2020/09/16 のログ
宇津篠 照 > 「っ……!? ……ここは、人がいなくなったというよりわたしが移動した……?
……異界? となるとあの歪みは門のようなものかしら? とにかく戻る方法を探さないといけないわね。
人……はいるような様子ではないわね。というか、私以外に生き物いるのかしら……?」

常世渋谷を歩いているときに妙な空間の歪みを感じた。
空間に関わる能力を持つものとして興味がわいたので調べていると、気が付けば似通っているが違うこの空間にいた。
ぶつぶつと考察し、周囲を観察しながら異様な街を歩く。

「異能は……うん、問題なく使える。どこか見覚えがあるような街並みと言い完全異世界ってわけではなさそうね。
……あら? 今物音が聞こえたわね。……あまり平和そうな音ではないけれど、情報がない以上見に行くべきか。」

軽く異能が使えるかテストしてみたが問題なかった。……うーん、なんの空間なのだろうかここは。
遠くから聞こえる微かな物音を耳が拾う。音的にあまり愉快なものではなさそうだが……見に行かないという選択肢はない。

「近くまで来たけど……だいぶ視界が悪いわね。うーん、人間?と巨人……。
情報を聞き出したいのだけど……少し様子を見たほうがよさそうかしら。」

霧で視界が悪いが、近づけば人型と何やらデカブツが戦っているのはわかった。
恐らく人間だろうが、そもそも善人かどうかはわからないので、ひとまず音の聞こえる距離で様子をうかがう。

紅葉 >  
ぶぉん! 風切り音と共に振り下ろされる棍棒。
当たればひとたまりもない重さだが、動きは大振りでしっかり見ていれば回避は難しくない。
ひらりと躱して距離を取る。隙があっても反撃はせず、どこかへ誘導するかのように。

ただ、問題があるとすれば───
後退している方向に、様子を窺う少女(照)がいることに気付いていないようだ。
逃げる女性を追いかけて怪異もどんどん近付いてくる。

宇津篠 照 > 巨体が何やら棒のようなものを振り下ろした。
聞こえた音からもその威力が窺い知れるが、同時に今のような単調な動きであれば、よけることは容易そうだ。
一方、人間の方は距離をとることに徹している。……倒すための手段がないのか、何かを狙っているのか。
そうやって考えていると戦闘がこちらへと近づいてきた。
情報を得るためならここで合流するのがベストだろうか。

「すみません、そこの人! 助太刀は必要ですか?」

選ぶのは当然人型。近づけば女性であることがわかった。
邪魔にならないような場所に移動してから、敵ではないこと、助力が必要かと声をかける。
当然人前だから猫は被る。

紅葉 >  
進行方向から人の声がした。自分の他にも誰かいたのか、とそちらを一瞥する。
しかし直後に棍棒が振り下ろされ、飛び退いてから改めて声のした方を見た。

「ん……誰かおるん? ここにおったら危ないよ。
 こいつ追っ払ってくれるんやったらありがたいけども」

コンクリートを砕く音が響き渡る濃霧の中、よく通る声が少女の耳に届くだろう。
独特な訛りの混じった、こんな状況でも余裕そうな喋り方だ。

宇津篠 照 > 「突然ここに飛ばされたばかりなのでわからないですけど、少なくとも足止めくらいなら!」

かき消されないように声を大きくしてそういうと、宙を舞うコンクリート片を見やる。
刹那、空間が歪む。歪みに飲み込まれたそれらは消え去り、同じく歪みの発生した巨躯の眼前へと現れる。
人相手には使えたものではないが、動きの遅く、標的として大きな相手であればそれなりの効果があるだろうか。

巨躯の怪異 >  
「ヌァ……!?」

己が砕いた地面のコンクリートが目の前に転移してきた。
ビシビシと当たる破片に足を止め、煩わしそうに腕を振るう。
羽虫を払うような呆気なさではあったが、時間稼ぎにはなったようだ。

