2020/07/31 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に水無月 沙羅さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 底下通り」に御堂京一さんが現れました。
■御堂京一 > 「ほい、んじゃこれで全部運んだから。いい加減無理しちゃダメだぜ婆ちゃん」
ここは底下通りの屋台が並ぶ一画、頭から狼の耳を生やした異邦人の老婆の店舗にでっかいでっかいガスボンベを置いてため息をつく。
いくら人狼族の筋力があるとは言え老いた身体に食材とボンベ両方担ぐのはかなり無理があり、気がついたら声をかけ手伝っていた。
『あたしゃまだそこまで弱っちゃいないさ。ちょいと男がかっこつけてるから花を持たせてやったのさ』
フン!と鼻息荒く意地を張るばあさんにやれやれとため息をつく。
どう見ても舌が半分はみ出るほどぜぇぜぇいっていた。
この辺りは治安が悪いとまでは言わないが人口密度が高く揉め事も多い。
飯の種でもあるかと顔を覗かしたら一発目からコレであった。
■御堂京一 > 『お得用だって言うから買ってみたんだがちょいと大きすぎたね。ま、使ってりゃ軽くなるだろうさ』
「婆ちゃん……ガスボンベは使っても軽くなんねぇよ……」
はぁ、と長々とため息をつく。ため息をつくと幸せが逃げるといのが本当なら俺の幸せはもうとっくに逃散済みだろう。
この常識無い感じは異邦人だからなのか人柄なのかギリギリ見定め難い。
『なんだい融通が効かないね。それじゃ肉を減らしたら軽くなるだろうから頑張って売るよ。一本どうだい?』
「そこはお礼に奢ってくれるとこじゃねえの?」
『はん!ババアの食い扶持をただで貰おうなんざあつかましいね!半額にしといてやるから二本買ってきな』
「うわぁ商売上手ぅ……まあいいや腹減ってたし貰うよ、いくら?」
確か肉とか言ってたし丁度腹も減っている、今日は屋台の肉をガツっと行くのもいいだろう。
そう思うと腹も減ってくる。婆ちゃんの提示した金額は屋台飯にしてはちょいと高くはあったが串焼き肉だと思えば安い方だろう。
ガスコンロに火が付くと網の上にタレの絡んだ串焼き肉が乗りいい匂いがあたりに広がりはじめる。
■御堂京一 > 『アタシのドドンゴ焼きは絶品だよ!』
「……なんて?」
『ドドンゴ』
油断していた。
ここは割りとイリーガルな場所だった。
■御堂京一 > 差し出されたのは割りとでっかい肉がどかんと三つ刺さった串焼き。
なるほどこのサイズであのお値段ならばかなり安い、屋台の割りに高いだなんて言った事は謝ろう。
だが問題は肉だ。牛はありえない、豚でも原価を考えると厳しいだろう。そしてどう見ても鶏でも魚でもない。
「婆ちゃんこれなんの肉?」
『ドドンゴ』
居ねぇんだよちたまにそういう生物はよぉ!
婆ちゃんが別の何かを故郷の呼び名で呼んでいるだけなのか、それとも俺の知らない生物の肉なのか……。
「あ、うめぇ」
『だから言ってるじゃないかい!アタシのドドンゴ焼きは絶品だってね!』
香ばしいタレの匂いの誘惑に負けてかぶりつくと幾重にも重なった筋肉の層が噛み潰され肉汁が溢れだしてくる。
ちょっと濃いくらいの甘辛いタレがまたいい仕事をしている。
あと婆ちゃんの尻尾が揺れてるのがちょっと可愛い。
問題はこれ二本は結構多いという事か。あとこんな美味いのに安いのがちょっとこえぇ。
ご案内:「常世渋谷 底下通り」に日月 輝さんが現れました。
■日月 輝 > 屋台が並んでいる。
来歴不明で不可思議な、蠱惑的なフレグランスを商う複眼の女性。
光の加減で色彩を変える、膏薬めいたクリームを商う初老の男性。
肌の手入れに最適、と美しい声で喧伝する女性の肌は浅黒い甲殻が艶やかさを示していた。
高架下の底下通りは数多に雑多で忙しない。そうした所を鼻歌でも諳んじようかと上機嫌な足取りで歩く。
あたしは、異邦人街ともまた違った光景が見える常世渋谷が嫌いではなかった。
「……あら?」
それは狭い道を曲がった時のことだったわ。
聞いた覚えのある声と無い声が交差する音。ああ大方誰かが屋台に掴まったのかと思って顔を出す。
ほら、やっぱり。串焼き屋の狼の御婆さんと知らない誰かが会話中。
「こんにちはお婆さん。あんまり歩いている人に押し売りをしたら駄目よ。取り締まられてしまうわ」
「委員会の人とか、物好きなシスターさんとか、或いはあたしとかに」
絶品だから食っていけ。そんな風に気さくに大雑把に勧める老婆の圧しは強い。あたしも圧されたことがある。
だから背の高い男性が圧に困ったのかと横合いから口がついついと出てしまう。
■御堂京一 > 『なんだい!輝ちゃんじゃないかい!失礼だねあたしゃ兄さんに奢ってやっただけだよ!』
