2020/08/03 のログ
ご案内:「常世渋谷 底下通り」に鞘師華奈さんが現れました。
鞘師華奈 > 常世渋谷――底下通り。常世渋谷の高架下に立ち並ぶ露天や飲み屋がひしめく一帯。
異邦人が営んでいる店が多いようだが――元々、異邦人街で生まれ育った女には割と見慣れた光景に近い。
異形の店主も居れば、こちらとほぼ変わらない姿の店主もいる。
時々露天を冷やかしつつも、適当に一杯飲んでいくかなぁ、と良さげな飲み屋でも探していく。

「――とはいえ、あんまり土地勘がこの辺りはあるって訳じゃないし」

仕事の合間に最近はよくこの常世渋谷を一人で訪れては、あちこちフィールドワークのノリで探索している。
危険地帯は勿論避けてはいるが、比較的安全な場所はちょくちょく足を運んで見て回っており。
ただ、この底下通りは今回が足を運ぶのは初めてだ。右も左も分からない、とはいえこういう空気は嫌いではないので割とリラックスした面持ちで歩みを進め。

鞘師華奈 > (懐かしい――って、訳じゃないけど、顔ぶれは異邦人街を思い出すなぁ)

異邦人街に居たのは10歳のころまで。”あの事件”で両親が死んでから色々あって己は落第街に流れ着いたけれど。
当時は少々騒がれたそれも、”未解決事件”として結局は有耶無耶のままだ。

(――ああ、父さんと母さんの墓参りも行かないと、ね…)

ふっと郷愁に似た感情が胸を過ぎる。だが、それを振り払うように一息零しながら周囲を見渡し。

「ん~ここでいいか」

丁度、目に留まった飲み屋の暖簾を潜る。獣人の店主が営んでいる屋台風の飲み屋だ。
隅っこの空いている席に腰を下ろしつつ、「取り合えず一杯適当に」と、くいっとやる仕草をして笑いながら店主に注文をしておこう。

鞘師華奈 > 「お譲ちゃん未成年だろ?」と、口にする店主のおっちゃんに、「堅苦しいのは無しで頼むよ?」と、悪びれもせずにのんびりと答えて。
店主も店主で、「風紀に職質されてもこっちは知らんからな」と、言われれば緩く頷く。

と、ややあって出されたのは異邦人独特のお酒――ではなく、冷酒だった。
聞けば、他の屋台が割りと異邦人由来の酒やら何やらを提供しているので、あえてオーソドックスにこちらの世界の酒などをメインに据えてるという事。

(――まぁ、私はどちらでも構わないんだけどね)

異邦人の味も、こちらの味もどちらも馴染みはある。…いや、まぁ流石に酒はこちらの世界のしか飲んだ事はないが。
冷酒をちびちびと飲みつつ、つまみはどうしようかなぁ、とメニューを眺める。
散策前に夕食は自宅で済ませてきた――もちろん自炊だ――なので、あまり腹に入れる必要も無い。

「じゃあ、この『常世カツオの漬け』と…あと、『常世アジのフライ』。それと『水菜と油揚げのサラダ』で」

と、取り合えず3品ほど注文をしながら冷酒をまたくいっと煽る。飲み慣れているのかそれなりに違和感がない。

鞘師華奈 > 暫くすれば、まず最初に野菜がたっぷり添えられた常世カツオの漬け。それと常世アジフライ。最後に水菜と油揚げのサラダが目の前に置かれる。
おしぼりで軽く手を拭いてから割り箸を手に取り、ぱきっと割りつつ頂きます。

「――お、これは美味しい…漬け食べるの久々だけど悪くないねぇ、やっぱり」

おぉ、と目を丸くしてからウンウンと頷いて。そう、こういうのがいいんだこういうのが。
続いてアジフライ――これは商店街の惣菜店などでも売ってたりするので定番中の定番だろう。
サクッとした衣の触感と慣れ親しんだ味がたまらない。
サラダも地味ながら口の中の脂っこさを緩和したりシャキシャキとした水菜の歯ごたえが堪らない。

「んーー…ぷは。いやぁ、偶にはこういう晩酌もいいよねぇ」

と、表情をリラックスさせながら上機嫌。こういう時間も結構好きだ。
そのまま、冷酒を合間にちびちびとやりながらゆっくりとしたペースでつまみを平らげていく。

鞘師華奈 > 「――さて、ご馳走様。と」。

ゆっくりとしたペースで食べていたが、冷酒を合間にちびちびやりながら時々店主や客と談笑を。
そんなこんなでつまみも酒も平らげてしまい。

そろそろ潮時かな、河岸を変えるのもいいかな?と、悩みつつも立ち上がって財布を取り出せばお勘定を支払う。

『毎度あり!』というよく通る声を背中に聞きながら、改めて底下通りを見渡して。

「――うん、ここはまた足を運びたいものだね。」

とはいえ、他も見て回りたいのでそろそろ行くとしようか。往来にまぎれてスーツ姿の女は歩き出して。

ご案内:「常世渋谷 底下通り」から鞘師華奈さんが去りました。