2020/10/05 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」に神代理央さんが現れました。
ご案内:「裏常世渋谷」に水無月 沙羅さんが現れました。
神代理央 >  
特務広報部として、怪異『朧車』の討伐を命じられてから数日。
基本的には孤軍奮闘。他の風紀委員と余り協力する事も無く、己個人で狩り続けていた。
一度、後輩の指導も兼ねて討伐した程度か。本質的には特務広報部の初任務という事もあって、余り他の委員を巻き込もうとは思っていなかった。
それ故に。珍しくバディを組んでの任務になった事。
それが神宮司経由とはいえ、厳密には彼の直接的な指示では無かった事。

――そして、バディの相手が彼女であった事。

様々な要因に、思わず勘繰りたくなるのも致し方ないという所か。

「……一緒に前線に立つのは久し振りだな。出来れば余り怪我をして欲しくは無いが…そうも言っていられぬ相手だ。
今回は、宜しく頼む」

皺一つない制服を纏い、無数の異形を引き連れて。
共に異界に侵入を果たした彼女に、視線を向けながら声をかける。

水無月 沙羅 >  
「ここが裏常世渋谷ですか……実は始めて来たんですよね。
 書類での報告には目を通してはいたんですが。
 なるほど……現実とさほど変わりはありませんが、確かに異様な雰囲気が……」

今日は書類仕事でも警邏でもなく、いつもの上司と共同戦線。
怪異退治という真っ当な仕事。
あまり一緒の任務に就くという事もなかった、故に多少の嬉しさもある。
ようやくきちんと役に立てるということに多少なりとも浮足立っていた。

「え? あ、はい。 よろしくおねがいします理央さん!
 ……そうは言いますけど、言うほど前線に立たせてもらってないと言いますか。
 大概の任務は私ずっと後方に居たじゃないですか。」

怪我をするどころか戦ってすらないと、少しだけ頬を膨らました。
しかし、今回の朧車は強力な怪異であり、単独の殲滅も難しいものだと耳にしている。
いや、この人の出す報告書には単独撃破が確認できるから、さすがと言うべきなのだが、今回こそは戦いに参加せざるを得ないだろう。

「でも今回の怪異は強力ですからね、『力を合わせて』がんばりましょう!」

様々な迷いはまだあるが、しばしの休息で体力も戻り、精神面も今は穏やかだ。
隣に立つ、上司、兼、恋人ににこやかに笑いかけて、彼を守らなくてはと心の中で誓う。

神代理央 >  
「俺も今回の任務が無ければ訪れる事は無かっただろう。
基本的には常世渋谷は刑事課の管轄だしな」

装備を整えながら、浮足立った様子の彼女にちょっとだけ苦笑い。
とはいえ、気持ちは良く分かるので注意する事も無いだろう。

「まあ、私の場合は個別で任務が与えられる事も多かったしな。
それに、後方での書類仕事も立派な任務だ。
俺が言っても余り説得力は無いかも知れないが、前線に立つだけが風紀委員の仕事ではないからな」

頬を膨らませる彼女に困った様に笑いながら、彼女がこなしてきた仕事に賛辞を送るだろう。
とはいえ、彼女の思う通り。今回の怪異はそれ相応の脅威度が認定されている事も事実。
単独撃破が可能であるとはいえ、それは通常個体の話。
特殊個体の出現等、想定外の事態に陥った際には単独行動が危険である事には違いない。

「ああ。共に前線に立つ以上は、下がっていろ、とか前に出るな、とか。そういう事は言わないつもりだ。
協力して怪異に対処して、手早く済ませてしまおう」

にこやかに笑う彼女に、応える様に小さく微笑んで。
こくりと頷こうとした瞬間――遠くから、踏切の音が聞こえた。

『朧車・カ号』 >  
――それは、一見すれば普通の朧車と大差無い外見。
先頭車両は些か古めかしいタイプの機関車。
その先端に、ムスッとした様な表情の巨大なヒトの顔が生えている。

通常個体である『イ号』と異なるのは――牽引する車両の数と種類。
膨大な量のコンテナを積載し、貨物車を引き摺り。
さしてスピードを出す訳でも無く、"積み荷"を運び、守る事に全てを注ぐ朧車。

――貨物列車型の怪異。朧車『カ号』
二人の前に現れたのは、膨大な物量と質量を持った朧車であった。

水無月 沙羅 >  
「刑事課……ですか。
 書類仕事ばかりの私には縁遠い存在かもしれませんね。」

同じ風紀でもさまざまな役割の違いというものがある。
刑事課は主に荒事専門と言ってもいいだろう。
とはいえ、隣の彼の様に荒事しかしていない刑事課以外の人間もいるから、一概に必ずそうだとは言えないわけだ。

