2020/08/04 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に群千鳥 睡蓮さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に鞘師華奈さんが現れました。
群千鳥 睡蓮 > 睡蓮のなかで鞘師華奈は、朝の弱い人だ。

暇そうな日、が「朝」から始まっていなさそうのはなんとなくわかった。
なので午後からの約束を取り付けた今日、少しだけコーヒーショップで時間を潰して待ち合わせ場所をおとなう。
ぎらぎらした炎天をサングラス越しに見上げて、『ロク』像の前で待っていた。
前髪はヘアバンドで結わえてある。それでも明るいうちに目を晒して歩くのは僅かな抵抗があった。

「いやー……しかしほんとに栄えてんねココ……びっくりするな」

人の往来を見渡してぼんやりとつぶやく。"現在の"日本の都会のあり方については詳細に語るは控えておくとして――
ここはひとりでは行きづらい区画、というイメージのまま、
さっきからぼちぼち声をかけられているので丁重にお断りしていたところだ。
そういう意味でも、ここを歩き慣れているらしい彼女の存在はありがたい。
イヤホンの繋がったスマートフォンで音楽を聞きながら、
待ち合わせの時間に近づく時刻表示を見下ろしていた。

「そろそろ、かな」

少し声が上機嫌な音色を奏でる。さて、彼女は時間に対してはどの程度誠実でいる人なのだろう。

鞘師華奈 > 鞘師華奈は朝が弱い――理由は幾つかあるが、一言で言えば低血圧なのだろう。
それでも、事前に友人と常世渋谷に繰り出すと分かっていれば、朝は弱くても何とか余裕を持って起きられる。
顔を洗って、寝癖を整えて、メイクは一切せずに最低限の身だしなみをきちんと整えて。
服装は――何時もの素っ気無いスーツ姿。炎天下だろうとこのスタイルは健在だ。

「――あっつ…。」

待ち合わせは午後。一歩寮から外に出れば蒸し暑さに目を細めて辟易する…が、分かっていた事だ。
余裕を持って寮を出れば待ち合わせの中央街区――ロク像の前まで足を運んでいく。
最近、仕事の合間に密かな趣味であるフィールドワークの一環でこの常世渋谷を歩き回っている。
なので、多少は土地勘も養われて迷ったりして余計な時間を費やす事も無く。

「――と、居た居た……お待たせ、睡蓮。一応余裕を持って来たつもりだけど…。」

と、彼女の右手側のほうから声を掛けて近寄っていく。時刻は待ち合わせ予定時刻より10分と少し前。
少なくとも、遅刻はしないし多少は余裕を持って参じるくらいの心得はあるようで。

群千鳥 睡蓮 > ベルトには若干拘った。
未開の場所にお出かけ。胸が高鳴らぬ筈もない。
声をかけられると、イヤホンを外して向き直る。

「あっ、華奈さ……――――」

見慣れた姿がそこにあった。揺れるツーサイドアップの髪。
凛々しさを感じる歩き方。いつものスーツ姿――いつもの。

「………………」

そして大股で歩み寄ると、流れるようにネクタイを掴んでぐっと顔を寄せる。
振り返った時の笑顔がどこへやら、どこか恨めしげな色を持った視線。
表情は怒っている――というよりはわずかに不貞腐れたような趣を見せていた。

「――仕事帰り?それとももしかしてこれから仕事とか……?」

低く抑えた声で問う声は。
要するに"なんでスーツで来てんの?"という直接的な疑問であった。なんで?

鞘師華奈 > 「ごめん、一応時間には余裕を持って来たつも――…って」

普通にスーツ姿で参じるこの女。完全に着こなしているので違和感は無いだろう。
――だが、友人と街を散策するのにスーツ姿は流石にどうかと思われる。
本人はその辺り、あまりピンと来ていないのか…いきなり無言かつ大股で歩み寄ってきた少女に不思議そう。

(…何で睡蓮はそんな恨めしそうな―――ぐぇ!?)

