2020/11/18 のログ
ご案内:「宗教施設群 迦具楽の家」に迦具楽さんが現れました。
ご案内:「宗教施設群 迦具楽の家」にサヤさんが現れました。
サヤ > サヤは地平線から太陽が姿を現し始める頃に目を覚ました。普段ならすぐに起きて朝食をとるが、ここしばらくはそういかない。
こちらを抱き枕のようにして寝ている恋人……候補の同居人、焔誼迦具楽の香りと感触を楽しみたかったし、彼女が普段取っている朝食の時間まではまだまだある。

カーテンの隙間から差し込む光を見て朝食の時間だと判断して、名残惜しいがそっと布団から抜け出す。
冷たい水で手と顔を清め、歯を磨く。気配を殺し、水音をほとんど立てずにそれらを済ませるのは気遣いでありいつもの癖でもある。

いつもの巫女装束に着替えると上から割烹着を纏い、髪を後ろでくくって三角巾の下に。
「よし。」小さく気合を入れながら台所に立ち、朝食の準備を始める。
メニューは今が旬で安いイワシを醤油煮にして、お味噌汁とお漬物。サヤが得意な純和食だ。

お味噌汁はネギと豆腐と油揚げ、太く良いネギなので根深汁にしようかとも思ったが、お豆腐は体に良い、朝からしっかり食べて一日の活力にしてもらおう。
ネギと油揚げを文化包丁で切っていく、先日家具と一緒に揃えた包丁の一本だ。
大量生産品ではなく、職人が一本一本手作りで作った和包丁、日本刀の技術が流用されたそれはきちんと手入れすれば数十年は使えるだろう。

鍋に張った水で味噌汁を作っている間に出刃包丁でイワシの下処理、頭やヒレを落とし、内蔵を抜く。もう一つ鍋に水を張って生姜のすりおろし、砂糖、みりん、醤油を加えて火にかけた。

お漬物は迦具楽さんが作っているものがあるはずだ、とシンク下の収納からぬか床を出し、中を探ってカブを取り出す。野菜も旬のものが良い、長く漬けたものはまた味わいがあるが、朝はさっぱりと纏めよう。
手とカブから糠を洗い流し、薄刃包丁で切っていく、誰かのために朝食を作る感慨、このところ毎日浸っているそれを味わっていると、味噌汁と醤油煮の水が煮立って来た。
火を少し弱めて味噌をおたまに取りお湯の中で箸でほぐして溶かしていく。湯気が一気に香り高いものとなり、まだ寝ている同居人の鼻をくすぐるだろう。

迦具楽 >  
 ゆったりとした朝。
 自分の寝顔や、香りを楽しまれているなど露知らず。
 迦具楽は重たい瞼を開けて、目を擦った。

 ここのところ、同居人を可愛がっているせいか、遅い朝が多い。
 冬が近づいたから気温が下がっているのもあるだろうが、エネルギーを節約するためか休眠も深い。
 一緒に寝ていた同居人が起きても、いまいち目が覚めないくらいだ。

 肌寒さを感じて手を伸ばすが、隣に同居人が居ないのが分かると、なんとなく寂しさを感じた。
 誰かの体温が近くにある――そんな生活をしたことがなかったからか、その安心感がすっかり心地よくなっていた。

 そんな寝起きの迦具楽に届くのは、ふわりとした味噌の香り。
 キッチンから漂う朝食の匂いに、お腹が小さく鳴り出した。
 重く気だるい頭を持ち上げて起きだすと、ふらつく頭を押さえながら、ゆっくりとダイニングに向かった。

「んー――おはよぉ」

 暖房のよく効いた室内に、美味しそうな匂いが充満している。
 割烹着に三角巾という古風な可愛らしい同居人の姿を見つけると、へにゃりとした笑みを浮かべた。
 そのままダイニングの椅子に座って、テーブルの上にぐてっと突っ伏した。
 

