2021/03/14 のログ
迦具楽 >  
「まあ、私はサヤが大変じゃないならいいんだけどさー。
 でもたまには、私にも甘えたりしていいんだからね?」

 いつも甘えさせてもらってばかりというのは、なんとも情けない。

「しっかし、考えてみてもよくわかんないね。
 空腹感が減りはじめたのは年末くらいからかなぁ?
 でも、そのころと、それ以前とってそんなに変わった事ってないよねえ」

 そのころ当たりから、恋人として仲が深まった――恋人だと口に出来るようになってきたくらいではあるが。
 それは関係性が進展しただけで、生活が特に変わったわけでもなく。

「うーん?
 わっかんないなぁ」

 結局、首を捻ってみても迦具楽には思いつかなかった。
 

サヤ > 「ええと、今、甘えているつもりなんですけど…不足ですか…?」
手を握って、抱き合いながら頬ずりする。サヤとしては他人にはとても見せられない甘えた行動なのだが。
これ以上となるとちょっと思いつかない。

「年末、ですか……その頃に何か……あ。」
思い当たってしまった。一つの可能性。
関係性が進展するきっかけとなった行為、そしてその後毎日のように繰り返していて、帰るのが遅い日、どちらの体調が悪い日にはしていない行為。

「あ、あの………ええと………まさか、なんですけど…………。」
顔を赤くしてカレンダーに再び目をやる。それをしなかった日が続いた後、迦具楽の食欲は増進している。
恐ろしいほどぴったりと符号する。

「その…………ええっと…………あの……し、シていない、日の………後に………沢山食べる日が………来ている、みたい、です……。」
うつむいて、小さな声で、半ば確信に近い推測を口にする。

迦具楽 >  
「ううん、こうやって甘えてくれるのも嬉しいよー!」

 まったく、本当に可愛い恋人である。
 比喩ではなく、食べてしまいたくなるのが困りものだ。

「んえ、なにか思い当たった?」

 あ、という声に首を傾げる。
 しかし、その後の発言を聞けば、むむむ、と眉間にしわが寄った。

「え、っと。
 つまり、サヤとセックスする事で、エネルギーを貯えてるって事?
 うん、確かに言われてみれば、思い当たらなくもないけど」

 どういう仕組みかはわからないが、いや、わからなくもなかったが。
 おそらくは行為そのものよりも、物質で。
 その原因物質が、恐ろしくエネルギー変換効率がいいのだろう、おそらく。

「――サキュバスかわたしはー!?」

 頭を抱えて叫ぶのだった。
 

サヤ > 「あは、じゃあ存分に甘えちゃいます。えへへ……。」
犬のように頬を擦り付けながらもたれ掛かる。
尻尾が生えていれば千切れんばかりに振り回していることだろう

「ええ、恐らく……、お仕事で遅い時……あと、その…月のものが…来ている時、どっちも、してません、でしたから……。」
直接的な表現をされれば、赤い顔が更に赤くなる。もう少し婉曲してほしい。

「まぁ、まぁ、落ち着いてください。その、ちょっと、私としても予想外というか……結構、恥ずかしい事実で驚いてます……。
 でも原因はわかりましたし、本来のとは違いますけど、ちゃんと、意味のある行為だっていうのが、わかって、ちょっと、嬉しいです。
 愛を確かめるってのは、もちろんありますけど、気持ちいいから、してるのって……少し、後ろめたかったので………。」
りんごのように赤くなった頬を両手で抑えながら。
全く無意味というわけではないのはわかっていたが、やはり子供を作るための行為を作らないようにしているのは、快楽を貪るだけのように思えてならなかった。
しかしこれからは、迦具楽の食事という大義名分を得たのである。
ちらり、ちらりと頭を抱える迦具楽を熱の籠もった目で見やる。

迦具楽 >  
「ぶぇぇぇなんかすっごい複雑な気持ちなんだけどー!
 いいじゃんさぁ、セックスは気持ちいいんだからー気持ちいいからするでさぁ。
 私はむしろこの推測の方が恥ずかしいんだけどー!」

 赤くなる恋人と反比例するように、うがーっと呻きながら頭を抱える。
 素直に喜ぶには酷く複雑な気分だった。

「あーうー、まあ、サヤが後ろめたくなくなるなら、いいけどさぁ。
 でもなぁ、なんかなぁ」

 うーっと唸りながら、頭をがりがり掻いて。
 隣からの視線を横目で見返すと、なんだかこのままだと襲われそうな気がしたので、そっと離れる。

「あーっと、そうだそうだ。
 サヤに見せたい物があるんだったー」

 若干、棒読みになりつつ立ち上がると、そそくさと部屋を出ていってしまう。
 ついでに顔を洗って頭を冷やしてくるが、そう間を置かずに戻ってくるだろう。
 手にはバッグを抱えていて、そのまま元の通りに隣に腰を下ろす。
 

