2020/08/22 のログ
ご案内:「常世渋谷 底下通り」に小南 美奈子さんが現れました。
小南 美奈子 > 清濁入り乱れる底下通り。特に異邦人が多くひしめき、そこに乗じて悪い商売をする者が多い場所。
小南美奈子は胡散臭いアクセを売っている客引きを慣れた動作で避けながら路地へと入る。
夜明け色の看板が目立つスナックやモダンテイストの喫茶店を抜けた先、突き当りにある木造建築のラーメン屋がそこにはあった。

臆した様子もなく店に入ると、アジア系といった顔つきの店主が「ラッシャイ」と声を掛ける。
軽く手を振って応答してからカウンターに座る。メニューのかかっている壁を一瞥。
様々なラーメンが薄汚れた文字で書かれている。売り切れを示す赤札のかかったトッピングを横目に、商品が売り切れていないことを確認してからカウンターの向こう側――調理場の店主に注文をする。

「豚骨ラーメンアブラ多め、トッピングに魚粉を」

小南 美奈子 > ラーメンが来るまではスマホを弄って待つ。今のところ客は己以外におらず、ラーメンの具材をザクザクと切る音と、沸騰したお湯がグラグラと煮える音がよく聞こえて来る。
次第にむわっとした香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。頬杖を突きながら待ち続ける。
今日のニュースは特段面白いものはない。底下通りの喧騒はよくあることなので慣れ切ってしまったが、それ以上のニュースとなるものは早々に起こらんのだ。起こってほしくもないが。

『魚粉は別皿でイイネ?』

はたと眼を上向きにやると、店主がトッピングの処遇について尋ねて来た。お願いしますと短く答えると、店主もアイヨと応答してラーメン作りを再開する。
小麦の良い匂いが漂ってきた。

小南 美奈子 > 『お待ち。豚骨アブラ多めと魚粉ネ』

どん、とプラスチックの皿の上のでかでかとラーメンの器が載せられていた。プラ皿の上には蓮華が置いてあり、近くには盛り塩のように山となって存在感を放つ魚粉が添えられている。
割りばしを手近の箸置き場から取り、いただきますと小さく合掌。綺麗に割ってから蓮華との二刀流を構える。

「……んむ」

いつもいつもどうやってファーストコンタクトを取ろうか迷うことがある。美味しいラーメンの食べ方は千差万別。
スープから行く人もいれば、まだスープに浸りきっていない麺の噛み心地を楽しむ者もいる。
しかしてここのラーメン屋はスープから頂くのがおすすめだ。特にアブラの多いラーメンだとまだ混ざり切っていない清い部分との調和がとても味わい深く、喉を潤すのにちょうどいいのだ。
塩分を豊富に含んだこのスープは熱中症対策にも効く。スポドリよりラーメンのスープを飲みたまえよ。

小南 美奈子 > さて、本題に戻るとしよう。豚骨に香辛料、その他さまざまなフレーバーで構築されたスープは鼻を通るような味わいだ。
アブラを追加したことで毒のように侵食して来る背徳感とジャンキーな味わいは深々として、スープ全体に『重み』が加わるのが分かる。

「……次は麺を……」

蓮華がスープで温まったところで麺に手を付ける。蓮華でちまちまとミニラーメンにして具材を載せて、ちゅるちゅると頂く。アブラが浮き上がる前に素早く救って食べる様はわんこそば並みのスピード感を思い浮かばせる。
もちもちとした触感の麺は弾力が強く、噛み締めるとスープを吸った汁が口内に広がる。
何度かそうやって食べ進めながら、味変を求めて魚粉を一つまみ。
蓮華の上に乗せて味噌を溶くように少しずつ浸透させていく。

小南 美奈子 > 波立たせない程度にかき混ぜて魚粉を馴染ませてから麺を啜る。魚の味わいが口いっぱいに広がり、滞留した味に清涼感にも似た爽快さが染み渡って行く。

「……ン」

そうそうこれだ、これが良いんだ。初手から魚粉を馴染ませて徹頭徹尾食べるのではなく、濃い物から徐々に口をさっぱりさせていくこの感じが飽きを感じさせなくて良いのだ。
スープもがっつりと味わいが変わり、アブラまみれだった味から濃さが別ベクトルに突き進んでいく。
付け合わせの海苔に魚粉を絡め、スープに浸しており畳んで一口。やはり美味しい。魚介系と海苔の組み合わせは収容所行きも辞さない味わいだ。

小南 美奈子 > 「ご馳走様でした」

ラーメンを完食し、丼をカウンターに置く、最後に水で口の中をリセットしてからお代を置いた。

『またヨロシクネー』

「……はい、ではまた」

彼女は素っ気なく言葉を放ち、店を後にした。

ご案内:「常世渋谷 底下通り」から小南 美奈子さんが去りました。