2020/08/09 のログ
■マルレーネ > こっちの世界には、大いに慣れた。
元より、物事に執着しないように生きてきた女だ。自分の物を持たずに、信仰を広げるという一点のために、目の前の仕事しかしないようにして生きてきた女だ。
ある意味、何も持っていない。
だからこそ、適応も早い。
「………スマホって思ったより高いんですねー。」
遠い目。最近は金銭感覚ですら、おおよそ周囲の人と変わらなくなってきた。
溶け込む速度はかなりのものだ。
ご案内:「宗教施設群-修道院」に九十八 幽さんが現れました。
■九十八 幽 > ふらり ふらりと
刀を携えた影ひとつ 修道院の前に歩み出て
物珍しそうに またどこか懐かしそうに建物を見上げてから
修道院前に人影を見つけ 声を掛ける
「やあ こんにちは
この建物は修道院、という建物で合ってるかしら
前に本で見て知って 一度来てみたかったのだけど」
夏の日差しの下 汗一つかいてない顔に微笑を浮かべ
ゆるりとした口調で 訊ねた相手が以前浜辺で出会った人とは未だ気付いていない様子
■マルレーネ > 「……? ああ、はい、修道院ですよ。
とはいえ、………実際にはこちらの世界の宗教の方が使っていたものを、借り受けている形にはなるんですけどね。
ですから、修道院の歴史などはちょっと分からないんですけど。
ええと、何か御用でしょうか?」
そういえば、浜辺にいた方だな、とは気がついてはいるものの。
とりあえずお仕事はお仕事である。いきなり親し気にべたべたとはせずに、相手の要件をまずは聞こうとする。
■九十八 幽 > 「ああ 良かった
ここに来るまでの間 似たような建物もあったから
間違っていたら失礼かなって 思っていたのだけど」
薄く 穏やかに笑みを口の端に留めたまま
自分が今居る場所こそ 目的の場所と確認して安堵に胸をなで下ろす
それから改めて建物を見上げ そして看板に気付いて
「ええっと その……ひとつ ひとつだけ
相談、というのかな
うん 懺悔も文句も無いから きっと相談なのだろうけど」
静かに顎に指を添え 小さく呻くように考えて
視線をくるりと辺りに這わせ その後シスターへと戻し
「うん 相談
相談をしに来たんだよ」
■マルレーネ > 「大丈夫ですよ、まあ、………ここはそういった施設ばかりですから、見間違えてしまうのも、目的の建物を見失ってしまうのも、私もよくあるのでわかりますけど。」
うんうん、と頷けば、相手の言葉になるほど、と静かにもう一度頷いて。
「では、中へどうぞ。 座っていてくださいね。
お茶は冷たいものでよいでしょうか?」
相手の言葉を聞いては首を傾げ、尋ね返す。
金色の髪をゆらりと揺らして、修道院の扉を開いて。
しばらくすれば、冷たいお茶を持って帰ってくるだろう。
もちろん、注文があれば沿えるだけは沿って。
「…………それで、相談というと……?
ああ、……私はマルレーネ、と申します。 マリーとでも呼んでくださいね。
……浜辺でお伝えしてましたっけね。」
なんて、ぺろりと舌を出して悪戯に笑って。
■九十八 幽 > 「うん よく見れば違うのだけど
なんだかどの建物も 同じに見えてしまってね
きっと 想いとか願いとか そういうのがたくさん置かれてるからだと思うのだけど」
背後を振り返ってから 静かに修道院に向き直る
一度だけ肩に力を籠めて そのまますとんと力を抜いて
「ありがとう お邪魔します……なのかな
申し訳ないけれど こういう所に入るのは初めてだから
何か失礼なことをしてなければ良いのだけど……
ああ うん 冷たいお茶で大丈夫 ありがとう」
修道院の中に足を踏み入れれば 少しだけ表情が硬くなる
ここに座れば良いのだろうかと 長椅子にそっと腰を下ろせば
ぐるぅりと内装を見回して ほぅ と小さく息を吐いて
そうして運ばれて来たお茶を受け取り 少しだけ口元を緩めて
「ありがとう
………──マルレーネ?
