2021/03/25 のログ
神代理央 >  
何とも皮肉な事ではあるが、この墓地に眠るのは被害者と加害者の両方。
落第街やスラムで死亡した者の中で、墓地に埋葬までされる者は多くは無い。
かといって、ゼロという訳でも無い。
怪我をして病院に運ばれたり、様々な偶然が重なってこの墓地に埋葬される事もある。
身元も分からず、名前すら分からず。唯安らかな眠りを迎える様にしつらえられえた墓地。

「……貴様達も、こんな場所では落ち着くまいなぁ。
とはいえ、特務広報部であるからには恐怖と武威を示さねばならん。
黄泉の国でも連中に甘い顔をするんじゃないぞ。そんなことをしたら、給料払ってやらないからな」

ぷかぷかと紫煙を燻らせながら、月光を受けて鈍く輝く墓碑にぼんやりと語りかける。
甘ったるい紫煙と少年の独り言だけが、静寂に包まれた墓地に流れていく。

神代理央 >  
「……最近は其方に仲間が赴任する事も無いだろう。
貴様達もちゃんと訓練を受けていれば良かったのだ。
日々の鍛錬が大事なのだとあれだけ言ってやったというのに…」

応える言葉はない。
応える姿も無い。
それでもぼんやりと。何処か穏やかな口調で。
唯只管に、墓碑に語りかける少年。

「……私は間違えない。誤った選択すら、力でねじ伏せ、正解にしてみせる。
しかしそれでも。貴様達を私の部下にしてしまった事が、結果的に此処に眠る事へと導いてしまったというのなら。
それは…それはきっと……」

それ以上は、何も言わなかった。
ただ、紫煙をゆっくりと、夜空に吐き出すばかり。

神代理央 >  
「……貴様達に愚痴を零しても仕方あるまいな。
宴席の最中に邪魔をした。後はゆっくりと寛ぐが良い」

殆ど灰になった煙草を携帯灰皿へ放り込んで。
最後に、懐から取り出した煙草を墓碑に供えて。
ほんの僅かに。じっと観察していなければ分からない程の
小さな笑みと、困った様な表情を浮かべて。

少年は、墓地を後にするのだろう。

ご案内:「常世島共同墓地」から神代理央さんが去りました。