2020/10/11 のログ
ご案内:「常世島共同墓地」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 >
何故此の場所を訪れたのか。
己としても、明確な理由を自身に説明する事は出来なかった。
唯、何となく。
何時もの様に朧車の討伐任務を終えて。本庁での報告を済ませて。
誰もいない自宅へ帰る途中に――ふと、車を差し向けたのが、此の場所だった。
小高い丘から望む、数多の墓碑。
荘厳とも表現出来るやも知れない、かつてあった命の残骸を祀ろう場所。
此処に一体、どれだけ己が奪った命があるのだろうか。
「……何て、感傷に浸る資格など、私にあるとも思えないが」
手向ける花を持たず。出逢うべき死者も無く。
咥えた煙草から甘ったるい紫煙を吐き出しながら、ポツリと呟いた。
■神代理央 >
朧車の騒動も、多くの組織や有志の協力を得ている。
遠からず、この騒ぎも収束に向かうだろう。
そうなった後、己には。己の部隊には。
"本来果たすべき役割"が、求められる事になるのだろう。
違反組織に過剰な対応を行い、落第街に不要な圧力を加える。
其処で埋まれるヘイトそのものを、風紀委員会の存在意義とする。
その為の、部隊。その為の、『特務広報部』
――己の本来やりたかった事とは、随分とかけ離れてしまった。
「……だが、私にはこの方が似合っているのかもしれんな。
貴様達もそう思うだろう?化けて出る事もなく、恨みつらみを抱えた儘、朽ちゆくだけの貴様達も」
吐き出した紫煙は、墓碑の間をすり抜けて消えていく。
――何だか、随分と疲れてしまった様な気がする。
疲れている暇など、無いというのに。
■神代理央 >
出逢いも別れも、全ては己が選んだ道だ。
己は結局、彼女を――水無月沙羅を幸せに出来る自信が無かった。
唯それだけ。それだけの事。
幸い、と言っては可笑しな言い方だが、彼女には『家族』が大勢いる。
血濡れた覇道を目指す己では得られない幸福が、きっと其処にはある筈だ。
であれば、己は。己が取るべき『選択』は。
「"イナゴ身重く横たわる"…か。私は、あそこ迄傲慢にはなれぬ。
私が目指すのは、高い城の男ではない。所詮は、武によってしか覇を唱えられぬのだからな」
高い精神性を持つ事も、菩薩の様に悟りを開く事も出来ない。
己が信じるのは、常に鉄火の暴風と、人智が生み出す力だけ。
人類が『火』と『鉄』を手にした時、既に神は死んだのだ。
■神代理央 >
何にせよ、己のする事は変わらない。
敵を作り、敵を倒し、戦い続ける。
それが己の選んだ道だ。それが、己の『選択』だ。
「……本庁に、戻るか。今のうちに片付けられる書類もあるだろうし」
家に帰る気にはなれなかった。
根元まで灰になった煙草を携帯灰皿に押し込んで、墓地に背を向けて。
未だ己の枕元にも立たない躯を一瞥する事もなく、立ち去っていくのだろう。
ご案内:「常世島共同墓地」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「宗教施設群:修道院」に日月 輝さんが現れました。
ご案内:「宗教施設群:修道院」に羽月 柊さんが現れました。
■日月 輝 > 異邦人街にはそれはもう数多に宗教関係の建物が立つ区域があるわ。
特別に名前が付いている訳ではないそうだから『ああ、あの辺の』とかちょっと曖昧な呼ばれ方をする場所。
この世界の宗教のみならず、異世界のものも多いからか建物群の様子は中々どうして壮観よ。
小高い丘から見下ろすと、特別に宗教を贔屓にしてないあたしでも神秘を感じちゃうわ。
「こんにちは。マリー、居る?差し入れを持ってきたんだけどー」
此処はそういった場所の一つ。親友の住み暮らす修道院。入口に『懺悔・相談・不満・愚痴 全てお聞きします』
なんて看板が掲げられていて、愚痴まで聞くのは大変そうね。なんて思う。
だからか、扉を開けて声高らかに御挨拶するあたしの声はちょっぴり案じるようなもの。
けれども、紫無地の風呂敷包みを手にしたままのあたしに返る返事は無い。どうも生憎留守みたい。
「まさかまた誘拐されてたりしないでしょうね……」
