2020/07/24 のログ
ご案内:「宗教施設群-修道院」にマルレーネさんが現れました。
マルレーネ > 今日は開けるつもりは無かったけど、気が変わる。

「懺悔・相談・悩み・愚痴・文句 何でも聞きます」

なんて看板を掲げて、小さな修道院の扉を開く。
何故だろう、なんとなく。
本当ならばいけないことなんだろうけれど。
誰かの話を聞いて、誰かの力にちょっとでもなりたかった。


「よし、今日は………」

と言っても、ほとんどの場合誰も来ないので。

マルレーネ > マルレーネ女史の日曜大工のコーナーである。

「今日は壊れた柵でも直しますかねえ。」

金槌の扱い方もおおよそ極めた。
のこぎりの使い方も完璧だ。
農業系・技術系の実技だけは何も教えずとも何でもこなせる器用なシスター。

「ああ、雨漏りもありましたっけ。」

うーん、悩ましい。雨漏りってなかなか直すのが難しいのだ。
それでも金属製のはしごを持ってきては、修道院の屋根に上るシスター。

本日も……むしろ、普段よりも更にアクティブ。

マルレーネ > 「っと。」

ずるりと足を滑らせて、ぎゅ、っとはしごを握って事なきを得る。
今日は、ちょびっとだけ集中力を欠いているのかもしれない。

いろいろ、悪い夢を見たから。


「………よーっし! 日が高いうちに終わらせてしまいましょう!」

自分自身を鼓舞するように声をあげて、とんとんとん、っと屋根の上。
屋根の上で雨漏り部分を釘で打って。打って。

ご案内:「宗教施設群-修道院」にアルヴィナ・コトフさんが現れました。
マルレーネ > 「いだっ………」

かつん、っと指を金槌で打って、指を抑えて天井の上で悶絶する。
普段ならば、もうちょっと冷静というか、そんなミスはしないのだけれど。
今日はどうにも、気持ちが欠けている。


「………おおぉうぅ……!!」

天井部分でゴロゴロするシスター。いつだって全力投球だ。

アルヴィナ・コトフ > 「微睡から此方まで、こんにちわ、お姉さん。」

何やら面白そうに地面を転がっている女性を見下ろたのは、唐突に表れた童女。
何の前触れもなく、最初からそこに立っていたかのように。
くすりと微笑んでしゃがんで覗き込んでいる。

「なんの遊びをしているの?」

無邪気な子供が大人の悪戦苦闘を見て楽しんでいる、そんな感じに。
まぁ、天井の上という明らかに可笑しな場所ではあるのだが。

マルレーネ > 「なひゃっ!?」

思わず悲鳴を上げて、びょ、っと飛び上がる。
この感覚、あかねさんか!! なんて思わず身構えてしまうが、それもまた違った顔。
先日、そうやって脅かされた友人なのです。
あら、と何度か瞬きをしながら………相手を見やる。

誰かがいるなら、彼女は意識が定まる。
きゅ、っと世界の焦点が合ったような感覚。

「…ええ、こんにちは、お嬢さん。
 遊び、遊び。………いや、割と私としては真面目にお仕事をしていたつもり、つもりなんだけど………。」

遊んでいた、と言われてしまえばそうかもしれない。
自分で勝手に自省するシスター。

「………っと、違う違う。
 ここは危ないから、下に降りましょう? ええと、………修道院に、何か御用かしら?」

よいしょ、っと視線を合わせるようにして、微笑みかけ。

アルヴィナ・コトフ > 「いいえ? 彼方の海から、此方の夢までずっとお散歩していたの。
 微睡の海から貴方が見えたから、楽しそうに見えたからお邪魔しただけよ?
 あぁ、そうね。 あなたにとっては確かに危ない場所かしら。」

キョロキョロと見まわして、釘やら木材やらを見つけるとニコッとわらう。
それは遊び道具を見つけたという感じで

「お手伝い、してあげるわね?」

まるでパズルをはめ込むかのように、屋根の修繕は自動的に完了されてゆく。
道具が独りでに動いて、透明な大工がそこに一人いるかのように。

「あぶないからおりましょう? かわいい貴方。 私とお話ししてくれる?」

ふわり、と少女は屋根から飛び降りた 

マルレーネ > 「………………」

夢? 夢と言ったのかしら、この子。
一瞬だけ、表情が強張る。

水の音が響いた気がする。血なんてないはずなのに、匂いを感じる。


「………不思議な力をお持ちなんですね?」

目を細めて、にっこりと。
恐怖は無い。ただ、警戒心だけははっきりと。
それでも。

「…そうしましょうか。 かわいい、って言っても何も出ませんよ?」

褒められたら照れた。えへへ。
ゆっくりとはしごで降りて………ちら、とその少女を見る。

悪意、敵意、殺意は感じ取れないけれども………。

アルヴィナ・コトフ > 「? なにか、怖がること、してしまったかしら。
 此方の子供たちは、素直に受け入れてくれたのだけれど。
 あぁ、でもそうね。 あの怯えたあの子は私から目を背けていたかしら。」
 