サヤ > 目と目が合った瞬間、体重移動を開始、もたれ掛かるから押し倒す、へ。
しかし、直前に迦具楽が立ち上がったせいで、それは空振り、ぽてん、とソファに一人で横たわる結果となった。少し寂しい。

戻ってくる頃にはこちらも深呼吸と精神統一で平常に戻っていて、あなたの貞淑な妻でございますといった佇まいで背筋を伸ばし、手を膝の上に置いて静かに待っていた。
そして持ってきたバッグに首をかしげる

「見せたいもの、ですか。何でしょう?刀剣の類でしたら実用かどうかわかるぐらいですよ?」
鑑定依頼かと勘違いして、異邦人街ならいくらでも専門家がいるだろうに、と不思議そうに。

迦具楽 >  
「あー、いやいや、そういうのじゃなくってさ。
 少し前から色々、やってたんだけど。
 ようやく現実味が出てきたから、ね」

 そう言って、バッグの中から引っ張り出した茶封筒。
 その中身を出して、数枚の紙をテーブルの上に広げる。

「これ、島への正式な居住許可の仮書類。
 色々手続きしてさ、やっと正式な身分と戸籍を貰える事になったんだ。
 居住許可証が出来るのにもう少しかかるみたいだけど。
 でもこれで、堂々と島で暮らせるようになったよ」

 と、ようやくだ、と言うように息を吐いて、朱印の押印された書類を見せる。
 そこには、異邦人保護制度により島への居住を許可する旨や、島内に出向している企業の正式な職員として雇用される事、望めば学生となる権利も与えられるという事。
 それらが簡潔に書面に記されていた。

「まあ、まだちょっと気が早いところもあるけどさ。
 これでその、ちゃんと、結婚とか、さ、考えられるようになったかな、って」

 えへへ、と照れ臭そうに笑いながら。

「これでやっと、サヤのこと、安心させてあげられるかな、って。
 島の福祉とかもちゃんと受けられるようになるし、その、将来的にも、ね」

 彼女は家族が、子供が欲しいと言っていた。
 これまでは、自分の立場もあって安易に答えられるものじゃなかったけれど。
 こうして、公式の身分を手に入れられれば、それだって、かなえてあげられるかもしれない。
 とはいえ、まだ自分が子供産んだり育てたり、という未来がさっぱりイメージはできないのだが。
 

サヤ > 「ええっと………。」
出てきたのは茶封筒、中に詰まっていたのは書類、それらがテーブルに広げられ。
この間言っていた近いうちの良い知らせ、がこれなのだろう。
「これ、って……つまり………。」

それらの意味する所と、迦具楽の言葉を飲み込むのに、いくらか時間がかかった。

「迦具楽さん……!」
自分のために、将来のためにこれまでの身分を捨てて、財団の管理下に入ることを選んでくれた恋人に感極まって飛びつく。

「ありがとうございます!ありがとう、ございます…私のためにこんなにしてくれて……!私のわがままを本気で考えていただいて……!」
確かに望んでいた、だがそれは具体的な筋道があるわけでもない曖昧な望みで、次に何をするべきかすらわかっていなかったのだ。
そこを迦具楽は、先んじて用意してくれていた。願うばかりで何もしていなかった自分とは違う。

「ああ、神様……私の旦那様は最高の人です……。」
抱きついて、その胸元へ顔をうずめながら、感動の声を漏らす。

迦具楽 >  
「おわ、っと。
 あはは、こんなに喜んでくれるなら、何度も手続きに通った甲斐もあったかな?」

 抱きつく恋人を受け止めて、今にも感動で泣き出しそうな彼女を宥めるように撫でる。
 ちょっとしたホワイトデーのサプライズ、程度のつもりだったのだが。
 予想していた以上に喜んでもらえたようだ。

「えへへ、サヤと暮らすまでは、別にどうでもいいと思ってたんだけど、さ。
 ちゃんと一緒に生きる事を考えたら、ほら、ね?」

 自分一人であれば何とでも生きられたが、誰かと一緒となればそうはいかない。
 制度の下に監視されるよりも、制度によって助けられる場面の方が絶対に多いのだ。

「あとは、うん、仕事の方かな。
 そっちもね、もうすぐはっきりさせるよ。
 まあ、サヤと暮らす事を考えたら、選手を続けるよりも、このまま開発部に入るのがいいんだろうなあ」

