2020/07/29 のログ
五百森 伽怜 > 「ひええっ、逮捕は勘弁ッスー!?
 って冗談ッスか……」

ふぅ、と胸を撫で下ろす五百森であった。
公安委員会。いつも風紀の方を主に追いかけているものだから、
なかなか取材の機会がない。
今度、安全な場所での取材をお願いしてみても
いいかもしれないな、と思いつつ。
しっかりとその顔と名を頭に刻んでおくのだった。


「って、うええ~!? チクらないで欲しいッス!」

何とまぁ、人の悪い男だろうか!
しかし、命の恩人である。そんなことを思うのは
きっと失礼だ。そう思った五百森は、続く『人が悪いッス!』
という言葉を喉元で飲み下した。


「明日見た夢……って」

その男の言葉は、果たして冗談か何かだったろうか。
或いは逆説的に何かを示しているのだろうか。
それは、五百森には分からない。知る由もない。

しかし感じる、その男の放つ言葉の重み。
そして触れれば沈み込んでしまいそうなその深みに、
すっかりスリルと興味を抱いてしまったのだった。

「お兄――」

すぐにでも話しかけようとするが、
目の前の男は去ろうとするではないか!

 「――あっ!? ちょっと待って欲しいッス!
 お兄さんは何者ッスか! 
 話を、話を聞かせて欲しいッス~!」

そう口にしながら、ポラロイド片手に
去りゆく男を追いかける五百森。

東山 正治 >  
「それがさァ、今のご時世動いちゃうのよねェ。
 知らない?『魑魅法<すだまほう>』って。"こんな世界"だと、あるんだわ。」

この<大変容>後の時代は、『非現実』が『現実』になってしまった。
『自由』とは『秩序』の下に作られる。
『秩序』無き自由は『モラルの崩壊』
即ち、国、世界としての形を保てない大崩壊だ。
混沌とした世界、『常世学園』と言う計画から安定期に入った世界は
世界を安定させるために様々な法案を作った。
……尤も『余りにも多すぎるせいで、機能していない』のが現状だ。
こんな世界で弁護士なんて、何を弁護すれば良いのか。
誰を弁護すれば良いのか、分かったものじゃない。

「今のは第3条『無断誘惑』と第5条『殺人未遂』ってとこかなァ。ハハァ……。」

ニヤリ、と五百森の方を見やった。

「五百森ちゃん、それなら今度公安のイメージアップ記事期待してるからさ。宜しく。」

このおっさん、意外とせこいぞ!


そんな東山も、逆瀬に合わせて歩き始めた。

「何だよ、そのツラで下戸かよ。」

残念だねぇ、なんてふざけながら五百森を一瞥して手招き。

「ほらァ、速くこないとおいてっちゃうよォ?五百森ちゃん。」

東山が徐に煙草を取り出し、口に咥えて火をつけた。

「……ま、それならそれでいいけどさ。」

「────そんじゃぁ、夢から覚めるのは何時になるかね?」

なんて、煙と一緒に吐き出した。
意味を持つかは分からない言葉。
何もかもが夢の様な世界で、予知夢を見続け
それに居合わせ続ける男。
それこそ、覚めない夢のルーチンワーク。




────俺だったら、やってられねェな。




ゆったり、三人の歩みが、朝日の様なネオンライトの光に消えていく……──────。

逆瀬 夢窓 >  
報告。
黒街の狼通り魔事件において。
想定外の人物と関わりを持つ。

名を五百森伽怜と東山正治。
以下の添付書類にオモテのデータを記す。

悪霊の正体は委細不明。
恐らく、偶発的に生まれて必然的に消滅した。
今はそれでいい。

追記。
 
 
《明晰夢》の逆瀬夢窓は。

自分が死ぬ夢を見た。

逆瀬 夢窓 > 以上で黒街の狼通り魔事件(あるいは、明日見た夢)の報告を終える。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から五百森 伽怜さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から東山 正治さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から逆瀬 夢窓さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 常夜街」に御堂京一さんが現れました。
御堂京一 > 「ほら、とっと行った行った」

怯えの表情を見せる男子学生達が中央に向かうのを見届けため息をこぼす。
見るからに一夏の冒険しに来ちゃいましたという挙動不審で遊び慣れていない様子に後を付けて見ればあっさりと路地裏に引っ張り込まれ。
こわもてな男に絡まれあわや違法店舗への強引な客引きか、というところで一発ぶちかまし事なきを得た。

