2020/09/21 のログ
■霧島 孝介 > 「そうか…いや、そうですか!よかった」
顔色自体は悪くないし、貧血とかではなく魔力が切れかかっていたのだろう
授業でやったことを思い出しながら大事ではないことを悟れば
彼女に応えるように笑顔を浮かべ
「えぇ、何かあった時のためにって思って…鍛えてて良かったです。最近サボり気味でしたけど。
…いや、可笑しくないです!最高の褒め言葉です!ありがとうございます!
…ところで、セレネさんは…あれですか?
もしかしてそこまで仲良くない男子からよく告白されたりします?」
八の字にしてしょんぼりする彼女に下手で分かりやすくも、優しいフォローを入れる。
彼女が外国人であることは以前聞いていたが、余りにも流暢に話してて半分忘れていた。
うんうんとわかりやすく頷きながら、ふと疑問を投げかける
この子、結構男子を勘違いさせてしまう系の天使美少女なのか?
「…あぁ、良いですよ。…とりあえず歩きながら話しましょうか
またアイツみたいなのが襲ってきたら撃退できるか怪しいですし」
彼自身、自分の異能は特段隠すことはないと思っているのだろう。
生命や武器以外も作り出す異能は沢山ある。自分の異能はそこまでではない。
それが彼の見解だ。
歩き出し「何でも聞いていい」と彼女に視線を向ける
■セレネ > 己の魔力の回復方法は、月光による回復ともう一つある。
本当なら月光を用いての回復をしたいのだが今日は曇りであり、晴れていたとしても三日月だから回復には心もとない。
もう一つについては…おいそれと人に話すものではないので秘匿するとして。
「何かあった時には遅いですものね。やはり日頃の鍛錬が大事か…。あら、おサボりは駄目ですよー?
もしサボっている所を見つけたら叱っちゃうかもです。
――へ?
あぁー…まぁ、そう…ですね。」
彼からのフォローには苦笑を浮かべるも、問われた言葉に蒼を瞬かせる。
この学園に来てからはそうないものの、元の世界だとそれなりにあった。
勘違いさせているとも気付かない己なので、尚性質が悪いかもしれないが。
「…次また何かが襲ってきたら、その時は飛んで逃げるしかないですね。」
彼について行きながら、作成できる武器に制限があるのか、時間に制限があるのか等聞くとしよう。
「…あと、その。先程の刀をもう一度作って欲しいのですけど…。」
なんて、お願いも一つ。
■霧島 孝介 > 「えぇ、まぁ、何も起きないことには越したことは無いんですけどね
ははは!その時は、一緒にトレーニングに付き合って下さい
…やっぱりあるんですね…いやまぁ、悪気はないんでしょうけど」
彼女の言葉に冗談を返す。
最初にキョドキョドしていた嘘のようで、普段の彼は『こう』なのだ
そして彼女の問いにこちらも苦笑いを浮かべる
『それ』への対処法は未だに名案が思い浮かばないため
とりあえずはこれ以上踏み込まず、自分は哀れな男子たちの仲間に加わるまいと決心をする
「飛んで…はは、飛ぶのはいい思い出が無いので、最終手段ってことで…」
彼女の歩幅に合わせ、歩くペースを調整しながら彼女の一つずつ答える。
Q.作成できる武器に限界はあるか?
A.ある。武器は3mを超すものや、具体的なイメージがないと生成が出来ない。
直接命を作ることもできない。もしかしたらクローンの培養器なんかは作れたりするのかもしれない。
彼の倫理観的にやらないだろうけども
Q.時間に制限はあるか?
A.求めてる回答を答えるとするならば、「無い」。
作り出した武器や防具、道具は彼が任意で消し去ろうとしなければ、そのまま永続的に残る。
物理的に壊したり、長い年月酷使した結果壊れることはあるだろうがそれでも存在はし続ける。
「あぁ、うん。良いよ」
質問に答えると、彼女のお願いに二つ返事で頷く。
蒼い、美しい光が掌から舞い、刀を形作る。
先ほど怪異を切ったそれは妖しい光を刀身に映しながら、鉄の美しさと存在感をそこに示す。
何かに使うのだろうか?と思いながらも
興味がある様子の彼女に、そっと、丁寧に刀を渡そうとする。
■セレネ > 「そうですね。でも、治安の良い場所でも、こういった多少悪い場所でも。
自分の身を守れる術を持つ事は悪い事ではないですから。
あまりキツいトレーニングだと音を上げてしまいそうです…。
――??」
今回の共闘を経て大分慣れてきたのか、ジョークを返すようになってきた相手。
これだけ見ればただの気の良い好青年だなーと思う。
やっぱりある、と言われればよく分からないというように首を傾げるだけ。
彼の決心も気付かぬままだ。
「私飛べますけど、近くまで送りましょうか。」
歩いて帰るのも大変だし、と。
そうして丁寧に答えてくれる彼に礼を述べ、頭の中に記憶していく。
生成した武器が永続して残るのは、魔力等を必要とせず物質として生成しているからか。
「有難う御座います。
――ん、刀って綺麗ですよねぇ。
私ずーっと、触ってみたいなーって思ってて。
今回その願いが叶って嬉しいです。」
掌から舞う蒼の光が刀を模る。
そして現れ、手渡された刀に触れると、嬉しそうに笑みを綻ばせた。
■霧島 孝介 > 「治安のいい場所、悪い場所…
そういえば、セレネさんってここで何してたんですか?」
自分もキツイトレーニングはしてないので大丈夫と付け加え、そう問いかける。
バイト終わりに迷って襲われた。これは自分だが、彼女はどうなのだろう。
道に迷って、たまたま自分を見つけた訳ではないだろう。
事情があるなら無理して聞くつもりはないが…
それと首をかしげる彼女にこれ以上は何も言わず
とりあえず問題が起きそうなら対処しようという『放置』の構えをとる。
「異能はあくまで『生成』ですから、維持に関しては俺の負担が無いんです。
マジですか!?…でも魔力切れとか起きないですかね?大丈夫ですか?」
彼女の疑問に答え、それにさらに補足を加える。
飛べる彼女に心底驚きつつ、魔力の心配を次にする。
ってか鎖、防御壁、矢、そして飛行。バリエーション多くないかこの人!?