「え!?」
一瞬で過去が改竄されてしまった。
いやサービスはして貰ったけど金払ってるんですけどと視線が左右に揺れ。
とりあえずフリルとリボンだらけのカーテンみたいな女の子に向きなおって。
「いや、まあ婆ちゃんの言う通り、ちょっと手伝ったら礼に貰ったって感じだから大丈夫」
半額で、と小声で付けたし串焼き肉を持ち上げ一本目の最後の一つに食らい付く、謎なのに美味いのがまた腹が立つ。
■日月 輝 > 「尤もあたしには取り締まる権利も何もないけれど──ああ、なんだそうだったの。やだあたしったら」
お婆さんに赤い舌を出して所在無さげに振舞う。慣れない仲裁なんてするものじゃないわね。と心裡で赤面して顔を男性へ。
「何だか当惑し切った声だったからついね、つい。お手伝いだなんて人が好いのね貴方」
「でも、此処の串焼きって美味しいから手伝った甲斐はあるのかも。オインゴ焼きだっけ」
『ドドンゴだよ!』
薄闇がかった夕暮れのような髪をした彼を見上げて言葉を投げると、横合いからホームランを打たれて何処かに飛んで行く。
目隠しの内でお婆さんを一瞥し、数拍の沈黙が流れる。香ばしい匂いが辺りに立ち込めて行く。
服に匂いつかないかしら?そんな事も思う。
「……ま、まあ肉の行方は一先ずとして……そうだ、貴方って人助けをするくらいなら、この辺に明るかったりする?」
閑話休題。一先ず話を網の上に放り投げてあたしは青年に一歩近づいた。
「ちょっと探しているお店があるの……あ、お婆さん。あたしにも串焼きハーフサイズで頂戴」
折角だからと注文も交えながら。
偶にはお肉を食べるのも悪くない。
■御堂京一 > 『まったく、あたしゃいつだって控えめなサバト撫子だって言われてたんだよ!押し売りなんてするもんかい!』
『ハーフなんて食ってるから大きくなれないんだよ!フルサイズいっときな!』
めっちゃ押しがつえぇ……と巻き込まれないように一歩下がる。
こういうテンションの婆ちゃんに余計な事を言うと負けだ。俺の長くは無い人生経験でも判る。
「あー、うん肉のサイズはともかくとして。そいつは運がいい、コレでもなんでも屋ってのをやっててね。
まあ道案内なら缶コーヒー一本ってところで請け負うがどうだい?
ああ、一応どんな店か教えてくれ、お題貰ってから知らなかったら赤っ恥だしな」
しかしドドンゴってなんなんだろうな……。
『ほら!輝ちゃんドドンガ焼き持ってきな!』
「え!?」
『ドドンゴだったよ!』
■日月 輝 > 「あの大きくなる必要は別に……あ、はい。それじゃあ……」
無駄な抵抗だった。カロリーを気にする乙女心は豪快な一声で吹き飛ばされて何処かに消える。
悪意であるなら兎も角も、善意の圧にあたしの心は藁葺だ。煉瓦の心は此処には無い。
「あらそうなの?ふふん、あたしの日頃の行いの所為ね。でも随分安いのね……缶コーヒーって何かの隠語だったりする?」
意気揚々と串焼きを焼き始めるお婆さんを他所に、あたしは頬に指をあててさも考え込むように示し、
それからハンドバッグから一枚のプリントアウトされたチラシを取り出す。
「これを見て貰うと早いんだけど──」
そこには大きく【突発!常世学園釣り大会!開催!】と見出しが躍り、その下に概要が示されていた。
http://guest-land.sakura.ne.jp/tokoyo/pforum/pforum.php?mode=viewmain&l=0&no=143&p=&page=0&dispno=143
「と、まあ釣り大会。ここはひとつでっかいのでも釣り上げて素敵で夢可愛い感じの魚拓でも取ってみようかと思って」
「で、そうなるとクーラーボックスとか、ちょっと映える感じの額縁とか欲しいじゃない?」
「だから探していたんだけど、中々ちょっと出物が無くって……心当たり、あるかしら?」
心当たりを問うと同時に横合いから突き出されるドドンガ焼き。
「え!?」
青年とほぼ同時に聞き返すと訂正され、つまりこれは何の肉なのかしらと疑問が募る。
前食べた時と肉が違う気はする。とりあえずと食べると、甘辛味が口中に満ちて白いご飯が恋しくなってくるのがわかる。
ダメ、これは(カロリー的な意味で)危険な食べ物だわ……
■御堂京一 > 『そうそう若い子は腹いっぱいにしとかないとね!』
豪快に笑う婆ちゃんもこっち来た頃は苦労でもしたのかなあとそんな物言いにちょっとばかりしんみりしてしまう。
いや普通の婆ちゃん的な発言かもしれないし判別付け難いな……。
「いや、まあカタギな見た目してねぇけどほんと自販機で買えるやつだから。名前を口にしちゃいけない系のじゃねえからな?」
最近の若い子のセンスマジわかんねぇ……と二本目をがぶりと。
馬鹿な、一本目よりさっぱりしてる?脂っけの多い肉を二本はちょっと重いって思ったからか?