嗚呼 本当だ あの時と姿が違うから気が付かなかった
そうか そうなんだ マルレーネは聖職者だって言っていたものね」
名乗られたのは既知の名前 一瞬呆気にとられる様に目の前のシスターを見つめて
唐突にぱしん、と 両の掌を打ち合わせて ぱぁと表情を綻ばせた
■マルレーネ > 「それぞれが自分の信じる神様への思いを込めたものですから、バラバラにもなりますね。
ですけれど、皆さんバラバラなのもわかっていますし、きっと、失礼なんてことはありませんよ。
それに、………私は、そういうのには寛容なんですよ?」
にひ、と笑って舌を出して、お任せください、なんて胸を叩いて見せてしまう。
「………ええ、聖職者ですから。
ですから、こうやって人のお話を聞いたり、畑を耕したり。 いろんなことをして過ごしていますよ。
あ、でも、知らない相手の方が話しやすい、とかあれば、別のシスターを探してきますけど。」
相手が喜んでいるのはなんとなくわかるが、相談事、とあれば喜んでばかりもいられない。
一応は、相手に尋ねて。
■九十八 幽 > 「そう そうなんだね
良かったよ もし何か失礼な事をしてしまったら
どうやって神様に謝れば良いのか 分からなかったから」
ふふ、と笑いながら 口元を指先で隠し
その後お茶で喉を潤して 一息ついてからまた口を開き
「海の家で会った後 他の場所でも見掛けたのだけどね
舞台の上に立っていたね その時も今とも海でとも違う服を着ていたけれど
声を掛けようかと思ったのだけど お芝居中だってお店の人に言われてしまったから」
あれも聖職者のすることのひとつなのかな と笑顔のまま小首を傾げる
「ああ ああ マルレーネで大丈夫だよ
知らない人に話すよりは まだ少しだけ知っている人の方が楽だからね
とは言っても マルレーネの事をよく知っているわけでもないし
マルレーネも知らない事ばかりだろうけれど」
■マルレーネ > 「大切なのは敬う心。大切に思う心。信じていなくても、たくさんの人の信仰を集める神そのものに敬意を払う姿勢。 それがあれば、何も問題はありません。
そんなに神様は心は狭くないですからね。」
なんて、ウィンクをぱちん、と………。
「……何のことかわかりませんけれどいろいろな格好していますからね。
まあ私かどうかもわかりませんし、わすれてしまうのもよいかなって……。
ち、ちなみにどんな格好してましたかね?」
頬が真っ赤になっている。湯気が立っている。忘れたい記憶。
「………ええ、私も知らないことばかりですけれど、それでも話しやすいのであれば。
どんな、お話でしょうか?」
■九十八 幽 > 「敬う心…… 大切に思う、心
なるほど なるほどね
それなら大丈夫 とは言い切れる自信は無いのだけど
でも うん 神様、少しだけお邪魔します」
一度静かに 目蓋を下ろして黙想し
静かに目を開くと 薄く微笑んで
「そうなの そうなんだね
とても大変そうだね 聖職者というのは
ちなみに? ええと 何て言えば良いのだろう
ごめんね 言い表せる言葉が見つからなくて 誘惑がどうのって言っていたお芝居だったと思うのだけど」
困った様に眉尻を下げながら 懸命に言葉を探し始める
そんなに豊富ではない語彙と知識の中から 当時のマルレーネの姿に合致するものを、と
「そうだろうね 知らない事ばかりだもの お互いに
それでも知っている人の方が 少しだけ気が楽なんだ
知らない事は これから知れば良いだけだもの
それで ええと うん 記憶をね、探しているのだけれど」
■マルレーネ > 「…………忘れてくださいね?」
ライダースーツで思い切りファスナーを下げられて、胸の間からおへそまで全部晒すという醜態。
忘れたい記憶だった。首を横に振って、横に振って。
「……え、ええ、ええ。
神様への礼儀さえ忘れなければ、きっと大丈夫。
知らないことばかり………。世の中、知らないことばかりですね。
記憶、ですか?」
相手の言葉に、首を傾げる。
記憶を失っているのだろうか。
■九十八 幽 > 「え あ……うん」
もしかして人違いだったのだろうか と眉をひそめる