自分も発想次第ではこれだけの、いやこれ以上のバリエーションを作れるのだろうが…
経験値不足を痛感して腕を組んで少し悩む。
「えぇ、まぁ…一応、妖刀みたいな感じでさっきみたいな化け物に特攻を付与させてます
…そんなに触りたいなら、貰います?」
嬉しそうに笑みを浮かべる彼女に、こちらも少し誇らしいような嬉しいような照れるような。
少し調子が良くなって、彼女にそのように声をかける。
■セレネ > 「え。あー、その。
――実は、怪異について少し情報を得ようと思って裏常世渋谷に行ってたのです。」
トレーニングについては良かったと小さな安堵。
そうして己が此処に居る理由について問われれば、
今回共に戦ってくれた相手に対し渋るのもどうかと思い理由を話す。
「成程…魔術の場合維持するにも魔力が必要なのでそこは利点ですね。
……”これ”、まだ誰にも見せてないのですけど。
秘密にしてくれます?」
魔力切れを心配しているようだが、これは元より己にあったもので魔術を使用しないものなので問題ないとだけ言い。
口元に人差し指を立てては秘密の仕草。
「…!!え、貰っても良いのですか?!
も、貰えるのなら是非貰いたいですけど…。」
お礼、何かしなくては。こう思うのは己が生真面目すぎるからだろうか。
蒼を丸くさせて相手を見た。
■霧島 孝介 > 「怪異…って今みたいな?」
裏常世渋谷、噂程度に聞いたことがある。
黄昏時、丑三つ時、日の出時。境界の時間と呼ばれる時に行ける場所。
本来狙っていける場所ではないが…もしかして、そこに片足を突っ込んでしまってたのだろうか?
あの人型が出てから、やけに喧騒が遠くなったのもそのせいだったのか?
「使いこなせれば汎用性は高いですよ。逆に使いこなせないとかなり弱いですけど…
…え?あぁ…はい。ところでこれって何ですか?」
口は硬い方だ。
その証拠として中学の卒業まで異能のことは家族に黙っていたからだ
にしても彼女の仕草がかわいい。そんなことをぼんやりと思いながら質問する
「えぇ、減るもじゃないですし…
はい。マジで、無限に出せるので、一本無料サービスです」
こちらの鞘もどうぞ。と鞘を生成して渡す。
鞘には紐がついており、持ち運びがかなり便利になっている。
彼の心遣いだ。お礼も要らないと笑顔で答え、掌で遠慮するようにジェスチャーをする。
■セレネ > 「はい。あれは結構、厄介なタイプの怪異でしたね。
…とはいえ私は退魔の専門家でもないですし
情報を得ようと思ったのもつい最近の事なので確実とは言えませんが。」
表の常世渋谷でも、怪異や霊障についての話は聞く。
此処は路地で道も入り組んでいるから、気を付けて下さいねと注意だけは促しておこう。
怪異だけじゃなく、人為的な何かもあるかもしれないし。
「それでも、こうやって活躍できる異能じゃないですか。
とてもかっこよかったですし。
――”これ”はですね、」
一度、立ち止まり。彼の質問に答える為隠していた翼を発現させる。
淡く蒼く光る、神々しさすら覚えるかもしれない、大きな双翼を背から一対現してみせた。
「…無料という事は、今後貴方から武器が欲しいとお願いする際は何か対価が必要だと…。」
鞘も生成して渡されれば、試しに鞘に刀を収めて。
それすらも感動し、おぉと蒼を輝かせる。
遠慮されてしまえば、本当にいらないの?と首を傾げて問うてみせ。
■霧島 孝介 > 「厄介、厄介…俺は初めて会ったから分かんないですけど
どんどん成長というか進化というか、最後は笑ってたのが気になります。
…楽しんでいた、とか?」
今度は間違ってでも路地に入らないように気を付けると頷く。
確かにこの時間帯の此処は何かと未成年が立ち入ってはいけない場所だ。
次があったら飛んで直ぐに逃げよう。
「あ、ありがとう……!?」
彼女の言葉を受け、少し照れくさそうにする。
その後に展開されるは翼。闇夜に輝く蒼き、双翼に目を奪われる。
彼女の様子に圧倒されながら、思ったことは
(え、本当に天使じゃん!?)
これである。
「いや、物の例えですから!?対価は大丈夫です!その、悪用とかしない限りは!
セレネさんならしないでしょうけど!
…えっと、それじゃ、いただきます?」
所謂ジョークであることを告げれば、感動する彼女にこちらもほっこりする。
何故かお礼をしたがっているように見える彼女に一応お礼を受取ろうとする。
というか彼女のような手合いはもしかしたらお礼をしないと気が済まないタイプなのだろう。
彼女のQOL増加のために、素直にお礼を受取ろうとする。
■セレネ > 「そもそもあの短時間のうちにあれだけ早く変異していたのは初めて見ましたし、
読んだ蔵書の中にもそういったものはなかったです。
…まぁ、凡そそうでしょうね。
もう少し遅かったらもっと知能をつけていたかもしれないですから。」
そうなればもう、己と相手では成す術が無かったろう。
だからギリギリ対処出来たのは不幸中の幸いだったかもしれない。
「普段はこれ、邪魔ですし使わないので隠してるんですけどね?