紅葉 >  
「おぉ、凄いやん。よし今の内に逃げよか」

唸り声に振り向けばコンクリート片の瞬間移動が見え、感心したような声を上げる。
とはいえ、ここで呑気に眺めていては時間を稼いだ意味がない。
少女の方へ駆け寄りつつ、一緒に逃げようと提案してみる。
この霧が怪異にも影響を及ぼしているかは微妙なところだが、建物などの陰に逃げ込めば撒くこともできそうだ。

宇津篠 照 > 「うむむ、やはりダメージとしてはあんまりですね……。っ、はい!」

あわよくば倒れてくれないかと思ったがまあそう上手くはいかない。
かけられた声に返事を返す。とりあえず足止めは達成できたわけだから逃げるとしよう。
見ず知らずの相手ではあるが、今頼れる情報源は彼女だけなので、周囲を警戒しながら彼女の後をついていく。

「とりあえずまけたのかな……? えーっと、さっき言った通り突然この場所に飛ばされたのですが何か知っていることはありませんか……?」

建物の陰に逃げ込み、しばらくすれば大丈夫かなと早速質問に入る。

紅葉 >  
「いやぁ、助かったわぁ。おおきにな」

一息ついたところで扇子を閉じる。糸目なのは元からのようだ。
現れた少女は偶々ここに迷い込んでしまったらしい。
よくある事なので、けろっとした様子でこの場所について説明を始めた。

「ここは"裏渋"いうてな。表側と境界ひとつ隔てた先にある場所や。
 たまぁにひょっこり迷い込んでまうんよ。うちもそうやし」

この場所を調査している団体もいるらしいが、自分も迷い人の一人であると前置いた上で。

「表に戻るには、その境界を見つけなあかんのやけど……
 見ての通り危ないもんがうようよしとる。怪異っちゅうんかな」

ズシン、ズシン……
通りの方からは未だに地鳴りのような足音が聞こえている。
加えてこの濃霧、下手に動くのは危険そうだ。

宇津篠 照 > 「いえいえ、それにまあここについて知りたいってのもありましたし。」

純粋な善意100%ではないとだけ言って彼女の説明を聞き入る。

「成程……。常渋と関係性があるとは思ってましたがまんま裏渋ですか。
私としては、とりあえず帰りたいのでその境界を探したいのですが……流石にあれみたいなのがウヨウヨしているのは嫌だなぁ。」

どうやら目の前の女性も同じく迷い人らしい。
一番知りたかった帰り方についても知っていた。思わぬ収穫に内心ガッツポーズ。

「えーっと、どうしましょう。とりあえずこの場から離脱しますか?
多分直接向こうに戻るのは無理ですけど、私が迷い込んでからここに来るまでの場所なら異能で転移できますが。
あー、詳しい地図とか座標がわかるなら知らない場所でも転移できますが……。」

流石に関係性が深いとはいえ直接世界の壁を越えて転移するのは今の自分では厳しそうだ。
まあ転移先が安全という保証はないのだが、ここで案もなく過ぎ去るのを待つよりかはマシだろうか。

紅葉 >  
「困った時はお互い様、ってな。
 使えるもんは何でも使うんが賢い生き方やさかい」

口元が弧を描く。傍から見れば女性の方がよっぽど胡散臭い。

「ほんま? そないな事できるんやったら楽に帰れそうやわ。
 えらい霧やけど、街の構造自体は表と大して変わらへん。
 交差点とか三叉路とか、道の交わる場所が境界になりやすいんや」

表の地理にある程度詳しければ、それは"裏"でも通用する。
そして、ここは底下通り───女性にとっては庭のような場所だ。

宇津篠 照 > 「成程、交差点ですか。……交差点、近場、広いの順で優先度付けていい場所をてもらえませんか?」

一応それなりに表の地理は知っているが、慣れた様子の彼女に聞いたほうがいいだろう。
ちなみにこの順番は、あまり歩けば怪異に出会う可能性が高くなり、
近場の方が転移の精度や負担が少なく、広いほうが座標がずれていた際に安全だという理由だ。