首を振るマルレーネにただならぬ気配を感じ こちらは縦に首を振る
忘れてと言われて本当に忘れるほど 器用な事は出来ないのだけれど
「そう 記憶
この島に来る前に 何をしていたのか どこに居たのか
そもそも自分が何者なのか 名前と異邦人……元々居たわけじゃないという事だけはわかるのだけど
それ以外の事が 何もわからなくて
だから 探してみようと
そう思ったのだけれど どこを探せば良いのか それも分からなくって」
自分の頬に手を添えながら 困ったような笑みを作る
■マルレーネ > 「………こほん。」
恥ずかしい姿を思い出しながら、頬に手を当てる。
ぷしゅー、っと頭から湯気が出てしまって。
「………難しい話ですね。
これは、シスターとしてではなく、真面目に私として答えるのですけれど。」
「元々いたわけではなくても、この島にいたのかもしれませんし、関係者かもしれません。
この島の管理をしている立場の人間には、尋ねてみたことは?」
「何も分からないままでは、神に奇跡を祈るのみになってしまいますが。
それでも、自分を知っている人を探す、というところから始めるべきではないでしょうか。」
相手の言葉に真剣な表情になれば、ふわりとしたものではなく、目の前で実際にできること、に焦点を当てた対応をするシスター。
■九十八 幽 > 「マルレーネ……?
ええと その お茶冷たいから 良ければ」
自分の所為でとは夢にも思わず ただ顔に熱が篭ったシスターへとお茶を差し出す幽
「難しかったかな そうかも ごめんねマルレーネ
……ふん、ふん
この島を 管理している人……?
ええと どこに行けば会えるのだろう」
それは盲点だったと 考え込む様に視線を床へと落とす
そしてそのまま目を瞑り 暫くのあいだ黙りこくって
「──自分をね 知っている人を探してはみたのだけど
初めて会う人は やっぱり初めて会う人だったから
それでもやっぱり 地道に探すしか無いのだろうね
そうだね そうとも
まずは記憶よりも 九十八 幽を知っている人を探さないとだね」
ありがとう と穏やかに微笑んで
真っ直ぐに マルレーネを見つめて
■マルレーネ > 「………大丈夫大丈夫。
この程度で負けないですから。」
あのライダースーツはちゃんとしまってある。よかったら着てくださいね、と言われて一応受け取っている。
「………学園に行って、教師に尋ねれば少しは筋道が分かるかもしれません。
その時には、必ず記憶が無い、と伝えてくださいね。
自分の足で探すのには限界があります。
何より、この島の人は何割かが帰省などで帰っている、と聞きます。
今できることは、一人一人に出会って話を聞くことでは無く、折角大きな組織のある島なのです。それに頼れるところは頼るべきではないでしょうか。
私の元居た世界でも、しっかりとした国があるのならば、治安維持は基本は国が担当していましたよ。 全員が自分でやろうとしていたら収拾がつきませんからね。」
丁寧に説明をしながら、お茶をそっと傾けて、微笑む。
■九十八 幽 > 「そう それなら良いのだけど
でも、なんだか 暑そうだったから」
飲みたかったら言ってね とさほど減ってもいないお茶を手元に戻す
「教師…… 先生、だね
分かった 聞いてみるよ 何かわかれば良いのだけど
記憶が無くても 学校生活は送れたから
あまり困らないのかな とも思ったのだけどね
やっぱり自分が何者なのか 気になってしまって」
うふふ、と笑いながら お茶をひとくち、喉を潤して
やっぱり人に話してみるものだね と笑顔で呟いた
「うん ひとりで考えてみるよりもよっぽど良いね」
■マルレーネ > 「大丈夫大丈夫。大丈夫ですよ。」
汗を少しだけ拭って、ふふふ、と遠い目。
ライダースーツを今後着ることはあるのだろうか。
「………ええ、困るかどうかは、取り戻してから考えても悪くはないものです。
無理はせず、それでも着実に足を踏み出して行った方がよい、かもしれません。
何より、思い出したくない、と思い出すこともある話ですからね。
動くことで、思い出すべきなのかも、分かってくることだと思います。」
