2020/11/05 のログ
ご案内:「宗教施設群『破壊神の社』」に迦具楽さんが現れました。
ご案内:「宗教施設群『破壊神の社』」にサヤさんが現れました。
■迦具楽 >
ハロウィンからしばらくして、迦具楽は少し落ち着いた生活に戻っていた。
ずっと思い悩み、憂さ晴らしのため落第街を歩いて回ったりもしていたが。
友人に悩みを打ち明けて、少しだけ気持ちが軽くなった。
朝に庭や祭壇の掃除をして、昼間は浜辺でエアースイムに時間を割き、その帰りに異邦人街で買い物をして、夜はたまに落第街を見て歩く。
そして合間の時間に、たまに客がくるプールの掃除や、趣味の畑弄りなどをして、一日を過ごしている。
「――うん、これも中々いい感じじゃない」
この日も、そうした一日の中で、秋の日差しが降り注ぐ中、庭の菜園弄りをしていた。
小さな畑に実った深い緑。
コロコロと丸いカボチャたちは、艶のある色をして、ずっしり重たく育っていた。
「芋も順調だし、ナスは美味しかったし。
去年よりちゃんと良くなってる!
さすが私!」
まるまると実ったカボチャを抱いて頬ずり。
幸せそうに秋の実りと戯れる。
そんな様子は、いつのころからかすっかりこの区画ではいつもの光景になっており。
前の通りを歩く人達からは、微笑ましく見守られている。
かつて路地裏で、人間を食べる事で生きていた怪異は。
いつの間にか、すっかり人間らしい生き方をするようになっていた。
■サヤ > 祠の掃除の帰りにほのかに漂ってきた燃えるような芳しい香り、記憶が確かならあの人のもの。
大急ぎで掃除用具を返却し、雑草を受け渡して匂いをたどる。かなり薄れていたせいで時間がかかったが、なんとか匂いが濃くなる方向を見つけることが出来た。
そうしてたどり着いたのは黒石を祀った一軒家、その庭先で畑を弄っているのは、島を離れる前と全く同じ後ろ姿。
「あ、あの。」
ためらいがちに声をかける。
「こちらは、ええと…焔誼様のお宅でしょうか…?」
4年もの間姿が変わらないとは思えない、だから今目の前にいるのは探し人の親類と判断した。妹か従姉妹か、そのあたり。
相手が振り向けば、臆病な子犬のようなおどおどした目つきはそのままに、少し背が伸びて、一番の変化、豊満な胸を持った久しい顔が見えることだろう。
■迦具楽 >
「はー――い?」
声を掛けられれば、通りの方を見る。
そこには、どこか見覚えのある面影を持った一人の女性。
「さや――?」
見ただけでは確信が持てず、疑うような声音が出る。
けれど、その女性の身体からは、覚えのある『二つ』の匂いが重なって香ってくる。
そんな人間が、そう何人もいる事はない。
「サヤっ!?」
そして、ようやく驚きの声を上げる。
四年前と少しも変わらない顔で、目を丸くして。
驚きのあまり、抱えていたカボチャを、ぼとり、と畑の上に落っことした。
■サヤ > 「すみませんお忙しいところ…を…?」
名前を呼ばれる、どうして自分がサヤだとわかったんだろう。
そして、どうして驚いているんだろう?
「ええっと、その、確かに私はサヤですが、焔誼迦具楽さんのご親族の方でしょうかっ!?」
どうしてか自分を見て非常に驚いた迦具楽そっくりの少女がカボチャを落とす。こんな立派なカボチャ、割れてしまってはもったいない!
「すみません!」
一言侘びて軽く跳躍、地面にぶつかるギリギリで足首で受け止める。大きく実ったカボチャはそれなりの重量があるが、体の軸は僅かにぶれることもなく、両手で持ち上げて渡そうとする。
「すみません、大事なお野菜を足蹴にしてしまって。」
■迦具楽 >
「え、あ、ありがとう」
危うく爆発四散するところだったカボチャを救出してもらえば、お礼を言って受け取る。
そしてそっと地面の上に置いて――
「――じゃなくて!」
ばっと頭を上げて、女性を見る。
相手は間違いない、迦具楽にとって大切な友人。
子犬のような少女だった、サヤなのだ。
「私、私だって!
迦具楽そのもの!」
そう言えば、自分がほとんど成長しないと気付いたのは、彼女と会わなくなってからだった。
自分を指さして、迦具楽そのヒトだと主張する。
「なんで、どうして島に居るの!
もう卒業して、出ていったんじゃないのっ!?」
卒業しても島に留まるヒトは少なくない。
けれど、新たな世界、自分の世界を広げるために島の外へと出ていくヒトもとても多いのだ。
特に異邦人であればなおさら、島の外に興味を持つヒトは多い。
彼女もそうして、新しい世界へ向けて旅立ったとばかり思っていたのだ。
■サヤ > 「どういたしまして、それにしてもご立派なはた……じゃない!?」
じゃないとはどういうことだろうか、まさかカボチャの出来が不満で叩き割ろうとしていた所だったのだろうか。
さっきまで頬ずりしていたというのに。
しかし、続く言葉に今度はこちらが目を丸くした。
「か、え、か、迦具楽さん?だって…よ、4年ですよ?お変わりないにも程があるんじゃ……。」
自分と相手を見比べる。自分はそれなりに、邪魔だけど一部は特に成長している、にも関わらず相手は最後に会った時からそのままだ。
「あ、え、ええと、その……確かに卒業して、見聞を広めるために諸国を巡っていました。でもやっぱり、ここが、この島が、この世界での私の居場所だって、離れてから気付いたんです。
島を発つ時お別れの挨拶も出来なくて申し訳有りませんでした。流派の教えで、旅立つ時は誰にも挨拶するな、行き先を伝えるなど以ての外とありまして……。」
そういって頭を下げる。理由があるとは言え何も言わずに消えたようなものだ、心配をかけたかもしれない。恐らく卒業して出ていったというのも学園に問い合わせるなどして知ったのだろう。
■迦具楽 >
「ああ――いいよいいよそんなの!