 スポーツ選手なんて、不安定な仕事だ。
 しかも、迦具楽の場合、試合が組まれれば島の外へ、世界中あちらこちらへ飛ぶ必要もある。
 そうなればきっと、彼女に寂しい思いをさせる日も増える事だろう。

「まあ、選手辞めたら収入は減っちゃうけどね。
 それでもまあ、それなりの給料は貰える事になってるし、苦労はさせないと思う」

 少なくとも、彼女を経済的に不自由させない程度には、養っていけるだろう。
 

サヤ > 「本当に、本当に、ありがとうございます……。」
学園が異邦人の受け入れに寛容とはいえ、苦労があったことだろう。
『門』から来たばかりの異邦人とは違い、違法居住者として数々の前科があるのだから。
その仔細を問うつもりはない、ただ迦具楽がその苦労を自分のために乗り越えてくれたのが嬉しくてたまらない。

だが、仕事については頷くわけにはいかない。
「迦具楽さんが、私のことを考えていただいているのはわかります。
 でも、そのために自分の道を諦めるようなことはしてほしくありません。
 選手として努力している姿を、私は一端ですがあの冬の浜辺で見ました。いくら私のためのとはいっても、そうあっさりと諦められるものではなかったように見えます。
 家を空けるとか、もし契約が切れたらとか、ご心配されてるんですよね、きっと。
 でも、大丈夫です、家を守るのが妻の努め、しっかりと果たして見せます。」
優しく、だがきっぱりと告げる。心配するなと、躓いた時に支えるぐらいはしてみせる、と。

「その分、家にいる間はたっぷり愛してくださいね?」
そして柔らかく微笑む。

迦具楽 >  
「あはは、まあ雇い主も色々協力してくれたからさ。
 ちょーっとグレーな手を使ったりもしたけどね」

 とはいえ、雇用主と協力して経歴を多少偽った程度のものだ。
 そこに、この数年間、異邦人街で行っていた自治会活動などの経歴も付け加える事で、品行方正な異邦人として印象付ける事が出来たのだ。
 知恵を貸してくれたある風紀委員や、雇用主らには感謝ほかない。
 しかし。

「――そっか。
 あはは、なんか、色々お見通しって感じだなあ。
 まるでサヤを言い訳にしようとしてるみたいで、かっこ悪いね、私」

 恥ずかしくて、微笑む彼女を胸に抱き寄せる。
 言われずとも、出来る限り愛情には応えて、返していくつもりだ。

「うん、そのためにも、しっかりしなきゃね。
 大丈夫、ちゃんとこの中途半端な気持ちには、決着をつけるよ。
 そうしたらまた、ちゃんと話すね」

 大切なヒトに胸を張るためにも、煮え切らない気持ちのままではいられない。
 彼女を胸に抱きしめて、改めてそう思わされた。
 

サヤ > 「構いません、少しぐらいイカサマしたって、騙される方が悪いんです。」
目的のためには手段を選ぶな、それがサヤの流派の教えである。例え真っ黒な手を使っていたとしても迦具楽が納得して行ったならサヤは喜んだだろう。

「はい、ご自分の歩みでどうぞ。どれだけ時間がかかっても構いません、あなたが後悔しない、一番望む方法で決めてください。
 私はそれに従い、共に歩みます。」
もう急ぐ必要はない、迦具楽はサヤの願いに応えてくれた。ならば今度はこちらが迦具楽の望みを叶える番だ。
どんな道を選ぼうとも、それに付き従い支えることによって。

「あらためて、これからもよろしくおねがいしますね、旦那様……。」
細い、だが頼もしく力強い腕に抱かれながら、うっとりと囁いた。

迦具楽 >  
「ん、ありがと。
 きっとそんなに待たせないとは思うけど、がんばるね」

 自分がなにを選んでも、きっと受け入れてくれる。
 そう確信できるからこそ、胸を張れる答えを持ってこなければならない。
 とはいえ。
 どうしたところできっと、後悔はするのだろうけれど。

「旦那様――」

 耳元でささやかれた恋人の、甘い声。
 それに、ぞわぞわと背筋が震えた。

(ああ、なんかもう、サキュバスでもいいや)

 こんな声で囁く彼女がいけないのだ。

「――そんないけない声を出す奥さんは、食べちゃおうかな」

 抱きしめたまま体勢を入れ替えて、ソファの上に組み伏せる。
 そして、そのまま彼女の首筋に唇を落として。
 恋人同士の昼下がり。
 日が暮れるまで、たっぷりと甘い時間をすごした事だろう。
 

ご案内:「宗教施設群 迦具楽の家」から迦具楽さんが去りました。
ご案内:「宗教施設群 迦具楽の家」からサヤさんが去りました。