2020/11/06 のログ
■迦具楽 >
「ふふ、変わらず仲良くやれてるみたいで何よりかな」
同居人と戯れる様子は、知らない人には奇妙に見えるだろうが、迦具楽には微笑ましく見える。
あれから時間が経って、より自然な関係に落ち着いたんだろう。
「なに言ってんの。
サヤが面倒くさいのなんて、昔から変わらないでしょ。
いいんだよ、嫌だったら誘うわけないじゃない」
大人っぽくなっても、相変わらずどこか自信なさげな彼女。
その手を無理やり取って、引きずって家に連れ込もうとする。
■サヤ > 「……ええ、色々ありましたけど。石蒜は私の家族です。こちらに来て初めて出来た大切な。」
まだ赤くなったままの顔ではにかむ。生まれた経緯や、落ち着くまでの間の行いに思う所はあるが、今はまるで妹のように感じている。
我儘で放埒で、素直で純粋な、大事な妹。そう言ったら石蒜は『石蒜のほうが大人だもん!』と怒るだろうが。
「うぅ、酷いですけど…否定出来ないのが情けないです……。」
手を引かれるままに家に引きずり込まれる。
「お邪魔します…。」
面倒臭いと正面から言われて落ち込んでいるのか、蚊の鳴くような声で挨拶。
■迦具楽 >
「そっか、家族か。
いいね、そういうの」
心から、二人が通じ合えた事を嬉しく思った。
家族――迦具楽には結局、家族と言える存在は作れなかった。
父親のように慕った人はいたけれど、そんな彼もきっと今は卒業してしまってるだろう。
「はいはい、そうやって落ち込まないの。
サヤはそういうところも含めて可愛いんだから。
――あ、こっちね、適当に座って」
リビングに連れて行って、ソファに座らせる。
シンプルな家具と、テーブルとソファだけのあまり飾り気のないリビング。
汚れも傷もなく、綺麗にされているのは、むしろ生活感がなく感じるだろう。
「あ、飲み物はなにがいい?
やっぱり緑茶かな」
そう聞きながら、カウンターの向こうのキッチンへ向かう。
リビングとの間に壁のないカウンターキッチンは、お互いの姿が見えて声も聞こえる。
とは言え、小柄なものだから、胸から上くらいしか見えないのだが。
■サヤ > 「うー……だって面倒臭いって……私ずっと面倒臭かったんですか…?4年前からですか……?」
引っ張られながら、恨みがましい声で何度も聞く。
『そういうとこがめんどくさいんだって。引っ叩くよ?』
たまらず石蒜が声をあげる。妹からたしなめられて、ようやく口を閉じる。
玄関で草履を脱いで揃えると、リビングへ足を踏み入れる。
「はい、やっぱり、家族はいいものです。ひとつ屋根の下どころかひとつ体の中、なんてことになるとは思いませんでしたけど」
ははは……と言ってしまってから下手な洒落に決まり悪そうに首の後をこする。
「お願いします。緑茶ってこの島でもあるからどこでもあるかと思っていたんですけど、他の国だとそうでもないんですね。あるにはあるんですけど、砂糖を入れて飲むのが当たり前だったりして、すごくびっくりしました。」
袴の裾を皺にならないように払いながら音もなく座る。ピンと伸びた背中は緊張ではなく、武術家としての立ち振舞の1つ。
「ところで、迦具楽さんのご家族の方はご不在でしょうか?表札にはもう1つお名前が…痛っ!」
突然自分の手で自分の頭を叩くサヤ。石蒜の仕業だ、余計なことを言うな、といったところか。
「え、な、なんで?」
本人はその意図がわからず目を白黒させている。
■迦具楽 >
「んー、そう言うところもあったかなー」
なんて言って、はぐらかす。
とりあえずソファの方へ押し込んで。
「まあ、普通は一つの身体に魂二つ分なんて珍しいどころの話じゃないしね。
でも、困る事があっても、助かる事もあるでしょ?」
そんな洒落も、特に気にするでもなく返して。
「外国はそうだよね、私も結構食文化の違いは驚かされたなー。
この島って、めちゃくちゃ食べ物美味しいんだよね」
そう言いながら、緑茶を入れ始める。
こういった茶器の類なんかは家を改増築するたびに、少しずつ用意していた。
とはいえ、実際に使う事はめったになかったのだが、備えあればというものだ。
「んー、蒼穹はねここの家主というか、土地主っていうか。
ほら、外にお社があったでしょ?