必要な時はこうやって飛んだりしてるのですよ。」
一度大きく翼をはためかせれば、身体を少し浮かせ。
舞う羽根も翼と同じ色をし、触れば触り心地の良い羽毛の感触がするだろう。
彼の思っている事までは分からないけれど、ほんの少し自慢げな顔。
「えぇ勿論悪用はしませんとも。風紀の方達から目を付けられたくはないですし。
――なら、少しだけ目を閉じてくれますか?」
浮いていた身体を地に下ろし、翼を折り畳んでは相手の目の前へと歩いて行く。
己の言う通りにしてくれたなら前髪で隠れた額を手で軽く払い、その露わとなった額に祝福の口付けをしようとする。
――月の加護。
己が神族として持ちうる、力の一つ。
月の元、特に満月ならば身体能力、治癒や再生能力が飛躍的に向上するものだ。
■霧島 孝介 > 「再生能力もすごかった。勢いも…
まだ突っ込んでくるだけの段階だったから良かったですけど
闇に紛れて不意打ちでもされたら危なかった…」
彼女の言う通り、不幸中の幸い。
一旦下がられでもしたら機動力と環境で圧倒的不利な自分たちは
遅かれ早かれ仕留められていた。
しかし、何故彼女はここまで怪異のことを調べようと思ったのが
次に疑問なのはそこ。彼女の横顔をちらりとみて、そこまで聞くのは野暮かと考える。
「おぉお!やっぱり天使だったんですね!いや、女神?天使?
とにかくすげぇ!」
翼をはためかせ、浮く彼女にひたすら目を輝かせる。
普通に興奮してるこの男子。飛ぶ羽を掴んで触れば羽毛の感触が気持ちよく。
語彙力がかなり低下している状態で目の前の天使から更に声がかかった
「んっ…?」
彼女の言う通り。瞼を閉じてジッとする
何だろうか。魔法でも欠けるのだろうかとワクワクしながら待っていると
先ほどと同じようにローズの甘い香りと、柔らかい感触が額に。
(え!?まさか…!)
キスされた!?目を見開くとやけに彼女が近く、顔を真っ赤にして額を抑え後退る。
いや、嬉しいけど!
月の加護の影響かどうか。
今は曇りだから効果が出てるかどうかは怪しいが…
何故だか彼から元気が湧き出る、と同時に恥ずかしくて、顔を真っ赤にして俯く。
流石にこれは、身に余る。
■セレネ > 「黒いですしね、昼間でも影に紛れてしまえば視認は難しいかもしれません。
被害が増える前に倒せて良かったです。」
何故かとまで聞かれれば、それを答えるかどうかは悩みどころだったけど。
聞かれないのならばそれ以上答える事は無く。
「…やっぱり?」
女神か天使かと疑問を口に出されれば一瞬心臓を跳ねさせる。
しかし彼は己の種より翼に興味が向いているらしい。
肯定はせず、曖昧に微笑むだけに留めておこう。
「今回頑張ったご褒美も兼ねて。
お疲れ様でした、本当に。」
額にキスくらいなら特に抵抗もない。
だから、顔を真っ赤にさせて後退る相手にクスクスと笑う。
微笑ましく、可愛らしく見えてしまった。
■霧島 孝介 > 「えぇ…えぇ」
聞くのはまたの機会にしよう
それにしてもあの怪異は何だったのだろうか
人の感情が吹き溜まると出てくる霊障・怪異。それの一体にしてはかなり特殊であった
もしかして…何か『起きている』のか?
「うん!いやー、性格とか見て目とかからは天使かなーって思ってたけど
まさか翼を生やすなんて…やっぱり天使だわ…ありがとうございます(?)」
彼女の秘密に触れそうになるものの、彼自身はそんなつもりは毛頭なく
ただ興奮してはしゃいでいるだけである。
謎の感謝をし始めた
「…ッ、あ、あぁ…はい」
こういうのが勘違いさせる原因なんだよぉ~!
と心の中で叫ぶ、顔を赤く、目をぎゅっと瞑って下を俯いて
恥ずかしさと嬉しさと、あと何か色々と混じって感情がぐちゃぐちゃになってしまう。
暫くして、やっと落ち着いて来たのか顔の色は真っ赤からほんのり赤色に代わって。
咳払いして心拍を整えると彼女に向き直る
「えっと、こういうのって、本当に好きなヒトじゃないとやっちゃだめだと思うんですよ」
気を取り直して発言したのがそれだった
■セレネ > 仮に何かが起きているとしても、それは専門家に任せるべきで。
素人である己や彼が手を出す案件ではない。
不安ならば然るべき所に依頼をするか届け出を出すくらいに留めておくべきだろう。
「天使…私が…?
あ、はい。どう致しまして?」
種で言えば天使より上の存在だけれど。
これは褒められていると受けて良いのだろうか。
ちょっと恥ずかしくなり燥ぐ相手に視線を泳がせ、何故か感謝をされれば首を傾げながらも答える。
魔術をかけるにも、それは永続ではないし、何かを差し出せるような物も特に持ち合わせていなかったので。
目を固く閉じ、俯く彼にもしかしたら嫌だったのかもしれない、と少し不安が過った。
勘違いさせる原因だとは、全く思っておらず。
「……?
