2020/07/26 のログ
ご案内:「宗教施設群-墓地」にマルレーネさんが現れました。
マルレーネ > さっくり、さくり。
地面をゆっくり掘り進む。

どんな仕事だって、やりたくない仕事というものはある。
誰だって笑顔の方がよろしくて、祝福の方がしたくて。
でも、生まれる人が10いるなら、それは10の死が約束されているわけで。

看取る仕事よりもよっぽど楽だと思う。
けれども、それを喜ぶ人はいない。

それが自らと同じ神を、同じ世界を信じた同志であれば気持ちもまた"共振"させることはできるかもしれない。


この島では、それも難しい。


だから、彼女は一人で手を挙げて、一人で今日もお墓を掘る。

見送るべき家族がいない人を。主だった信仰から外れた人を。
ほんの少しだけ、自分と重ね合わせて。

今日も土を運ぶ。

マルレーネ > 人が亡くなったらしい。それも、多くの人が。
この施設群の中でも、様々な場所で動いている人の姿が見える。
元より、亡くなった人のために祈る合同の催しがあるから、最近はざわついてはいたけれど。

ぱらぱらと、普段よりも多く亡骸が運ばれてくれば、嫌が応にも現実として捉えて対応せざるを得なくなる。

若い……手伝いにきたシスターは泣きだしてしまって、今は休んでいる。
神父は嘆きながら祈っている。


現実として動く身体は一つだけ。
詳しい話を聞いて感情は揺れた。 揺れたけれども。


"やるべきこと"の前に、己の気持ちは無力だ。

マルレーネ > 電話が鳴る。

「………長浜さんも三井さんもですね。 はい、………大丈夫ですよ。
 明日までには準備しておきますから。」

最初の頃は、電話というものに混乱したが、すぐに慣れた。
その受話器から響いてくる言葉を、優しく受け止める。


知り合いが亡くなったことを改めて耳から聞かされて、受話器を置いてから一つだけ吐息をついた。

「………こちらの世界でも、やっぱりありますよね。」

少しだけ、気持ちが浮いていたのはある。
争いの多い世界、自分で自分の身を守り、守れなければ死ぬ世界から。
部屋の隅から隅まで文明が張り巡らされたこちらの世界へ。


こちらは"平和"で、"苦悩"が少ない世界なのでは。
そんなことを、ちょっぴり考えてしまった。

ご案内:「宗教施設群-墓地」からマルレーネさんが去りました。
ご案内:「宗教施設群」に持流 童男さんが現れました。
持流 童男 > 「・・・・・」

何気な立ち寄った、宗教施設郡

昨日はああいう風に立ち直れたと思っていたが、やはりなかなか振り切れてないと自分でも思っているようだ。

「過去に縋るな、今を生き抜け。・・・あぁ畜生。かっこ悪いでござるな。振り切れていないとは。」

少し笑いながらも、空を見上げつつ。笑う。

「山本殿のことを言えないでござるよ。本当に」

感傷に浸りつつ、笑いながらも

「もし・・もしも、とかはわからないでござる。だけど。あぁ畜生。どうしても幸せになった時のこと、あの時できた最良のことを振り返っちまうでござる。」

「無茶はしないし、伽藍堂でないことは分かったでござるし、忘れられない英雄になることは分かったし、思い出せたでござる」

「だけど、ぽっかりと穴が空いちまってるのでござる。心に」

どこか独り言の様に、言いながらも。そうつぶやく、神像に向かいつつ。

「いつかあんたを殴るに行くでござるが、スマヌでござる。ちょっと愚痴を聞いてくだされ。」
笑いながらもどかっとあぐらをかいて

持流 童男 > 「某は、13の世界を救ってきたのでござるし、そこで自分を殺して、こうやって守れないこともたくさんあったでござる。」

「だけど、どうしても割り切れず苦しいのでござる。心が。」

涙を流しながらも語り。愚痴る。

「某は、13の世界で自分をただひたすら押し殺して、そして救ってきた推し達は皆涙を流しながら、某を見送っていたでござる。はは。脆いでござるよな」

笑いつつ、神像に愚痴る。

持流 童男 > 「彼女は・・・多分苦しんでたんでござろうな。だからあんな形で満足そうに逝った。」

だけどと、胸を押さえつけながら嗚咽を漏らしながらも