くすくすとやはり、その機微もまた娯楽であるというように
童女は笑う。
ふわり、と重力が働いていないかのようにゆっくり地面に降り立つ。
少なくとも、異能や魔術といった何かが使われているのだけは確かなのだろう。

「あまり、怖がらないでほしいの、えぇ、彷徨の微睡に、貴方を連れていくつもりはないわ?
 夢を壊してしまっては面白くないでしょう?」

「力? あぁ、ふふ? そうね、貴方にとってはこれは力というの?
 それなら、そうよ? というべきかしら。」

警戒心をのぞかせる女性を仰ぎ見て、それでも意に介していないかのように笑顔は崩れる事は無い。
強張っているというのに気が付くと、少しだけ表情が眩んだが。

それもすぐに無感情な顔に落ち着いた。

「えぇ、此方の夢の人たちは、とても可愛らしいと思うわ。」

彼女はそう告げた。

マルレーネ > 「………。
 ここの、子供たち?」

相手の言葉の意図を測りかねる。
いいや、半ばほど理解はしていても、確認をしなければならないから。
だから、あえてそこをもう一度問いかける。

「怖がってはいませんよ。
 ただ、まるで知っているように話されるので。

 どこかで会っていたかな、と思い出してしまって。」

目を一瞬だけ閉じて、見開いた。
微笑みを向けながら、ゆっくりと向き直る。

「夢の人たち。
 ………というと?」

分かっていても聞かざるを得ない。
この少女の表情が愉悦に歪んでいたなら。
悲し気にうつ向いていたなら、それでも反応はできただろう。

無表情のまますとん、と、まるで垂直に落とされるような言葉。

アルヴィナ・コトフ > 「? えぇと、そうね。 この海、えぇと、違うわね。 これだと理解できないのね。
 人の言葉は難しい、えぇ、こちらの世界、というべき、ね? 」

うすぼんやりとした表情の奥で思考しながら、度の言葉が適切かをはじき出していく。
この身体はそれを知っているはずだ、そう作られたのだから。
向うに寄ってしまう、というのは癖というものだろうか。

「いいえ? 出会うのは初めて、私は微睡からずっと見ているだけ。
 彼方の世界から、此方の世界を微睡の縁から覗いているの。」

つまるところ、童女から見たこの世界は夢の中であると、何とか伝える。
彼女の言う夢、がどういう意味なのかは、おそらくこの女性には理解できないのだろうけど。
理解した時はきっと、この女性が壊れるときだろう。

マルレーネ > 「………違う世界からいらっしゃったんです?」

首を傾げながら、相手に声をかけて。

「………夢の中、なんですか? ………不思議な力ですね。
 とはいえ、折角いらしたんです。
 何か飲まれますか?」

どれだけ理解がしにくい相手であっても、穏やかに微笑みながら中へと案内しつつ。


「……つまるところ、夢の人たちというのは、こちらの世界の人たち、という意味です?」

軽く質問をする。
夢、夢。 夢という言葉に引っ張られて、自分の夢を覗かれたのかと感じたが、それはどうも違うのか。

アルヴィナ・コトフ > 「えぇ、えぇ! そうよ、違う世界から来たの。
 あぁ、これなら通じるのね。 ごめんなさい、可愛い貴方。
 私が微睡の中にいるばかりに、お話しにくかったのね。
 わかろうとする貴方、私は好きよ?」

謝罪の言葉を入れて、カーテシーと呼ばれる姿勢を見せる。
おそらくは、女性を尊重している、とでも言いたいのだろうか。
異界の住人に其れが伝わるかどうか、童女は分かってはいないのだが。

