2020/09/15 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」に紅葉さんが現れました。
■紅葉 >
いつものように底下通りで飲み歩きをしていた時のことだった。
きぃん───
耳鳴りのような音がして、周囲に霧が立ち込めていく。
三歩先すら見通せないほどの濃霧。道行く人々はいつの間にか姿を消している。
不気味なほどの静寂に支配された空間に取り残された女性は困ったように頬を掻いた。
「あれま、また呑まれてもうたか。
ぼちぼち帰ろか思てたところやから別にええけど……」
どうやら、これが初めての経験というわけではないらしい。
明らかに異質な状況に動じることなく、帰り道を探すように周囲を見回した。
───その時だ。
■紅葉 >
「うん? 今なにか───」
振り向いた女性の頭上から、霧を裂くようにして巨大な塊が振り下ろされた。
■紅葉 > ドガァァアン!!!!
■巨躯の怪異 >
それは大の男が見上げるほどの巨躯を持つ怪異が振るった棍棒だった。
大木を削り取ったような粗野な造りだが、人間相手なら容易く挽き潰してしまえる兇器。
これまで裏常世渋谷に迷い込んだ者達の命を幾度となく奪ってきた理不尽の犠牲者が、また一人……
■巨躯の怪異 >
砕かれたアスファルトから棍棒を持ち上げる。
そこには潰れたカエルのようになった女性がいる……はずだった。
「………?」
しかし、そこにあったのは瓦礫だけ。血飛沫の一つも見当たらない。
手応えの無さに首を傾げる怪異の眼前を、一匹の蝶が燐光を纏いながらひらひらと横切った。
■紅葉 >
「こらまた、えらい手荒な歓迎やなぁ」
怪異の背後から響く声。
涼しい顔をした無傷の女性が、先程までは持っていなかった扇子を手に立っていた。
淡く光る蝶は女性の下へと舞い寄り、その細い指先に止まる。
「まぁ腹ごなしには丁度ええか。ほな、ちょいと遊んだろ」
扇子を開き、笑みを湛えたままの口元を隠して怪異へと歩み寄っていく。
■巨躯の怪異 >
「ヌゥ……」
女性がぴんぴんしているのを見て、怪異は面白くなさそうな顔をした。
仕留めたと思った獲物が平然としているのだから無理もない。
今度こそ叩き潰す、と言わんばかりに再び棍棒を振り上げる。
ご案内:「裏常世渋谷」に宇津篠 照さんが現れました。