「それでも、それでも生きてほしかった・・・!!!!!」

「あぁ、そうでござる、これは某のエゴで、勝手な願いで、苦しみたくないから、そう言ってるだけでござる。だけど

それでも、笑ってほしかった・・!!!あんな貼り付けた笑みじゃなく・・!!!」

誰も居ない宗教施設郡に、嗚咽がこだまする。

持流 童男 > 「あぁ・・!!お主のようなくそったれの”神様””は、それが天命とか言うんでござろうが、人間はそう簡単に割り切れないんでござるよ」

ただ愚痴を言う。神像に向かいつつ。

「でも・・もしもお主が、”神様”ってことに苦しんでたんなら、某はお主も救うでござる。」

涙を流しつつ、誰も居ない宗教施設郡に懺悔のような嗚咽を漏らしつつ。

「”神”であることさえ救うなんて傲慢だとか思ってそうでござるが。そうでござる。ヒーローは、強欲なんでござるよ。」


にかっと神像に一人愚痴る。嗚咽を漏らしながらも懺悔をする。

持流 童男 > 「初対面の子だった、名前さえわからなかった。
だけど、それでも、最期に言った名前だけは。絶対に忘れないでござ・・る」

涙を抑えつつ、我慢しながらも。

空を仰ぎ見て、神像に愚痴りつつも、

「『ハナ殿』」

「あー!!もう!!某らしくない!・・・ちょっとスッキリしたでござるよ、神像殿。ありがとうでござる。神様には黙っててくれでござるよ?某いつかお主の本体を殴りに行く英雄でござるから」

にカット神像にわらいつつ。出ていこうと踵を返そうとする。

持流 童男 > まだ、振り切れては居ない、だけど、それでも

この思いは、あの記憶を忘れるなんてできない。

そして胸を晴れて憧れられて忘れられないヒーローになる。

そのためなら無茶だって大丈夫・・無茶はなるべくしないが。

「オタク心を燃やして、死線を越えて、助けるでござるか」

そう言いつつ宗教施設郡を出ていく。

ご案内:「宗教施設群」から持流 童男さんが去りました。
ご案内:「【イベント】常世島共同墓地」に山本 英治さんが現れました。
山本 英治 >  
俺の親友、遠山未来の墓は二つある。
一つは俺たちの地元に遺骨と共に。
一つは名前だけ刻まれてここに。

「よ、未来」

軽く手を上げて。最近、忙しくしていたせいで。
少し、砂埃に塗れてしまったようだ。

「すまないな、すぐ綺麗にするよ」

優しく語りかけながら、丁寧に墓石を掃除する。
水をかけて、柔らかい布で拭って。
もう、それくらいしか親友にしてやれることがないから。

どこまでも憂鬱な青空の下で。蜩の声だけが響いている。

山本 英治 >  
ここに来る途中で、遠山のおじさんと……
未来の父親と会った。
あの日、未来は通り魔に刺された。
その犯人を殺したことで娘の死の真相を知る機会すら奪った俺に。
おじさんは複雑な感情を抱いているらしい。

「未来、すまない……今日はおじさんも来るはずだったんだが」
「俺に怒って帰ってしまったよ………」

寂しそうに笑って、墓石を掃除する。
彼女には謝らなければならないことばかりだ。

「未来も父親に会いたかっただろう?」

未来の両親は。失意を抱えて今も本土で暮らしている。
たまに島に来て墓石を掃除しているらしい。
俺は彼らの絶望と向き合うことを放棄した卑怯者だ。

山本 英治 >  
墓掃除を終えて、線香の用意を始める。
家に仏壇がないし、束を一つ使い切らなければならないのがなかなか難しい。
線香ってのは、すぐに湿ってしまうからな。

「未来、色んなことがあったよ」
「悪友ができた。角鹿建悟って言うんだ」
「カタいところがあるやつで、何度かナンパに連れ出してるんだけど」
「これがまた成功しない………あいつのほうがまだ芽がある」

「小さな女の子の命を守ることができたよ、ニーナっていう子さ」
「彼女……なんか一度死んだことがあるらしくて」
「その辺り、気になるんだけど………事件が忙しくなって聞けてない」

線香に火を灯して。
さぁ、次は樒の準備だ。

ご案内:「【イベント】常世島共同墓地」に日月 輝さんが現れました。
日月 輝 > 青い空。
白い雲。
何処かで蝉が鳴いている。
風に木々が揺れて、少し遠くに潮騒が鳴る。
そういっただけの静かな場所。

