2020/09/20 のログ
ご案内:「常世渋谷 常夜街」に霧島 孝介さんが現れました。
霧島 孝介 > 「えーっと」

今の状況を一言で整理するなら、そう


迷子である。

霧島 孝介 > 話は遡ること2週間前。
彼は資金難に悩んでいた。
学園の奨学金制度を頼って生活はしていたものの、浪費癖が少しある彼。
新作ゲームが続々と発売されるのを買っていたら貯金の限界が見えて来た。

そりゃあ焦る。めっちゃ焦る。
焦った末にまず考えたのがバイトである。

面接を経て、今日が初出勤。
ドタバタと忙しい居酒屋であったが、新人には優しい職場であり
なんとかコミュ障でも乗り越えられた。

〆作業も終わり、よし帰ろう。

帰ろう。


…帰ろう?

っというのがつい1時間前の事である。

霧島 孝介 > 1時23分。
ぶっちゃけ終電はもうない。
『ってかお前高校生なのにこの時間まで働いてたのかい』ってツッコミは勘弁してください


周りを見るとホストがちょい残念な顔の女性を連れてたり
逆にキャバ嬢と思わしき女性がオッサンに連れられてたり
何か如何わしいキラキラしたHOTELの看板がきらめく場所に来てしまった。

「あ…やべ…」

俺みたいな陰キャ、というかまず未成年が来てはいけない場所じゃないか!
人の欲望渦巻く地区、HOTEL街って奴ですかァー!?ここが!

霧島 孝介 > (流石にここは童貞・陰キャ・未成年・オタク
 という真逆に性質を持っている自分には荷が重い!
 ってか歩いてるお姉さんの服やばっ!ほとんど裸じゃん!!)

とか考えながらそそくさと歩き出す。
ここを脱出しなければならない。

そそくさと歩いて行けば、脇道に入る。
ネオン輝く通りは一個隣へと移れば少ない街頭が心もとなく暗闇に光を齎し

「…飛んで帰るか?」

経験上、飛ぶのはもう止めたいのだが、背に腹は代えられぬ。
雲すらも暗くなった曇天を見上げる。

ふと、脇に置いてあった青いゴミバケツがガタっと音を立てて動いた

「…?」

そちらを向く
辺りは恐ろしいほど静かで、先ほどの喧騒がまるで遠い残響のように消えているようで

霧島 孝介 > 聞いたことある。
こういう人の欲望が渦巻くところでは、負の感情が吹き溜まる。
すると怪異や霊障が生じる。

正しく現代伝奇だ。
『こんなもの』、今まで見た事なかった。
流石、常世島と言った所か。

霧島 孝介 > 出るものだ
霧島 孝介 > 「…化け物」

2mくらいだろうか。
大きい、黒いノッポの人型が影から乗り出すように出てくる

「やばい」

やばい。

身体全体が危険信号を発する。
心臓から、身の毛から、皮膚から汗が、手足の震えから、背筋の血の気から
多角的に彼が『恐怖』を感じていることを、嫌というほど表出する。

人型はこちらを見る。
いや、正確には目のようなものは見受けられない。
こっちを『見る素振りを見せた』

「っ!」

拳をぐっと握る。
そこで初めて、身体が動いた。

霧島 孝介 > 「やばいやばいやばいやばいやばいやばい!!」

こういう場面の為、というのもあったが日頃から鍛えていたことが功を奏した。
複雑な路地の中を、まるで迷路のようなそこを駆けていく。
恐らく彼の人生の中で1、2を争う疾走。

しかし、それでも徐々に距離を詰める人型。
動きは緩慢なように見えるが、歩幅が大きく
細長い手足を伸ばしてこちらに近づいてくる。

『アレ』に掴まったら終わる。
身体が危険信号を上げながら、逃げるのに必死になる。
次は右か、左か。
正解はどっちだ。

そのことで頭が一杯になる。

ご案内:「常世渋谷 常夜街」にセレネさんが現れました。
セレネ > 裏常世渋谷を、個人的な怪異調査の為に探索後、頃合いを見て出た場所は路地。
…しかも時刻は深夜。
入った場所と出た場所で違う事、表と裏では流れる時間ももしかしたら違う可能性もある。
今居る場所がどこだか分からないし、翼を使って飛んで帰った方が良いなぁと思っていた所
全速力で目の前を駆けて行く人物と明らかに人では無い気配に蒼を向ける。

