2021/11/23 のログ
ご案内:「常世島共同墓地」に柊さんが現れました。
■柊 >
共同墓地へ一人の男が現れる
両手には花束と掃除用具一式 それを持ちながらまっすぐに、ある墓の前へと
たどり着いたら、ゆっくりとしゃがんで掃除を始めよう
「久しぶり蓮、ゆっくりしてたか?
兄ちゃんはまだゆっくりできそうもないよ」
色々な事が待っているのだから、ゆっくりなんてしていられない
水を含めた布巾 それで穏やかな気持のまま墓を優しく拭いていく
久しぶりに来たものだから汚れが溜まっている それを綺麗に拭き取りながら
いろいろな人々に出会ったことを思い出して 小さく笑み
「お兄ちゃんはあれから、色々な人にあったけど
いい人ばっかりで、お兄ちゃん……心が入れ替わったようだよ」
本当に、最近はいい人ばかりに出会っている
思い出せば嬉しくて 素敵な出会いと思い出ばかり
「これは蓮のおかげかな?
だとしたら、いい出会いばかりをくれてありがとうな」
きっと、これも妹のおかげだ
何年も、ずっと憎しみにとらわれていた自分がこうして
こうして 気持ちを解して再び固められたのは 妹と 出会いのおかげ
■柊 > 出会いのことをたくさん語って聞かせよう 嬉しげに 笑みながら
一通り聞かせ終わったら、語り疲れて 大きな息を吐こう
「もっとたくさん出会うかもしれない、見守っててな?」
そうして、語り終えたら 顔を引き締め 真面目な声の調子で
緊張 したように口を開こう
「お兄ちゃんな、いっぱい悪い事しちゃったから自首しようと思うんだ
それで、もし許してもらえたら昔からの夢 先生になる
だから、悪い事したのはそっちに行ったら昔みたいに
一杯蓮に叱られるから大目に見てな?」
一杯、いっぱい 叱られていた 優柔不断 情けない 不器用
数え上げればきりがないくらいに叱られていて 可笑しくなって笑ってしまう
それでも、助けられた命はあった 友人に それを教えてもらったから
少し誇らしげに 胸を張ろう
「待っててくれるかな 蓮は」
応えは、当たり前のようにない が、これで声でもかけられたら
驚いて腰を抜かしてしまう でも、嬉しくて それどころじゃないかな
「とにかく、いっぱい謝ってくるから これからは良いこといっぱいするから
見守ってくれると嬉しい いや、蓮はゆっくりしたいかな 蓮に任せるな?」
生きていたら 優柔不断と怒られるであろう言葉だ
今すぐ決めろ なんて怒られるだろうな と考えて再び笑う
「とにかく、この報告がしたかった 聞いてくれてありがとう 蓮」
男はそうして、柔らかな笑みをもって墓を磨き続けて
■柊 >
かなり綺麗になった所で、着信がなる 携帯、それを取り出し見れば
右腕のタカハシからだ 布巾を一旦置き それを取ろう
「はい、私ですが? ――はぁ、いい加減腹を括りなさい
次期……いえ、頭取が聞いて呆れますよ?」
聞こえてきたのは泣き言と 考え直さないか の言葉
それと 友人に関しての 話も
「そうですか、よくやりましたね はい、全力のバックアップをしなさい
それと、慎重に事をすすめ あの方の指示を乞うこと
――では、またお電話しましょう? 『雲雀』の頭取さん」
もう、頭取の座を引き継がせた その男の携帯を切る直前に言葉が 情けないのは
くつくつ 喉奥で笑い、しょうがないと割り切ろう 自分も最初はそうだった
覚悟を決めながらも おっかなびっくりだった
「教師になっても連絡は取らなければいけませんね」
右腕やその周囲を確認するために できることはないかと探すために
携帯をしまい込み 再び 墓へと向き直る
「ごめんな 仕事の電話で。とにかく お兄ちゃんからの報告は以上
後は、そっちに行ったらたっぷり聞く
それと、お兄ちゃん頑張るからな」
死ぬ前に振り返って いい人生だったと笑えるために
ゆっくりと腰を上げ きれいになった墓を眺めては 掃除用具を両手に持って
出口に向け歩いていく
『気づくのおせーんだよバカ兄! 行って来い!』
そう聞こえた気がして振り向いても 何もなかったし 何もいなかった
まだ、見守っててくれるのだろう そう気づいて、嬉しそうな表情を
「うん、行ってくる」
しっかり 頷いて、振り向かせた身体を戻しては 出口へと
そして、黒いネクタイ それを外して、ポケットにねじ込もう
もう 必要のないものだから
そうして 男は墓地から消えて
ご案内:「常世島共同墓地」から柊さんが去りました。
ご案内:「常世島共同墓地」にノアさんが現れました。
■ノア > 遠く、去り行く背広を見送る。
入れ替わるように、丁寧に手入れのされた墓石の前に訪れ、
既に供えられた花束に添えるようにして数輪のリンドウを供える。
瞳を閉じて暫し物思いにふけった後、最後に小さく黙礼だけして足早にその場を後にする。
声が、聞こえた。月日に薄れた想いの残滓。
それでも、確かに聞こえた言葉があった。
「――俺も行くか」
敷地を出るなり、咥えたたばこに火を灯す。
残るタバコは18本。
吐き出す紫煙越しに振り返れば、小さく少女の姿が見えた気がした。
友は巣箱を旅立った。
姿無き手がその背を押していた。
ご案内:「常世島共同墓地」からノアさんが去りました。