2021/11/10 のログ
ご案内:「常世島共同墓地」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
 
落第街への大規模攻勢から数日。

少年は一人、無名の墓地を訪れていた。
猟犬の墓場。名も知らぬ狗達の末路。
そういう、場所。
 

神代理央 >  
「二回目だ」

部下達が葬られた墓標に供えるのは、酒だのつまみだの煙草だの。
非道徳的で風紀委員が抱えるにしては大分相応しくないもの。
そんな物が詰まった紙袋。そこから一つずつ中身を取り出して、他よりも大分大きな墓標の前に。

「笑って構わないぞ。二回目の落第街での戦争だ。
また大勢死ぬ。お前達の所にも直ぐに同僚が大勢行くだろうさ」
 

神代理央 >  
「死して尚、猟犬として駆け付ける様に躾けたつもりだったが…どうやら、貴様達にはまだ躾が足りなかったらしいな」

紙袋の中身を空にして。
丁寧に折りたたんで制服のポケットに収めれば、其の侭煙草を一本。
Nymph、の最後の一本に火を付ける。

「幽霊でもゾンビでも別に構わなかったのだが。やはり忠誠心というのは恐怖ありきでは駄目なものなのかな」

神代理央 >  
「……まあ、今回は上層部が本気だ。投入する兵器の量も質も相当なものになる。
地獄はさぞ賑やかになるだろうさ。ポーカーの相手には困らないだろう」

燻り、墓地に流れていく紫煙。

「賑やかにしてやった分の御返し、というものが欲しい所だがな。
一人くらい返してくれたらどうだ。どうせ、其方は定員オーバーだろう?」

神代理央 >  
「……と、そんな事を言っても、貴様達に通じる訳もないか」

墓碑に向けて幾ら言葉を喋ったところで。
それが死者に届く訳もない。
分かってはいる。わかってはいる、のだが。

「…出勤するなら早くすることだ。
それとも"私が其方に出向いた方がいいかな"」

それを望む訳では無いが。
選択した結果が、そうなるかも知れない。
それは――まあ、少なくとも後悔に繋がる事ではない。

神代理央 >  
「……まあ、結果がどうなったとしても」

燃え落ちた煙草の吸殻を、ポケットから取り出した携帯灰皿に叩き込む。

「私が後悔などする訳もない、ということは貴様達も良く知っているだろう?
まあ、其方では貴様達の方が先輩だ。多少は顔を立ててやるさ」

墓標に背を向けて、歩き出そうとして――

「……だから、私の席をちゃんと空けておいてくれよ?」

静かな独り言。それは、誰にも届く事無く。
広大な墓標の群れへと、消えていく。
後に残ったのは。不道徳な供え物の山だけ。

ご案内:「常世島共同墓地」から神代理央さんが去りました。