こほん、と咳払いをして。
「それならばよかったです。 こうしてお話を聞く以上、少しでもプラスになりたいと思ってしまうものですからね。」
なんて、ウィンクをして見せた。
■九十八 幽 > 「それなら 信じるよ
マルレーネが大丈夫と言うのだから きっと大丈夫なのだろうね」
それでも 心配なのは心配なのだけれど
そう言いたげに 眉を八の字にしながらも頷く幽
「ふふ、思い出してみたら 世界を滅ぼす悪い人だったりしたらどうしようね
もしかしたら 思い出すべきではないのかもしれないけれど
それでも それでもね やっぱり思い出したいんだ
思い出したいというより 忘れたままでいるのは良くないんじゃないかって」
ぽつり ぽつり 自分の中にある不確かな物を 言葉にして掬い上げる
少しだけすっきりした顔で微笑むと そうだ と目を輝かせて
「ねえ マルレーネ
マルレーネさえ良ければ なのだけれど
うん マルレーネさえ良ければ 友達になってくれないかな?」
じっ、と期待をするように マルレーネの碧の瞳を見つめる深い深い藍の瞳
■マルレーネ > 「………それは、ありうる話。
良い人、悪い人、それは生まれながらに決まるものではありません、ほとんどの場合は。
貴方は思い出すならば、自分がそういう人間であるかどうかを見極める責任があると思ってほしい。
それでも、思い出すのを止めることは私にはできません。
……無理はせずに、それでも着実に。」
「………ええと、それはそれで構いませんけど。
その場合は、記憶を取り戻したら改めて、お話をさせてくださいね?
その瞳を真正面から見つめ返して、にっこりと微笑んで鼻をつん、と触れるシスター。
■九十八 幽 > 「──そう、そっか そうだね
見極める責任 とても重たそうだね 重くなければならないのだろうけど
もし思い出して 悪い人だったら
あの時に見た ぴっちりした服を着なければならないのかしら……」
うむう、うむうと唸りながら 本人は至って真剣に悩み始める
「うん うん もちろんだとも!
思い出せたら すぐにマルレーネに話しに来るとも
ああ でももし悪い人で マルレーネを攫ったりしてしまったらどうしよう」
ぱぁっと表情が明るくなったのも束の間 今度は沈痛な面持ちで
それほど大きくは無いながらも 感情の波を顔にありありと表して
■マルレーネ > 「着なくてもいいです。っていうかあれは私に合わせて選んでくれたので、合うかどうかはわかりませんよ?」
首を傾げる。そういえば恰好についても全く見ていなかったから、似合うかどうかも分からない。
「………ふふふ、私はこう見えて、戦いについては慣れたもの。
それこそ私をさらうなら、そのまま投げ飛ばされる覚悟くらいはしてもらわなければいけません。
むしろ、攫えるくらいの強い方であれば、見せに来てくださいな。
私はそう簡単には負けませんよ?」
なんて、明るくウィンクを返して笑いかける。
■九十八 幽 > 「そっか そうなんだ
マルレーネの為の服だったんだね とても素敵だったと思う
ごめんね 遠くから見ていたから
近くで見ていれば もっと詳しく感想が言えたと思うのだけど」
しゅん、と少しだけ気落ちしつつ
「そうなんだ マルレーネ、強いんだね
それなら安心かな 安心かも
刀なんて持ってはいるけれど 強いのか弱いのか分からないからね
うん マルレーネが強いなら 攫わずにお話しが出来そう」
ウィンクへとにっこりと 微笑みを返しつつ
「その片目をぱちりとするの とっても似合っていて素敵だと思うよ
ああそうだ 改めて 相談を受けてくれてありがとうマルレーネ
凄く 凄く助かったよ」
お茶をそっと長椅子の横に置いて 静かに両腕を広げる
感謝のハグを求めながら 小さく首を傾げてみたり
■マルレーネ > 「素敵でしたかね………?」
褒められれば、少しだけ思いなおす。
似合っているのならもう一度着てもいいかもしれない。
「い、いいんです、いいんです思い出さなくて。 何、気にする必要はありませんよ。」
「ふふ、そんなに素敵と言われても、お茶以上のものは出ませんよー?