「……よし、問題なくつながったかな。ちょっといつもと使い方が違うのだけど、ここを通れば言ってた場所につくはず。」

場所を聞き出せばぐずぐずしている理由はない。
本来は転移対象と転移先を直接つなげるのだが、今回は戻ることも考えて人間が不自由なく通れる大きさの門のような形で繋げる。
その部分だけ空間が歪み、転移先の映像と重なって見えるだろう。

「それじゃあ先に入るので、問題なければ付いてきてください。」

そういって先に歪みへと足を進める。転移先に境界はあるだろうか。

紅葉 >  
「せやなぁ、こっから近いんは……」

畳んだままの扇子を口元に当てて、条件に合う場所を絞り込む。
表では屋台が立ち並び、手狭に感じるこの底下通りだが、道幅そのものはかなり広い。
すぐに思い浮かんだ場所を少女に伝え、空間を繋いでもらった。
転移先も霧に覆われているものの、きちんと地続きなようだ。

「……あ、せや。ちっとだけ待ってな」

出発の前に、怪異がいた通りの方に扇子を向ける。
すると、どこからか一匹の蝶が淡い光を纏いながら扇子の指す先へ舞っていった。

「これでよし、と。ほな行こか」


~~~~~~~~~~


歪みを潜った先は読み通り、広々とした交差点の前。
近くに他の気配もなく、落ち着いて境界を探すことができそうだ。

宇津篠 照 > 「……きれい。
えっと、何をしたのか聞いても?」

ひらひらと舞う蝶にポツリと言葉がこぼれる。

~~~~~~~~~~

「……あっ! このあたり。迷い込んだ時のような感じがするけどどうでしょう。」

転移先は要望通りの広々とした交差点だった。
こんな場所あったんだと思いながら境界を探していると、迷い込む前に感じたような感覚に気が付く。
そのあたりを指さしてあっているかどうか聞いてみる。

紅葉 >  
「綺麗やろ? 邪魔が入らんよう、囮になってもらお思てな」

ひらひらと離れていく蝶を見送って、笑った。


~~~~~~~~~~


「あら、分かるん?
 うちにはさっぱりやけど……あんたはんがそう言うなら、そうなんやろなぁ」

境界は目に見えるものではなく、知覚できたら何度も迷い込んだりしていない。
しかし、空間を繋ぐことのできるあなたなら感じ取ることが可能でも不思議ではないと納得した様子。
何もなければ素通りになるだけだ。とりあえず行ってみよか、と促して後に続いた。

そうして交差点の中心を跨いだ瞬間───
視界を覆っていた霧が晴れていき、周囲に喧騒が戻ってくる。
気が付けば二人は屋台の立ち並ぶ"表"の底下通りに立ち尽くしていた。

巨躯の怪異 >  
一方その頃……
見失った獲物を探して彷徨う怪異の前に人影が現れる。

紅葉? >  
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ───ってな」

照と共に境界を渡ったはずの女性がそこにいた。
次は逃がさんとばかりに怪異の棍棒が再び振るわれる。

最初の内はひらり、ひらりと舞うように躱していた女性だったが、歩幅が違いすぎる。
あっという間に距離を詰められ、逃げ場のない一撃が叩きつけられた。

燐光の蝶 >  
しかし……いや、やはりと言うべきか。
そこに女性の姿はなく、代わりに一匹の蝶が飛び去っていった───

宇津篠 照 > 「成程……中々面白そうですね、それ。」

あれかな、蝶が姿を模した人型になるとかそういうやつなのだろうか。
中々使いどころは難しそうだが、こういった場面だと重宝しそうだ。
実際、そのお陰もあってか怪異と会わなかったわけだ。

