2020/10/02 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > 怪異『朧車』――何でも、この異界で最近幅を利かせている妖怪列車のような輩らしい。
既に風紀やその助力者達の手により、何体かは討伐されているようだ――まぁ、その割には。

「――おい、話がちげーぞ。報告書にあったヤツと同じのがまた沸いてんじゃねーか…何だ残機制なのか?あのヤロー共は…。」

裏常世渋谷にあるビルの屋上、そこから眼下の薄暗い街並みと――今、まさに風紀と交戦中の朧車を見下ろす。…成程、変な顔が前面に付いている。
ヤンキースタイルで座り込んでいたが、よっこらせ…と、気だるそうに立ち上がる。
その右手には抜き身の”黒い刀”。…時々、バチバチと紫電が迸る――妖刀の類だ。

風紀の監視員 > 『聞こえてるか【凶刃】。そろそろ貴様の出番だ――目標は既に見えているだろう?怪異『朧車』…亜種の一つだ。我々は便宜上、【G号】と呼称している。
――尚、本作戦において貴様には常に監視が複数付いている事を忘れるな。
それと――貴様の能力の使用は不許可だ。”それ以外”で何とかしろとのお達しだ』

右耳に付けた超小型のインカムから聞こえてくる無線指示。声は淡々として冷たく、そして感じるのは”嫌悪感”。
何で貴様”ら”のような犯罪者予備軍まで動員せねばならないのか…と、言いたげだ。

追影切人 > 「うるっせーな、言われねーでも分かってるっつーの。…ま、能力の方はハナっから期待してねーよ。」

無線からの声に、ややウンザリした気分を隠さずにそう返す。嫌悪感には慣れているが、露骨だと面倒臭い。
右手の黒い刀を軽く素振り…意外と軽い。今回貸与されたものだが、その出所とかは勿論知らない。

「…で?この黒い刀と生身であのやたらと速えー暴走列車を”斬れ”ってか…。
あーー…ちなみに増援とか助っ人とかはねーの?」

黒い刀を肩に担ぐように持ちながら、眼下の状況からは目を離さずに一応そう尋ねてみる。

まぁ、答えなんて分かりきっているが、一応だ一応。

風紀の監視員 > 『”必要無い”。そもそも貴様は仲間ごと斬りかねんだろう。貴様だけが死ぬなら…あぁ、ついでにG号と相打ちにでもなってくれれば、こちらも余計な肩の荷が下りるのだがな?』

侮蔑、冷笑、嫌悪、そして――恐怖。馴染み深いしよくそんな声を浴びせられた。
つまり、この監視員はこう思っているのだろう――『お前は早く死んでくれ』と。
他の監視員にもこのやり取りは聞こえているだろうが、誰も咎めはしない…あぁ、全く以って――…

追影切人 > 「何だ、”味方殺し”でもしろってか?そりゃあいい、即処分モノじゃねーか…あぁ、でも言っておくが――」

トンッ、と肩を叩いていた刀の動きがぴたり、と止まる。無線越しの――離れた場所からぬくぬくと監視している連中に言っておいてやろう。

「殺すならテメェらが最優先だからな、よーく覚えとけよ…他の風紀の連中の方がテメェらより遥かにマシだ」

…おぉ、俺って意外と仲間意識あったんだなぁ…新発見だ。
そんな事を思ってニヤニヤと笑う。さて、そろそろ介入してあの暴走列車をぶった斬る頃合か。

眼下の風紀委員達もかなり善戦しているようだが、如何せんその速度に矢張り難儀している様子。
おまけに、狭い道に入り込んだかと思えば、その車体を変化させて狭い場所をお構い無しに爆走している。

さて、行くか――…と、ビルから普通に飛び降りようとした矢先。

風紀の監視員 > 『――フン、『妖精』や『戦犯』と違って、鉄砲玉くらいしかならない捨て駒め…まぁ、奴らも同じ穴の狢だ…ああ、そういえば例の”特級”の娘もか。貴様”ら”は揃いも揃って――』