唇にならそうですが、額や頬は普通では…?」
文化の違いだろうか。
頬は挨拶代わりにするし、額は親しい人にはやる。今回は特別、だ。
相手の発言にそんなに恥ずかしいのかなと疑問顔。
■霧島 孝介 > 「えぇ、そうですよ!」
フンフンっと鼻息を荒くする。
こっちは色々と感情が忙しくて、彼女の目が泳いでいたりとか
不安になっていることなどは露知らずに興奮したり、キスされたら恥ずかしくなったり、嬉しくなったり
とにかくせわしない。
このせわしない様子を見れば、不安なども杞憂に終わるだろうか
「え、えぇ…?」
これも外国人の文化の違いというものだろう。
流石、海の向こうの国。アクティブオブアクティブだ。
というかキスが挨拶代わりって改めて素晴らしいな。
この島でも導入して欲しい。
「…っとそろそろいい時間ですし、セレネさん
そのぉ、さっきの近くまで送るって…出来ます?」
怪異に襲われたことと、それと彼女と話すのが楽しすぎてあっという間に時間が過ぎてしまい。
自分も飛べるが安全性の面が不安なため、今回は彼女に頼ろうと恐る恐る聞いてみる。
■セレネ > 「天使…天使かぁ…。」
流石にそれは、初めて言われた。
嬉しいけどちょっとむず痒い気もして、お互い何とも言えない感情を抱えたりもして。
…多分、嫌ではなかったのかな。
と内心で安堵。もし仮に加護が必要ないと思ったのなら、その時は消せば良いだけの話だ。
己は異邦人で、元の世界も此処とそう大きく変わらない所だったし、父も結構アクティブな人だから猶更かもしれない。
「ん、はい。出来ますよ。」
スマホで時刻を確認すれば結構な時間が経っていた。
…これは、今夜は諦めて明日に魔力供給を受けるしかないなと思い苦笑した。
そうして再び翼をはためかせ宙に浮く。貰った刀は背中に背負い、邪魔にならないよう位置を調整。
失礼しますね、なんて一言断りを入れ、相手の脇の下から抱えるよう両手で掴み、羽ばたこう。
そうすれば彼の足も地から浮く事になるか。
■霧島 孝介 > 「おぉお!」
彼女に抱きかかえられ、足が宙に浮く
空を飛ぶのは初めてではないが、誰かにこのように運ばれる形での飛行は初めてだ
感嘆の声を挙げる
「そういえば、セレネさんって寮でしたっけ?」
彼女に抱かれ、空を飛びながらそう問いかける
もし、お互いが近いのなら其れこそ降りるのも楽になるだろうと
少し距離が近い彼女を一瞬だけ直視して、顔を少し赤く染める
■セレネ > 己が初めて空を飛んだのも、翼のある人に抱えられて飛んだっけ。
懐かしいなぁなんて感嘆の声を上げる彼を見ながら思った。
「…はい、そうですよ。貴方も寮ですか?」
本来なら寮から少し離れた場所に降りて帰るのだが、この時間なら誰も外には居ないだろうし大丈夫か。
相手の問いに答えつつ、顔を赤らめる彼に不思議そうな視線を向け。
ともあれお互い疲れた身だ、早く帰ろうと空の旅を少し早める。
暫くすれば、学生街にある寮が視認出来るだろう。
■霧島 孝介 > 「はい、俺も…!」
彼女の言う通り、寮に住んでいることを伝える。
その後は寮に辿りつくと、お礼を言いながら解散する。
正しく天使のような彼女に手を振り、感謝しながら礼をして自室へと戻った―――
ご案内:「常世渋谷 常夜街」から霧島 孝介さんが去りました。
■セレネ > 相手も同じく寮に住んでるらしい。なら丁度良いかと内心で。
「――うん、周囲には誰も居なさそう…かな?」
降り立つ直前、一応周囲を見回して人影がないか警戒。
気配がしない事を確認するとそっと相手を降ろし、己も隣に降り立って
翼を畳み隠匿の魔術をかけよう。
それから二言三言話して、相手を見送ると
疲れたと深い溜息を吐きながら自室へ戻るのだ。
ご案内:「常世渋谷 常夜街」からセレネさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に夢莉さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に鞘師華奈さんが現れました。
■夢莉 >
「っだー‥‥‥」
残暑も過ぎて涼しくなったと思った矢先。
急に来た夏のような炎天下が、道行くものの足取りを重くしていた。
喫煙所に入り、くたびれた顔で両手に持てる限り持った紙袋を適当に置いて近場の座席に腰を落とす人物が一人。
キャップを被りラフな格好で、それでも汗がにじんでいる。
キャップで隠れているにも関わらず、その顔は白く端正で、赤い瞳が2つの炎の珠のように煌めいていた。
一見して誰もが女性だと思うその人物は、実のところ、男性だ。
尤も、それに気づく者も、知っている者も、常世島には少ないが。
「外でるっつぅ時に限ってクソ暑くなりやがって…」
ぼやく人物は、キャップを外し長く手入れの整った金髪を解放させる。