まさか俺がどっちの串から食うかまで見抜いたってのか……。
底知れない婆ちゃんだ。
「はぁん?釣り大会ねぇ……また愉快な事してんなぁ……
いや待て、可愛い魚拓ってなによ。あと釣り初心者っぽいのにいきなりそこまで買うか!?
ん~釣り好きの爺さんがやってる雑貨屋なら知ってるがどうする?置いてる保証はねえしメーカー品じゃなくてこの辺の住人やら爺さんの手作り品だが」
出物、と言うからには中央にあるようなメーカー品はお呼びじゃないのだろう。
ならハンドメイドな品を置いてある店ならどうだろうかと。
■日月 輝 > 串焼きを齧る。
串焼きを齧る。
串焼きを齧る。
味は甘辛く脂っけがあって適度にジューシーで適度にジャンク。
お値段を考えるともっと売れても良さそうで、けれども如何な不思議な大繁盛の様子は無い。
立地を考えるとさもありなん、と思う所はある。この通りを好んで歩く生徒はそう多くない。
御蔭で可愛い恰好とは対極であろう串焼きを頬張るなんてことも、知り合いに知られず出来るのだけど。
「あらやだ御免なさい。恰好で差別するつもりは無かったのよ。ただなんでも屋さんの相場を知らなかったから」
「それに悪い人が如何にも悪そうな恰好をしている。なんてのも早々無いと思うし」
何処となく遠くを見るようになった彼に言葉を積む。
何やら途中で驚いたような顔をしたけれど、二本目のお肉が別の肉だったのかも。
でもそれは甘辛味にきっと紛れてしまうことかもわからない。
「ふふん、だってこの島は学園島だもの。夏休みともなればイベントの一つや二つ起きるもの」
「可愛い魚拓は可愛い魚拓よ。ほら、あたしの御召し物みたいな感じの──そして、甘いわね貴方!」
そしてこれは甘辛味に紛れない事!
あたしは指を不躾に青年に突き付け!その問いが如何に糖分過多であるかを突き付ける。
「初心者だからこそよ!ほら、ビギナーズラックって言うじゃない?きっと凄いのかかるわよ、凄いの!」
「で、凄いの用となるとやっぱり大き目な奴とか欲しいじゃない?扶桑デパートとかだとそういうの無くって」
「となると後はハンドメイド?そういうのが良いかな~ってそう、それ!そういうの!流石なんでも屋!」
からの、見識ぶりに声を糖分過多に転ばせて、気安く肘で軽く小突いてもみせる。
一体なんだ?と通行人が見ているかもしれないけれど、そんな視線はガン無視決めるわ。
■御堂京一 > 「いやまあこれが失せ物探しだの用心棒だのならきっちり料金を貰うが。店聞かれて教えるだけで金取るってのもなあ
でもタダ働きはゴメンなんで缶コーヒーってとこ」
「……確かに鋲打ちジャケットにモヒカンの悪党とかちょっと見た事ねえな」
もしかしたら実在するのかも知れないがそれはそれでお近づきになりたくねぇ
「まあお祭り好きっつうか年がら年中お祭り騒ぎっていうか……
いやリボンとフリルで可愛いっちゃ可愛いが魚拓にそれ求めんの!?」
フリルで飾られた魚拓、可愛さと生々しさが合体事故を起こしてそうな光景にマジで?と眉根を寄せてなんとも言えない表情に
びしっと指を突きつけられればその圧に押された様に仰け反る。
押しが強いの婆ちゃんよりこっちじゃねえ?と口の端が引きつって。
「未来への希望に溢れてるってこたぁいい事だな、うん、来るといいなラック……
待てよデパートに売ってないレベルってどんなサイズ釣る気なんだよ!マグロは沿岸にはこねーぞ!
