2020/09/11 のログ
ご案内:「宗教施設群-とある修道院」にオダ・エルネストさんが現れました。
■オダ・エルネスト >
月の満ち欠けは新月へと向かう下弦の時を越えて一夜。
影は濃くなり、闇は深まり光は薄れる。
草木も眠る丑三つ時ともなれば、この周辺もまた静けさの中にある。
修道院の中は幾本もの蝋燭の火によって照らされている。
いつも談話に使われている場所にテーブルも椅子もなく、魔法陣が描かれている。
赤い蝋で幾何学模様のように描かれた、それは正しく理によって成り立つ術である。
「さあ、夜闇を開こう――」
祭服の男が一人、そこに顕れて――
黒川装丁の『魔導書』を 開いた 。
開けた。
ページが風もなく、揺れて、捲れていく。
――世界各地に散らばる奇っ怪な伝説の数々の記録が綴られた内容、が過去の伝承のはずが《大変容》の記録と酷似しているようで。
――"悪夢の国"の噺ついての記述があり、
――複数の秘密結社における儀式の様式が語れているが内容は誤訳が多く真実成りえない。
――南米奥地にある遺跡にまつわる伝説、
――"漆黒石版"に刻まされた内容の写しがそこにあり、
――赤い目、――角のある男、――黒の仔山羊、――知られざるもの、――凍てつく荒野、――ユニコーンの角。
――そして、無題の章。――
本が開いた瞬間に、周囲『視界』全て潰される。
―――特異点がここに作り上げられる。
■オダ・エルネスト > 蝋燭の灯だけが、この世界を照らすもの。
「"咒いを執行する/願いを叶えよ"」
黒い祭服に宙に浮く魔導書の主である『男』は、手に何かを持っていた。
白い皿。
その上に、修道院の中のあらゆる場所からかき集め、筆の毛のようにまとめられた金色の髪の毛。
ここにいるはずの主が不在だと分かった時から集め始めたそれはノイズが多かった。
彼女と同じような金色の毛は幾つかあり、魔力の残滓を見分けて、こうして作り上げた。
ノイズやその他の人の髪の毛は、本の上へ捧げれば―――バタン、と一度音を大きく立てて魔導書は閉じる。
ゆっくりと、本が開くと置いていたはずの髪の毛は全て消えている。
それに、丁度これを行うには時間が良かった。
満月を終え、下弦よりも月が欠けた今この時間こそが最も適切。
悪魔が未だ目を開ききっていない今がベスト。
白い皿を魔法陣の中央へと置くと両手を広げて天を仰ぐ。
「"今こそ、我が『詛い/悲願』へ手をのばす"」
言霊/呪術の声高らかに紡がれると魔法陣が赤黒く煌めき、生きたようにそれが『伸びて』皿の上の髪の毛をあっという間に赤が包み込む。
―――ここに呪術は、成る。
■オダ・エルネスト >
魔法陣から伸びた赤はやがて切り離され、そこにあった髪の毛代わりに白い皿の上に鎮座する。
男が手を伸ばせば、皿の上にあった赤いソレは男の手の上に浮く。
「" "」
呪いを口にする。
そして、赤いその呪術を男は口の中へと飲み込む。
人を呪う際には、呪いが反って来る。
これはその前払い。
毒を喰らう。
闇を喰らう。
悪を喰らう。
それは我が身を焦がす、苛烈な毒。
それは我が平穏を隠す、冷たい闇。
それは我が精神を蝕む、狂気の悪。
しかし、それらはこの男には特になんでもないようなものであった。
「"示せ"」
ここに術と対価は整い、男に求めたモノが与えられる。
■オダ・エルネスト >
特に周囲に変化はない。
――男の視界/脳裏はその限りではない。
修道院の壁、その四方八方に光が見える。
――呪術の対象となった相手がいる先、と強い痕跡が残る方角に光が見える。
近くに寄り過ぎると見えなくなる光だが、
こうして広範囲に探索を行う際は便利な呪術。
ただし、こうして精度が悪いのは、対象に対しての負の感情の無さが引き起こした結果だ。
落第街の方角、歓楽街、学生街、青垣山、海の方。
落第街は施療院だろうか。
歓楽街はバイト先かなにかか。
学生街は普通に授業を受けたりか。
青垣山は先日の温泉のか、これは自分も知っているから色濃く光っている。
海の方は、夏のバーベキューだろう。
あれだけ多くの人との繋がりがあった場所――色濃く残っているのは当然だろう。
■オダ・エルネスト > ―――――バタン、と大きな音を立てて本が閉じる。
蝋燭の火はすべて消える。
点滅するようにして、最低限備え付けられた蛍光灯に光が灯る。
いつの間にか魔法陣は消えて、あれだけ多くあった蝋燭は一本残らず消えている。
■オダ・エルネスト >
本当は何もせずにただここで、留守番だけしているつもりだった。
でも、先日であった少女が余りにも必死だったから、力を貸したくなった。
輝きの名を持つ少女の持つ煌めきに、心揺れ動かされた。
「私は我慢弱く、落ち着きがないな――本当に、な」
ドッと疲れたように床に腰掛ける。
「ふぅ……」
と懐から女性モノのパンツを取り出して一息ついた。
■オダ・エルネスト >
特別派手でも地味でもなく、ちょっと使い古したかなって感じに草臥れて見える白のパンティだ。
割と貧乏性なのかこうして古い下着を残している。
それに結構使いまわしたサラシ。
洗剤の匂いか本人の体臭か分からないくらいに使い込まれたソレラ。
女性が使う物だっけあって手触りはいい。
多分、この下着は学園に来てすぐに買ったものなのか、歴史を感じる。
―――故に、素材にするには丁度いい。
■オダ・エルネスト > 「《術具:錬成》」
両手に握ったパンツとサラシが術式を載せた言霊を唱えれば、
光の粒子に解ける。
「―――《形成》」
光は一つの形を与えられる。
細長い三角錐の透き通った結晶が作り出される。
恨みを抱いていない自分では呪術の精度は期待できないのは理解していた。
で、あれば。 これだ。
「ダウジング・ペンデュラム」
触媒にしたモノと『縁』の深い人物を探すための魔道具。
しかし、その探査範囲が狭いのが難点だ。
そして、作り出したコレはオダの魔力でしか使えない欠陥品。
専門分野ではないならこんなものだ。
■オダ・エルネスト >
「全く……人様に心配されるとは戦友も罪作りだな」
作り上げたダウジング・ペンデュラムを懐へ仕舞う。
近くの風紀の駐在所に修道院の管理者が不在なので、巡回を強化してもらうように頼もうだとか。
どこから、探し歩こうかとかいつの間にか、上がってきた陽の光が修道院の中に注がれながら、考える。
取り敢えず、朝日の方角を見つめて立ち上がる。
「――今日から私は魔導探偵だ!」
私も微力ながらマリーの探索への参加と行動を開始しよう。
覚悟の準備をしていろ、私が往こう。
ご案内:「宗教施設群-とある修道院」からオダ・エルネストさんが去りました。