「――≪束縛せよ≫」

走っている人物を追う”それ”に対し、異能を使って動きを止めようと異なる言語の呪文を口にする。
すると空間から淡い蒼に光る鎖が伸び細長い手や足、身体に巻き付いて縛ろうとするだろう。

霧島 孝介 > 蒼い鎖は絡み、縛り、人型を拘束する。
少年を追う足は止まり、絡まった鎖を注視する。

少年もそれを見て立ち止まる。
未だに緊張が走る。『これも奴の攻撃の一種』なのかと―――
しかし、彼の洞察力はここに来て『冴え』を見せていた。

(奴の意図しないことなのか、あの鎖は…!)

黒い人型は困惑するように首を動かしながらも、その細身からは考えられないほどの膂力で鎖を千切ろうともがく。

少年は辺りを見渡す。
先ほどかすかに聞こえた声の主
女性と思われる彼女を探して―――

セレネ > 薄暗い路地、街灯の光が灯さない影の場所。
コツリと鳴らした青のパンプスのヒール。

出てくるのは先日屋上で話した少女だ。
違いと言えば互いの服装くらいか。
覚えていてくれているなら良いが。

「――あら、霧島さん?」

鎖を千切ろうともがくあれは気になるが、それよりも何故彼がこんな所に、と。
蒼を瞬かせて問いかけてみる。
そうそう鎖は千切れないとは思うが…

【70以上拘束解除】
[1d100→87=87]
セレネ > ――ピシ。

聞こえた罅が入る音。
己の想像以上にあの人型の膂力が強かったらしい。

引き千切られた鎖は光となって消え、人型に対し一時的な足止めにしかならなかった。

霧島 孝介 > 響く足音の音源を見定める。
暗順応した瞳に写るのは先日見た天使のような彼女。
忘れる訳がない。美少女はこの島で見かけはしたが

天使のような美少女は彼女しか知らないのだから。

「セレネさ…!」

彼女の名前を呼ぼうとすると、聞こえたのは鎖が千切れる音。
鎖の破片は光となって消える。

人型は標的を変える。
顔面と思わし部分がまるで、水面に水滴が垂れたかのように波打ち。

無数の瞳が顔面を覆い、赤い虹彩は彼女を捉える。
次は彼女の方へ向かって、加速し、突っ込んでいく。

セレネ > まさか目の前の彼から天使のようだと思われているとは知らず、
街灯の光を受ける月色の髪を揺らしながら大丈夫かと近付こうとしたがそれは叶わなかった。
消えた鎖から解放され、何もなかった人型の顔に浮かぶ無数の赤い瞳が振り返った己の視界に入る。

――向く悪意は彼から己へ。
最悪、己が囮になって逃げれば良い。人間である彼の命の方が大事だ。

加速し此方へ真っ直ぐ駆けてくる人型に蒼を鋭く細めると
手を前に翳し防御壁を展開する。
先程は見誤ったせいで失敗したが、この防御壁ならばまだ足止めは出来るだろう。

「霧島さん、私が此処で食い止めますから貴方はどうか逃げて下さい…!」

霧島 孝介 > 「……ッ!」

人型に浮かぶ瞳を見ると息を呑む。
なんて悍ましいのだろう。あんなのが現実に居るのか…!
自分が注意をする間もなく、彼女の方に人型が突っ込み、そして張られる防御壁。

