2021/03/03 のログ
迦具楽 >  
「そりゃあそうだよねえ、あの頃なんてまさに成長期だろうし。
 あー、また小さいって言ったなぁ、事実だけどさぁ。
 ん、別にはしゃいでなんか――あー、うん、そうだね、はしゃいでたかも」

 まだ少しご機嫌斜め、拗ねたような様子ではあるが、頭は冷えたようで。
 ここ数日の自分を思い返せば、少しばかりはしゃぎ過ぎていたとは思う。
 しかし、そうしていないと、どうにも気分が沈んでしまう――嫌な事ばかり考えてしまうのだ。

「んー、食べるぅ」

 口を開けて、差し出されたあられを頬張る。
 そのまま、指ごと咥えて、少しだけ舐め回すようにしてから口をはなした。

「サヤはぁ、これからもちゃんと、成長しなきゃダメだからね。
 ちゃんと毎年、一年一年、年を重ねてさ。
 私より、早く死んだりしたら許さないんだからね」

 そのまま、拗ねた調子のまま子供が我儘を口にするように言って。
 柔らかな谷間に、ぎゅうっと顔を押し付ける。
 

サヤ > 「はしゃいでましたよ、飽きっぽいって自分で言ってたのに人形作りに夢中でしたし、何度も並べて色合いを見たり、細かく細かく装飾したり。
 さっきも飛び跳ねなかったのが不思議だったぐらいです。でもそんなところも好きです。熱中してる横顔を見て、胸が高鳴りました。」
楽しく、そして素晴らしい時間だった、二人で作り上げた雛人形は、まるで子供のようで、愛しさすら覚えている。
もう…、と小さく声を漏らしながら、指についた唾液を舐め取って、また雛あられを口元に運ぶ。

「ええと……もちろんそのつもりですけど、迦具楽さんより長くって……あの……迦具楽さん、どのぐらい生きられるんですか?」
自分の口から言ったように迦具楽は人間ではない、代謝はすれど成長もしない、半ば神に近い怪異がどれほど生きるのだろうか。
それより長く生きるとなると、サヤも何かしらの手を講じなければならない、サヤは異邦人ではあれど、純粋な人間なのだ。

迦具楽 >  
「んー、んんぅ――」

 愛おしそうに言う声を聴いていると、なんだかむず痒く、恥ずかしくなってくる。
 そのまま胸に顔を躾けたまま唸るが、足先がぱたぱたと床を叩いていた。

「んんー?
 んー、わかんない。
 今日明日にでも死にそうな気もするけど、このままずっと生き続けそうな気もするしなぁ」

 少し視線を上げて、上目遣いになったままもごもごと喋る。
 実際、迦具楽にも自分の生命体としてのスペックは未知のままなのだ。
 昔は死んでも形を変えて蘇生したりもしたが、それもいつまで、何回続くかもわからない。
 かと言って、死なずに大人しく生きていてもどれくらい生きられるものなのか、想像もつかなかった。

「んー、じゃあ、ちょっと違うなあ。
 えっとねえ、んー。
 寿命以外で、老衰以外で死んだりしたら怒るかんね。
 変な病気とかでコロッといったりしたら、後追いしてやるんだから」

 と、恋人にとっては脅迫にもなるだろう言葉をさらっと言って。
 差し出されたあられを、口を開けて受け取った。
 

サヤ > 「ふふふ、暴れないでください。せっかくのひな壇、崩れちゃいますよ。」
宥めるように、また優しく頭を撫で始める。

「それは……困りましたねぇ……。私も迦具楽さんに先立たれたらとても悲しいです。
 私も後追い……出来ませんね、石蒜の体でもありますから……。」
迦具楽なら100年200年経っても平気で生きていそう、と考えていたので大問題だ。
迦具楽を失って一人で生きていくなんて考えたくもない、だからといって後を追うわけにもいかない。
今日明日にも死ぬかもなどと言われてしまえば、頭を撫でる手が移って、迦具楽の手を握った。