墓所は静謐にある。
ただ、景観は他所とは異なるものだった。

様々な人が、様々な様式で、様々な埋葬をされているのだから
和洋折衷なんて言葉に収まる訳も無く、お墓の博物館めいている。

「随分と広いこと……」

言葉の通りに墓所は広くて、色々があった。
訪れる者もいないのか西洋様式の荒れた墓石。
綺麗に整えられ、線香の煙も新たな東洋形式の墓所。
一見すると面妖な木製の墓には、錆一つ浮かない剣が突き立っていたりもする。

「あの、少しお時間宜しいですか?」

目的のものは見つからない。だから、道すがらに見かけた男性に後ろから声をかけた。
入道雲のような髪型が中々キマっている。そんなことも思う。

山本 英治 >  
「羽月さんっていう……研究者の方にお世話になってるよ」
「一度、命も救ってもらった。お礼、言わなきゃいけないなって思ってるよ」
「……なんでか知らないけど、滅多に同じ場所に二人はいない空間に二人でいたんだ」
「それが気になるよ、未来」

樒を切って揃えて、備える。
思ったより、水が足りないかも知れない。

声をかけられて振り返る。
アイマスクをした、少女。
深い緑の髪が美しい。

「はい、なんでしょう」

立ち上がって彼女に微笑みかける。
墓地で見るには、服装が華美だが。
それがかえって異界の存在を思わせる。

日月 輝 > 語り掛けながらに入念に掃除をしている彼。
誠実そうに見えたから声をかけた。それも事実。
思い出を偲んでいるだろう一時に水を差す。それも事実。
迷惑そうな顔だってされようものだけど、果たして彼は親切だった。

「お忙しい所に御免なさい。ええと……推定された方々用の墓所を探しているのだけど」

御存じですか?と首が傾ぐ。そういったものがあるのかも判らないことを訊ねる。
推定された死者。MIA。公安委員会や風紀委員会、治安維持機構の方々にままあること。

あたしがそういった場所を訪うには理由があった。
不可思議な森の中で遭遇した怪異。
清潔感のある黒髪のツーブロックは記憶に残る者。
『西塔 繁』と記された学生証。
夢のようで夢ではない事実に、少しくらいは何某かをしても良いだろうと思ったから。

「……御家族ですか?」

二つ目の問い。
丁寧に整えられつつ墓所は、青年に近しい誰かが眠っているのだろうと思われたから、つい。

山本 英治 >  
彼女の問いに少し悩んで、顔をある方向に向ける。
俺の故郷では墓地で何かを指してはならないことになっている。

「多分、あちらだと思うのですが」
「何分……広い墓地ですので。少しお待ちいただけたら」
「俺が探すのを手伝いますよ」

目の前の墓石を見下ろす。
汗が流れたのでハンカチで拭う。

「親友です」

そう答えられることの、なんと心が救われることだろう。
親友だ。誰に何を言われても、捨てられるはずがない。
遠山未来は、俺の親友なんだ。

墓石には、遠山未来と個人名が刻まれている。
彼女だけの墓。遺骨もないため、永久の孤独がここにはある。

日月 輝 > 彼の向く方を視る。
やはり様々な墓所が在るという事しか判らない。

「わ、本当ですか?すみません助かります。余り墓所には明るくなくて」

あたしはこの島に来て日が浅い。知り合いが眠る墓も無い。
男性の好意は素直にありがたくって、言葉が少し跳ねてしまう。

「……親友。ですか」

それから少しだけ言葉が下がる。
遠山未来と彫られた墓石から眠る故人を推し測ることは出来ない。

「園内を歩き回っている時に色々なお墓を視たのだけど……」
「荒れているものから整えられているものまで色々があって……うん、でも、そうね」
「綺麗なお墓だと思うわ。だから、素敵な方だったんでしょうね」