「夢の中……いいえ、それは力ではないわ、私は、そこに在る者。
 私もまた夢の一欠片、夢を覗くために作られた、微睡の器。
 すこし、難しい?」

少しづつ、人間らしい言葉遣いを学んでいく、然しそれは子供が言葉を覚えるよりも恐ろしく早く。

「えぇ、夢の中の人、この世界の人たち、であっているわ。
 あなたは賢い人なのね。」

童女は女性についてゆく、案内されるがままに修道院の中へ。

「ココアはあるかしら、誰かがおいしそうに飲んでいたのを、微睡から見かけたの。」

子供らしく、少しだけ嬉しそうに答えた。

マルレーネ > 「あんまり可愛いとか。言ったって何にも出ませんよー?」

褒められればちょっと照れながら、少しだけ、ほっとしたような様子を見せる。
よかった。 アレは見られていない。

相手がカーテシーを披露するなら、こちらも修道服をちょん、と摘まんで同じように。
片目を閉じてウィンク一つ。
ようやく、己を取り戻した。


「………少しだけ。
 でも、分からない時は聞きますね。 賢いですか?
 かわいいとか賢いとか、褒め上手ー。」

なんて、ころころと笑いながらココアの準備をする。
色々な人を見てきたから、警戒を乗り越えるのもまた早い。
そのせいで怪我もしてきたけれど、今の笑顔は本当の笑顔。

暖かい甘いココアを作れば、二人分を手際よく並べて。

アルヴィナ・コトフ > 「思ったことを、口にしているだけよ? 可愛くて賢い貴方。
 賢くない人は、分からないものは分からないままにするでしょう?
 だから、貴方は賢い人よ?
 叡智はないけれど、賢明であろうとする者。」

褒めるというより、それは感想で、端的な評価。
それでもそれは好ましいものだと、伝えられているのだろうか。

「……心配事でも、あったのかしら、 えぇ、夢に迷い出てしまったような、そんな確認の仕方。」

少しだけ、気になったことを口に出して確認しながら、答えは求めていないという風に首を振った。

「そうね、たしか、個々には名前が必要なのよね。 えぇ、それは学んでいるわ。
 私は、アルヴィナ・コトフ。 よろしくね、可愛い貴方。」

ココアを見るとうれしそうに、手に持とうとして

「あつい」

と少し手を放して、吃驚した。 ココアは、熱を持ったもの。
覚えた。

マルレーネ > 「そうですね、賢くありたいとは思います。
 賢しくはなく、賢く。 そうあるように教わってきましたから。
 きっと、私が育った環境が良かったんでしょう。」

それでも嬉しいですよ、と微笑んで伝えて。

「……こう見えてもお仕事も長いですから、悪い夢の一つや二つ、見ますしね。
 マルレーネ、と申します。 マリーでいいですよ。」

と。

「大丈夫ですか? はい、掌を見せてくださいね。
 ココアは熱いから、ゆっくりと飲みましょう。

 ほら、こうやって持って。 ふー、って。」

感じていた恐れは、熱さを感じさせる言葉で吹き飛んだ。
今目の前にいるこの少女、飲みたいと言った少女の掌をまずは見て。
隣に座って、その手を重ねるようにココアを持って、吐息を吹きかける。
火傷は………掌が痛いとか、ありますか? なんて、掌を重ねながら尋ねつつ。

アルヴィナ・コトフ > 「……。」

手がジンジンと痛む、熱いというのはこういう事なんだな、と確認するように自分の掌を覗いていた。
マリーのする、ココアに息を吹く動作を見て、それが熱を奪うものだと理解する。
少しだけ、不用心にカップに触れた手は赤くなっていた。