自分も面倒ごとに巻き込まれる前にとっととここを離れよう、と中央街に近い猫の額ほどの広さの公園に移動すると自販機の光に照らされながら懐を探り、煙草に火をつけ深く吸い込み、煙を吐き出す。

御堂京一 > 漂う煙はニコチンのそれではなく甘い紅茶のような香を放つウィッチクラフト製のハーブによるもの。
本来なら肺を浄化する穢れ払いの品だが、ここの澱んだ空気を吸った後はついこれが欲しくなってしまう。

「なんか最近騒がしいねえ……また変な噂でも広まったかね」

ここは様々な人や品が雑多に入り混じる街、ゆえに噂話というものに事欠かない。
曰く異能に目覚める事が出来る試練を受けられる。
曰く願いを叶えてくれる不思議な店がある。
曰く好きな人に告白すると結ばれる場所がある。
曰く数十年前から幼女が店主をやっている隠された店がある。
そんな噂を耳にしてある者は興味本位で、またある者はすがるべくしてやってくる。
どれもこれも不確かなものだと言うのに。
いや最後の奴は思い切り知人の店だが。

ご案内:「常世渋谷 常夜街」にレザーズさんが現れました。
レザーズ >  
漂う煙を掻き分けるようにして、一人の子供が姿を現す。

「面白い噂が広がっている分にはいいじゃないか」

黒紫色のローブで身を隠し、黒い長髪の少女の姿をしてはいるが、
口から発せられた声は、低い男のやたらと耳心地のよい声。

「『僕』はそういうのは好きだね。
 街も何時も同じより適度に静と動を繰り返すのがいい、君はどうかな?」

親しげに、君に対して語りかける。
それこそ馴れ馴れしく。

笑いかけるように。

御堂京一 > 見上げる空は雑多なビルに囲まれ切り取られたかのように狭い。
どこもかしこも狭苦しくて、雑多で混沌として。
一日たりとも同じ顔を見せないこの街はなんとも落ち着きがなくて、そして自分のような半端者には居心地が良く感じられる。

両親はこの島で出会い結ばれ、そうして自分はこの島で生まれた。
故郷と呼べる場所はこの異界混じりの混沌とした街でしかなく。
両親を失った今ここ以外に行き場もない。
学費は払っている、単位も申し訳程度に取っている、不法滞在者と比べれば後回しにされるだろう灰色の存在だが、いつか咎めを受ける日が来るかもしれない。

そんな自分にとって毎日がめまぐるしく、動いていなければ取り残されるこの街は色々な事を忘れさせてくれる刺激物のようなもので。

「なんだかんだ馴染んでるしなあ」

今日も店のトラブルを解決してやった駄菓子屋ばあちゃんに貰った『うまいボーノ』を取り出しサクリとかじる。
口の中の水分が一瞬で持って行かれ、むせる。


「……面白いだけですみゃいいんだがね。それで食い物にされるの見ちまうのは流石に後味わりぃわ」

不意にかけられた声に一瞬眉を寄せ、煙草を指に挟んで振り返る。

「ま、笑えるのと笑えないもんがあって、笑える方は大歓迎かね
 おたくの噂はどっちの奴だい?仲介屋サン」

ピンと煙草を指で弾けばポイ捨て禁止の術式が発動し一瞬で燃え尽き風の中に灰を混じらせ消えていき。
面白がるような笑みを向けて。

レザーズ >  
言うならば、街とは煙のようだ。
吹く風次第でいくらでも姿を変えて人々の目の前に現れる。
知らない者は、一つ向こうの道へ往く事すら恐れ、歩め。
ここにあるのは人を惑わせる数多くの摩天楼。
手を伸ばすことを、歩くことを愉しむ者の街だ。

彼のことは、

「噂話に面白さだけ求め始めたら、毎日島中を走る事になるな『何でも屋』」

そういう者がこの街にいると知っている。

珍しい嗜好品を好んでいるだとか、そう言った程度の認識。
他に知っていたとしても、態々本人に真実であるか尋ねるのもおかしな話だから聞くことはない。
そして不確かなウワサは口にしないのがよい。

「ま、そうだな。 笑える方って言えば、
 最近この街の『探偵』も動き始めたり、『裏』に行く手引をしてくれる奴らが活発化し始めそうってくらいか?」

駄菓子を食べる君を見て、笑う。

「少なくとも、新たな動きは『見え』はじめたと…
 『仲介屋』のレザーズとしては楽しみにしているんだ。
 もしかすると、君は巻き込まれるかも知れないね。
 フフ、街の人間だからね……」