ここで祀ってる神様なんだ」
気にした様子は見せず答えるが、ほんの少し声音に寂しさは混ざっていただろうか。
■サヤ > はぐらかされたのはわかるが、これを追求するのは"めんどくさい"のだろうとわかる。
口をつぐんで聞き流した。
「そうですね。多重人格という、一人の中に複数の人間がいることはあるそうですが、魂まで別というのは珍しいと当時診察を受けたときに言われました。
一人で居ながら二人旅みたいなものでしたからね、ご飯や着替えは一人分で済んで、野宿の時でしたら交代で起きて見張り、なんてことも出来ました。」
漂ってくる緑茶の香り。そういえば入居手続きやら家の準備やらで島に戻ってからあまり落ち着いて過ごした時間はなかった。
しばし目を閉じてそれを楽しむ。
「確かに食文化の多様さには驚きました。いろんな食べ物や食べ方があるんだな、って。迦具楽さんも外国に行ったことがあるんですか?」
まるで実際に行ったことがあるかのような言葉に、首を傾げる。石蒜の記憶とも合わせると迦具楽が島外に出たという話は聞かない、自分が居なかった間に迦具楽も出ていたのだろうか。
「え、か、神様とご同居なされてるんですか?でも……あ、ええと………。」
匂いがしない。家具や外の土の匂いとは別にこの家からするのは迦具楽の匂いだけだ。同居しているのならその人物の匂いがして然るべきなのに。
恐らく、長らく帰ってきていないのだろう、それを突付いてしまった。
「………すみません。」
顔を曇らせて、自分の足元を、真っ白な足袋に視線を落とす。
■迦具楽 >
ちょっと冷たかったかな、なんて思いつつ。
そんなところが面白くて気に入ってるのは、本人にはあまり言わないでおこうと。
そこまで含めて彼女が可愛いのは事実なのだが。
「あー、退屈しなさそうだし、交代に眠れるのは便利そうだね。
ただプライバシーがなさすぎるのはちょっと心配だけど」
とはいえ、そこの折り合いがある程度取れたからこその今の関係だろう。
緑茶を淹れながら、パンプキンパイを切り分ける。
少し大きめの三角が三つ。
パイはまだ大量に残っているが、それは自分の分だ。
「んー、まあね。
三年前くらいからかな、時々島の外に出てるよ。
もしかしたらどこかでニアミスしてたかもね」
なんて言いながら、トレーに載せて三人分のお茶とパイを運んでくる。
今しがた一人分ですむと言っていたが、嗜好品はまた別だろうと思ってだ。
別に余れば自分で食べればいいし、と、彼女前に二人分を置いて、対面して座った。
「あはは、気にしなくていいよ、もともと根無し草みたいなやつだし。
そのうち、ふらーっと帰ってくるかもしれないし、まあ帰ってこなくてもそれはそれ、ってやつ」
相手は神は神でも、邪神で破壊神。
そんな相手が大人しくしている方が不自然なのだ。
まあ、いつの間にか会わなくなってしまったのは、確かに寂しかったが。
「私がまだ路地裏でうじうじしてた時にさ、助けてくれたヤツなんだ。
大切な友人の一人。
ま、私も住む場所なかったし、いない間にこれ幸いって好きに使わせてもらってるわけ。
それに、帰って来た時に、一人くらいさ、待っててあげててもいいじゃない?」
なんて、笑いながら話す。
確かに寂しさは感じらるが、そこに悲観はない。
■サヤ > 「退屈はしませんでしたね……。少しでも危なそうなところがあると石蒜が行きたがるんですよ、腕試ししようって。
それで面倒事に何度巻き込まれたことか……おかげで剣の腕は上がりましたけど、しばらく平穏に暮らしたいです、少なくとも起きてる間は……。
プライバシーも、ええ……私はその、色々と隠し事があるのに石蒜には無いんですよ……だから私が一方的に不利なんです…。」
いくら和解したとはいえ、生真面目なサヤと奔放な石蒜が旅の方針で一致するはずもなし、それはそれは大変な道中だった。