監視員同士に聞こえている。だが現場には届かない。
そもそも、彼らは自分の監視の為”だけ”に居るに過ぎない。
まぁ、それは別にいいのだ。ただ――

追影切人 > 「おい、俺は屑で結構だがあいつらはちげーだろ…そろそろ黙れよ、全員斬り殺すぞタマ無し野郎共」
追影切人 > ああ―――煩い雑音ほどこれみよがしに囀りやがる。インカムのスイッチを一方的に切る。
どうせ、義眼を通してこちらの生態情報や位置情報は逐一把握されてるだろう。

そのまま、ひらりと無造作に飛び降りて…軽く、左手にのみ嵌めた黒い革手袋を口で咥えて…外す。

「さて、くそつまらねーお仕事の始まりってなぁ!!!」

――その左手は既に怪異と化したモノ。真っ黒な”爪”を翳しながら思い切り真下へと振り抜く!
その爪の軌道に沿うように空間が裂かれ――ぽっかりと空いた黒い穴に躊躇せず飛び込む。



――…そして。


「――よーーし、ドンピシャ!!よーぉ、初めまして妖怪列車!!――んで、死ねっ!!!」

超高速で走り回る朧車G号個体――その眼前の空間が裂けたかと思えば、いきなり一人の男が刀を振りかぶりながら笑って姿を見せる。

――完全な不意打ち、そしてその速度や異形の顔にも怯むどころか楽しそうに笑いながら、躊躇無くその顔面に紫電を纏った一撃を叩き込――


「……はぁっ!?」

いきなり、眼前のG号の姿が消えた――否、横に潰れるような形で、こちらの一撃を回避したのだ。

そう、G号個体で確認されている主な能力は大別して二つ。
一つはシンプルにその超速度、もう一つが――軟体。形を変化させるのだ。

虚しく空を切った一撃――次の瞬間、元の状態に戻ったG号の車体に真上へと押し上げれるように弾き飛ばされて。

追影切人 > 「おいおい、テメェそこは大人しく俺に斬られて成仏するのがお約束だろうがよ!」

真上に思い切り弾き飛ばされたが、大して効いていないのか、己の真下をそのまま走り抜けようとするG号を睨み付ける。
左手の既に侵食が進んで怪異と化した異形の黒爪を鳴らしながら、今度はそれを真下に突き出す―-鋭く曲曲しい五本の爪は、そのまま朧車の車体天井部へと真っ直ぐに”伸びて”突き刺さる。

「―――ぐぉっ!?」

ただ、ヤツの超速度により左肩から嫌な音…肩の関節が思い切り外れた。
だが、構わずに爪を縮めながらその身を車体の上へと着地させる。

「…ったく手間掛けさせやがって」

無造作に外れた肩の関節をゴキッ、と嵌め直しつつ左手の異形の黒爪を右手でトントンと叩く。
すると、真っ黒な人間の手へと変化したそれに先ほどの黒い革手袋を嵌め直して一息。

(あんましやると怪異化が進行するし、まぁこのくらいか)

そもそも、裏常世渋谷というこの環境が怪異のなり掛けにはあまり良くないようだが、知ったこっちゃない今は。

「こまけぇ事は後で考えりゃいい…んで、どうやって止めるかなコイツ」

何か軟体とかそういう力がそういえばあったな、と今更思い出した、馬鹿である。

追影切人 > 「…あ、違った。どう止めるかじゃなくてどうぶった斬るかだった。俺らしくねぇ」

止めるという発想よりまず斬るのが追影切人という人間の筈だ。やっぱり牙抜かれてんなぁ、と溜息。
ちゃっかり、右手の黒い刀を車体へと突き刺してその超速度による風圧で吹き飛ばされないようにしつつ。