表情だけ見れば、可憐な少女のようにも見える笑みだが、
致命的に声が大人の男の声だ。

御堂京一 > 「出来ればもうちょい気軽に楽しみたいもんだがままならないもんだな」

お前を知ってるぞと向ければ自分も知っているぞと返ってくるやりとりにハッと笑いをこぼして肩をすくめる。
自分みたいな人間まで把握してるだなんてどれほどの「噂」を耳にしているのやら。

「お前さ、もしかしてニュースの衝撃映像とか見て笑っちゃうタイプ?
 おもいっきり一騒動起きる奴じゃねえかよ……」

苦虫をダースで噛み潰したような嫌そうな表情を浮かべて思い切り顔をしかめる。
探偵が動いているという事はそれに値する事件が起きているという事、裏に触れるなんざそれこそ夢見がちな少年少女がファンタジーな希望を胸にやって来かねないと。
彼女の視線が菓子に向いている事に気付くと食うか?と一本差し出す。
ゴーヤ味、お前も苦虫を噛み潰せ。

「祭りの季節ってやつかい、夜店でも回って満足しとけってんだよなあ……
 『何でも屋さん』御堂京一としちゃあ稼ぎ時っちゃか稼ぎ時なんだが……
 ま、『面白い話』俺も調べて見るわ」

長々と溜め息を吐いて煙草を捨ててしまった事を後悔する、あれがありゃ煙吐くフリして誤魔化せたのに。
吐き終えればハッと口の端を吊り上げ男の声で喋る少女に笑いかける。
声のアンバランスさに嫌悪を向ける事はない、せいぜい「へぇ」くらいだ。
この島で生まれ育った身としてはちょっとした個性のうちというものだ。

レザーズ > 「そこは気の持ちようさ、
 そんな事を言ったら僕なんかこの身なりだ。
 衝撃映像は残っていれば多くの時を費やせるだろうね」

はっはっは、と笑い。
ゴーヤ味の菓子をありがたく頂戴して、面白いねゴーヤジュースは好きなんだと嘯いた。

「さて、冗談はさておき
 実際問題、恐らく遅かれ少なかれ君も多くの『面白そうな』人たちと遭遇してしまうんだろうね。
 僕は、自分から首を突っ込んで衝撃映像の一つでも増やして置くのも悪くないかと今、思ったよ」

軽く吹くビル風に黒い長髪は弄ばれる。
気にした様子もなく菓子の袋をあけて筒状のスナックをひとカジリ。

「……よくこんなのを食べるね、味覚を疑う」

顔を顰めながら手の甲で口元を拭いつつ、

「じゃあ、『面白い話』集めをするついでに『面白そうな相手』に僕の宣伝もしてくれないか。
 いやなに、『噂』として広めてくれるだけでいい。
 "常夜街にある古びたボードに『Lzz』と書けば、そう…お喋りな奴が来る"、とか……
 その代わりって訳じゃあないが、君への『噂』の提供は逢うたびに僕が勝手に隣で喋ろう」

どうかな、と首を傾げながら良ければ受け取ってくれと手のひらサイズの紙―――黒い名刺を差し出す。
表には『Lzz』、裏には何処か場所を示す簡易地図。
怪しい気配やなにか呪いのようなものはないことは魔力操作を普段からしているものなら理解出来る。

御堂京一 > 「気の持ちようってのは便利だよな……俺ポジティブシンキング大好き
 クッソめんどくせえ」

早速ポジティブシンキング失敗しながら思い切り舌打ちを一つ。
嫌がらせで渡した菓子を喜ばれればさらにもう一つ。

「縁ってのも馬鹿になんねぇんだよなあ……怪異ってのはそういう繋がり追って来たりするし。
 まあ心構えしとく余裕はあったって事で喜んでおくわ」

「あ、それ嫌いだからやったの
 俺のは揚げバター味」

ちょっとした嫌がらせが成功したのを見れば楽しげに喉を慣らして笑い、めっちゃウメェとバターの香りと塩気の聞いた駄菓子をサクサクと食い終えて。

「初対面のはずなのにお前の提案に乗るってのすげぇ不安になるのなんでなんだろな……胡散臭いからかな?
 まあいいか、気が向いたら広めとくよ。
 ってか何、またいきなり俺の後ろに出てきたりすんの?
 ……あんま俺動かして遊ぼうとすんなよ? あとリーズナブルなお値段で困り事聞いてくれるお兄さんの噂、必要な奴に渡しといてくれよ」