ああ、もう突っつくなよ!ったく言っとくがそんなでかいのあるかどうかも……」
『あんたたち!店の前でくっちゃべるならせめてドドンゴりな!』
「ドドンゴる!?いや、いいか行くぞ小娘!」
もう一本追加されては胃袋がオーバーフローを起こす。とりあえず知ってる店に向かう道をずんずん歩き出して。
いきがけにじゃあな婆ちゃん!と一度振り返り手を振って。
■日月 輝 > 「少なくとも用心棒は頼む予定は無いわね……失せもの探しは。あるかもだけど」
悪党の恰好如何に口端が緩む。もし実在したら映画か何かの撮影かと目を疑うに違いない。
失せものの行方は串焼きに追いやられて今は口から出ることは無い。甘辛味は全てを包み込んでいった。
「それはそれで賑やかで素敵じゃない?荒野のように何にもない所だったら、あたし退屈で死んじゃうもの」
「魚拓はそりゃあそうでしょう。あたしが釣った魚拓が可愛く無いのはダメじゃない?」
「他所から見たら無様でキッチュな代物だろうとあたしが良ければそれでいいの」
長躯を反らせる様に満足そうに頷く。怪訝そうな顔だって何のその。
小突くに合わせて飛び出す言葉も今は天上の音楽にも等しい。
「あら凄いの。が大きいだけとは限らないじゃない?なんかこう……見た目が凄いのとか?釣れるかもだし?」
「だから色々を視て──」
魚の大きさトークには唇を尖らせようものだけど、それだって判り易く不満を示す芝居がかったもの。
本当の不機嫌なんてものじゃあないけれど、狼のお婆さんの大声が被さるとあたしたちの余裕は消える。
ねえお婆さん。どうしてあなたのお声はそんなに大きいの?心裡で問う。
「ドドンゴるって何!?いや、ええと……ああもう、小娘じゃないってば!」
足早に去る青年に声を荒げてお店を後に、一先ず屋台の連なる雑然とした道を行く。
彼処から気分の良くなった酔客の声が賑やかしくも喧しい。
「あたしは小娘じゃあなくって日月輝って言うの。お日様の日にお月様の月でたちもり、それに輝くであきら」
「お兄さんの名前は?名刺とかあるのかしら」
そうした声に問う声と名乗りが混ざる。
■御堂京一 > 「まあ基本的に店に雇われるもんだしなあ、俺の場合。護衛とかガラじゃねえし。まあ何かあったらお安く請け負うぜ?」
失せ物探し得意だぜ?と胸をドンと叩いて笑って見せて。
「っていうか細かい騒ぎも含めりゃ年中騒ぎがあるしなあ、なんでもない日記念が激レアイベントになりそうだな」
「そういうもん?そういうもんか……まあこだわりってのは自分が満足するためのもんだしなあ……」
突っ込みたい気持ちはあるがこんな暑いのに気合の入ったフリル装備。
そうなると魚拓の件も本気なのだろう。
理解出来ない世界だが自分の好きなものに余人に理解出来ない手間をかける気持ちなら判ると頷いて。
「見た目が凄いのかぁ……それ凄さの度合いによるな。なんかやべぇの居そうだしここの海。ツインアームビッグシャークとか」
二本の腕を手にしたサメはついに武器を扱う知恵を得る。
今世紀最大のスペクタルサメロマンス開幕。
「結局なんだったんだドドンゴ……マジ気になるわ……
んぁ?ああ、悪かった。そいつぁ天道を巡ってそうないい名前だな。
あ、俺はこれ、こーゆーもんです」
ほい、と黒地に白抜きという以外にはただ名前とどう見てもフリーのメールアドレスが書かれただけの簡素な名刺を差し出す。
貴方の街のなんでも屋御堂京一、と。
しばらく歩けば木造の古びた店構えの雑貨屋にたどり付く。
どこからどう見てもこの街が出来るより古そうな黒ずんだガラス戸を開けると中には雑多な品々が所狭しと並んでいる。
「爺さん、客連れて来たぜー」
『おう、京坊は孝行もんだのう。わしは今テレビで忙しいから勝手に見ておれ』
相変わらずだなあ、と笑う青年が視線を向ける先は店の奥にある生活空間。
光源のせいか奥は薄暗く視界が通らないが、そこから聞こえるのはどう聞いても青年か、下手をすれば少年のもの。