2020/08/09 のログ
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」にハルシャッハさんが現れました。
■ハルシャッハ >
――黒街(ブラック・ストリート)。
この黒とも白とも言い難い、違法と合法の入り交じるアマルガムは、
ヒトが集まれば自然と形成される虹のグラデーションの一つだ。
その中に足を踏み入れる、宵闇の案内人たる男は穏やかなる白を纏い、
望まずとも落ちてくる者達の様子をうかがっては、
時に手を差し伸べ、時に本当の黒をあぶり出しては切り捨てる。
誰に求められるわけでもない。言うなれば自分のためだ。
犯罪者を突き出せばカネになる。漏れ聞こえる情報は飯の種に、
仮に良からぬ輩が来たとしてもカネをむしり取るにはいい材料である。
クズはクズなりの収入源が有る。その形が変わるだけだ。
剣を鞘に収め、空気感だけは穏やかにブーツで路地を叩く。
スラムや路地裏よりは『違法』の匂いが薄い場所故に、
男はその点においては気を使っていた。
「――スラムや路地裏も、この辺りくらい穏やかだと、な……。」
ぽつり。
自分なんて存在が求められるほど、殺伐とした世界など無いほうが良い。
近世の暗黒の時代を生きてきてしまった男は、
今のものの豊かさと、何処か荒んでしまった心と、
カネの大切さ、それ一つで揺らいでしまう今という現状を、
何処か見ていた。 それは、言うなれば酷薄なまでの現実だったから。
■ハルシャッハ >
路地裏に入ればヤク中のごろつきや、貧民で飢えに苦しむヒトも居る。
最底辺が最底辺を連れてきてしまう、そんなスラムのような場所と違い、
この黒街と呼ばれる場所は穏やかさと血の匂いが薄い分、
男からすれば好きな場所だった。
このくらいの治安の悪さのほうが、元の世界に近くて何処か心地が良い。
あまりにきれい過ぎる世界は、本質を何処か失うように思う。
何処か治安が悪く、何処かきれいな、このくらいの空気感。
このくらいのほうが、ヒトの本質がよく出てくる気がするのだ。
ヒトなんて、きれいなところ、汚いところ。
色んなものが混ざった中で生きている、それくらいのほうが、本質だ。
風に混ざる車の芳香剤のような強い匂い。
縁日のように料理の匂いも混ざる、独特な空間の中で歩みを進めれば、
気だけは軽く張りながら、それでもゆったりと男は歩む。
近くの空き缶を軽く蹴り飛ばし、地面に落ちたゴミを踏みしめながら。
自身がここにいる、という空気からの圧が少し加わる、
それだけでもつっかかる者は少なくなると、知っているから。
■ハルシャッハ >
――軽く耳を澄ませる。
正確には、意識の総量の一部を耳膜に振って音を聞く。
耳が殺伐とした音も拾えば、その一方で穏やかに笑い合う会話も拾ってくる。
こんな場所でも、日常を穏やかに愛する者も要る。
一事が万事、悪人だらけというわけもない。
当然といえば当然の理。治安が悪い地域でも、それは変わらない。
「……。」
溜息が漏れる。
――男には、帰る場所や、仲間も居ないから。
誰からも求められなかった。必要とされなかった。
『売店のアルバイトさえクビになる』男は、
稼ぎ口という点に置いて、そして社会的な要請において必要性を認められなかった。
『誰からも求められない』という苦しみが、男を何処か苦しめる。
――それは、間違いのない現実だったから。
『お前なんて、死んでも誰も悲しまない』。
最後についた仕事場の上から言われた言葉が、
耳膜の裏にこびりついて離れない。
一種の、呪いだった。
軽く、頭を振って振り払おうとする。
少なくとも、気分はマシになる。 ごまかすには十分だった。
しかし、何処か男の心には、大きく穴が空いている。
ごまかす事さえもしない、いや、うまくない。
だから、盗賊になったのだ。
――必要として、もらえたから。
■ハルシャッハ >
――記憶の片隅に有る痛点を誤魔化す。
それは、男にとって要請の一つだった。
――だから、男は。
今を生きるように、男は鍛錬と技術の追求に集中した。
親方から教わったこと、技術に時に振り回され、
時に間違い、時に怒られ、時に導かれながら。
――だから、盗賊としての男の今が、ここにある。
今居る場の安全は、保証されているわけではない。
その意識を何処か持ちながら、切り替えるための準備をゆっくりとしていく。
深い深呼吸が、二度、三度。
気分を切り替え、肉体を賦活化する。 一種のスイッチだった。
今いる場所は場所なのだ。 思いを巡らせる場所ではないと、知っているから。
腰の剣に軽く触れて意識をしなおす。緩みがないかは簡易に触れればよく分かる。
今の場所にふさわしい意識と、装備であることを再度確認するように。
■ハルシャッハ >
四角い空と、汚れた灰色の街の中で。
男は、遠くを望みながら。 歩みを進めるだろう。
「――俺は、誰かのために生きられるんかね。」
