2022/10/02 のログ
■深見 透悟 > 「なーるほど、こりゃあ寝心地も良さそうだわ。」
海を臨む丘の上、共同墓地にテディベアを背負った背を向けて、深見透悟は一人、大きく伸びをした。
吹く風はひんやりと涼しく、時期が時期ならば肝試しにうってつけの様相だけれども、生憎とお盆はとうに過ぎている。
「やっぱこーゆーとこに居心地の良さを感じてしまうのは、俺も幽霊の端くれだからかねえ……」
しみじみと呟いて、共同墓地に至る道すがらにあった自販機で買ったお茶をすする。
オーゥジャパニーズワビサビー、とかふざけた事をぬかすのもいつも通りと言えばいつも通りで。
しかし、世の中全て茶化してしまいそうな軽薄さの中にも、少しだけ郷愁の念の様なものはあった。
雄大に広がる海なんてものは故郷に居た頃はついぞ見た事が無かったなあ、としみじみついでに思い返して、ひとり。
■深見 透悟 > 実のところこの共同墓地に来たのは二度目である。
一度目は夏休み中に知り合ったシスターのアドバイスを受けて自分が埋葬されていやしないかと尋ねに。
結局その時は空振りに終わり、こうして風景など気にする事も無く失意のうちに退散したのだったが。
「改めて来てみりゃ良いとこじゃん。空も海も広い!風になるには最高のロケーション!」
ここで成仏したら真っ直ぐ還る場所へ還れそうだなー、などとちょっと他の幽霊を羨む幽霊。
やっぱりちょびっとセンチメンタルな気分らしいぞ、と自分の状況を客観視して焦る。
「はー、やだやだ。俺とした事がしんみりし過ぎてしまった!
それもこれも夏真っ盛りにビーチにも行かずあれやこれやと思い悩んでたのが悪い。くっそー、勿体ないことしたー!」
水着のお姉さん見たかったー、と幽霊らしかぬ煩悩っぷりを吐き出しに吐き出して。
よし、スイッチング完了と高々と腕を天へ掲げたのだった。単純。
■深見 透悟 > ひゅう、と風が吹く。秋の訪れを如実に感じさせるその風は透悟の髪を撫でて海へと抜けていった。
ふる、と小さく身震いをしてから、ひとつふたつ、小さくため息を溢し。
「………~っ。さあて、いつまでも墓地に居たらうっかり埋葬されちまいそうだ。
水着のお姉さんは来年の夏の楽しみとしてとっといてだ、ひとまず今年の秋から冬にかけての楽しみを探さねーと!」
行くぞーリリィ、と背中のテディベアへと声を掛けて。
くるりと踵を返し、軽快な足取りで墓石の並ぶ道を抜け。
そのまま真っ直ぐ、異邦人街へと丘を下っていくのだった。
ご案内:「常世島共同墓地」から深見 透悟さんが去りました。