2020/10/16 のログ
日下 葵 > 「私は結構いろいろありましたよ。
 ペットができたり、絵のモデルになったり、景色を楽しむことを覚えたり、
 本気で殺し合いができる友人ができたり」

いろいろありました。
煙を吐き出しながら、語りかけた。

「そろそろ、先輩を頼らなくても歩けるようになりましたかね。
 独り立ちというには、まだまだ先輩に学ぶことは多いですが」

ようやっと、独りで立てるようになった程度、だろうか。

「ま、せいぜい”そっち側”で楽しくやっててくださいよ。
 不死身と呼ばれる手前、”そっち側”にはしばらく行けそうにないので」

死んじゃった先輩はもう”普通の人”ですからねえ?
そんなブラックジョークを飛ばす。
こんな不謹慎なことを本人の墓の前でしゃべるのだ。
慰霊祭のような人の多い時期は避けた理由はそういう意味もある。


――これくらい、気楽に話したかったから。

「さて、さすがに冷えてきました。
 私はこの辺で失礼しますね」


――また、次の彼岸を過ぎたころにでも。

そういって、数本煙草が残っている箱を、供物を置く台の上に置く。
そのままゆったりと立ち上がれば、煙草を咥えたまま墓地を後にするのであった>

ご案内:「常世島共同墓地」から日下 葵さんが去りました。