「そう、ゆっくり飲むものなのね。」

真似する様に、そっとカップを持って吐息をかける。
マリーの方をちらちらと見ながら、鏡のように。

「ふふ、まるで私が貴方になったみたい。」

ちょこっと笑って、赤くなった手のひらを差し出す。
アルヴィナの手は暖かく、人間と変わりない。
すこし、カップの熱が残ってはいるだろうけれど。

「ふふ、えぇ、マリーくすぐったいわ?」

マルレーネ > 「そう、ゆっくり飲むものですから。
 心を落ち着けて、ゆっくりと。 それこそ、夢が穏やかなものでありますように、と祈りながら。」

自分の真似をする姿を、穏やかな微笑みで見つめて、そうそう、と囁く。

「後でちょっと冷やしましょうね。 本当は急いでだけれど、………多分、そんなにひどいやけどではないと思うから。」

そっとその掌を撫でながら、大丈夫、大丈夫、と声をかけ。

「くすぐったい? それなら安心。 本当にひどいやけどだと、くすぐったさも感じないから。
 ほら、もっとくすぐったがってもいいのよ?」

なーんて、悪戯っぽく舌を出して笑って、その掌を指先で走るようにつつつつー、っと。
ココアのカップを置いたのを確認してから、意地悪もしちゃいます。

アルヴィナ・コトフ > 「夢が、穏やかに……? そう、不思議な表現ね。
 私は、静寂があればそれで、騒がしいのは少し苦手。
 だって壊したくなってしまうわ。」

揺れる水面を見ながら、微睡むように言葉を紡いで。

「そう、この身体は、えっと、そうね。 『怪我』をするのね。
 人間ってとても不便……。」

そう言おうとして、掌に指脚が走ると

「やっ……ふふ、くすぐったいわマリー、うふ、あははっ!」

手を抑えて子供の様にけらけらと笑う。
無邪気ではあるものの、別の何かが混じったような違和感。
でも、今は少しだけそれは薄らいでいる。

マルレーネ > 「私も静寂はとっても好きよ。
 静かでなければ、お祈りがしづらいから。
 騒がしくても、気にならないけれどもね。」

壊したい、という言葉に少しだけ苦笑をする。
ああ、きっと危険なところもあるんだろうな。 ぼんやりとそう理解する。
でも、もうこの子を抱きかかえるようにしてしまっている。

何かあったら、それまでだ。
彼女が腹を括るのは、実力に見合わない程度には早い。

「怪我はしない方がいいのだから。
 気をつけましょうね。」

ころころと笑う姿を見て、こちらもくすくすと笑う。
しばらくすれば意地悪はやめて、向かいに座り直さずに隣でココアをゆっくりと。

悪戯? ………ちょっとだけ、冷めるまでの時間稼ぎ。

アルヴィナ・コトフ > 「ふふ、おかしな人、マリー。
 自分の怪我も、もう少し気にした方がいいわ?
 あんなところで転げて堕ちたら、人は死んでしまうかもしれないのに。」

何とか笑いも収まって、呼吸も戻る。
アルヴィナは今ここに生きているというのは紛れもない事実。
だから怪我もするし、息だって乱れる。

「ねえ、不思議な人。 ねぇマリー? 怖くはないの?
 さっきはあんなに、そう、猫の様に気を逆立てていたのに。
 今は……、えぇ、穏やかな海の様。」

今まで微睡の中で見てきた人の中でも、珍しいと言えるタイプ。
すこし、その真理が気になって尋ねてみる。
もともとこの身体は、知りたいことを知るために作られたのだから。

ココアを再び手に持って。
熱くは無く、暖かくなったソレをゆっくり口に運んだ。
甘い。

「おいしい。」

静かに、小さく呟いた。

マルレーネ > 「大丈夫ですよ、私は神に見守られていますから。
 それに、私は器用なんですよ?」

だから、死ぬときは死ぬだけ。
そんなことは口にしないまま、優しく隣でココアを口にして。

「………そりゃあ、知らないものを見たら怖いと感じるのは人間ですから。

 でも、私の前で熱いと言いましたから。
 そっちの方が大事じゃないですか。 ………大丈夫かどうか、気になり過ぎて、すっかり忘れてしまいました。」

自分のちっぽけな恐怖は、得体も知らない少女の一言で掻き消える。
そんな少女のおいしい、という言葉に、

「………ああ、良かった。」

悪夢の傷跡を、笑顔で埋める。 本当に嬉しそうに頬を綻ばせた。

アルヴィナ・コトフ > 「神に見守られている……。 そう、貴方も『神』を慕う人間なのね。
 でも……。」

きっと、ここにあなたの望む神はいないんじゃないか、そう言いかけて口を綴んだ。
その理由はわからないけれど。
きっとマリーの浮かべる笑顔が消えるだろうという事は分かるし。
それは少しおしいなと思えたから。

「貴方は優しい人ね、マリー。 彷徨の微睡に連れて行きたくなるほどに。
 えぇ、かわいらしくて、ほほえましい。」

少しだけ微笑んで、マリーの瞳をじっと見つめる。
あぁ、この人がずっと傍に居たら、私の微睡も退屈しないのに。

マルレーネ > 「………。」

ああ、もう、その先は分かる。 分かってしまう。
だから、優しい目だけを向けておいた。 それを言わない彼女に感謝をしながら、そっと髪の毛を漉くように撫でて。

「ふふ、私はここでお仕事があるからね。
 どんな夢にいても、きっとやらなきゃいけないから。

 そんなに褒めたって、ダメよ?」

瞳が合えば、ぱち、っとウィンクをして笑いかけ。

「でも、いつでもおいでなさいな。
 夢のお供に。 優しい歌を、優しい物語を聞かせることは得意なんですから。」

たくさんの子供が夢の世界へ行くのを見送ってきた。
それはもう、お昼寝の時間に全員を寝かしつけたりとか。
大変だけれども、幸せな記憶を掘り起こして、表情が更に優しくなる。

