2021/11/25 のログ
■追影切人 > 「――ってな訳で。まぁ、俺の方は適当に生きてるっつー事でよ。
…ま、怪異になり掛けてたり監視対象だったりで下手すりゃ何時死んでもおかしくねーが…今更だよなぁ。」
明日死ぬか、数年先に死ぬかのような違いでしかないだろう、と。笑って語りながら煙草を蒸かしつつ立ち上がる。
もしかしたら、また顔を出すかもしれないが…少なくとも、また来る機は無い。
――感傷に浸っても死んだ奴は戻らない。ただ土に還るだけだ。
「そんじゃ、アンタも天国だが地獄だか知らんが達者でな――■■。」
その名が音に乗る事は無い。何故なら彼女の名前は”失われている”のだから。
概念としての名前の喪失――だから、言葉に載せても、文字に表しても、記録に残しても――…
(その名前が人目に付く事は二度と無い、か。それがアンタの異能だかなんだかの代償だったよな、そういや)
誰の記憶にも、世界の記録にも名前が残らない呪い。
自分は彼女の名前をしっかり覚えているけれど――その名前を呼ぶ事は二度と無い。
花束はそのままに――どうせ、ここの手入れや管理をしてる連中が片付けるか生けるかするだろう。
他人任せの適当さ加減、無責任な程だが、自分と彼女の間柄はそのくらいが丁度良い。
(――ま、一つの区切りにゃなったか。…気分的には)
歩き出す――振り返らず、省みない。
死を知らぬ斬刃は、そうして束の間の墓参りを終えて。
誰の目にも留まらぬまま、その場を立ち去るだろう。
ご案内:「常世島共同墓地」から追影切人さんが去りました。