先程のように石蒜はサヤの秘密をいくらでもバラせるが、石蒜には言われて困るようなことはなにもない、あるにはあるがサヤの口から言えるようなものではない、力関係は歴然であった。
「そうだったんですか。迦具楽さんは、姿こそ変わりませんけど、なんと言いますか、落ち着かれましたね。
いえ、別に以前は落ち着いてなかったわけではなくて、更に落ち着かれたというか……ええと、なんでしょう…。
武術で例えますと……技を色々覚えていく内に最初はそれを使ってどんどん素早く派手な動きになっていくんですけど、それを超えると最低限の動きで済ませるようになって、ゆっくり、地味な動きになるんです、今の迦具楽さんは、そんな風に感じます。
すみません、伝わりづらいですね…。」
パンプキンパイがテーブルに置かれると、即座に伸びる左手を自分の右手で叩く。体の主導権は2人で分け合う形に落ち着いているのが伺えるだろう。
「ええ、家で誰かが待っててくれる、っていうのは、すごく心安らぎます。私も畝傍さんと暮らしていた時、石蒜の相手だとわかっていても嬉しかったですから。
それで、あの……今迦具楽さんはお一人で暮らしていらっしゃるん、です、よね?それで、ええと……あの、匂いでわかるんですが、恋人もいらっしゃるわけでも、ない、と。」
両手の指先をあわせてもじもじとし始める。左手が何度もパイに伸びるが、それを強引に右手が引き戻す。
■迦具楽 >
「あはは、不平等だー。
石蒜もそこはちゃんと、言っていい事と悪い事は守らないとダメだよ。
そうじゃないと、そのうち本当に追い出されちゃっても知らないよ」
とは言うが、彼女がそこまで強行手段をとるかと言えば、手段があっても行わないだろう。
迦具楽なら石蒜だけを食べる事も出来るかもしれないが、さすがに友人を平らげるつもりもない。
なので、そこは石蒜にもちゃんとしてもらいたいところだった。
「んー、そうでもないよ。
最近っていうか、今もだけど、うじうじ悩んでばっかりだし。
でもまあ、自分の居場所が出来て安心、出来るようにはなったのかな」
この家や異邦人街しかり、競技の世界もしかり。
必要とされる場所があるというだけで、自分という物が随分と落ち着いたように思える。
自分で自分の手を叩く様子に、可笑しくて小さくふき出した。
「ん?
ああ、それはそうだけど。
――なあに、言いたい事があるなら、ちゃんと言ってくれないとわかんないなー」
彼女の言いたい事はわかる。
石蒜が漏らした言葉からも、おおよそ間違いないだろう。
ただ、先回りして口にして良い事でもない。
だから、いつものように意地悪くにやけながら、彼女を見る。
■サヤ > 「本当ですよ。迦具楽さんもこう言ってるんだし、自重してね。」
軽く怒った声で石蒜を叱る。しつこくパイに伸びていた手がしゅんと垂れ下がって引っ込む。
そして両手は膝の上で行儀正しく重ねられる、石蒜は拗ねて引っ込んでしまった。
「居場所、ですか。単純な家という話ではないんですよね。いくつもの国を彷徨うように巡って、私もやっぱり、拠り所が欲しいと思いました。ですから、うぅ………でも、4年前に約束しましたね…貴女の前では、素直になるって……恥ずかしい……。
あの、その………焔誼迦具楽さん、私に……首輪を嵌めてください。」
テーブルに三つ指をついて頭を下げる。酷く倒錯的な言葉だが、サヤのいた世界では首輪をつけるのは恋人にするという行為だ。
同性愛に関しても一般的なため、これはサヤの世界ではよくある光景、もちろん、この世界では違うが。
■迦具楽 >
「――だーめ」
しっかりと聞いてから、しっかりと断った。
ただ、表情は嫌悪でも軽蔑でもなく、親しさを感じさせる笑み。
ゆっくりとお茶を口に含みながら、静かに話し始める。
「それ、恋人になって、って意味だよね、覚えてるよ。
私がイタズラのつもりでサヤを傷つけた事だもん。
あの時はよくわからなかったけど、今ならわかるよ、あの時からサヤ、私の事を好きでいてくれたんだよね」