「あーー、やっぱ考えて動くのは俺らしくねーっつーか…。」

右手の黒い刀の柄をゆっくりと握り直す。この妖刀は以前、生活委員に居た剣客が置いていった物らしい。
銘は――『雷切』だったか。まぁ、持ち主に不幸を齎すだとか曰くつきではあるようだが。

「ま、単独で無茶やらされるのは何時もの事だし…なっ!!」

瞬間、紫電を凝縮した電熱により車体の天井を焼き切り、そのまま内部へと落下する。
着地と同時に刀を構えるが、内部は意外と普通の列車の内装だ…まぁ明かりなどは点いていないが。

「あ?何だよ意外と普通じゃねぇか…斬り甲斐のある怪異とかでも乗ってるかと思ったんだが」

ご案内:「裏常世渋谷」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > まぁ、いい。右手に紫電が薄っすらと迸る黒刀を携えながら無造作に列車内を進む。

――どうやら、拍子抜けしたのは最初だけだったらしい。
ある時は床から伸びた手が、ある時は天井から覗き込んでくる目が、ある時は窓が裂けて口の形を取りけたたましく嗤う。
それら全てを、一匹残らず斬り捨てながら、扉を蹴破り更に奥―ー最前列の車掌の元へと向かう。

「――んで、ここが終点でいいのかね。」

やっと辿り着いた。衣服…”黒い”風紀の制服のあちこちに怪異の体液やら肉片やらが付着しているが、それを一度払い落としながら――無造作に扉を叩き切って中へと。

――そこに居たのは、運転士の姿…を模した人型の怪異だ。僅かに目を見開きこちらを見つめるソイツを、何の躊躇も無く斬り捨てる。

「―――んで、これで止まんのか?」

斬り捨てた運転士の怪異を蹴飛ばして退かしつつ、運転席のあれこれを眺めるが…おぅ、サッパリ分からん。

追影切人 > 「よし、面倒臭ぇから片っ端から斬ればいいな!!」
追影切人 > 頭が悪いを通り越して、いっそ清々しいくらいに笑顔でそんな事を呟けば、無造作に刀を一閃。
この男は剣術なんてまともなモノは一切学んでいない。むしろ剣術なんてまともに使えない。
ただ、何かを斬り捨てるだけのモノでそこに剣術のような技も理論も精神も何も無い。

その、純粋にただ斬る事だけに特化した一閃が、紫電を迸らせながら運転席を一瞬でズタズタに破壊して切り刻んでいく。

――目前から聞こえる断末魔じみた唸り声は、朧車の顔の苦悶の声か。
「うるせぇな、さっさと死んどけよテメェ」と、淡々と告げながら更に切り刻む。
斬って、切って、伐って、刻み尽くす。――そして。

「…あぁ、ついでだ――テメェは”喰われて”ろ」

再び、左手の手袋を外し――異形の左手を出現させれば、そのまま異形の手の中央が巨大な獣の顎へと変化――裏側から、異形の面を”喰い破る”。

「…こんなもんか。…ま、どうせまだまだ出るんだろうがやるこたぁやったしな」

何かを噛み砕く音が響く中、つまらなそうに呟いていたが、やがてその咀嚼音も途絶える。

――後には、速度を落とし始める朧車”だったもの”…運転席と異形の顔部分が綺麗に削り取られたように、ごっそりと無くなった残骸だけだ。

追影切人 > 「あーーかったりぃ。まぁ久々に斬りまくれたから良しとすっかな」

再び、元の黒い人の手に戻った左手に革手袋をしっかり嵌めてから一息。
取り敢えず、インカムのスイッチを入れて「仕事は済んだ、さっさと撤収させろ」と短く告げて再びスイッチを切る。

他の風紀の連中に姿はばっちり見られているが、別にどうでもいい。
自分の悪評が増すならそれで良し、どのみち第一級監視対象なんてそんなものだ。

「あーー…腹減ったな。」

完全に動きを止めた朧車の残骸の中。撤収の迎えが来るまで座り込んで怠惰に佇んでいよう。

ご案内:「裏常世渋谷」から追影切人さんが去りました。