ただ丁寧に整える誰かが居る。
親友だと言う誰かが居る。
それだけでも、生前の故人の人柄はそれとなく予想する。

山本 英治 >  
蜩が鳴き続けている。
青空の向こうで、太陽は輝いている。
陽光は深く……墓地に影を残している。

「いえ、俺は風紀ですので。困っている人を放ってはおけません」

樒のバランスが悪いかな、と手を伸ばして。
線香の香りが鼻孔をくすぐった。

そして、彼女の言葉に。
どうしてだろう、どこか俺は懐かしいものを感じたんだ。

喋り方も容姿も全然似ていないのに。
彼女の感想には、遠山未来を感じる。

「明るくて、透徹した雰囲気の」
「秋の日差しのような少女でした」

青空を、今は仰いで。
夏の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

日月 輝 > 会話を交えながら墓石に近寄る。上から下に、下から上にと磨かれた所を見て唇を緩める。

「綺麗で可愛らしい。うん、そういった感じ。……ちょっと不躾な言葉かしら。御免なさいね」

そうして悪戯を咎められた子供みたいに舌を出しかけて──止める。
彼が深く呼吸をして、言葉を選んでいるのが解ったからでもあるし、風紀の人だと判ったからでもある。
つまりは、その口から語られる故人は、親友は、そういった物事に巻き込まれた誰かだと予想する。

「……秋かあ。秋、いい季節よね。といってもあたしは全部好きだけど」
「春に闌け、夏に清く、秋に揺れ、冬に耽りてなんとやら」

ハンドバッグから線香とマッチを取り出して、火を点けて墓所の作法に則って拝む。
それが済んだら大柄な彼を見上げて、意地の悪い魔女みたいに唇を曲げた。

「ふふ、遠山さん。今頃誰!?とかびっくりしていたりして」

山本 英治 >  
「そういう感じですよ」
「亜麻色の長髪を……今でも思い出します」

謝らなくていいです、と小さく手を振って。

「良かったな、未来……線香、俺以外からももらえて」
「ははは、風紀という外に出ることの多い委員の関係上」
「春か秋が好きですかね……」

彼女と同期するように、俺も手を合わせる。
死者を想う。でも、いくら想っても。
死んだ人は死に続けるだけ。それがわかっていても、俺は。

「……かも知れませんね」

目を細めると、涙が流れた。
それは自分でもどうしようもなく。

「失礼」

そう先に言って涙を拭った。何度来ても、悲しみは薄れてはくれない。

日月 輝 > 「亜麻色の……」

目隠しの裏で瞳を閉じる。瞼の裏には誰も浮かばない。
けれど、隣で手を合わせる彼は違う。思い出はきっと其処にある。

「初めまして未来さん。あたしは彼の新しいガールフレンドでーす──というのは冗談として」

穏やかな空気。停滞して、心地良い空気を掻き混ぜるように抑揚を跳ねさせて空咳をする。
ハンドバッグから魔術研究科配布している耐熱護符を取り出して、彼に差し出す。

「それじゃあささやかに快適な夏をあたしから。……と言っても普通に配られてましたけど」
「これ、便利ですよ。あたしも今付けてますけれど、汗一つかいていないでしょう?」
「これから案内をお願いしてしまうのだから、御礼のようなもの。みたいな」

全身フリルとリボンだらけの恰好を示すようにして得意顔。
泣いている彼のことなんて見ないフリをする。失礼だなんて言葉も潮騒と蝉の声に紛れた。そういうことにするわ。

「……それで、風紀委員の方なんですよね。それならあたしの話はある意味早いのだけど……」

ハンドバッグから学生証を取り出す。
常世学園の3年生『西塔繁』。清潔感のあるツーブロックの黒髪の男子の写真が載った物を彼に見せる。

「この方、御存じですか?」

あたしが不可思議な森で遭った、怪物と成り果てた誰か──が持っていた学生証だ。

山本 英治 >  
「……そんな冗談、未来が困惑しますって」

いや、喜ぶかな。驚くかな。どうだろう……
俺は未来の全てを理解しているわけではないから。
護符を受け取ると、目を丸くして。

「こんなのあったんですね……俺の今までの苦労は一体」

言いながら喪服のポケットに忍ばせると。
確かに、涼しかった。

「ありがとうございます……あ、俺は英治です。山本英治」

涙をぐしぐしと拭って。
正義を信じて、傷ついてきたけど。
親友の前では、弱さが出てしまう。

差し出された学生証を手に取り、首を左右に振る。

「お力添えできず申し訳ない、知らない方のようです」
「俺も一年ですからね……三年生は、色々と知らなくて…」

最後にもう一度、未来の墓に手を合わせて。

「探すの、手伝いますよ」
「一人より二人が良いし、俺はこの墓地慣れてますし」

そう言って穏やかに笑った。

日月 輝 > 「夏の天気のように判らない。という事でひとつ」

困惑するのかもしれない。
喜ぶのかもしれない。
驚くのかもしれない。
怒るのかも?それも判らないし解らない。
でも、護符を受け取って瞳をまあるくする彼の中に遠山さんは生きている。
そういったことが判る。それはなんとも好ましくて、言葉が揺れる。