ことん、と湯飲みをテーブルに降ろす。
そして、迦具楽もまた少し恥ずかしそうに笑った。
「でも、あれからもずっと好きでいてくれたんだ、って思うと嬉しい、かな。
私の恥ずかしいとこ散々知ってるのに、離れていても想っててくれたんだ、って思うと、ね」
そう自分で言ってて、恥ずかしくなって、頬を掻いた。
けれど、そこで一つ咳払いをして、真剣な表情で彼女を見る。
「だからね、簡単にいいよ、なんて言えない。
サヤの事を大切にしたいし、その気持ちを大事にしたい。
ああ、勘違いはしないで、サヤを嫌いだとか、サヤが嫌だとかじゃないから」
と、慌てて両手を振って。
「ええと、だから、もっとちゃんとお互いを知らないといけないって思うの。
あれから時間が経って、お互いにきっと変わったところもある。
そう言うところを知って、それからじゃないといけないって、そう思うんだ」
恋心は、軽々に扱っていい想いじゃない。
本当の意味で迦具楽はまだそれを知らないが、誰かを好きという想いはそれだけ特別なものだと知っている。
だからこそ、彼女に再会してからずっと、真面目に考えていたのだ。
「だから、そうだな。
まずはうん、一緒に住んでみない?
この家さ、うっかり大きくしすぎちゃって部屋も余ってるんだ」
そう、『どうかな?』と首を傾げて、真面目に考えた末の提案をした。
■サヤ > 以前のサヤなら拒絶されたというだけで取り乱していたかもしれない。
だが今はそれに続く言葉を、相手と同じようにお茶を飲みながら聞くだけの余裕があった。
何度も指を曲げ伸ばししながら湯呑を握り直す姿はわかりやすいほど緊張していたが。
「そう、ですね。4年です、私達は4年間言葉一つ交わさなかった。それが急に首輪……つまり、恋人なんて無茶ですよね。」
冷静に考えれば当然のことだ。逃げ出しておいて音信不通、戻ってきたら相手はフリーだから恋人になって、なんて虫が良すぎる。
「はい、すみません、先走りすぎました。ずっと、その、貴方のことを考えていたんです。それが今日、急に会えて、お家に上がらせていただいて、舞い上がってました。
本当は挨拶だけでこれからもっと手順を踏むつもりだったんです。だからその、私ははしたない女ではないですからね?そこはご理解ください。」
再び赤くなり始めた顔を誤魔化すようにお茶を啜る。
「その通りです、今思えば4年前も結局、迦具楽さんについてあまり知らないままでした。だから迦具楽さんのこと聞かせてください。
これから、その、ゆっくり。お互いを知り合っていきましょう、随分時間が空いてしまいましたから。私のせいですけど……。」
逃げ回っていた4年間が恨めしい。会いたくて会いたくてたまらなかったのに、会わす顔がないとがむしゃらに剣を磨き続けた。
もし残る勇気があれば、彼女の旅に同行して、一緒に思い出を作ることもできたかもしれないのに。
沈み込みそうになる思考を頭を振って追いやる。過去はどうしようもない。重要なのはこれからだ。
だがそのこれからについての思考は迦具楽からの提案で吹き飛んだ。
「ええと、一緒に……て、い、いいんですか?あの、ええと………一緒に、暮らす、ってあの、あの……。
まるで、ええと………か、家族……みたいな…………。あの、お、お味噌汁毎朝作ればいいですか?お漬物も、あの、師匠から教わった秘伝があるんで美味しいのも作れます、ええと、だ、だから、その、ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」
一つ屋根の下で暮らす、その生活を想像して考えだけが暴走しだす。勢いよく頭を下げて、ゴツン、とテーブルにぶつけた。
■迦具楽 >
彼女の答えは、思ったよりもずっとしっかりとしていて、同じように考えてくれていたことに安堵した。
そして、それだけ舞い上がってくれるほど再会を喜んでもらえたのは、素直にうれしいと感じる。
けれど。
「――ぷ、あははっ!