人型は防御壁に勢いよくぶつかるが、それだけではダメージはなく。
ガンガンと手で防御壁を破壊せんと攻撃を始める。

「でも…!」

彼女を放ってはおけない。
恐らくあの怪異は彼女でも一筋縄ではいかない存在だろう。
援護をしなければ…

しかし今の自分はどうだろうか?
拳をぎゅっと握り、震える足でやっと立っている状態。
修羅場をくぐってきた彼女なら、いや、彼自身も分かっているだろう。

足手まとい。

最善の行動は彼女の邪魔を、負担を減らすために逃げることなのだと。
彼自身も、頭では理解していた。

セレネ > 勢いよく人型が防御壁を叩いている。
まだ大丈夫。まだ耐えられる。
手を前に掲げたまま、視線をチラと後ろに向け。

すぐに逃げるかと思ったが違ったようだ。
彼の想像通り、この怪異はなかなかに厄介そう。
防御壁はそのままに、少し思考を巡らせる。

「…霧島さん。私実は、戦闘はそこまで得意じゃなくって。
私がサポートしますので手伝ってくれませんか?」

映画やアニメでよくある、共闘というものを提案してみた。
燃える展開というものでは?なんて、軽く笑いながら。

霧島 孝介 > 人型の勢いは止まらない。
やがて防御壁には罅が入って来るだろうか。
凄まじい膂力で壁を打ち破らんと迫って来る。

そんな中でも冷静な彼女の提案に苦い顔をして、自分の服の胸の部分を掴む。

「…くっ!」

こんなにも震えてるのに、ビビってるのに、恐れているのに。
こんなにも腑抜けている俺の助けを彼女が求めてくれた。
手伝ってくれと、言ってくれた。


そう、本来なら逃げるべきだ。
彼女の邪魔にならないためにも、逃げて救援を呼んだ方がずっといい。
彼女を置いて行って、専門家を呼んで、その人たちに任せた方がいい。

そう頭では理解していた。

でも心では


『戦え』と言っていた。

セレネ > 防御壁に罅が入る。叩く音が変わる。
この膂力で叩き潰されたら流石にひとたまりもない。

怖がっている彼に対し、酷な事を言っているのは分かっている。
己にもっと力があればきっとこうはならなかったかもしれない。

罅割れる音が増える。
このままでは押し負ける。
少しでも時間を稼ごうと、踏み止まって片手から両手を掲げ奥歯を噛み締めた。

「――大丈夫、貴方は私が守ります…!」

今にも壊れそうな、防御壁。

霧島 孝介 > 防御壁に罅が入った瞬間、最後の一押しと言わんばかりに強さが増す
衝撃に伴って罅は伝播し、広がっていく。

あと一撃で破壊される。
怪異が細長い両手を振り上げ、下げる瞬間に

「あぁあああ!!」

人型の前に出て刀を振り上げる。
刀の軌跡は妖艶な残光を放ち、それは人型の両手を切断する。

人型は叫びのような、聞くに堪えない低い音を発しながら後退る。
赤い虹彩瞳は全て、目の前の二人に向けられる。

「セレネさん…やりましょう!あの化け物を倒しましょう!」

背に居る彼女にそう声をかけ、刀を構える。
既に体の震えはなくなった。心臓は激しく脈打つが、恐怖ではない。

やれる。
彼女の言う通り…!

(燃える展開だ…!)

セレネ > 防御壁が割れると同時に後ろに飛び退けば攻撃は回避出来る筈。
その後は、彼を守りながら逃げるしかないか…?

頭の中でいくつもプランを立てながら、破壊される時を待つしかなかった。

そんな時、叫びながらも己の前に躍り出て怪異の両手を切断した相手の姿を蒼に映す。
その手に持つのは、一振りの刀。
…そんなもの、先程まで持っていなかった。どこから出したのだろう?
いや、その話は後だ。
思考を切り替えて壊れかけていた防御壁を消し、手を下ろした。