大丈夫ですよ、ここはそれをする場所です。
相談をする場所で、相談をしたんですから、何も気にする必要はありません。」
とはいえ、ずーっと気にしてもいなかったが、服装や見た目すらよく分からない相手といきなりハグはできない。
ちょっとばかり眺めながら、頭をぽんぽん、と撫でておいた。
■九十八 幽 > 「うん とても……という程では 無かったかもしれないけど
あの場に居る人たちも 大半はマルレーネを見ていたようだから
近くて見ても きっと素敵だったのだろうね」
ゆっくりと頷いてから 静かに目を閉じて
きっと自分が同じ格好になっても ああも人の目を引くことは出来ないのだろうと
「素敵だなと思ったから そう言ってるだけなのだけど
そう そうだね そういう場所だって聞いたから来たのだった
でも ありがとう 助かったのは本当だから
そっか だからこういう場所があるのだね」
頭を撫でられれば 静かに腕を下ろして
再びお茶を手に取ると もう一度修道院の内装を見回してから
「うん あんまり長居しちゃよろしくないかもしれないし
夜を過ごす場所も探さないとだから そろそろ出た方が良いのかもね」
そう呟くと静かに腰を上げて すらりと立ち上がると んん、と伸びをひとつ
黒いサマーニットと細いデニムのパンツ姿の 夕刻に延びる影法師のような青年は
静かにお茶のグラスを シスターへと差し出した
「お茶、ありがとう また ……来ても良いかな?」
■マルレーネ > 「あ、あはは………まあ、わ、私は忘れてしまいましたけどね!」
腕を組んで、視線を逸らす。
ライダースーツかあ、似合うのかしらん。 そんな思考が一瞬だけよぎって。
「そういうことです。 ここは一つの教義には既に拠らぬ場所。
どんな方でも歓迎していますから、いつだって来てもらって構いません。」
相手がグラスを返すなら、それを受け取って、少しだけ笑って。
「また相談ごとができれば、いつだってかまいませんよ?」
にひ、と笑ってもう一度素敵と言われたウィンクをした。
■九十八 幽 > 「そっか それは残念 素敵だったのにね」
小さく肩を竦めて まあでも忘れてしまったのなら仕方がないかと思い直し
「うん ありがとう
また来るね 今日は話を聞いて貰ったから……
今度は、そうだね マルレーネの話を聞かせて欲しいな」
ゆったりと少しだけ 首を斜めに傾けて
穏やかな微笑みで 目の前のシスターを見る
「それじゃあ さようならマルレーネ」
すらりと腰から折れる様に お辞儀をひとつ
そしてくるりとその場で踵を返し 修道院の出入り口へと歩いて往く幽なのだった
ご案内:「宗教施設群-修道院」からマルレーネさんが去りました。
ご案内:「宗教施設群-修道院」から九十八 幽さんが去りました。
ご案内:「【イベント】常世島共同墓地」に簸川旭さんが現れました。
■簸川旭 >
この共同墓地に眠る誰かを知っているわけではない。
常世島で目覚めてからは、幸運といっていいのか知人の死に遭遇したことはなかった。
元より、誰かと話すようになったのも個々最近のことで。
だから、ここに眠る者たちのことは知らない。
幾つもの墓標が並ぶ様を見ても、悲しみは湧いてこない。
なのに、どうしてこのような場所に来ているのか。
黒い喪服のようなスーツに身を包み、空が黄昏色に染まる時に。
――理由は簡単だ。墓を作りに来たのである。
明らかに寝不足と思われる不健康な表情で、痩せた体の青年が慰霊祭も間もなく終わろうとする日に共同墓地にやってきていた。
幾つもの墓石が並ぶ中、彼は一つの細長い石を眺めていた。
墓石だ。日本でよく見られる形のそれである。
その墓石に線香を備え、青年は静かに手を合わせる。