サヤ > 流派に伝わる拘束を逃れる技術と気配を殺す技術を最大限活用しているので、気付かないのも無理はない。

味噌と醤油の香りの中に、微かに混ざる同居人の匂い、目を覚ましたようだ。
今日は目覚めが悪いらしい、普段の堂々とした振る舞いを全く感じさせない気だるそうな動きに苦笑する。

「おはようございます、迦具楽さん。もう少しで煮物が出来ますから、待っててくださいね。」
すぐにそれを微笑みに変えて返事をする、テーブルに突っ伏す彼女に聞こえているやらいないやら。

事前に準備しておいた炊飯器の『ご飯が炊けました』と落ち着いた女性の声にも
「わかりました、ありがとうございます。」
と軽く頭を下げて返事。機械音声というものは知っているが、言葉を話すのならきちんと応じのがサヤの流儀である。

味噌汁に豆腐を入れて弱火に、イワシの醤油煮はアクを取ってから酢を加えてもう少し煮る。
その間にご飯をよそう、自分のものは和柄の茶碗、迦具楽はどんぶりに山盛りだ。
お味噌汁も迦具楽のものは3人前はありそうな大きなどんぶりにたっぷりと注いだ。

そうしている間に煮物がまた煮立って来たので、小指を入れてタレの味を見る。普段から料理をしているので少々の熱はへっちゃらだ。
「うん。」大きく頷くと、大きなものを二切れを迦具楽に、小さめのを一切れ自分にそれぞれサイズの違う角皿に移した。
お漬物もサイズと量を互いの食べる量に合わせたもの。
これらを全てお盆に乗せて持ってくると、テーブルに並べていく。注いだばかりの温かい緑茶が入った湯呑も置かれた。

三角巾を外し、丁寧に畳んでテーブルの端に置くと、まだ覚醒しきっていない同居人の肩を揺さぶる。
「さぁ、目を開けてください。ご飯ですよ、寝ぼけて食べるなんて食材に失礼ですからね。」
食べることに関して不真面目な態度は許さない、命を食する者としてきちんと味わうべきだ。しっかり目覚めてもらわねば。

迦具楽 >  
 とんとんとん、とテーブルの上に並べられる朝食。
 自分の分がやたら多いのは、同居人にすっかり胃袋を把握されている証拠だ。
 並べられた朝食からは、同居人にも負けない美味しい匂い。

「んぇぇ。
 起きてるから、起きてるから揺らさないでぇ」

 同居人の手から逃れてテーブルの上を見ると、ホカホカの朝食。
 彼女のスキルや趣味嗜好もあって、ここ最近はすっかり和食が増えている。
 迦具楽が何も考えずに作ると、中華料理が多くなるために新鮮だった。

 食事に対するこだわりは迦具楽も同じ。
 くらくらと、目が回りそうな頭をとりあえず気力で支えて、箸を手に取り手を合わせる。

「それじゃあ、いただきまぁす」

 しっかりとアイサツして、お味噌汁から口を付ける。
 温かさがじんわりと沁みてきて、ほう、と息が漏れた。
 醤油煮にも箸をつけて、どんぶりご飯と一緒に頬張ると、幸せな味が舌に広がる。

「はぁ――美味しいなぁ」

 しみじみと、幸せそうな声を漏らす。
 食事の栄養素は迦具楽にはあまり関係のないものだったが、それも気に掛けてくれているところに心遣いを感じて嬉しい。
 自作の漬物も、一人で食べるのとはまた違う味がする。
 自分のために作ってもらえた料理、というのはやっぱり違って感じられるものだった。
 

サヤ > 初めて彼女に食事を造ったときは自分と同じ程度の量しか用意せず、何度もおかわりをされて驚いたものだった。
おかずも足りなくなってありあわせでなんとかするしかなかったのは迂闊だったと今でも用意する度に思い出す。

