2020/09/14 のログ
ご案内:「宗教施設群-修道院」に神樹椎苗さんが現れました。
神樹椎苗 >  一人、修道院に訪れる。
 ここにいるべきヒトは、今はいない。
 身体と心を治療するために、入院中だ。

 『姉』を慕い、想うヒトは多い。
 身の危険を省みずに救出に向かったヒト達がいる。
 見舞い客もまた、多く訪れる事だろう。

「──はあ」

 玄関先には『入院中』の文字。
 それを見て、つい重たい吐息が漏れる。
 蹲る様に、玄関先で身を屈めた。

神樹椎苗 >   
 姉の容態は、芳しいとは言えない。
 重ねられた『非道』の結果、後遺症が残る可能性があるそうだ。
 身体がそんな状態なら――心はどうなってしまっただろうか。

「――――っ」

 頭の中に、暗くて怖い場所の記憶がよぎった。
 姉は耐えられたのだろうか――それとも。
 片手で肩を抱くようにして、震えそうな身体を押さえつけた。

 院内のデータに意識を潜り込ませて情報を盗み見て。
 そんなに気になるのならさっさと面会に行って、会ってくればいいというのに。
 対面するのが恐ろしくて、何ができるかもわからず、足は病院を避けてばかりだった。

神樹椎苗 >  
 そういえば。
 この修道院に出入りしているあの、『想定外の男』も面会にいっていた。
 あの男は一体、どんな話を姉としたのだろうか。

 ――自分と違って、姉を暗闇から引き上げる事が出来るのだろうか。

 ただの『他人』でしかない自分にはできないことを、姉の友人たちは出来るのだろうか。
 あの『クズやろー』の言葉が、今更になって頭に響く。
 そう、どれだけ姉と呼び慕っていても。
 自分はなんの繋がりもない、ただの他人でしかないのだ。

「――っ、馬鹿々々しい」

 左腕で目元を擦って、院の扉に背を向ける。
 そのまま腰を下ろして、膝を抱えてうつむいた。

ご案内:「宗教施設群-修道院」に柊真白さんが現れました。
柊真白 >  
宗教施設群を散歩なう。
こちらの方はあまり足を伸ばしていなかったので、地理を覚えがてらウロウロ。
そうしてある修道院の前を通り過ぎ、

「――椎苗?」

なんだか見覚えがある姿のような気がして戻ってきたらやっぱりそうだった。
修道院の前で蹲る彼女の前にしゃがみ込み、声をかける。

「どうしたの? 体調悪い?」

神樹椎苗 >  
 声を掛けられれば、ピクリと肩を震わせる。
 力なくゆっくりと顔を上げれば、ぼんやりとした瞳が徐々に白い姿を捉えた。
 無気力な表情の口元が、うっすらと緩んだ。