ほつれひとつない髪の毛がふわりと一瞬宙に浮かんだようにした後にするりと重力に従って地面に落ちる姿が、まるで映画の一場面かのように周囲の人間の視線を惹く。
尤も、そんな事つゆ知らず。いや、興味もないとばかりに視線も向けず、自分の方は同行者の方へと話しかける。
「太陽サマのご機嫌のせいで買い物もはかどりゃしねぇっつうの…なぁ、カナ?」
■鞘師華奈 > 「…やれやれ…涼しくなってきたと思ったらこれだから」
彼に続いて喫煙所に入るのは、何時ものスーツ姿…ではなく。
カッターシャツにスリムジーンズとスニーカー、というシンプルでラフだが”私服姿”の女。
あと、首には黒い革製チョーカーを付けている…それを指で一度軽くなぞりながら、一息。
連れの友人がキャップを解放すればサラサラとした金髪が零れ落ちる。
毎度思うが、そこらの女子より女子っぽいよなぁ、と思いながら尻ポケットから煙草の箱とジッポライターを取り出しつつ。
ちらり、と周囲に視線を向ければ彼の仕草に通行人や喫煙所に居た何人かの先客の目を惹いている。
(――まぁ、私より色気あるもんなぁ、ユウリは…)
と、内心で呟いて周囲の反応に苦笑を浮かべながら、片手で煙草の箱の蓋を開けて。
そのまま、指で箱の側面をトントンと叩いて1本だけ浮き上がらせればそのまま口の端に咥える。
「まぁ、私はほら…あまり買い物の類は無いからあれだけど…今回、どちらかといえばユウリの買い物への付き添いも兼ねてるからねぇ。
――まぁ、一服したらどっかカフェテラスか何かに寄っていこう。折角だし飲み物くらいは奢るよ?」
と、彼の不平不満に、気持ちは分かるとばかりに頷きながらも、苦笑気味に煙草へとジッポライターで火を点ける。
「――ああ、そういえば…ニーナは元気にしてるかい?前にこっちの公園で顔を合わせたきりで会えてないんだけどさ。
ユウリの事だから、ちゃんとニーナの事に関しては面倒見てるだろうし心配はしてないんだけど…。」
と、とある”伝言”もあるがまず確認したいのは、自分の友人でもある彼と同居中の少女の近況だ。
勿論、ユウリ自身の近況も気になるが――同じ部署とはいえ、しょっちゅう会っている訳ではないのだ。
■夢莉 >
「ニーナ?
まー、夜中によくほっつき歩いちゃいるがウチでも生活も大分慣れてきたよ。
あと名前がちょっと変わったかな。アイツの本名…記憶喪う前の名前が分かってさ。
”ニーナ・P(パウラ)・エストレーヤ”が今のアイツの名前だよ。」
雑談交じりに同じように煙草を取り出し、それを一本口に咥える。
ライターで火をつければ、少し特徴的な、紅茶と香辛料が混じった紫煙の香りが煙たい空間の中に溶けていく。
ふぅ…と、煙を吸い、そして吐く。
煙の香りを”味わい”ながら、会話を続ける。
「…まぁ、流石に物が足りなくなってきたけどなー。
ずっとオレと共用で物使わせる訳にもいかねぇし。
ま、今日のおかげでベッドも勉強机も買ったし、暫く必要になるモンもねぇだろ」
「付き合わせて悪ぃな」と言いながらはにかむ。
今日の買い物は、自分の同居人であるニーナの生活に必要な一式の購入だった。
色々と在り物で賄っていたせいで随分遅くなったが、ようやくこうして”新生活”用の一式を買いに行く事が出来た。
「ま、今の部屋じゃ結局寝室ひとつしかねぇし、もしかしたら引っ越しするかもしんねぇけど。
そしたら何処らへんの部屋借りっかなー……」
■鞘師華奈 > 「――うん、まぁニーナはあちこち歩き回ってるのは知ってたから、そんな気はしてた。
…って、名前を?…へぇ……まぁ、でも私やユウリからしてみたら、やっぱりニーナがしっくり来るよね」
偽名であったそれを無くさずに居るという事は、ニーナという名前は偽りではなく真実になったという事だ。
おそらく彼女自身が望んだのかもしれない――いい事だ。偽名でも本名でも、名前は意外と大切なのだ。
彼より一足速く煙草を蒸かし始めつつも、ユウリが吸い始めた煙草の香りに、ん?と、疑問符が…ああ、そうか。”彼”と同じ銘柄だったな、と。
「すっかり保護者(かぞく)らしくなってきたなぁ、君も…。
まぁ、引越すなら利便性も部屋の間取りも色々考えないといけないからねぇ。
良い物件は探せばあるんだろうけど――学生街近辺だと、どうだろうなぁ」
それこそ、不動産巡りをしないと分からないかもしれない。
「ああ、もし引越しする時は荷造りとかくらいは手伝えるよ?」と、一応申しておこう。
あまり二人とも私物が多いイメージは無いから、そんなに荷造りに手間は掛からそうではあるけど。
買い物の付き添いには、「このくらいはお安い御用だよ、友人の頼みだしね?」と、微笑んで緩く頷いてみせる。
本当に、自分も以前と変わってきたなぁ、と実感しつつ二人でゆるゆると煙草を蒸かし。
「――あ、そういえばユウリ。この前、仕事終わりに時計塔に立ち寄って一服してたんだけどさ?