ポツリと。 何処かさみしげな、問いかけさえ残して。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」からハルシャッハさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にアーヴァリティさんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に追影切人さんが現れました。
■アーヴァリティ > 「『忠犬ロク』、ねえ」
常世渋谷駅前、
喧騒に包まれたそこで、『忠犬ロク公像』に貼り付けられたプレートの説明文を前屈みになりながらふむふむと読み上げる少女。
"これまでこの世に存在しなかった少女"の姿を手に入れた怪異は、あれ以降あまりスラムや落第街へは帰っていない。
歓楽街や常世渋谷でふらふらすることを楽しんでいた、と言えば聞こえは良いが。
停滞に甘んじてもいた。
ロクについて読んでいるのもなんとなく役立ちそうであったからで。
■追影切人 > 「くぁ…あーーくそ眠ぃ…。」
欠伸を盛大にかみ殺しながら、私服姿に堂々と左腰に刀をぶら下げながら歩く男。
とはいえ、刃を綺麗に潰された”なまくら”なので切れ味は皆無に等しい。
そのくらいでないとまず普段から武器なんて持たせて貰えない立場だからしょうがない。
と、待ち合わせなどによく使われる常世渋谷の名物の一つ、忠犬ロク像の前に差し掛かれば…見覚えのある成長した姿があって。
「――おい、テメェ何でこんな場所をふらついてんだよアーヴァ…つーか、やっぱその姿で安定したのか」
と、面倒くさいが見掛けた以上は声を掛けに行く、律儀なのか捻くれてるのかよく分からないスタイル。
■アーヴァリティ > 「なんだい、僕がここにいたらダメだっていうのかい?」
聞き覚えのある声に少し喜色満面で応え振り向く怪異。
その様子はまるで懐いている相手に出会った子犬のようで。
尻尾があれば煩いぐらいに振り回しているだろう。
「切人こそ、色々と変なことになってるのに随分と自由にできてるんだねぇ
もっと制限されてるものだと思ってたよ」
ニヤニヤと笑いながら切人の目の前へと寄っていく怪異。
先日も怪異である自分に魔術で手助けしてくれたわけだし。
少し心配していたが無事そうで内心安心した。
■追影切人 > 「いや、テメェがそもそも”指定怪異”だっていう自覚は…ああーまぁいいや面倒くせぇ。成長してんだから、直ぐには気付かれねーだろうが、ちゃんと用心しとけ。
テメェを切れってお上から言われたら俺は遠慮なくやるからな」
と、溜息混じりに言うが、それでも彼女を助けたりしているのだから滑稽なくらいダブルスタンダードだ。
「あぁ?制限は相変わらずだっての。おまけに新種の怪異に”なりかけ”てんだからな。
この刀だって刃を潰したナマクラだ。まともな武器なんて持たせちゃくれねーよ」
と、不機嫌そうに左腰に下げた刀の柄をぺしぺしと叩いておく。
で、改めて成長したアーヴァを一瞥する。…うん、乳は中々のサイズだ。まぁ全裸激写したから知ってるけど。
■アーヴァリティ > 「進化したこの僕が指定怪異になったぐらいで討たれるとでも思ってるのかい?
君が相手でもまた勝てる気がするね
切人が相手なら容赦なくやれそうで安心だしね」
わかってないなーやれやれ、と言った手振りで首を振って。
指定怪異云々などに関しては慢心しているのは否めないが、不安ではある。
「ふーん大変だねぇ...
あ、そうだ。怪異になったら僕と一緒にくらそうよ。
ほら、切人の好みの感じになったんじゃない?」
全身をさり気なく見ていた切人の様子は見逃さない
実際今の姿は以前聞いた切人の好みをある程度反映して作ったものなわけで。
■追影切人 > 「いや、流石にテメェ討伐する時は”解禁”されるからな?普段許可がおりねーだけだからな?」
解禁――例の魔術ではなく、勿論能力の方である。あらゆる物を切る――正確には、存在が確定しているモノを断ち切る”因果切断”の能力と言えるが。
「いや、怪異に成り果てるつもりはねーよ。そん時は自分で首を飛ばすか何かするっての。
――死ぬ時はどうせロクでもねぇってのは分かりきってんだ。俺は刃狼(やいば)である時に死ぬわ」
怪異に染まり切らない、ときっぱりとそこは言い切る。だから彼女の提案はばっさりだ。
何だかんだ気に掛けてはいるが、自身のポリシーまで曲げるつもりはないのである。
まぁ、それはそれとしてこちらの好みを反映しているのは分かる。主に乳とか。
――更に進化したら乳の化け物になるんじゃいかコイツ?いや、重さ的な意味でそれはないだろうが。
■追影切人 > と、まぁそんな馬鹿な考えもありつつ、偶然とはいえ遭遇したなら二人で適当にダベろう。
もしかしたら、どさくさで何か奢らされたかもしれないが、それはそれで珍しくも無く。
「つーか、今あんまり金がねーんだっての!!」
なんて、ぼやきながらも奢る男の姿が合ったかもしれない。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から追影切人さんが去りました。