「山本さんね。あたしは日月輝。お日様の日にお月様の月でたちもり。それに輝くであきらって読むの」

自己紹介も和やかで、山本さんが知らないと言うなら少しだけ安心もしたわ。
知り合いであったなら、学生証の彼を説明するのに言葉を選ぶ必要があったに違いないのだから。

「助かります。あたしったら運がいいわ。
「ええと、推定死者……MIAと言うのだっけ。そういった方用の合同墓所みたいなところ……なのだけど」

行方不明で、きっともう死んでいる人達を祀る所。
どうしてそんな人間の学生証を?と問われたら些か都合が悪いのは否めない。
ともあれ、今は穏やかに笑う山本さんと一緒に道を歩く。

山本 英治 >  
「これは一本取られました」

未来。俺の親友よ。俺は足掻いているぞ。
お前が生きてって言ったから。俺は生きているぞ。
だから、未来………輝さんの冗談にも、何か言ってくれよ。

「わかりました、輝さん。天体の光のような、素敵な名前ですね」

二人で墓地を歩く。
途中、携帯デバイスを起動しながら。

「あ、ここですね。MIAの合同墓所」

運が良いのか、悪いのか。数十分歩いて見つけた、そこは。
とても寂しい場所だった。とても悲しい場所だった。

日月 輝 > 「ふっふっふ。でしょう。あたしは輝く女。カワイイの体現者……」

墓地を行きながらに言葉が交じる。
褒められたらそれはもう得意気に言葉は踊り、足取りが歌うように回る。

「……じゃなくて、ええと。あたしも一年生なので、山本さんも言葉、改まらずとも大丈夫ですよ」

それを正して言葉を正して山本さんにお伺い。
風紀委員とあって丁寧な方なのかもしれないけれど、同学年であるなら畏まることもないのかなと思うから。

「……此処が、そう」

そんな他愛の無い会話が続いた先は寂し気な所。
荒れ果てているわけじゃあ無い。
誰かが整えた痕跡は確かにある。
でも、それは遠山未来さんのお墓のように、誰かが心を砕いたものではなくて。
そうしなければいけないからそうした。そうしたものを感じさせる所だった。

「沢山、あるのね」

大きな墓石には敬称略で名前が刻まれている。
日本の、海外の、恐らくは異世界と思しきもの。
様々な名前があって、その内の一つにはマジックペンで「まだ生きてる!」と書き殴られていた。
隅には、真新しく彫られた西塔繁の名。

「……ご冥福を祈るべきなのかしら……ねえ、山本さん。これは夢みたいな話で誰にも言っていないんですけど──」

笑わないでくださいね。
そう前置きして口を開く。
先日、自宅の玄関を開けた途端に奇妙な森に紛れ込んだこと。
そこでは人を用いた怪物達が口々に死を願いながらも襲い掛かってきたこと。
あたしは、異能の力でもってそうした森を駆け抜けたこと。
最後は光に触れて、玄関に戻って来たこと。
夢かと思ったけれど、手には差し出した学生証を握っていたこと。
怪物の中に、学生証の彼がいたこと。

「……どう思います?」

隣の山本さんを見上げた。

山本 英治 >  
「そうかい? それじゃ、遠慮なく」
「カワイイを体現するのも大変だ、梅雨明けの夏日に護符を使ってその洋装なのだからね」

並ぶ墓石は、それぞれが悲しみに満ちていた。
仕方がなかった。だから死んだ。
そんな悲痛が目に見て取れる。

「……死んでいい命なんて、あるのかな…」

そんな益体のない言葉でも、口にしなければやってられない。
悲しみを削り出したものが、墓として並んでいるように感じた。

「それは………」

怪物、それは。あの世界だ。
俺と羽月さんがいた。あの世界のことだ。

「俺も同じ場所にいたよ、異能を使って切り抜けたけど」
「多くを殺して、生き残ってしまった……」

手に持っている桶から、西塔繁の墓に水をかけた。

「きっと彼らも。西塔繁さんも。生きて帰ってきたかったんだ」

真新しい墓だから、砂埃を払う程度になるけど。
墓掃除を始める。俺がそうしたいと願ったから。

「でもできなかった」