……こたえね、すきよ、そういう、こたえ」

あかねは笑う。
満面の笑み。
陽光を受け、目を輝かせ、頬を紅潮させ……あかねは笑った。
心から、嬉しそうに。
とても、嬉しそうに。

「ありがと、コンギクさん」

あかねは礼を言う。
潤みのある瞳で剱菊を見つめて、少しだけ、たどたどしい口調で。
普段よりいくらか発音の揺れる声。
その声で……いつもより、あどけない顔で笑う。

「『だいじなもの』って、ふえるもんね」

軽く、天を見上げながら、あかねは立ち上がる。
高い高い、空を見上げる。
その果てにある日を見ながら、あかねは歩いていく。

「そろそろ行くわ。私、やること多いから」

ただただ、空を見上げ、惜しむように背を向けて。

「『またね』、コンギクさん」

あかねは、その場を後にする。
上を向いて、歩きながら。

ご案内:「宗教施設群」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
紫陽花 剱菊 >  
「……嗚呼、済まない。」

また、謝った。生真面目な男だ。
本当に真面目に、真摯に、彼女を愛してるからこそ、出た答えだ。

「…………。」

だからこそ、其の目端に見えたものは、見逃さなかった。
慰めるべきか、何か言うべきか。
否、どれでもない。
其れを言うにはまだ、『早い』

「……些事で在る。……私も、増えるだけ増えた。」

あかね以外にも、多くの。
本当に多くの縁が出来た。
其れ等の繋がりが全て、剱菊にとって『大事なもの』だ。
だからこそ、明日を諦めない。

「そうだな……お互い、やる事が多い。」

まだ、『終わってない』
此処からだ。
あかねの背中を、見据えて、小さく頷いた。

「……嗚呼、『また』……。」

必ず、次で出会う。
だからこそ、己も駆け抜ける。

「……ッ……。」

通信端末から、また命の潰える音がする。

「……時間は、無いな……!」

稲玉が響く。
紫電が迸り、蒼天に向かって、飛びぬけた。

ご案内:「宗教施設群」から紫陽花 剱菊さんが去りました。