「一人では難しくても二人なら…!」

きっと倒せるはずだ。
怪異の挙動を見逃さないよう、彼の後ろから蒼を見張る。

霧島 孝介 > 人型の両腕が再生される。
ジュクジュクと傷口の肉は水が沸騰したように泡立ち
新しい腕が生えていく。

新しい腕は先ほど同様細長いが先端には突起…
まるで、鋭利な爪のような突起が複数本生えており、それらを擦らせ、鳴らす。
シャリシャリと、聞くだけなら心地いい音ではある。

聞くだけなら。

「…すいません。何か、怒ってるみたいです」

咄嗟に生成した武器。
怪異に対して有効であると想像して生成した刀の効果は絶大だったようで
殺気が先ほどより増した気がする。

ピリピリと張りつめる空気。増す怪異の存在感。


怪異が踏み込むと、瞬き間にこちらへと接近し、二人に向けてそれぞれの腕を振るう。
鋭利な爪は膂力との相乗効果で、命中すればひとたまりもないだろう。

セレネ > 切断した筈の手が瞬く間に再生された。
何という再生力か。加えて先程とは形状がやや異なっている様子。

確実に殺すという強い意志を感じる。

「…まぁ、それはそうでしょうね。」

怒らない筈はないよな、と。
いつでも動けるよう片手につけている指輪を簡易的な属性の変換器にして、
瞬発力を上げる為雷属性の魔術を己の脚に掛ける。
と同時、読みが当たったか此方に詰め寄り爪を振るって来たではないか。
後ろから彼を抱き締めるよう掴めば、怪異とほぼ同じ速さで相手共々後ろに飛び退こうか。

…背中に柔らかな感触が伝わるだろうが、今は目を瞑って欲しい。

霧島 孝介 > 「っ…!」

反応が全くできず、目の前に急に現れた人型。
咄嗟に防ごうとするが、間に合わず、切り刻まれる…
寸前に彼女に抱きしめられ、勢いよく後ろへ下がる。

「あっぶな…!すいませんっ…!」

10mほど距離を開けた時点で、背中の彼女に礼を言う。
この状況で背中に当たる柔らかな感触を気にする余裕と豪胆さは持ち合わせておらず
今は目の前の人型を倒すことだけを考える。


その視線の先の人型は、虚空を切り裂いたことを認識すれば、再度こちらを見据える。
人型の顔面が波打つ。次は、口のようなものが現れる。

それは一直線から、孤を描き、開き、鋭い歯を見せた。

まるでその形は『笑って』いるかのようで。
爪を鳴らしながらのそのそと、今度は歩いてこちらに接近してくる。

咄嗟に彼女から離れ、体勢を立て直して刀を構える。

セレネ > 【一時中断、後日再開】
ご案内:「常世渋谷 常夜街」から霧島 孝介さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 常夜街」からセレネさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 常夜街」に霧島 孝介さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 常夜街」にセレネさんが現れました。
セレネ > 己の蒼は怪異の動きが”視えて”いた。
だが視えていても対処出来なければ意味がない。今回は偶々読みが当たって回避出来ただけだ。
次も偶然で避けられるかは分からない。だから、そうならないよう注視しなければ。

「いいえ、お気になさらず。」

礼には気にするなと言い、腕を解いて彼から身体を離す。
今の所、己にも彼にもこれといった怪我はない。

…強いて言えば、己の魔力の残量が気になる所か。あまり長引かせるとキツい。
現に視界にノイズが入り始めている。やや煩わしいくらいだが、命取りにならない事を祈るしかない。
色々と思考を巡らせていれば、ゆっくりと此方に歩いてくる怪異の顔が揺らぎ今度は口らしきものが現れた。

――何が楽しいのか、その口は笑みを浮かべている。
それが己は気に食わず、眉間に少し皴を寄せた。

霧島 孝介 > 「何を…」

笑顔を見せる人型。
まるで玩具を見つけた子供のように、楽しそうに口角を吊り上げる姿は
不気味で、恐ろしく、そして不愉快な感覚を味わわせる。

「っ…次、或いはその次で決めましょう」

こういう場面だからこそ、だろうか
直感が冴える。五感が澄み渡る。さっきの恐怖や興奮はまだ感じるが
少しは不要なモノは削ぎ落されて、冷静になった頭脳で思考する。

長引かせてはいけない。

彼女の魔力の残量の事は知らないものの、相手の脅威度がこれ以上増すのは避けたい。
相手がまた突っ込んできた拍子に、大技を叩きこもうと思考する。
刀を構え直し、何を生成しようか頭を高速で回転させる。