ちゃんと起きてくれたらしい同居人、自分も席につくと声を合わせて「いただきます」と手を合わせた。
まずは一息つくために湯呑を手に取る。ふぅ、と小さく息を吐くと、まずお味噌汁はお気に召していただけたようだ。
きちんと味見をしたがやはり食べてもらうまで評価はわからない。今の所量以外で問題が発生したことはないが。

幸せそうに呟く相手に、頬が緩む。毎朝起きて朝食を用意して、一緒に食べる。やっぱり恋人を一足飛ばしにして結ばれたような生活に、幸福感が抑えきれない。
しかし、今は朝食の場だ、幸せなのはいいがそれで料理を冷めさせては自分が食材に不義理をしてしまう。味噌汁に口をつけると朝の冷気で冷えたリビングにあっても体が内側から温まっていく。
「ふふ、ありがとうございます。手前味噌ですが、美味しく出来てよかったです。迦具楽さんのお漬物も素敵なので、献立が締まって助かります。」
カブの漬物を乗せてご飯を口に運ぶ、大きく育ったカブはすができることもなく身が詰まっていて、これだけでご飯が食べられるほど。
甘辛く作った醤油煮もご飯が進む。それらを少しずつご飯と一緒に摘んでいく。一回で箸に取る量は少ないが、素早く咀嚼して食べていくので速度は普通か少し早いぐらい。

「本日はどうしましょうか、なにかご予定はありますか?」
きちんと飲み込んでから、相手も口に物が入っていないタイミングを見計らって声をかける。
特に意図はない、なんとなく口をついてでた質問。

迦具楽 >  
 一口の量はさほど多くはないはず、なのだが。
 料理が次々と胃袋に吸い込まれていく様は、物理法則から逸脱しかけているやもしれない。
 同居人とは見るからに量が違うのだが、彼女と同じくらいの早さで平らげていく。

「んぁ、んー。
 出るつもりはあったけど、今日は無理かなぁ。
 ああ、畑くらいは見ないとだけど」

 いまいち歯切れ悪く答える。
 幸せそうに朝食を食べている迦具楽だが、その表情は時折、しわが寄る。
 それでも一先ず、しっかりと朝食を食べて箸をおき。

「ごちそうさまでした」

 ちゃんとアイサツをしてから、よろり、と席を立つ。
 そのままふらふらとリビングに向かうと、ソファの上にへにゃり、と倒れ込んだ。
 

サヤ > 大飯食らいは大抵一口が大きくなるものだが、彼女は一口は普通の人とは同じぐらいの量と変わらない、かといって特に早いでもない。
しかし気付くとありえないほどの量が胃袋に消えている、会話の度に見ているが食べ方に別に変わったところはないのに不思議なことだ。

「そう、ですか。では出る時言ってくださいね、お手伝いしますから。」
体調でも優れないのだろうか、ひとまずは朝食を取ってから、とその後は言葉少なに食べることに集中する。

「ごちそうさまでした。」
食器を重ねてお盆に載せるとシンクの洗い桶で水に漬ける。洗い物は後にしよう、先に確認しておきたい。

「迦具楽さん、どうかされました?お体が優れない様子ですが……。」
ソファに倒れ込んでしまった彼女に声をかける。普通の人間ならそういう日もあるか、となるが迦具楽はそうではない。
混沌を身に宿した石蒜と互角以上に渡り合った不死身の路地裏の怪異、それが力なく横たわっているのを見ると心配だ。

迦具楽 >  
「ん、んー。
 お腹痛いし、頭も痛ぃ」

 ぐてえ、とソファに潰れて、弱った声で唸った。
 右手で下腹部を、左手で頭をおさえるようにしながら、ぐったりとしている。
 Tシャツの裾がまくれあがって、下着が見えそうになっている。

「私、重い方なんだよねぇ。
 薬で時期も調整してるから、なおさららしいんだけどさぁ」

 そう気だるそうに答える迦具楽だったが、サヤの嗅覚ならすぐに気づく事が出来るだろう。
 普段通りの迦具楽の匂いに混じって、ほんのりと血の匂いがする事に。