ネクタイを流れるような動作で引っ掴まれて引き寄せられた。
待って、ちょっと待って首が…首が地味に絞まるからっ…!

「仕事は非番、だって…取り合えず、首っ…ネクタイ引っ張るのは勘弁して、くれ…ない、かなっ!」

と、訴えつつも彼女の問いかけには若干瞬きをしてからこう答えるだろう。

「――いや、これ私の私服だし…。」

真顔で一言。要するにファッションとかまっっったく興味が無い反動がここで露になっている。
時間にはきっちりしているが、代わりにお洒落とか格好がルーズどころではなかった。

群千鳥 睡蓮 > 「ビジネス街じゃないんだよッ!
 あたしのボディガード様じゃないんだからさぁー!
 似合ってるからって遊びに行こうって時にそれで来るかなー!
 出る直前までベルトで迷ってたあたしがバカみたいじゃんん!もーっ……!」

スーツで武装した奴を横に置いて遊べってのか――そんな不満と。
彼女の私服への期待を裏切られたことに発奮しつつ。

「……え、マジで? じゃ、あかね先輩と遊びに行く時とかもソレだったの?」

ネクタイを乱暴に離しつつ、続いた言葉には意外げに、レンズ越しに目を見開いて顔を見つめた。
少し冷静になったらしい。自分の唇を指先で撫でて、じっと顔を見つめつつ。
サングラスを外すと、華奈の顔にかけてあげた。
一歩、二歩、と後ろに下がってみる。

「華奈さーん、ちょっと両手をズボンのポケットに。
 で、ちょっと角度つけて立ってみてー」

なんて言いながら。

「……気合い入れるほどの用事じゃない、ってことか」

ちょっと口のなかで――なにか残念そうに呟くわけだ。
まあいい。これは勝手な期待だった。

鞘師華奈 > 「いや、むしろ他にいい服を持ってないんだけど…とはいえ、ファッションとか私は興味ないし。
あー…いや。まぁ………ごめんなさい」

最初こそ抗議、というか弁解しようとしていたようだが…視線を左右に泳がせた後に睡蓮へと視線を戻し。
――素直に謝った。まぁ、どう考えても自分が悪い。ただ、他にまともな服装が無いのも嘘ではないのだが。

「――と、いうかあかねは割と実はズボラで私があれこれ世話をして…まぁそれはともかく。
うーん、基本的にスーツだね。あかねはそこはあまりどうこうは言わなかったよ?」

と、緩く首をかしげて答える。と、睡蓮の仕草を見てアレは前も見た仕草だな、と思う。
彼女の癖、なんだろうか?と、じっと見つめられて…徐に自身のサングラスを外してこちらに掛けられる。

「……はい?…あーうん……こんな感じでいいのかい?」

一歩、二歩と下がった睡蓮に不思議そうにしつつも、サングラスを軽く掛け直してからスーツのスラックスのポケットに両手を突っ込んで。
で、角度…角度?分からん。まぁ、適当にやってみつつそちらに視線を送る。これでいいのだろうか?

「――あ、一応下に別の服は着込んでるけどそっちの方がいいかい?ラフすぎて睡蓮ががっかりしそうだからあまり晒したくないんだけど」

と、唐突にそんな事を言い出して。少なくとも、スーツの下に何か着込んでいるようには彼女からは見えないかもしれないが。

群千鳥 睡蓮 > 「ええ……?まさかあかね先輩もいつも制服族だったの……?」

彼女は私物を持ちたがらなかったのかな、となんとなく思った。
その思考は飲み込んで――今は眼の前の朴念仁を攻略せねばなるまい。
とりあえず格好良くシュッと立ってくれた華奈さんをスマートフォンで激写しておく。