笑顔を作った人型は、爪をまたシャリシャリと鳴らしながら
今度は突っ込んでは来ずにこちらの様子を伺うように左右に徘徊する。
まるで檻の中の虎が人を狙うように、正しく虎視眈々と様子を伺っていて。

セレネ > 己が不調を訴えた訳でも、そんな素振りを見せたつもりもなかった。
何かを察した彼が短期決戦を仕掛けるつもりという事は分かる。
こんな状況だというに、気を遣わせてしまったかもしれない。

…仮に己が万全でも、徐々に変異を遂げているあれを観察しながら戦うという余裕もないだろうし。
個人的には、あれが今後どう変異をするのかは気になる所だが。
対処出来なくなっては元も子もないから情報のサンプルは別の怪異にするとしよう。

「…次かその次でとは言いましたが、何か策があるのです?」

己には情けない事に有用な策は浮かんでいない。
徘徊しながら此方を伺う怪異からは視線を逸らす事なく問いかけた。

霧島 孝介 > 自分も怪異からは視線を逸らさず、刀を構えたままに。
息を吐いて、彼女に一瞬だけ視線を送れば刀をぎゅっと握って

彼女にこれからの作戦を伝える。

「詳しくは説明できませんが…アイツが攻撃してきたら前に出てさっきの壁を張ってください
 あとは俺が合図するので、それに合わせて壁を解除して、俺の後ろに下がってください…

 俺がアイツを倒します…!」

1度目、2度目と突っ込んで攻撃をして来た。
次も同じ攻撃を仕掛けてくるはず。そこで彼女に盾になって貰って、自分が跡形もなく怪異を消す武器を作る。
そして入れ替わりそれを放ち、倒す。急場で拵えた作戦としてはこれが限界だ。

様々な懸念点は残るが…やるしかない

「…来ます!」


怪異はまたも踏み込む、脚が獣のような逆関節の形へと変化すれば
先ほどよりも早く、速く、疾く、こちらに接近してくる。

セレネ > 外見は変異を遂げてきている怪異。
これほどまで早く変異するのなら、知能をつけるのも文字通り時間の問題か。

「――分かりました。」

同じ攻撃を仕掛けてくる保証もないし、どちらか片方が切り刻まれても終わる。
博打に近い作戦だが…それでもやるしかあるまい。
彼から伝えられた作戦を聞き、頷きを返せば。

「――っ!」

怪異の脚が変異する。速さに特化した形になる。
相手の予想通り同じような突撃。一度目と違うのは更に速度が上がっている事。
蒼を見開き、注視する。蒼が淡く光を帯びる。

――視えた。

先程より厚めの、魔力の密度を高めた防御壁を形成。
薄らと魔法陣が浮かんでいる。
加えて地面に魔力で組んだ陣を敷き、強固な鎖で怪異の動きを封じてしまおうとするだろう。

――念には念を、だ。

それと共、視界のノイズは酷くなる。

霧島 孝介 > 恐らく彼女が見て来た怪異の中でも、特異な部類に入るだろうか
最初は黒い影のノッポが、ここまで変わっているのだから

「頼みますッ…!」

後ろへ下がって彼女の防御に頼る。
こちらは剣を消し去り、両手の平に青い光を出す。
次の武器は決まった。あとは生成して、ぶち込むだけだ。

ぶち込むだけ…だが


人型が目の前で止まり、攻撃…
ではなく消える。

風向きは一気に上へ。二人が上空を見上げれば5m以上はくだらないほどの跳躍。
彼女の強固な鎖からは逃れられなかったようで、身体に絡みついてはいるものの、決定的に拘束するには至らず
防御壁のカバー範囲外である上から、鎖に引っ張られながらも攻撃を仕掛けてくる…!