何かユウリの知人?らしき人と知り合って伝言を頼まれたんだよ。
20代前半くらいの、緑の瞳と笑顔が特徴的だったな…『梦 叶』って名前の人なんだけど…。ユウリに会ったらよろしく伝えてくれってさ?」
一服しながら、そこで彼への端的な伝言を彼との約束どおり伝えておこうかと。
もっとも、二人が具体的にどういう間柄なのかは彼女には全く分からないが。
■夢莉 >
「まーなぁ
なんつぅか、パウラって名前はオレもアイツも、イマイチしっくり来てねぇ。
誰か、別の奴の名前みてえな…な」
それは長く付き合ってきたからこその独占欲に近いものが混ざった複雑な感情でもあるが、それを言うのは、流石に憚られた。
あくまで自分の中のみっともない感情だ。
友人であろうと話すようなもんじゃない。
「かぞく、ねぇ…右も左もわかりゃしてねえけd…ん?」
そう言っていれば、そういえば…と続いた言葉で、口が止まる。
全くの不意打ちだったように、ぽろっと煙草が落ちて、ぽかんとした顔で話し相手の方を、見た。
「あ? え…悪ぃ、誰だって?」
思わず、聞き返した。
あまりにも久々に聞く名前だったので、つい。
■鞘師華奈 > 「まぁ、でもそれも本名なんだからいいんじゃないかな。彼女にミドルネームやファミリーネームが出来たのは悪くないと思うよ」
パウラもエストレーヤも、どちらも自分やユウリが呼ぶ事はあまり無いだろうが。
ニーナも含めて、それも彼女の大切な一部。思い出したなら名乗ってもいいだろうし。
彼の複雑な心境は流石に女には分からない。何かを察しはしたのか、ちらりと一瞥するのみだ。
「まぁ、いいんじゃない?特に家事の腕前が上がるのは良い事だと思うよ。私がみっちり叩き込んでもいいけどね?」
と、楽しげに笑う。こう見えて自炊暦およそ8年と地味にしっかりしている。
何せ、落第街で暮らしていた頃も出来る範囲で自炊などをこなしていたくらいだ。
流石にプロには程遠いが、一般の主婦と同等かそれよりやや上くらいの腕前はある。
「あ、煙草落ちたよユウリ――って、そんなに驚く相手なのかい?えーと、名前は『梦 叶』だけど…。何かユウリと同じ銘柄の煙草もそういえば吸ってたかな」
と、彼が落とした煙草をヒョイッと拾い上げつつ。TURNUP、だったか、そんな名称のやつ。
彼の反応は信じられない、といった完全に意表を突かれたもののそれだ。
ただならぬ関係、なのかもしれないが勿論、彼の口から語られない限りは女には推測のしようもない。
■夢莉 >
「いやっ!あー……」
驚く相手なのか?と聞かれれば、あからさまに動揺してみせて。
落ちた煙草は仕方ないから棄てて貰って、仕方なく新しく煙草に火を付けなおす。
そして落ち着こうと深く吸って、ばつが悪そうに話し始めるだろう。
「最っ悪だ……
今更になって何でアイツの名前なんか、あ、あー……
まぁ、煙草吸うようになったのはアイツのせいっつーか…あー‥‥…
…元カレ」
目を逸らして、質問には短く、答えた。
■鞘師華奈 > 「…???」
ここまで動揺する友人を見るのは珍しい、というより初めてに近いかもしれない。
その挙動不審さに、赤い瞳をぱちぱちと瞬きしつつ不思議そうに隣の彼を眺めていた。
そして、落ちた煙草は取り敢えず捨てておきつつ、彼がまた新しく1本取り出して吸い始めるのを横目に、こちらもゆっくりと紫煙を吐き出す。
「――元カレ?……あーー…成程。そういう事か。
ユウリと同じ銘柄の煙草吸ってたし、君の事を昔から知ってるような感じだったから、気にはなってたんだよねぇ」
特に二人の昔の出来事を追及したりだとか、性別のあれこれとかそういうのは気にしない。
そもそも、性別のあれこれを言うなら自分だって”すき”な相手は出来たが同性だ。
(――今、考えると彼女の性癖を私が歪めちゃった気がしないでもないけど、まぁ、うん…)
内心で乾いた笑いを漏らしつつも、一息と共に煙を吐き出してから、ユウリの肩を優しくぽんぽん、と叩いて。
「まぁ、私はあれこれ根掘り葉掘り聞く趣味はないから深くは聞かないさ。
ユウリが話してくれるなら聞くけど、無理に聞くつもりもないからね。
――まぁ、何となくだけどニーナの事は隠しておいたほうがいいような気もするけど…。」
彼の言葉を思い出す。裏にもそれなりに顔が利くような口ぶりだったから、独自の情報網もあるのだろう。
そう考えると――既にユウリの生活環境や今の暮らしぶりを”知ってる”可能性もある、が。
(…まぁ、憶測であれこれ考えてもしょうがないしね)
■夢莉 >
「アイツが胡散臭ぇのは昔からだよ…」
少し疑いのまなざしを向けているカナに対しそう言う。
胡散臭いのはまぁ、何時もの事だ。
今も胡散臭いままなのかと思ったが、まぁ…あの面が数年で変わる訳もないだろーな。
「いや、別に隠す必要もねーけど……面白い話もねーし…
あ!!
一応言っとくけど、ちゃんと女と付き合ったりもしてっからな!?
変な勘違いすんなよ!?
