2020/08/13 のログ
ご案内:「常世島共同墓地」に月夜見 真琴さんが現れました。
月夜見 真琴 >  
昼過ぎだというのに、時の感覚を狂わせる濁った空。
先刻までの快晴が嘘のように驟雨が打ち付けている。
揺れる黒衣の裾は、たっぷりとした白い髪とともに、
一歩の時ごとに、雨水を含んでそのたたずまいを変えてゆく。

「雨女、の自覚はないのだが――」

石畳の上に、足をそっとつける。
それよりも強い勢いで、空から落ちてきた水が跳ねている。

「帰れと言われているような気がしてしまうな、ふふ」

胸中に花束。白黒の女の唇と、
抱えるそれだけ、鈍色の空の下で鮮やかに色づいていた。

月夜見 真琴 >  
風がないのが救いだった。
しばらく足を進めて、たどり着いた墓前に花を手向ける。
雨に撃たれて、包装紙がばちばちと音をたてた。

「――いやあ」

濡れた髪をかきあげながら、
何か可笑しくなってしまって、唇が三日月をえがく。

「まあ、いいさ」

黄色い百合が備えられた墓標は、
何も言わなかった。喋らない死者のほうが多い筈である。

月夜見 真琴 >  
「久々に――あのひとと話せたよ。少しの間だったが。
 それだけでも温泉に行った収穫はあったな。
 まあ予想通り問題は起こってしまったし、今後は弁えよう」

懐かしげに語りかける。
墓石の頭頂より滑り落ちる新しい雨。
それが独り言を、外から覆い隠す。

「最近はいろいろな者にあう。
 なかなかに良い刺激がもらえている。
 この夏はなかなかのものが出来上がりそうだ――間に合うかな」

月夜見 真琴 >  
「本当に、不思議なものだ」

溜め息は僅かに翳った。

「久々に嘘を責められたが」

雨が目に入る。ぎゅっと目を瞑り首を振った。

「誰も彼もが」

はあ、と溜め息。
そうだろう、と問うても、
応えるものはいなかった。

「      」

空を見上げた。
曇天は涙を流し続け、
その先に綺羅星など見られるわけもなく。

月夜見 真琴 >  
「暴いてしまおうか、見つめていようか。
 まあ、やつがれには選ぶ権利もない、が」

大きい雨粒が黄色い花弁を打って、
打ち据えて、歪に曲がる。
それを見下ろすかんばせに、笑みが浮かぶ。

「恨み言のひとつくらいは言いたくもなる、さ――"あいつ"に」

ばつん。
ひときわ強く雨が当たり、その花弁がひしゃげた。
それを見送り、踵を返す。あがるころにはめちゃくちゃになっていそうだ。

「どうしてくれようかな」

あるいはどうするべきだろう。
止む気配のない雨のなか、愉快げな鼻歌が尾を引いて、墓地を後にする。

ご案内:「常世島共同墓地」から月夜見 真琴さんが去りました。
ご案内:「宗教施設群『破壊神の社』」に焔誼迦具楽さんが現れました。
焔誼迦具楽 >  
 プールを建造したはいいものの、経営は芳しくない。
 いや、問い合わせは来るし、利用者もいるのだけれど。
 いかんせん、人手が足りない。

 受付対応に電話対応、さらに清掃と。
 清掃は自分でやるのが一番早くて良いのだが、問題は受付と電話だ。
 その辺りの事務業務を他人に任せたい。

「やっぱりアルバイトが必要よねー。
 なんかこう、ふらっと暇そうなやつ来ないかしら」

 そんな都合よく暇人が、こんな場所にやって来るはずもなく。
 庭先の社の横でうなだれるのだ。

「ねえ蒼穹ぁ、あんた、神様なんだからなんかご利益とかないのー?」

 なんて、社に向けてぼやいてみるが。
 祀られているのは正真正銘の破壊神。
 商売にまつわるご利益などこれっぽちもなさそうだった。

焔誼迦具楽 >  
 というか、破壊神のご利益っていったい何なのだろう。
 たしか分類的には邪神と言っていた気がする。
 邪神で、破壊神とか、信仰したら何が起きるんだろうか。

「なんか、危ない人たちに信仰されそうよね。
 なんで商売繁盛のご利益ないのかなー」

 破壊神に無茶を言うのだった。
 ちなみに、迦具楽自身は火の神の残滓である。
 別の混じり物もあるらしいのはわかっているが、そっちはよくわからない。

 いずれにせよ、自分も友人も、商売とはまったく縁がない神格だった。

「最悪、こう、お金を造っちゃうのも――ああダメか、さすがに番号わかんないもんなぁ。
 お金ほしーなー。
 楽してお金がほしーなー」

 実に怠惰な発言だった。

焔誼迦具楽 >  
 いやいや、確かにお金は欲しいのだけれど。
 今は現実的に人手の方が欲しかったはず。
 なんなら、各種対応だけでなく、清掃も任せられるすごいやつが。

「いやそんなマルチな人材、こんな場所にこないでしょ。
 アルバイトなんかやってないって。
 でもなーこのままだと、狩りに行くのも行きづらいしなー」

 ここ数日、日課の一つ、転移荒野や青垣山での狩猟活動ができていないのだ。
 それはつまり、本来の貴重な収入源が減ってしまうわけである。
 本末転倒も良いところなのでは?

「あーもー。
 誰か暇人とかいないのー?
 都合よく、鉄人アルバイターみたいな人とか、いてくれてもいいじゃないー」

 社に寄りかかり(敬うも祀るもあったもんじゃねえ)、都合のいい願望を漏らしていた。

焔誼迦具楽 >  
「時給は悪くないはずなんだけどなー。
 この辺の相場よりは高いはずだし。
 やっぱりそもそも、場所がいまいちなのかなぁ」

 社に項垂れて肘をつき(罰当たりなんだよなあ)、暇人でも通りかかってくれないかと目の前の通りをぼんやり眺める。
 しかし、そんな都合よく暇人が現れるはずはないのだ。
 というかそもそも、ここ、宗教施設群なのである。

 いるのは大抵、宗教家か信者の皆様である。
 遊びにも観光にも、普通のフリーターや学生はそうやってこないのだ。
 ばらまいたチラシに効果があればいいなあと思いつつも、客は来れど働き手は来ず。

焔誼迦具楽 >  
「うーん、まいったなぁ。
 客入りは想像より辛うじてマシだけど、このままだと私が面倒になってやめちゃいそう。
 人任せにして楽したいのになぁ」

 今なら連絡一つ、そして一言「働きたい」と言ってくれれば即採用なのだけれど。
 その一言が貰えない悲しみである。

「はあ――仕方ない。
 まだしばらくは我慢しますかあ。
 うんうん、せめて今月中くらいはね、うん」

 そう自分に言い聞かせつつ。
 働きたいという連絡が来るのを期待しながら、日課の菜園弄りに戻っていく。

焔誼迦具楽 >  
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ご案内:「宗教施設群『破壊神の社』」から焔誼迦具楽さんが去りました。