もう、サヤってば動揺しすぎ!
あーもう大丈夫、たんこぶ出来てない?」
勢い良く頭をぶつけた彼女に、思わず笑ってしまった。
そんなに驚く事だったろうか、いや、驚くような事だったのだろう。
ただ、迦具楽もまたどこかで寂しさを感じていたのだ。
だから再会した友人(恋人候補)を前にすれば、この結論も自然な事かもしれない。
「そうそう、家族――まあ、家族っていうにはまだ早いかもだけどさ。
恋人になれるかはともかく、まずは一緒にいる時間を増やしたいじゃない。
まーでもそうだね、ご飯くらいは折角だし作ってもらおうかな」
四年間、その変化はきっと小さくはない。
その空白を埋めようとするなら、一緒に暮らすくらいの密度はあっていいのだろう。
いつまでも、先延ばしにしていい答えでもないのだから。
「でも、きっとね、一緒に居れば好きなだけじゃなくて、嫌なところだって見えてくると思う。
まー四年前にも散々、揉めたり仲直りしたりってした気がするけどさ。
近くなったらきっと、あの頃よりももっと、いろんなものが見えると思う」
そしてまた、彼女に笑いかける。
「私の奥さんになるなら大変だよ?
私、だらしないし、大雑把だし、その癖、お金にはうるさいし、あとすぐ危ない事もするしさ。
食費も嵩むし、その上、学生でもないから身分の証明だってできない。
働けないし、殺人歴もたくさんあるから、ちょっとバレたら追われる身になってもおかしくない。
言ってしまえばロクデナシも良いところだからね」
なんて、自分の事を散々に言いながら。
「それでもいいなら、まずは居候から、って事で。
ああでも蒼穹が帰ってきたら驚くかな――まあいいか、その時はその時で。
それじゃあサヤ」
そう言って、身を乗り出して彼女の手に自分の手を重ねる。
「改めて、よろしく。
それと――おかえりなさい」
■サヤ > 「すみません、その、お友達から、ぐらいを想定していたんですが、同居になるとは……。」
ぶつけたあたりを撫でながら小さくなっている。恥と照れで顔は真っ赤で、ぶつけた箇所がどこだかわからないぐらい。
「はい、道場では炊事係をしてましたし、旅の間も基本的に自炊してました、きっとお口に合うご飯を作ってみせます。
嫌な面も、お互いあるでしょう。私はもちろんそうですし、石蒜も付いてきますから。
迦具楽さんだって聖人君子じゃないのは承知の上です。前に頂いた首輪の件で、それはもう体感してます。」
むしろ意地悪な部類だろう。こちらの無知に漬け込んで弄ばれたのだから。
それでも、好きになってしまったのだ。優しく抱きしめてくれた感覚が、かけられた言葉が忘れられなくて。
こうして押しかけてきたのに快く受け入れてくれた彼女が、眩しく見えて。
「それなら私だって、一人で勝手に抱え込んで、相談もせずに悩んで、思い込んで暴走するし、公安から目をつけられてますし、あとええと……とにかく面倒臭い女です!私の番いになるなら、苦労しますよ、きっと。でも、あなたが好きなのは誰にも負けないつもりです。」
張り合うように自分も欠点を上げていって、こうしてみると酷いカップルだが、どんな困難でも乗り越えるつもりだ。
だから。
「ただいま戻りました。迦具楽さん。」
はにかみながらも重ねられた手を握って、微笑むのだ。
ご案内:「宗教施設群『破壊神の社』」から迦具楽さんが去りました。
ご案内:「宗教施設群『破壊神の社』」からサヤさんが去りました。