そういう”シュミ”っつーワケじゃねえからな…!?」
あからさまに狼狽えていらない事まで言い出す。
そんな事は聞かれてもいない。そういう”シュミ”の話もしていない。
■鞘師華奈 > 「うん、まぁ爽やか笑顔で人当たりは良いけど、ちょっと口では上手く言えないけど”違和感”は感じたかなぁ」
落第街暮らしと公安の仕事で鍛えられた直感、みたいなものかもしれない。
まぁ、彼の性分はユウリの方が詳しいだろうし、自分が変に忠告する事でもないか。
「いやいや、落ち着きなってユウリ。別に私は人様の恋愛事情だとかに変に首を突っ込みはしないから。
だから、ユウリの交際遍歴とかを根掘り葉掘り聞いたりはしないよ。」
好奇心は勿論あるので、聞きたい気持ちはあるが、それを自制する事は勿論出来る。
友人の苦い思い出を掘り返すような真似はあまりしたくないのもあり、深く尋ねるつもりはないようで。
煙草を蒸かしながら、動揺がまだ完全に抜け切っていない彼を落ち着かせようと、ゆったりした口調で。
「まぁ、今のユウリはニーナの事もあるしね。彼女の事を優先してあげればいいと思うよ」
だって君の”家族”なんだからさ、と微笑む。私はもう”家族”と呼べる人は全員墓の中だけど。
■夢莉 >
「…ま、まぁ…そのつもりだけど…」
しくった…と言いながら頭を掻いて煙草をさらに深く吸う。
吸う度に煙草の味が口の中に広がる。
紅茶と香辛料の味。
ずっと忘れていた癖に、思い出した今ではそれを感じるほどに色々な事を想い出す。
まだ、常世島に来る前の話だ。
こんな普通みたいな生活をするのがまだ、思いつきもしなかった頃の話。
「……3年くらい前かな」
気が付けば話し始めていた。
少し遅れてはっとしたが、別に…カナが知る位、どうという事もないと思ったから、続けた。
何よりこの話しは常世島じゃ自分以外誰も知らない話しだし…
少し誰かに、知ってほしかったのもあるかもしれない。
「まだ常世島に来る前でさ。
どっかの…何処だったかな。名前忘れたけど。
まぁ……落第街と同じか、もーちょい治安悪いとこで暮らしてたんだよ。
ウリやっててさ。 まぁ…それくらいしか金に出来るモンなかったし。
カナエはそん頃の客。…最初はな。」
■鞘師華奈 > 彼の動揺っぷりはそちらを例え見なくても気配や空気で伝わるくらいだ。
まぁ、元カレらしい相手がいきなり現れて、伝言をしてきたら少なからず思う所はあるんだろうな、と。
正直、恋愛経験が今までサッパリだった女にはその辺りの機微や感情の揺れ動きはサッパリだけど。
「――3年前…(丁度、私が一度”死んだ”時期と同じくらいかな)」
3年前、というのは偶然の一致でしかないが、女にとっては、今と3年前では明確な線引きがある。
まぁ、自分の事はさて置き…彼がぽつりと話し始めれば、その話を黙って聞くのが友人というもの。
「――成程。私は常世島で生まれ育ったから、”外”を知らないけど…。」
落第街みたいな場所はあったのか…いや、あるのは勿論知っていたけれど。
そういう場所での暮らしの経験者の話を聞くのは初めてだ。自分にとって、そういう環境はこの島の落第街やスラムしか知らないのだから。
1本目は流石に吸い終えてしまったので、吸殻入れに捨ててから2本目を取り出して口に咥える。
再び、ジッポライターで火を点けながら彼の話を静かに聞いていようか。
■夢莉 >
「そこらじゅうにあるぜ?
オレがそういうトコにしかいなかったせいかもしんねぇけどな。
ま……大体落第街と同じだよ。治安もクソもあったモンじゃねえ。
異能者は珍しかったけどな。でも幅利かせてんのは大体異能者だったよ。
弱いと死ぬなり、好きに扱われるなりされる。
オレも何度か襲われたし。この通りの見た目だからな。」
何事もなかったかのように話す。
”日常茶飯事”のはなしだ。
自分の容姿も自覚している。自覚している理由は、そういった”日常茶飯事”の結果ではあるが。
「ま、オレは力もねぇし、わけあって親もいなくて後ろ盾なかったからな。
下手打つとされるがままだったから、なら売った方が得だっただけだよ。
オレと同じような奴は結構見て来たな。ま……弱い奴らが生き抜く為の知恵って奴?
結構物好きもいてさ。男も女もそれなりに”客”がいたよ」
客。
ここでいうのは、つまり”そういうこと”である。
■鞘師華奈 > 「――私が知ってる”外”の世界は、それこそネットでの画像や動画、情報媒体でしかないからね…。」
何時か、私が”外”を見る日が来るんだろうか?と、そんな事をぼんやりと思う。
彼の話を聞く限り、世界中にそういう場所は幾らでもあるんだろう。
彼が何でもない事の様にする話を黙って聞きながら煙草の煙をゆっくりと蒸かす。
日常茶飯事――まぁ、落第街とかでもありふれた話だ。特に”珍しくは無い”。
けれど、中途半端な同情とかでは決して無いとは言え…身近な友人がそういう生活をしていた、というのは。
生きる為、とはいえ思う所は完全に無い訳でもない。口にはしないけれど。
「――過去がどうであれ、君は”生きて”今こうしてニーナと暮らしてる。
…それでいいんじゃないかな。…私も落第街にそれなりに居たけど、どちらかといえば戦い続きだったからね…。」
所属していた違反部活が武闘派で、しょっちゅう風紀や周囲の違反部活などと小競り合いを繰り返していたのもある。
死に掛けた事もあるし、挙句の果てには最後の最後には”死んで”しまったが――
「――成程、まぁ…何と言うか。…外もこっちも変わらない所は多いんだな、って思ったよ」
客、の意味合いは勿論理解している。自分はウリをやった事は無いし、むしろ言い寄ってくる輩は男女問わず”沈めて”きたが。
…昔を思い出してしまった。何ともいえない表情を一瞬だけ浮かべて。
■夢莉 >
「――――幻滅したか?」
