2020/08/24 のログ
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に葉月 尊さんが現れました。
葉月 尊 > 「ヘーイ! そこ行く綺麗なお嬢さん、俺とお茶しなーい?
 え? 職業? 今のところ牧師かな、もちろん給料が無いから慈善事業ってことになるのかなぁ?
 あっはっは。
 そういう事で奢ってくんない?
 あ、ちょっとまって! 嘘だってお金は払うってば!
 カムバァァァァァック!!!」

渋谷のブラックストリートで人目も憚らずに大声を上げている、ナンパに失敗した情けない男、葉月尊。
黒服に十字架をひっさげた、夏なのに白いマフラーを身に着けている暑苦しい男は大人げもなく悔しがっている。
無類の女好きであった。
なお、女性を養えるほどの甲斐性は今のところない。

普段の生活費は彼の口座に自然と振り込まれてくる大量の資金で賄っている。
そのほとんどは歓楽街に建てた己の教会の維持費や管理費にほとんどを回してしまっているので、火の車になってしまっているのだが、男自体は大して気にもしていなかった。
というのも、その日喰って寝ていけるだけの小銭があればいいと思っているからというのが大きいだろう。
彼の教会以外の大きな出費と言えば、ナンパの結果発生する、女性へのプレゼント程度のものだった。

――当然高額なものも時には含まれるが。

葉月 尊 > 牧師と名乗るにはあまりにも自由すぎる彼の在り様は、様々な意味で煙たがられることが多い。
女性から冷たい目で見られることはもちろんの事、れっきとした教義を持った宗教家からは目の敵にされることも多い。
彼の行動が宗教家然としていない、という事もさることながら、それは彼の掲げる教義を周りにほとんど明かさないという特殊性にある。

彼の掲げる教義に神は居らず、そこには彼の掲げる『ルール』ともいえる『教え』が存在するだけだ。
曰く

「迷える者に救いの手を差し伸べる事しかしない。
 神に頼るのは一部の救われない奴らだけで十分だ。
 ま、神様なんていやしないけどな。」

神に仕えてきた過去の殉教者たちからすればとんでもない言い草であろう。
牧師の癖に神などいないと言い張るその矛盾に、多くのものは首をかしげる。
彼のその言葉の真相を知るのは、今のところ彼だけだ。

「うーん、今日も失敗か。
 一緒に優雅なティータイムを過ごしたかっただけなんだけどねぇ。」

何事もなかったかのように、ケロっと悔しがっていた顔は端整な微笑みに戻る。
終わったことは、過ぎたことは気にしない。
トライアンドエラー、それが男のポリシーだった。
彼に声をかけられる女性にとってはいい迷惑かもしれないが。

葉月 尊 > 何故そんな彼が、ブラックストリートと呼ばれる不良のたまり場に居るのか。

「ま、今日も平和ってことかね。 ナンパができるぐらいには平和平和。」

所謂見回りの様なものだ。
葉月は時々、歓楽街の店の用心棒をする程度には喧嘩の腕に自信もあった。
超人じみた速度で動けるわけでもなく、スラムに出たと言われる『異能殺し』の様な怪力があるわけでもない。
それでも尊は今まで、『負け』を自覚した事は無い。
其れには彼の異能の力によるものが大きかった。

「まぁ、ちょっと退屈な気がしないでもないけど。
 救いを求める声が無いに越した事は無い。よな?」

葉月尊の己に架した『ルール』その一。

『助けを求める声は見捨てない。』

お人よし、というわけではない。
それが自分に定めた『掟』だから、そうあるべきと定めただけに過ぎない、故に。
今日も今日とて危険な匂いのする場所を練り歩く。
助けを求める声を探して。

ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から葉月 尊さんが去りました。