セレネ > このまま再び壁を破ろうとしてくる。

そう思っていた矢先、唐突に視界から消えた。
一瞬だけ視えた跳躍に思わず小さな舌打ちを洩らす。
…やられた。

防御として使用した魔力を変換、無数の光の矢に変えて。
少しでも威力を削げるよう怪異に向かって放とうか。

空中では身動きはとれず、且つ鎖もあって全てを防がれる、という事は恐らくない筈だ。
暗い空に黒い怪異。ノイズもあって見えにくい。
けれどこれは魔術の矢、対象に向かって飛んでいくから問題はない。

ふらつく頭を何とか堪え痛む身体に歯噛み。
気を抜くにはまだ早いと、内心で叱咤する。

霧島 孝介 > 彼女の放った光の矢は全て命中する。

しかし、鎖と光の矢を受けて多少は勢いは減るものの
尚も怪異は健在であり、致命傷にいたらずに降下してくる。
このままでは二人ともやられる。

そんな時に

「…出来ました。ありがとうございます」

ふら付く彼女を抱きかかえるように右手で支え、上を見る。
左掌を怪異の方へと向ける。
その左手には赤い機械の籠手を装着しており、掌の中心は光輝く球体が埋め込まれている。

正しく、彼女にこの前彼女に薦めた映画に出てくる『それ』は
光を強くし、チャージをするかのように機械音を立て、怪異が接触する寸前――

爪先が二人に触れる直前に放たれる。



違ったのは威力だ。
映画では大した威力ではなかったが、彼が生成したものは違った。

威力の調整など出来ない。否、「しない」。
そう彼が想像し、生成したそれはすべてを消し去る光を怪異に浴びせる。
光は怪異を飲み込み、一直線に空へと伸び、彼方へ消え去っていった。

「……っ…!」

再び静寂が訪れる。彼女を抱きかかえ、左手と視線を上に向けたまま
時が停止したかのように制止する。

どうやら、今回は危機を退けることに成功したみたいだ

セレネ > 矢は当たった。全部。ただ魔術とはいえ矢は矢、怪異にとっては然したるものではないのだろう。
彼の攻撃が間に合わない場合の事を考え、もう一度回避しようと魔術をかけようとした。

その時、ふらつく体勢。
倒れるかと思っていたがどうやら彼が気付いて支えてくれたようだ。
礼を言おうと視線を上げ、視界に入った彼の左手。
――あれは。もしかして。

この間勧めてくれた映画に出て来ていた、パワードスーツの一部分。
映画と同じよう、機械音を立ててチャージをしている。
眩しい光に蒼を逸らし降りかかる爪が今にも切り刻まんとする直前。

機械の籠手から放たれた光線に怪異は呑まれ跡形もなく消え去った。
上を見ても、怪異はもういない。

「――よか…った…。」

洩れた声はか細く、安堵に満ちたもの。
すぐ傍に居る彼には己の身体の柔らかさと、ローズの香りが伝わるかもしれない。

霧島 孝介 > 「……っぶねぇぇえええ!!」

途端に吹き出る冷や汗と声。
数秒間息は止まっていたようで、思い出したかのように呼吸をする。
スーハーと呼吸を整えながら、左手の籠手を消し去る。

(跳んでくれたのが結果的によかった。『あんなもの』、街中に放ったらどうなったかわかったもんじゃない…!)