差し出された名刺を受け取り、一瞬両目に青い燐光を灯らせ裏表を確認、そのまま内ポケットにしまいこんで。

レザーズ >  
「はっはっは!
 気持ちのいい男だな『何でも屋』の御堂 京一さんは」

笑い声をあげたが、続く言葉には少し感情が乗っており声だけなら圧もあっただろう。
まずいものを食わせた恨み。
ゴーヤ味でこんな苦痛を味わったがゆえに怒りが声に乗っていたのかも知れない。


「ま、なに、こちらもこの街で商売をしてる身。
 事が大きく始まる前に備える意味でも街の知り合いは増やしておきたいのさ」

「胡散臭いのは職業柄だと許して欲しいね。
 ああ、こちらも困り事に頼れる好青年の噂を流すことくらい問題はない。
 よろしく頼むよ」

そう言って左手を右肩に当てて軽く頭を下げる。

「今日は、軽い自己紹介。
 一服してる至福のひとときにお邪魔して悪かったね。

 最後に大したことじゃないんだが
 一つだけ、確認させて欲しい。

 君には僕の"瞳の色は何色に見えたかな"?」


そう言って君の黒に近い暗い灰色の瞳を自身の双眸で見つめた。

御堂京一 > 「いやぁ、喜んで貰えて良かったぜ
 『情報屋』のレザーズさん」

爽やかに笑いながら瞳はざまぁと語っていて心底楽しげで。
妙なハンドサインで指をさして追撃を。

「その点に付いては同感だがね。
 お前アレだろ?楽しい方向に誘導したがるタイプだろ?
 まあ手の平で転がされたらそんときゃそん時だが、次は激辛で攻めるぜ?」

手を組める相手が居れば切れる手札も増えるという事には頷けるが、信用するにはまだ付き合いが浅い。
とはいえ腹を探りあうのもわずらわしい、だから直球でまだ信用してないぞと言葉にして。

「ああ、出来れば金払いが良くて後腐れないタイプで頼むよ
 んじゃま……あん?瞳」

向けられる瞳を真っ直ぐ覗き込み、ふむとしばし考え込む。
見たままの色合いを告げるだけでは面白くないだろう。

「月だな。形を変え色を変え、惑わし導く月の色だ」

レザーズ >  
「そう、君も僕も言葉には警戒しなければならない。
 僕を『踊らせる』のはいつも『噂』だからね。
 その御蔭で、衝撃映像を作るハメになる訳だ」

口は災いの元、とねと見た目だけは可愛らしく
しかし、声は低くよく通る成人男性のもの。

「君が踊らされている時、恐らく僕も踊らされているのさ。
 だから、優しく頼むよ。 泣きっ面に蜂をされちゃあ、流石に泣く自信もある」

クツクツと喉で笑いながらそう告げると、フードを被り顔を隠す。


「質問にも回答ありがとう。 『占い』のようなものだが……。

 月は魔性。

 恐れる必要はないが、警戒しなければ飲み込まれる闇を招くモノ。

―――君には言うまでもないだろうが、月の明かりには魅せられぬように」

「では、またいずれ」

それだけ告げると、歩き去っていきビルの隙間に消える。
すぐに追いかけたとしても、その隙間にはもうレザーズはいない。

ご案内:「常世渋谷 常夜街」からレザーズさんが去りました。
御堂京一 > 「俺あんま頭良くねぇからそろそろオーバーヒートするぜ?」

意味深な言葉に思考を巡らせようとして、途中でごちゃごちゃとしてきてめんどくせぇとぶん投げる。
結局情報を鵜呑みにするな裏を読め多方面から精査しろって事だろうきっと。
違っても俺はそう解釈した。

「深淵のエッジで踊りましょうってか?
 泣かせて罪悪感覚えたら思惑通りって感じするんだよなぁそれ……」

「判ってるさ。恐れるな、侮るな、境界線のこの街じゃそいつを忘れたらすぐに飲まれちまう。
 はいよ、楽しいおしゃべりありがとさん」

ひらりと手を振り見送ると自販機で甘いコーヒーを購入して壁に寄りかかりながら傾ける。

「あーいっぱい喋ったら喉ぱっさぱさだわ」
こんな夜もあるからこの街は嫌いじゃない。

ご案内:「常世渋谷 常夜街」から御堂京一さんが去りました。