2021/03/13 のログ
ご案内:「宗教施設群 迦具楽の家」に迦具楽さんが現れました。
ご案内:「宗教施設群 迦具楽の家」にサヤさんが現れました。
サヤ > 何ということはない休日、世間一般ではホワイトデーとしてバレンタインデーに甘い夢を見た人間がお返しの選定に奔走している時期であるが、そんな製菓業界の陰謀を全く知らないサヤとしてはただの休日でしかない。
いつものように朝起きて、いつものように迦具楽を起こして共に朝食をとり、畑仕事の手伝いをしてから庭で鍛錬をすれば昼食の時間。
今はそれも終えてリビングのソファに二人で腰掛けて緩やかな眠気ともたれかかる迦具楽の温もりに身を任せている所だ。

「迦具楽さん、今日もご飯控えめでしたね。」
特に何ということもなく、口について出たのはこの所の迦具楽の食事量。
新年会で判明した迦具楽の食欲減退は、目下一番の懸念事項である。

底なしとも言える迦具楽の食欲が抑えられて食費は助かっているが、その原因が不明となると話は違ってくる。
作る方としてもある日は10人前食べて次の日は2人前でいいというのも困りものなのである。
「というよりあれ以来ほとんど毎日ですよね。いっぱい食べる時は大体私が遅くまで働く日が続いた後、でしょうか…?」
迦具楽の肩に頭を乗せて、カレンダーを見ながら呟く、サヤはスシ屋で働いているが、時折遅くまで残業する事があり、それが続いた日のあとは迦具楽の食欲が増加する。
法則性といえばそれぐらいである、何かそれで迦具楽自身思い当たることはないか、上目遣いに顔を見上げる。

迦具楽 >  
 お菓子メーカーの陰謀なぞいざ知らず。
 二人にとっては普段の一日と変わりはしない。
 まあつまり、そんなイベントなぞ関係なく、いちゃついているというだけなのだが。

「んー、そだねえ」

 恋人と肩を寄せ合い、凭れる彼女の方に腕を回して頭を撫でる。
 お昼も終えた今、彼女の体温に触れていると、このままうっかり寝入ってしまいそうだ。
 大きな欠伸を一つして、首を傾げた。

「あとは私の生理が終わった後とか?
 先週はそれで、すごい食べたような気がするー。
 何か共通点でもあるのかなぁ」

 眠気を堪えるように軽く目を擦り。
 上目遣いに見てくる恋人が、かわいいなあと思い、額の上に軽くキスを落とした。
 

サヤ > 頭を撫でる手にうっとりを目を細める。
今日はこの後特に予定もない、目を閉じてしまおうか、でも、まだこの香りと温もりを味わっていたい。

「ああそれもありますか、うーん、消耗した体力を補うためなんでしょうか?でもそれだと今までのことが説明つきませんね…。」
生理で失った体力のために大量の食事を必要とする、一見筋が通っているが、それなら今までの生活で食べていた理由にならない。
サヤが来てから変わったものがあるはずだ、新年会の前後に。
あくびを噛み殺して、じわりと滲んできた涙を手ぬぐい吸い取らせる。

「ふふ、お返しです。」
話の最中だというのに、口付けしてくる恋人の、Tシャツの襟元からだらしなく露出した首筋に、軽く唇を触れさせて。
「でも私がお仕事が遅れた日は迦具楽さんの体調には関係ないですし……。あ、そういえば私のがあった後も沢山食べる日がありましたね。」
カレンダーに視線を移す、日付を見ただけで三食、何をどれだけ食べたか鮮明に思い出すことが出来る。
新年会で事態が発覚してから特に気をつけているし、原因を探すために何か変化があれば覚えておくようにしている。

「んー、迦具楽さん、何か私から無意識に吸ってる、とか?」

なんとなく分かるのは二人のうちどちらかが変調か疲労があった日の後だ、迦具楽が主食とする熱量をサヤから吸っているならそれで概ね説明がつくように感じる。

迦具楽 >  
「そうだねえ、体力を補うだけならもっと、他のタイミングでもありそうだし」

 他にも疲れた日や弱った日はある。
 そういう時にも、食欲が亢進しておかしくないはず。

「んもう、くすぐったいなぁ」

 首筋に唇が触れると、くすぐったそうに身じろぎして、彼女の頭に鼻先をうずめる。
 いい匂い、愛しい恋人の匂いだ。

「ええ、そんな事あるかなぁ。
 たしかにサヤは食べちゃいたいくらいだけど、無意識にやっちゃうかなぁ。
 つまみ食いするときはそのつもりでやるし――あ、今のなし」

 口が滑った。
 しかし、稀に、気づかれないくらいに彼女の体温を食べる事はあるけれど。
 無意識に食べた覚えはこれといってなかった。
 

サヤ > 「あはっ、もう、そんなとこ嗅がないでください。」
こそばゆい感覚に軽く身じろぎして、口では言いながら抗うことなく。
ソファの上にたらされた手に自分の手を重ねて、指同士を搦めて握る。

「無意識なら自覚はないですからねぇ、あくまで可能性の話ですよ?
 あら、悪い子ですね。やっぱり吸ってるんじゃないですか、ご飯少なめにしちゃいますよ?」
さらりと看過できない発言である。といっても体温を食べられている事ではなく、ちゃんと食事を用意しているのに黙って間食していることが気に食わないのだが。
握っていない手でつんつん、と頬を突付く。
これが他人の体温を食べているのだったらしばらくお茶漬けと漬物だけの生活を送ることになるだろう。

「んー、でも普段から私から吸っているわけではないならやっぱり違いそうですね。
 体調不良じゃないお仕事が長引いた時が一番謎ですね。遅く帰ってきて……お夕飯を急いで作って……一緒に食べたら、お風呂に入ってすぐに寝る……。別に変な所はないですよねぇ…?」

迦具楽 >  
「やーん、サヤのごはん美味しいから減らされると寂しいー!」

 頬をつんつん、とされれば、許してとばかりに抱き寄せながら頬ずり。
 絡めた指はしっかり離れないように握り返す。
 他人の体温――まったく食べていないわけではないのは、まだバレていないようだ。

「うーん、そうだよねえ、へんな事はない、と思うけどなあ」

 特別変わった事もしていなければ、妙な事もない。
 なんなら変哲もなさすぎるくらいだ。

「ねえー、やっぱり遅くなる時くらい、私がご飯つくるよ?
 お仕事終わってからだと大変でしょー?」
 

サヤ > 「あはっ、冗談ですよ。迦具楽さんの食べっぷりは見ていて気持ちが良いですし、作り甲斐があります。
 何より家族にひもじい思いさせるなんて出来ません。」
頬ずりに応えてこちらも突付いていた手を迦具楽の肩に回してぎゅっと抱きつく。
サヤは嫉妬深く、独占欲も強い、外食をするのはまだしも、迦具楽が自分以外を食事として食べていると知ったら、不満に思うだろう。
路地裏をうろついてごろつきを食べるのもやめてほしいものである。迦具楽は自分が作る食事だけを食べて生きていけばいいのだ。

「んうー、別に私は大変じゃないんですけど、私と迦具楽さんの分はさほど手間もかかりませんし。
 むしろ時間が遅れて迦具楽さんがお腹を空かせてしまうのが心苦しいですね……。
 でも迦具楽さんのご飯は全部作りたい……妻として、全部私が……でも……うーん……。」
独占欲と気遣いのせめぎ合い。それに妻として配偶者に食事を作らせるのはどうにも気が進まないのである。
古い価値観ではあるが、一家の食は妻が担うものという考えがサヤにはあった。