汗をぬぐい、ようやく恐怖と緊張がほどけて安堵したかのように胸をなでおろす。

「終わりました…ありがとうございます!セレネさん!貴女が…」

いなければ負けていた。
そう声を掛けようとするが右手におさまっている彼女を認識して
まず顔を赤くする。

え?無意識のうちに抱いてた!?
女性の華奢で柔らかい身体の感触が右手に伝わり、ローズの甘い匂いが伝わってあたふたする。

ふらついていたことは何となく緊張の中でも記憶にあったから
突き放すわけにもいかず、とにかく左手と体だけでどうしようか迷う。きょどる。

セレネ > 張りつめていた糸が切れた音がした。
彼からぶわっと冷や汗が出ているのが視界に入る。

相手が先程まで持っていた刀はどこにもなく、左手に装着していた籠手も消えた。
……やはりこれは彼自身の異能で間違いない。

「い、いいえいいえ。私なんてそんな大した事は…。」

胸の前で小さく手を振る。そう、本当に大した事はしていない。
幸いな事に、怪我も負わなかったのだし。
そこで彼が気付いた。己が腕の中に居る事を。

そして挙動不審になっている。
離れた方が良さそうだなぁと判断すると、少しふらふらしながらも彼から離れようか。

己も少し、照れて顔が赤くなっているけれど。

霧島 孝介 > 彼女の予想は当たっていた。
武器や道具を作りだし、使用する。不要になれば消し去れる。

それが彼の異能。名前は「蒼装―ソウソウ―」。
彼に許された。唯一の特権。

その力で今回は生き残れたようで

「…っ!あ、あの!良ければ、支えましょうか!?」

と既に支えているけども離れようとする彼女に告げる。
顔は真っ赤で先ほど走った時より汗を搔いて居たり、緊張をしているものの
ふらついている女の子をそのまま立たせるよりは自分の腕の中に居させた方がいいだろうと思考する。

天使である彼女なら、痴漢扱いするようなことはせず善意だけを受け取ってくれるだろうし、うん。

彼の腕は筋肉で少し硬くガッチリとしているが、そこまで居心地は悪くはないだろうか。

セレネ > 体調は悪くはあれど、これは後でどうにか出来る。
この時間起きてるかな…とか、頼んだら頼んだで何か文句を言われそうな気がするけれど。

彼の異能には酷く興味がわいた。
様々な武具を作れるのなら、実質それは武器庫と変わりない。

「――あぁ。お気持ちは嬉しいのですが…。」

彼の気持ちは純粋に有難いとは思うものの。
好きでもない女の子を腕の中に入れるのはどうかと思うし、
そういうのはそれこそ好きな人にやってあげるべきだろうし。
非常に申し訳なさそうに首を横に振った。

「…でも貴方、結構身体を鍛えているのですね。
よくある”脱いだら凄い”って方なのでしょうか。」

こう見えて医者でもあるので、彼の筋肉量は平均の男子生徒より上くらいは分かる。
尚、脱いだら凄い、の意味はよく分かっていない天然も発動しているが。

霧島 孝介 > 「…あぁ、はい。でもせめて、その、無理はしないでください!」

彼女の返答が悪意からじゃないというのは分かってはいるが
やはり断られると少し傷つく。
でも彼女を心配させまいと、少し元気に振舞って
しゅんとした空気は出さずに、生き残れたことを喜ぶ方に切り替える。

「え…っと?それは、何というか…一応鍛えてます、けど…
 それってあんまり一般的には言わないような…」

頬を搔いて、何だか気恥ずかしそうにする。
まさか女性。しかも彼女からその様な言葉が飛んでくるとは思わず、少し赤くなる。
一応注釈はいれるが、入れようにも入れずらい状況でモゴモゴと口籠る。

セレネ > 「…えぇ、少し休めばまた元気になるので、大丈夫ですよ。」

完全な善意を断るのは心苦しいものの。
無理はしないでとの言葉には小さく微笑んで頷こう。

「結構しっかりしてますし、私びっくりしました。
鍛えてる人って素敵ですよね。
――ぇ、そうなのです?…日本語はやはり難しいですね…。」

彼の表情を見るに、何だか言うべきではない言葉だった事は察せた。
眉をハの字にしてしょんぼり。

「…そうだ。さっきの、貴方の異能について色々お聞きしたいのですけど宜しいです?」

刀とか、凄い気になった。
どうやって武器を生成しているのか、とか生成する時間に期限はあるのかとか、気になる。