~~~~~~~~~~

「まあ、なんとなくですけどね。さっき見たと思いますけど私の能力もまあある意味似たようなものなので。」

現世と異界を繋ぐのは無理ですけど、と続ける。
促されるまま交差点の中心を跨ぐと―――
ガヤガヤとした人の気配を感じる。
さっきまで広々としていた交差点は立ち並ぶ屋台によって狭くなっている。

「無事戻ってこれましたね。戻り方とかわからなかったので助かりました、ありがとうございます。
私、二年の宇津篠 照って言います。」

お礼と共に頭を下げ、もう気を張る必要もないなと軽く自己紹介をする。

紅葉 >  
「ん~、この賑やかさ……戻ってきたって感じするわぁ」

軽く伸びをして、無事の帰還を喜ぶ。
お礼の言葉にはひらひらと手を振って応えた。

「照はんのおかげで早くに帰れたし、おあいこやね。
 うちは簡単な方の紅葉(モミジ)と書いてクレハや。
 "すくーるかうんせらぁ"やっとるさかい、学園でもよろしゅうな♪」

互いに自己紹介を済ませたら、後は帰るだけだが……
飲み直すのも悪くないと思えてきた。流石に未成年は誘えないので、ここまでだ。

宇津篠 照 > 「はーい、紅葉先生ですね。こちらこそよろしくお願いします。
それじゃあ、私はこのまま帰りますね。ありがとうございました。」

どうやら先生だったらしい。まあカウンセラーという存在とはあまり縁がなかったので知らなかったのは仕方がないのかもしれない。
最後にもう一度礼を言って歩き出す。

(にしても興味深い場所ではあったわね。……今度また探してみようかしら。異能のヒントになるかもしれないし。)

紅葉 >  
「気ぃつけて帰りや。ほな、またなぁ」

照を見送り、こちらは屋台の方へと歩き出した。
偶然が交差させた二人の道は、こうしてまた分かれていく。
同じ島に暮らす者同士、再び交わる時もそう遠くはないのかもしれない。

あるいは、また"裏側"で───

ご案内:「裏常世渋谷」から宇津篠 照さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」から紅葉さんが去りました。
ご案内:「裏常世渋谷」に宇津篠 照さんが現れました。
宇津篠 照 > 「ふう。だいぶ感覚はつかめたしそろそろ試してみようかしら。」

放課後、彼女は常世渋谷へと赴いた。目的としては異能で直接裏渋に行けるようにすること。
裏渋そのものが面白そうなのもあるが、追われた際の避難場所としても優秀なのではないかと考えたのだ。
色々な場所から裏渋に入り、出ることを繰り返し、表と裏の座標の対応を確認する。
何回か繰り返せばだいぶ感覚がつかめてきた。さて、そろそろ試すとしようか。

宇津篠 照 > 「よし、境界はこのあたりかしら。とりあえずこれでいいわね。」

表の方で境界を探しだしてその近くへ行く。
ぶっつけ本番で生身の体を転移させるつもりはない。先ほど買ってきた生の鶏肉を実験にする。
転移した後、近くの境界で裏へと入り込み、転移先に鶏肉があるか、あれば状態がどうかを確認する。
問題がなければいよいよ自身だ。
……本当は自身の前に人間でも実験したいのだが、流石にちょっと面倒ごとになりそうなのでやめた。

「っ……思ってたよりもきつい。うーん……慣れないと咄嗟の脱出には使えなさそう……。」

転移先を確認し、表と異次元、異次元と裏をつなげる。
やはり近しい存在とは言え別世界だからか、いつも以上に繋げるのに時間と体力、特に時間の方を使う。
だが、問題なく繋がりはした。実際鶏肉は目の前から消えた。そのことを確認して自身も境界から裏へと入る。

宇津篠 照 > 「あった。どれどれ……よし、ズレも許容範囲だし問題もなさそうね。」

裏へと入り込めば問題なく転移されていた。それじゃあ、怪異が出る前にさっさと戻ってしまうことにしよう。
少しの間繋げることに集中して、スッとその場から消え去った。

ご案内:「裏常世渋谷」から宇津篠 照さんが去りました。