複雑な表情を浮かべた相手に、自嘲気味に笑う。
まぁ、それはそうか。
目の前で普通に話してる奴が、知らん奴のモノを咥えて生活してたなんて。
言われて不快に思わない奴のがいないのかもな。
「…まぁ、それで良いっつわれたらそうなんだけど、な……
でもオレの過去で、あった事だから。
どーにもたまに”バグる”んだよ。
変な感じになる。今が普通過ぎてさ。」
ニーナといっしょに生活をする。
他人と共に生きる生活をしてこなかったワケじゃない。
でも、今のニーナとの生活と”それら”とは、違う。
その違いに、どうにも変な気分になる時がある。
「…ま、その頃に会った奴だって話しだ。カナエはな。
その頃から変な奴だったよ。
金払ってオレの事直ぐに抱かねえし。デートしてくれだの言ってくるし。
色々話し聞こうとしやがるし、一方的に話しやがるし。
アイツにかけられた迷惑なら数知れねえしな。ホント、ロクな思い出ねぇよ」
は~ぁ、とため息と共に煙が出てくる。
「クソだクソ」と、何度も言いながら、振り回された思い出を話す。
やれ引っ越すからついてきてと当日に言われて急いで荷物纏めさせられただの、金貸して返ってこないだの、と思ったら大金で返してくるだの、アイツのせいでマフィアに追い掛け回されて住処が使えなくなっただの、ロクでもない話ばかりだった。
「…まぁ、退屈はしなかったよ。その頃は比較的…楽しかったし」
天井を見上げて、懐かしむように少しだけ口が緩んだ。
思い出す話はホントにロクでもねえのにな。
なんでなんだか。
■鞘師華奈 > 「ん?いや、全然?何で友人の生きてきた軌跡に幻滅するのさ?私だって落第街で血生臭い日々だったし。
――そういう過去がどうの、とか全部飲み込んで付き合っていくのが友人じゃないのかい?」
と、目を瞬かせてそう口にする。思う所はあるが、別に幻滅など全くしていない。
そこは流石に友人に勘違いさせたくはないので、きっぱり否定しておこう。
「多分、今の比較的平和な生活と、昔の生活の齟齬が大きすぎるからなんだろうね…。
私もまぁ、つい最近まで怠惰な生き方をして傍観者気取りだったし。
無気力、とは言わないけど落第街時代と今の生活は大分違ったからね」
戦場に長く居過ぎた兵士が、いざ平和な生活に戻ると馴染めない、というアレにちょっとだけ近い。
もっとも、今の自分はその辺りはもう折り合いを付けて上手くやっているが。
「――何だ、色々言ってるけど、結局彼に対してそんな悪感情は無かったんじゃないか。
まぁ、元カレなんだから決別はしたんだろうけど、縁はそう簡単に断ち切れるものじゃあないからね」
何処か、懐かしげに楽しげに見えた彼の表情に小さく笑って。
私も人の事は言えないが、この友人も結構難儀な性格だなぁ、とか思ったり。
「――まぁ、その辺りの話はまた今度聞くとして。そろそろ小腹も空いたし何か食べに行こう、ユウリ。
さっきも言ったけど、今回は私が奢るよ。懐にはそれなりに余裕あるからね」
と、財布が入ったポケットの辺りをぽん、と軽く叩いて笑う。しんみりした空気を切り替えるのにも丁度いいだろう。
■夢莉 >
「ぁー……」
頭を掻く。
そこ、なんだよなぁ…
今アイツの名前が出てきて、そして色々狼狽えてる理由は、多分”そこ”だ。
「………別に決別、してねぇんだよな…
有耶無耶になったっつーか………オレの方がなんつーか……
拉致られちまって」
日常で出るワードではない。けど、まぁ…ホントの事だから仕方がない。
そしてだからこそどうするのか迷ってるのだ。
だってアイツとは明確に”別れた”ワケじゃないから。
でももう、自分にとっては随分前の事で。
終わったと割り切っていた所に急にその名が来たから。
それにどう折り合いつけるべきなのか、見当もつかない。
「はぁ~……ホントなーんでこんな時に……
ん、あぁ……おぅ、んじゃあなんか食いに行くかぁ」
気の抜けた声。
色々と思い悩む事も増えてしまった。
ただでさえ考え事は増えているのに、どうしてこう、タイミングが悪いというかなんというか。
■鞘師華奈 > 「―――もしかして、私って、ユウリに余計な悩みを増やしただけなんじゃ…。」
流石に、ちょっと気まずい顔をしてやや視線を逸らす。うん、伝言を頼まれたから伝えたけど悪手だったのでは。
ただ、あの彼のことだから、ひょっこりユウリ本人の前に現れていた可能性もある。
つまり、どのみち彼の悩みの種が一つ増えてしまうのは確定みたいなものだった。
「しかし、また拉致とはね――そこからどう今に繋がったのか気にはなるけど…」
まぁ、自分から根掘り葉掘りは聞かないように努める。好奇心はなるべく抑えたい。
「まぁ、ほら。悩みとか愚痴とかくらいは私でも聞いたり出来るからさ?
…あんまり思い詰めたら駄目だよ?ニーナにも心配掛けちゃうし。あの子はそういうの鋭いだろうから」
あと、意外とユウリはそういう悩んだ空気とかが仕草に出たりするからなぁ、と苦笑い。
自分が友人として出来るのはは、話や愚痴を聞いて出来る限りのフォローやガス抜きをしてやるくらいだ。
「ん、じゃあ行こうか。」
彼に余計な悩みを増やしてしまった罪悪感はあれど、一先ずはそのまま喫煙所を出て店に向かおう。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から鞘師華奈さんが去りました。
■夢莉 >
「アイツの事だから遅かれ早かれ来てたと思うぞ…ん、おう」
複雑な人間関係に頭を悩ませれるようになったのも、それだけの余裕が出来たという事ではあるが。
とはいえ本当にどうするか。
実際にやってきた時の事を考えて、少しだけ憂鬱になりながら共に喫煙所を出た……
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から夢莉さんが去りました。