「あの……少々突拍子もないことを伺いますが、不老不死にご興味は?」
夕食の意見を聞くような調子で、そんなことを言い出した。

迦具楽 >  
「んぇ?
 あー、うん、残念だけど、ご興味ないかなぁ」

 手を握りながら聞いてくるが、それは残念ながら興味ないのである。

「いつ死ぬかわかんない、そんな今の方がなんていうかほら。
 生きてるーって感じするじゃない?
 大丈夫、私は一生懸命生きるからさ」

 先立たれるんじゃないかと心配になったんだろう。
 そんな恋人の頭を――そっちに手を伸ばすには遠いので、手近な胸を揉んで励まそう。
 

サヤ > 「そうですか……。」
少し残念そうに呟く、興味があると言えばその手段を教えられたかのように。

「じゃあせめて、子供たくさん作りましょうね。どちらが居なくなっても寂しくないように。
 私の流派、人刃一刀流をこちらで広めたいですし。私達の子供ならきっと運動が得意ですから、エアースイムを教えてもいいかもしれません。
 ああ、でも、子供達が何をしたいかが重要ですね。色んな道がありますから。」
互いをいつ失うか知れない、となるともう片方のために何か遺す必要がある、一番は家族だろう。血を引いた我が子は伴侶の損失を埋めてくれる。
サヤのいた世界では20になれば行き遅れである、所帯を持ち、子を作るのは早ければ早いほど良い。今だって迦具楽の許しが出ないから作っていないだけなのだ。

「いつでも、待ってますからね。私、赤ん坊を抱くのが夢なんです。」
握った手にもう片手を重ねる。それは念を押すようで。

迦具楽 >  
「あーはは、子供、子供かぁ。
 あんまり想像できないなぁ」

 自分に家族が出来る事もそうだが、自分が子供を産んで、育てるようなイメージがまるで浮かばない。
 とはいえ、子供が出来るような行為は散々繰り返しているわけで――最初の頃と違ってもちろん避妊はしているが。
 それでも100%ではないのだから、どこかで当たるかもしれないし、すでに、という可能性も皆無ではないのだ。

「子供、かあ。
 それはそれで、ちょっと不安かも」

 産む事もだが、育てる事を考えても、不安が大きい。
 自分の怪異性をどこまで引き継がせてしまうか、というのも不安要素だ。
 そうなると、まだ、恋人の期待を受け止めるには、自信がない。

「まあ、なんにしても、子供はもうちょっと先かな、
 一応ものごとには順序ってやつがあるしさ。
 勢いで子供作っちゃいました、なんて無責任な話もないし、ね?」

 念を押されても、いいよ、と言ってあげるわけにはいかないのだった。
 

サヤ > 「ええ、わかっています。私と、あなたの子供がどんな存在として生まれ落ちるのか、不安がないと言えば嘘になります。」
少なくとも純粋な人間ではないことは確かだろう、ヒトの形を成して生まれてくるか、そもそも正常に生まれるかすら定かではない。
どう育つのか、両親など居ない二人で育てられるのか、不安要素はあげればきりがない。

「順序……そうですね……生活を安定させて、結婚して……まだまだ踏むべき手順はありますね。
 でも、いつかはほしいです。いつか絶対、赤ちゃん、産んで下さい。」
これは、譲れませんから。と言ってから握っていた手を放す。

「それと、それまでに私の胸を卒業してくださいね?」
迦具楽さんからは出ないかもしれませんし、と笑いながら胸を揉み続けている手を突付く。

迦具楽 >  
「ん、んんんーーーっ」

 不安はあれど、それでも産んでほしい。
 そう言われると、嬉しくないと言えばうそになるのが、今の迦具楽である。
 驚くくらい、この恋人に変えられてしまっているのが自分でも感じられる。

「わかったよ、それなりに頑張る。
 まあでも、うん、近いうちに少しは、いい知らせが出来る、と思うな」

 その変化がまた、不愉快に感じないのだから。
 この愛情というものは、本当に厄介な感情だと思う。

「あーんー、それは無理かなー。
 だってこれは私のだもんーっ」

 そう言いながら、じゃれつくように、また胸の間に顔をうずめた。
 

サヤ > 「ふふ。」
また呻きながらじたばたし始めた恋人に、笑みが漏れる。
こんなこと、誰かに子供を産んで欲しいなんて、今の体になった頃は絶対に思わなかっただろう。
何度体を厭い、切り落とそうと考えたかしれない。だが今は愛する人と子孫を残せると喜びすら感じている。
迦具楽が路地裏の怪異から変わったように、サヤ自身も大きく変わったのだ、肉体的にも、精神的にも。

「期待していますよ。でも、こんな甘えん坊では確かにまだ親になるのは難しいかもしれませんね。」
くすりと笑って、また頭を撫で始める、子供が出来た予行演習なのか、小さく鼻歌を歌いながら。

「お好きにどうぞ、今はあなただけのサヤですから。」

ご案内:「宗教施設群 迦具楽の家」から迦具楽さんが去りました。
ご案内:「宗教施設群 迦具楽の家」からサヤさんが去りました。