「確かに格好良いは格好良いんだけどね……ちょっとしたアー写みたい」

肩を落とすも。

「いや、いいよ。待ち合わせしよーっつったのあたしだし……。
 そーゆーとこも新しく知れたので……ね、お互いまだ知らないことだらけだ。
 あたしのダメなとこも今後知られていくかもしれないので、これで手打ちとしましょー」

ここで詰ってもしょうがない。お詫びの分はいまのアー写と今日の予定で取り戻せばいい。
告げられた言葉には、グラスを外したことであらわになっている金の瞳が瞬いて。
再び近くに寄った。そのジャケットのなかに秘め隠されているらしいもの。
何か嫌な予感がするので――他のひとに見えないようにしながら。

「……どんなの?」

鞘師華奈 > 「うーーん、私が知る限りはだけどほぼ制服姿だったね…。」

四六時中一緒に居た訳ではないので。そもそもファッションに疎いのであかねが私服を持っていても多分気づいてないだろう。
あと、何故か私が攻略されている気がしたのは何故だろうか?何でそう思ったのかは私にも分からん。

「……睡蓮さん、そもそもアー写って私は分からないんだけど」

と、軽く右手を挙げて質問を。残念ながら本当にそっち方面はさっぱりなのだ。
ポーズは柄でもないのでさっさと解除しつつ。何か凄いがっかりされているのは気のせいではないだろう。

「――いや、まぁファッションというか…女物の服装とか私は昔から苦手だし。
何か動き難いし、着ているとむずむずするから駄目なんだよね…スーツ姿が気楽でいいよ」

手打ちにはされたようだが、改めて自分がファッション、というか女性物の格好が苦手だとは正直に申しておく。
他の女の子がお洒落している姿は好きだ。みていて華やかだし似合うと思う。
――だが、自分は論外だ。するなら男っぽい服装のほうがやっぱり落ち着く。

とはいえ、幾らこの女が苦手でも疎くても、友人の期待を裏切った事はよぅく分かる。
珍しく、いつもはゆるーい無表情で安定の表情が凄い申し訳なさそうだった、が。

「いや、なけなしのほかの手持ちだよ。女っぽくはないからね?スーツ姿よりはマシ、かもしれないし。
まぁ、睡蓮の感想しだいではそっちにするけど――じゃあ、取り合えず」

軽くスーツの上着に手を書ければ――ばっ!と、スーツの上着を翻して。
そして、”一瞬で”スーツ姿から完全に別の姿へと変わっていただろう。

鞘師華奈 > 黒のテーラードジャケット、白のカットソーTシャツ、黒のリネンパンツ、ブラックサンダル――そんな服装に早着替えした女の姿がそこにあった。

ちなみに、髪型とかはまったく変わっておらずそのままだ。
スーツはいつの間にか消えており、何処に消えたのかは分からない。

群千鳥 睡蓮 > 「ちょっ!? いいんだよそういう面白いことしなくてもッ!」

主にその声をあげたことで――若干注目を集めることとなった。
早着替え程度なら日常茶飯事のこの島であり常世渋谷、であるかもしれないが。
そうして冷静になれば先程からロク公前で漫談している自分らに若干の視線が集まっていたのもあり、
奇術師よろしくの早着替えに目を瞠って――"嫌な予感"はどうやら当たった。

「――ああ、もう……ちょっとこっち来いッ!」

その手をひっつかんで引っ張っていくこととなる。
じぶんだって我が道を征くマイペースのつもりだったが、彼女の奇妙な鈍さは中々の強敵。
荒馬の手綱を握るつもりで。少なくとも本人の意識はそれで、若者の街をひた征く。

「どこで覚えたの、あんな手品……。
 ……うん、イイんじゃない。ココで一緒に歩くならそのほうが」

肩越しに振り向いて。少し上機嫌になった。
似合ってるよ、と思う。落ち着いていて控えめなのが、なんとも"らしい"。

「でも正直それくらいしか持ってない、って言いそうだから。
 服、買いに行こ。華奈さんが気に入りそーなやつ。
 ――じっさい、行くとこ迷ってたから方針決まって助かるわ」