出ていくのだって、戻ってくるのだって、自分がしたいようにするのが一番なんだから!
それより、うわあ、ほんとにサヤなんだ」
迦具楽の顔は、驚きから喜びの色に変わって、彼女の姿を上から下までじろじろと見る。
「うっわあ、なんかおっきくなったねえ」
そしてやはり目を引くのは一部。
まさにカボチャサイズだ。
重たそうである。
「外では元気にやれてた?
異邦人ってわかるとまだ偏見とか多いって聞いたけど――まあサヤの見た目なら平気か。
そうそう、石蒜も元気にしてる?」
と、矢継ぎ早に質問を重ねていく!
■サヤ > 「あ、えと、そう言っていただけると心苦しくなくて、その……はい、サヤです……。」
家を訪ねてきちんと礼儀正しく挨拶をするつもりだったのに、人違いをしたのが恥ずかしくて、そしてここまで大喜びされると恥ずかしくなって、後半は消え入るような声に。
「あまり、その…見ないでください……私だってこんなことになるとは思わなかったんです…。
昔は畝傍さんが羨ましかったですけど、自分がなってみると……その、視線が………。動きも変えなきゃいけないし……。」
良いことばかりではない、特に視線を向けられるのが苦手なサヤとしてはこんな目立つものがぶら下がっているのは困りものだった。
「ええっと…はい、良い修行になりました。剣の道をまた一歩歩むことが出来たと思います。見た目は、はい、そんなにこちらの世界の人と離れてなかったようで異邦人と気付かれることも少なくて、あ、石蒜はええと、あんまり変わりないです。やっぱり子供っぽくて手を焼かされてばっかり…」
と質問に気圧されながらもなんとか答えていると、刀を背負っていないのにサヤの口から幼さを感じさせる口調の声。
■石蒜 > 「誰が子供っぽいって?迦具楽に直接フラれるのが嫌で島から逃げて、ずーっと迦具楽迦具楽って泣き言言いながらウロウロして、やっぱり諦めきれなくて戻ってきたサヤのこと?」
■サヤ > 慌てて口を手で押さえる。そして、気まずそうに目をそらした。
■迦具楽 >
「それ、私を見て言える?
育たないんだよ、私。
もう、なのにサヤはこんなもの実らせて!」
むっとした顔をして見せて、腰に手を当てて胸を張る。
四年前と変わらない、ふんわり程度のささやかな膨らみ。
まあ小柄な割に手足は長く全体に細身なため、均整がとれた外見ではあるのだが。
「ふんふん――ほーう、なるほど?」
話を聞いているうちに、やや幼さを感じさせる声が漏れ聞こえる。
石蒜――サヤの身体に同居するもう一つの魂だ。
相変わらず、サヤのプライバシーはいまいち尊重されていないようだ。
「へーえ、そうなんだ?」
にやにやと、目を細めて笑みを浮かべながら、のぞき込むように彼女に顔を近づける。
背丈は同じくらいか、少し迦具楽が大きいくらいだろうか。
少し腰を曲げれば、下から覗き込むようになる。
そしてついつい、当時のように、彼女に意地悪をしていた自分が戻ってきてしまう。
気まずそうに逸らした視線の先に回って、彼女の眼を上目に見上げた。
そして、彼女の頭に手を伸ばす。
「んふふ、なんだ、相変わらずサヤってば可愛いなー。
もっと大人っぽくなっちゃってるかと思った。
っと、折角だし上がってかない?
ちょうどおやつ用に焼いたパンプキンパイがあるんだよ」
と、家に上がらないかと誘うだろう。
■サヤ > 「あ、いえ、迦具楽さんを悪く言ったわけじゃなくてその、個人の感想というか……。」
4年前と変わらない姿で胸を張られると、あからさまにしどろもどろになって言い訳をし始める。
「ええと、その……し、石蒜んん………っ!」
数えで19となってもサヤの身長はまだ迦具楽より低く、赤くなって俯いた顔を下から覗き込まれるとますます紅潮していく。
まるで見頃を迎えた紅葉のような顔色で、同居人に恨み言を言いながら自分のお腹にぼふぼふと叩く。
「わ、私はちゃんと成長しましたよ、けど、石蒜が全然成長し……いや、ええと………石蒜もちゃんと成長してます……。」
何事か2人だけに通じる方法で言われたのか、おざなりなフォローが入った。
「いいんですか、突然お邪魔しちゃって。ええと、その……私、自分でも今、面倒な女だと思うんですけど……。」
撫でられながら、ぎゅっと胸元で両手を握る。祈るようなそれは、4年間の逃走の悔恨を表すように震えている。
片想いの相手に意中の人がいると気付いて逃げ出して、やっぱり諦めきれなくて戻ってきて、そんな自分を快く家に上げてくれるなんて、自分がひどく矮小なものに思えてしまう。