アルヴィナ・コトフ > 「……そう、そうね。 きっと、私とあなたの言う夢は、同じなようで、少し違うのだろうけれど。」

私もまた、彼の見る夢の一部だから。
端末の様な自分には、本当の意味で彼女のその優しさは向けられてはいない。
彼女がそのほほ笑みを向けるのは……。
人間らしい思考に、この一瞬で随分と染まってしまった。
この感傷はきっと、彷徨の貴方には必要ない物よね?
どこか、遠くを見据えて彼を想う。

「えぇ、貴方の寝物語は、きっと楽しいのでしょうね。 マリー。」

くすり、と少し笑う。

「ねぇマリー? 私が神様だって言ったら、貴方はなんて言うのかしら?」

それはちょっとした興味本位、別に、信仰してほしいとかいうのではなく。
ちょっとした悪戯の様なもの、ココアの前の、くすぐったさの意趣返し。

マルレーネ > 「そこを理解しきれないのが、本当にその、歯がゆいというか、ごめんなさいね?」

ちょっとだけ申し訳ないような顔で、身体を小さくする。
きっと、自分の大切な部分が理解されないのは寂しい感覚なのだろう。

シスターには、それを想像することしかできない。
少女が、優しさが自分を通り抜けていってしまうような感覚を感じているなんて、到底。


「………」

相手の言葉に、少しだけ言葉を選ぶような数拍が入る。
そして、笑った。

「変わりませんよ。 だって、私ができるおもてなしは、お飲み物をお出しするくらいですもの。 お金も持ち合わせがあんまりなくて。
 でも、きっと神様はそんなことは気に無さらないはずですから?」

例え神であろうと、何であろうと。 手に触れたものが熱いならば、一緒になって息を吹きかける。
ちょっぴり悪いシスターは、相手の言葉に、ぺろり、と舌を出してお答えするのだった。

アルヴィナ・コトフ > 「いいの、いいのよマリー。 あなたが気にすることではないわ。
 子犬の様な顔をしないで? それも可愛いけれど。」

この修道女は、随分を顔がくるくる変わって、退屈しない。
あぁ、本当にずっとそばに置いておきたいくらいに。

「そう、マリーは悪い子ね?
 悪い子だけれど、えぇ。 本当に必要なことは、ちゃんとわかってる。
 私たちが望むのはいつだって。
 あなた達のその敬虔な心だけだもの。」

ココアをゆっくり飲み干して。
舌を出す幼子に微笑みを返してから席を立った。

「では、もう行くわ。 マリー、これ以上いると、本当に浚ってしまいそうだもの。」

クスクスと笑うと、また一礼をして。

「また、微睡の縁で、逢いましょう? 彼方と此方がつながった時に、またいずれ。」

少女、アルヴィナは瞬きの内に消えてしまう。
彼女が夢でないと証明するのは、そこに在る空になったマグカップだけだ。

マルレーネ > 「可愛い可愛いって。 褒められると調子に乗りますよー?」

こっちの世界では木に登るんでしたっけ、なんて考えながら、頬を赤くする。
もう、あんまり褒められると調子が狂う。

「悪い子ですよ。 でも、悪い子だからこうしていられるのもあるんです。
 ………そう言ってもらえると、嬉しい気持ちもありますね。」

望むという言葉の意味次第では。
それが分かっていても、彼女は微笑んだ。信じる、その力は間違っていないと思うから。
思いたいから。

「……あら怖い。ダメですよ、私はここにいるんですから。」

そっと手を振って、一瞬のうちに消えてしまう。
それを見送ってしまえば、目を、ぱちぱちと瞬かせて。

「ええ、またいずれ。
 アルヴィナさんが静かに眠れるよう。」

囁く言葉だけが、宙にふわりと浮かんで、消えた。

ご案内:「宗教施設群-修道院」からアルヴィナ・コトフさんが去りました。
ご案内:「宗教施設群-修道院」からマルレーネさんが去りました。