長椅子の並ぶ礼拝堂を抜け、奥の扉を開けて小規模な応接室を視る。
マリーは居ない。何かしらの揉め事の痕跡も無い。ちなみにエルネストさんも居ない。
彼は善意で留守番を務めてくれた神父様のようで神父様ではない善意の第三者であるから、
マリーが回復した今は務める諸々も無くなった──という事なのでしょう。
ともあれ、それは一先ずとしてもう一度とマリーを呼ぶ。やっぱり返事はない。
どうやら私室にも居ないようで、つまりは何処かに用事かしらと納得する。
「これ、どうしましょ」
風呂敷包みを手に目隠し裏で眉が寄る。まさか置いていく訳にも行かないし。
ともすれば、礼拝堂でそうした様子を示すのは不審者のようでもあったかも。
■羽月 柊 >
一人の男が白い鳥のような生物を二匹連れ、修道院の前へと現れる。
「確か……ここか。」
男は独り言ちた。
扉が開いているのを見て、そのまま歩む。
修道院の硬い床にカツンと質の良い革靴の音が響き、
もしかすれば少女の耳に、来客を告げたかもしれない。
その手に持つ包みの色と同じ、紫色の髪と桃眼。
白衣を揺らして、男は入口でぐるりと院を見渡していた。
「…さて……ん…?」
件のシスターマルレーネではない少女が、そこにいた。
「…こんにちは。」
静かな声が、少女の後ろから。
声の主は見知らぬ…大人の男。
少女よりもよっぽど不審者のように見えなくもない。
あんな事件があった後では、研究者のような男は余計に怪しく見えるやもしれない。
ここに来るのは初めてだ。
そもそもに…宗教施設群へ近寄ることが早々無いのだが。
『ディープブルー』の件に関わったことで、何かしらの伝手でここを知ったのだろう。
■日月 輝 > 例えば、もし今表の看板を見て誰かがやってきたらどうしましょう。なんて事も考える。
エルネストさんのように振舞うのは、ちょっと不味そうに思う。第一シスター服姿じゃないもの。
「第一、あたしに誰かの悩みや愚痴なんてね」
聞いてたら途中で嫌になりそうだわ。
勿論知り合いであるとか、恩義のある相手であるとか、そういった人達なら別。
完全な他人のそうした諸々を聞くのが、という話であって、日常的にそれらをこなすマリーに溜息を吐く。
──そうした所で硬質な音を聞いて振り向く。
目隠しをしていようと、特別な拵えの代物は過不足無く来客を視た。
「あら……ええと、こんにちは。修道院に御用?
でもお生憎様。マリーは──シスター・マルレーネは留守みたい……」
白衣姿の長躯の男性。印象としてはお医者様?
でも、不可思議な生物を連れた様子は何処か違う風でもあったかも。
「あ、もしかして往診の御医者様?だとしたらうっかりねあの子ったら。
退院してまだ日が浅いってのにお約束事を忘れるなんて」
呆れるようにちょっと大袈裟に肩を竦めて男性に近づく。
そうして、白衣には合わないと言えば合わない装飾品に首を傾ぐようにもなるの。
御医者様ならそういうものは普段は付けないものでしょうから。
「それともやっぱり御相談の方かしら。ええと……そっちなら言伝くらいなら承りますけど」
鮮やかな春を思わせる瞳を見上げて唇をゆるやかに笑ませる。
目隠しをしていようと十全に見えていると思わせる動きで、真実見えている動き。
■羽月 柊 >
「ん…あぁ、留守なのか。
君はマルレーネの知り合いのようだな。」
行き違いになってしまったかと呟いた。
まぁ何せ、多忙な日々の中で見つけた時間で来たせいだ。
事前にアポでも取っておけば良かったと思う。
小さな少女を見やる。
20cm以上も差があれば、彼女の頭は男の胸元ほどだろうか。
可愛らしさの塊のような服で、その飾り立ては、
白衣にシンプルなシャツの男とは、その手の装飾を除いて対照的に見える。
目隠しをしてなお視えているような動きに、
男はさして驚くような様子は無かった。
異邦人との交流が多い故もあるが、
異能や超能力の類で視えていたとて不思議ではないと考えているからだ。
「いや、生憎医者でも相談者でも無くてな。
俺も知り合いではあるんだが…。
俺は羽月 柊(はづき しゅう)と言う教師だ。」
相手に風紀委員の腕章がある訳でもなく、