「ああ、白ロリ先輩ですか。
 ええ、まあ、大丈夫です。
 どこかが悪い訳じゃねーですから」

 そう答える声にも覇気はない。
 普段料理を習っている時と比べても、そう、簡単に言えば落ち込んでいるように見えるかもしれない。

「ん、ちょっと疲れてただけ、ですね。
 最近、夜更かしも多かったですし」

柊真白 >  
「そう」

それだけではないような気はする。
だけれど、それを無理矢理に聞き出すわけにもいかない。

「――次はなに作ろうか」

だから隣に座ってそう尋ねる。
最近始めた料理教室。
何か作りたいものはないか、と。
当たり障りのない話題。

神樹椎苗 >  
「次、ですか。
 ああ、そうですね」

 少しばかり上の空な様子だったが。
 膝の上に頭を載せるようにして、隣を見ながら。

「今度は、お菓子とかも作ってみたいです。
 ケーキやクッキーとか――甘い物を」

 「なにかいいものはありますか」と、隣の先輩に聞いて。

柊真白 >  
「お菓子、いいね」

あまりお菓子は作らない――いや、最近はそうでもないか。
部活に入ってから、店で働いている時は大体作っている。

「簡単なのだとクッキーとかスコーンとか。あぁ、焼きプリンなんかも。料理と違って計量が大事だから、手間はちょっと増える」

初心者にはそのあたりがオススメだろう。
計量さえキチンとすればほぼほぼ混ぜて焼くだけだし。

神樹椎苗 >  
 クッキーやスコーン。
 それらもいい。
 人に振舞う事も考えれば、作れるようになれば素晴らしい。

「――焼きプリン」

 瞳に気力がわきだした。
 それくらいに、『プリン』の三文字は大きい。

「決まった数値や手順をなぞるのは得意ですから。
 もしかしたらその点では、料理よりは手間を取らせねーで済むかもしれませんね」

 ゆっくり顔を上げて、左手を力強く握る。
 先ほどよりもずっと、表情に気力が戻ってきただろうか。

柊真白 >  
プリンと聞いて瞳に力が戻った彼女。
それを横目で見てほんの少し頬を緩める。

「クリームとかフルーツとか盛り付ければプリンアラモードになる。簡単だからそれにしようか」

しっかりしているように見えてもやはり見た目通りの歳なのだろう。
そのギャップが可愛い。

「私は目分量で慣れてるから、逆にそっちの方が楽。お菓子作りは化学だって言うから、それが得意ならすぐ出来るようになる」

ある程度料理に慣れると特に計量は重視しない。
ある程度味を見ながら調整出来るから。
計量が面倒、と言うほどではないが、やはりさっと作れる料理の方が慣れている。

神樹椎苗 >  
「プリン、アラモード――!」

 ごくり、と息をのむ。
 そんなものが自分で作れたら、いつでも食べたいときに食べられるようになるのでは?
 たとえ手間がかかっても、自分好みの味を食べられるのならそれはなかなかに、悪くないように思う。

「しいはむしろ、目分量とかがいまいち慣れねーですね。
 味見をしながら感覚で、というやり方がまだなかなか馴染まねーです。
 料理ももっと、上手くなりてーのですが」

 そう言った感覚のようなものはどうにも、まだまだ未熟なのだ。
 お菓子作りが化学に通じるのなら、案外そちらの方が身に着くのは早いだろう。

「ありがてーです。
 いずれは、高級洋菓子店すらしのぐくらいのモノをつくりてーですね」

柊真白 >  
「ふふ」

よほど好きなのだろう。
前のめりになってそうな彼女に思わず笑いが漏れた。

「調味料の味の濃さを覚えて、それをどれだけいればどんな味になるかを覚えると良い。同じ塩でもシェイカーで振るか指で摘むかスプーンを使うかでも違ってくるし。そう言う意味では舌を肥やすって言うのも大事」

こればっかりは感覚で覚えるしかない。
感覚は教えることが出来ないし、味を覚えるのも大事だ。
料理は食べるものなのだから、作るだけではなく食べることも料理の修行の内とも言うし。

「それなら任せて。ラ・ソレイユでパティシエやってるから」

神樹椎苗 >  
「むう、舌で覚えるってのがなかなか。
 そうなのです、その細かな違いがまだ判らねーのですよね」

 うーん、と唸って難しい顔になる。
 料理を振舞う事には関心があっても、自分が料理を楽しむという点にさほど興味がないのが難点でもあるのだろう。
 どうせ食べるのなら、料理よりもお菓子の方がいい。

「なんと、白ロリ先輩はパティシエだったのですか。
 なるほどラ・ソレイユ――」

 と、復唱しながら、硬直する。
 ギギギ、と軋むような音を立てながら隣の先輩を、愕然と丸くなった目で見た。

「ら・それいゆ?」

 聞き間違いではないだろうかと、固まった表情のまま聞き返した。

柊真白 >  
「料理は作って終わりじゃない。出来た料理を誰かに食べてもらうために作る。その為には、美味しい料理が何故美味しいのかを知る必要がある」

食に興味が無くても美味しい料理は作れるだろう。
しかし職に興味があった方が上達は絶対早い。
無理にとは言わないが、作るだけではなく食べることも重要視した方がいい、とアドバイス。

「うん、スイーツ部の店」

神代少年の資金で小金井少年を中心として出店したスイーツショップ。
そこで一応パティシエとして働いている。
――神代少年の暴走を止める役割の経理として動くこともあるが。

「どうかした?」

何かとんでもないことを聞いたと言わんばかりの彼女に首を傾げて見せる。