鞘師華奈 > 「――いや、面白いかな?普通に便利な技能だと私は思っているんだけどね」

実際は早着替え、だけでなく魔術の手助けも借りているのだがその説明は後回しになりそうだ。
そして、周囲からの視線に気付けば少女二人で面白おかしくやっているのを注目されるのも仕方ない。
特にこの女が早着替えなんぞをやらかしたものだから、一部から拍手を贈られる始末だ。

「ちょ…睡蓮、いきなり何だい君はっ…!」

そして、徐に片手を引っ掴まれて睡蓮に連行されていくのである。当たり前だった。
彼女のマイペースを乱しているつもりもなく、ただこちらの方が睡蓮が喜んでくれるだろうか?と、いう善意のもの。
なまじ、悪気が一切無いのもあり、少女からすればこの女のそういう所が悩ましいかもしれない。

「――ん?ああ、落第街に5年も居ればね。あと、ちょっとした魔術も使ってるし。」

と、肩越しに振り向く睡蓮に視線を合わせながら肩をすくめてみせて。
彼女としては、便利だし相応に役立つから身に付けただけ。面白さを狙った訳でもなく。

「――実際、これくらいしか無いんだよ。あと、こういう格好がぎりぎりの妥協ラインというか。
女っぽい格好は私にとっては論外だからね。死んでも着たくはないのさ」

と、真顔で言い切る程度に自分が女の格好をするのを断固拒否する姿勢。
トラウマでもあるかのような拒否っぷりだが――実は大した理由は無い。
本当に、生まれつき女物の服装が”性に合わない”だけなのだ。

「…いや、私の服よりさ。睡蓮も何か服とか買いたいんじゃないのかい?あと、今の季節だと…うーん。水着とか?」

と、会話をしながらずっと引っ張られるのも情けないので、そのうち隣に並ぶようにして歩こう。

群千鳥 睡蓮 > 思ったより天然系だな、と話してみて思う。
身内に似たタイプが居るがこっちは三割増しで厄介なタイプだ。文字通り育った文化が違う。
どうしたもんかなあって考えながらも、まあ悪い気はしない。

「むりくりかわいい格好させようなんて醜悪なシュミじゃねーって、安心して。
 いっつも同じ格好してるひととデートなんてやーです、ってだけですー」

嫌がることをさせたいわけでもなければ、自分好みにさせようとしているわけでも……多分ない。
スーツで鎧わせていたままでは、いつまで経っても踏み込んで来ないような予感がしているだけだ。
始まったばかり。王子様を待つなんての性分ではないが、走らされるばかりは気に食わない。
フェアでいたい。

「実際さっきのまんまだったら強引に更衣室で着替えさせてたから助かるけどね――おお。
 いいねいいね、こういうとこスキ――ん、水着?」

そして入ったのは大きめな施設の、メンズライクなものが多くありそうな区画。
まずはこういうところから攻める。小さいお店やら掘り出し物はじっくり探していくが吉。
これから長い付き合いになる街だ。まずは安牌から切っていくに限る。
島外のブランドや島内のそれ――学園で流行りの兆しを見せる"異世界風"よりは踏み込んでいない感じ。
様々なテナントが居並ぶ通路を並びながらに、嬉しそうに華奈に似合いそうなものを見繕っていると、
背後に振り返ってから、うーん、って考える。

「あたし焼けちゃうから海はなー。 行くならプールになっちゃうかも。
 ――プールにもスーツで来るつもりじゃないだろーな……?」

シャツワンピの襟首引っ張って、白い首元から肩を晒す。
どうにも日光に強い肌ではないのだ。店舗に避難するように動いた理由でもある。
そして横目で彼女を見遣った。釘を刺しておく。