そうなれば、『ディープブルー』の事を口に出すのは憚られる。
自分とマルレーネとの繋がりと言ったら、そこなのだが…。
■日月 輝 > 「ええ知り合い。そして当人は留守。で、貴方は──」
御医者様でも本来の来客でも無い。
だとするとこの男性は──そう、脳裏に幾つかの思考が転がりかかってぴたりと止まる。
彼の名前には聞き覚えがあったから。マリーに関わり、尽力してくれた内の一人。
その名前は山本さんから確かに聞いていたわ。
「まあ、貴方が!その節はどうもお世話になって……ええと、お名前は風紀委員の山本さんから伺ってるの。
マリーが誘拐された時にお手伝いをしてくださったとか……先生でもあったんですね。
学校、広いからとは言え知らずに御免なさい。あたしは日月 輝っていいます」
お日様の日にお月様の月。それに輝くと書いてあきら。
と、自己紹介をして頭を下げて、伴う言葉は些かに改まるもの。
「それでええと……ということは、何かマリーにお知らせを?もしかして犯人が捕まったとか!」
伴う足元は改まらないでもう一歩と踏み込んでしまうのだけど。
風呂敷包みからお醤油の匂いをさせていたら緊張感も何もあったものではないけれど、
そんな事を気にしている場合じゃあないわ。
■羽月 柊 >
輝が己の漢字をどう書くかと言われれば、
羽根の羽に、同じく月、それから植物のヒイラギと書いてシュウだと柊も応えるだろう。
柊をシュウだと読むことは早々無いが、音読みとしてシュウとシュがあてられているのだ。
冬の木と書き、クリスマスの装飾として、魔除けの植物として使われている。
「山本の……あぁ、なるほど。山本は俺の"友人"だな。
"あの時"に山本が連絡を取っていたのは、君か。
知っているかもしれんが、俺は一応、教師の身でな。」
『ディープブルー』のブラオと名乗った研究者との決戦前。
組織のレポート資料を見つけた折、共闘した一人である友人の山本英治が、
携帯デバイスで連絡を取っていたのを思い出した。
その時確かに「輝ちゃん」と、相手を彼が呼んでいたと。
「…ということは、君がマルレーネを直接救出したんだな。
委員会に属しているという訳でも無さそうだが…危険は無かったか?」
彼も顔が広いなと思いながら、自分と同じく外部からの協力者であった少女に対し、
大人である男は怪我などはしなかったか、と。
■日月 輝 > 名前の表しを聞き頷く。確かに山本さんから聞いた名前だわ。
柊と書いてシュウと読む人は、そうそうは居ないもの。
「山本さんも顔が広いのね。流石風紀委員、頼もしいわ。
……なんでも少し体調を咎めたとかで、お顔は出せてないのだけど……。
ともあれ確かに連絡をとっていたのはあたしで間違いないわ」
山本さんが怪我をして入院したのは知っていて、
けれども別の方向で咎めた事も聞いていて、
だから、お見舞いには行けていない不義理を吐露して語調が下がり、足も下がる。
羽月先生より一歩離れて肩を落とし、でも、直ぐに上げる。
「あたしだけじゃないわ。神名火さんという方もいて、彼女の御蔭もあって此方は無事に。
危険は……危険だったけれど、あたしの力は結構"そういうとき"に便利なので。
羽月先生の方は大丈夫でした?……と立ち話もなんですし」
彼の返事を待たずに歩き、奥の扉を開けて促す所作。
「……折角ですし色々お話を伺えたら。
お時間大丈夫でしたらどうですか?丁度お茶請けもありますし」
紫無地の風呂敷包みを掲げて見せる。
隙間から覗く二段重ねの重箱が判るかも。
■羽月 柊 >
「まぁ、山本は俺が教師に成る前から、縁あってな。」
小竜の一匹が頭の上に乗って、
少々髪がくしゃくしゃになった所で全く気にしていない。
どうやらいつものことのようで、慣れているといったばかりだ。
「あぁ、…しかし、良いのか?」
奥の扉が開けば、礼拝堂とは違った
ちょっとした来客用のスペースのような場が見える。
少女を追いかけて見下ろしながら、勝手に使っても良いのかと問う。
傍らの小竜たちが飛ぶのをやめて男の肩と頭にそれぞれ乗った。
そうして輝の方を見てキュイと鳴く。
重箱も見えたが、それこそマルレーネにと持って来た品ではないのだろうか?
大丈夫だと分かれば、話の続きが聞ける。
「…戦闘能力がある、か。まぁ、この島なら確かにそれで良いのかもしれんな。
こちらはまぁ、そこそこに負傷はしたが…今はどうということは無い。
俺なんぞは、戦った三人の中でも一番軽症の方だったからな…。」
■日月 輝 > こじんまりとした応接室は調度と呼ぶべき物も無い質素な造り。
如何にも清貧を謳ってそうで、実際に謳っているかは知らないところ。
今度マリーに聞いてみようかな──等々を考えながらにお茶の用意を整える。
何処に何があるのか恰も自宅であるかのように見知った様子のトントン拍子を設えて──
「粗茶ですが……って他人の家で言うのも失礼よね、うん」
テーブル席に二人分のお茶を淹れて自分にツッコミを独りごちる。
素焼きのティーカップに緑茶がアンバランスに湯気を立ち上げていた。
「多分良いの。マリーならきっと、お世話になった人にお茶も出さない。なんて事はしないでしょうし」
物静かな羽月先生はともすれば冷静、悪く言うなら冷たい印象があるといえば、ある。
でも、頭に不思議な小動物が乗っても厭う事無く振る舞う様が何処か柔和に思わせる。
動物に好かれる人に悪い人は居ないと、あたしは思うから。
「大本は眼を制御しに島に来たので、戦いに来た訳じゃあないんですよ?
お怪我が大した事無かったなら、よかった──お口に合うか解りませんけれど、宜しければどうぞ」
目隠し裏で二匹の小動物を追いながらテーブル上に包みを解く。
螺鈿細工を鏤めた黒漆塗りの重箱二段。一には筑前煮が詰まっていて、二には黄粉を塗した草団子。
「それで……改めて、なんですけれど。何か進展があった……とかそういう感じですか?」
羽月先生に問いながら取り皿に草団子を取り、フォークで刺して口へ──は運ばず、
彼に停まる小動物達へと差し出してみる。食べるかしら?
■羽月 柊 >
宗教、というのはどうにも、自分には疎遠の場所だった。
異世界に詳しい故に、"カミサマ"という、
信仰やその他の他人からの感情や謂れで存在を保っているようなモノが居ることは知っている。
しかし、男はそれに頼る事は無い。
頼ったとして、救われるとは思っていないからだ。
絶望と空虚を抱えてなお、それに縋りつく事は無かった。
「…進展という話でも無いんだ。マルレーネに聞きそびれた事があってな。
時間が空いたから来てみた…という感じではある。」
聞きそびれたというよりは、彼女の体調的にしっかりと聞けなかったことではあるが。
『ディープブルー』に囚われていた折に、
他にも捕まっていたモノは居なかっただろうかと。
それは、男が抱えている方の目的であった。
「俺たちは山本が君に連絡を取った日に『ディープブルー』と交戦してな。
山本と神代理央という風紀委員と三人だったんだが…。
相手は一人だったというに、辛勝という言葉が良く似合う状況だった。
神代は重症、山本も俺を庇って怪我をしているし、他にも…。」
そこまで話して、英治にかけられた"呪い"について話すかどうかを躊躇した。
■日月 輝 > 動物は嫌いじゃない。
お魚とかは……観るとついつい"美味しそうね"とか思ってしまうけれど、これはあたしだけじゃ無い筈。
昨今人気を博している空中水族館へ足を運んだ際に、可愛く無くお腹を鳴らしたことは誰にも言えた事じゃない。
ともあれ動物は嫌いじゃない。羽月先生の連れる不可思議な小動物は適度にモフモフとしていて、可愛らしいし。
でも草団子はお気に召さないみたい。可愛らしく鳴きはするけれど、流石に食性が違ったみたい。
「マリーに?それなら言伝を預かっておきますけれど……
教師ともなるとやっぱり忙しそうですし」
折しも夏休み終了直後の諸々であったから、羽月先生が過労に満ちただろうことは想像に難くない。
時間が空いたのが、今時分であるのがその証拠。草団子を食べながらにあたしの口調は迷う様。
ちょっとお砂糖足りなかったかも。
「神代君も!?」
話題も、甘くないものだった。
神代理央。『鉄火の支配者』。いつか、展望台であった男の子。
羽月先生がこの島では有る方が良いと仰る戦闘能力を過分に持つ人。
彼までもが加わり、それで尚苦戦したとの言葉に驚きの声。
次会う事があれば御礼を言わなければ、そう決めて空咳を数度して驚きを誤魔化すようにする。
「ええと……山本さんが精神を咎めたらしいとは」
言葉を濁す羽月先生を促すようにし、一度言葉を切る。
切って、ティーカップのお茶を緩やかに喫して、置いた。
「それもあって彼のお見舞いには行けなくって、実は会って無くて。
羽月先生はお会いされた……んですよね。山本さん、どうでした?」