「書類仕事で、人の命が助けられるなら、そうも思えるのかもしれないですけど。」

小さく、聞こえるか聞こえないか、そんな程度に口を零した。
いつかの彼女は、その働きがあったからこそ被害は少なかったと言ってくれたが、自分にはそうは感じられていない。
いまでも、本当にその行動に意味があったのか、疑問に思わずにはいられない。
隣に居る事が、一番安心できる。
そのことに変わりは無いから。

「手早く、すませられればいいですけどね。
 ……来ましたか。」

踏切、電車の来る事を知らせる一昔前の機工。
大昔の日本国には多く見かけたと聞くが、今はそうそう見かけるモノではない。

「先端に顔がついてるタイプ……聞いたことないですね。
 新型……?
 というか……いや、あの、大きすぎません?」

大きく、そして重く、重厚であることを感じさせるその外見はハッタリではないだろう。
余裕を持って事に当たることができる、そういう雰囲気を、沙羅は感じなかった。
なにより、自分は生身で戦うという制約が付くのだから、当然とも言えば当然か。

人VS電車、どう考えても体重差という絶対的なアドバンテージは向こう側にあるのだ。
隣の少年はと言えば、その例に当てはまらない稀有な例と言えるだろう。

自分もまた人の領域から逸脱するべく、身体強化によって体のリミッタ-を一つづつ外していく。
いつもより深く、多く。
身体がその工程を覚えている。
椿はきっと、そうして戦っていたのだろうと頭に過った。

心臓の鼓動が早くなる音が耳に響いた。

神代理央 >  
「他のエリアでは兎も角、この常世渋谷では捜査を重視して制服を着ないのだそうだ。デカタン、だったか。ああいうドラマじみた捜査が行われているのかもしれないな?」

と、冗談めかして笑う。
異世界にて戦闘行動を取ろうというには、些か暢気とすら思える様な態度。

「――直接的に救う事も、間接的に救う事も。
書類一枚でそれが出来る事もある。組織において、書類の持つ意味と重要性は決して無視できないものだからな。
前線に立ちたいという気持ちは理解出来るが…余り前線ばかりに立って、俺の様になるのも考え物ではあるぞ?」

彼女の囁きに返すのは、淡々とした声色の言葉。
書類仕事でも、救える命はある。
二級学生を引き上げるのも書類であれば、前線に立つ者の支援だって書類が無ければ始まらない。
彼女の気持ちは分からなくもないので強い口調にはならないが――書類仕事の重要性も、理解して欲しいな、と思うのだ。

さて、そんな会話の継ぎ目に現れた怪異。
牽引する車両の種類から見て、貨物車の類だろうか。
今迄は普通に客車を引いているタイプばかりだったから、初見の相手、という事になる。

「大きさはまあ、仕方ない。列車だからな。
とはいえ、物理攻撃も魔術も通る怪異だ。完全無敵、という訳では無い。動きも、基本的には軌道上しか動かない」

こきこき、と軽く首を振って関節を鳴らす。
主の動きに合わせる様に、無数の異形達が砲身を軋ませた。

「……私は異形への指示に専念する事になる。それ故に、朧車が不足の行動をとって来た場合には、対処が難しい。
沙羅には、その場合のサポートを頼みたい。
だが、その前に――」

ゆっくりと、異形の砲身が角度を上げる。

「…取り敢えず、耳を塞いでおいてくれ」

轟音と共に、数十門の砲身から鉄火の暴風が放たれた。

『朧車・カ号』 >  
ニンゲンが二人と、良く分からない金属が沢山。
カ号に認識出来たのは、その程度のモノだった。
しかし、気に留める様子は無い。カ号にとって重要なのは"貨物"を輸送する事であり、その安全を図る事が第一。
無理にニンゲンを喰らう事も、他の朧車の様に積極的に攻撃を仕掛ける事も無い。
だが、手を出されれば――

「……"鉄道警察"を起動シマス」

積載していたコンテナの扉が開かれる。
中から現れたのは、警察官の制服の様な衣服を纏った小型怪異。
それが、わらわらという言葉が相応しい程に。
膨大な量の小型怪異が、次々とコンテナの天井に飛び乗り、空中に飛び上がり――

「……荷物は安全です。貨物の保安は良好デス」

カ号に迫る無数の砲弾に、次々と小型怪異が特攻する。
文字通り、その身を盾にした吶喊によって、砲撃の第一陣は防がれる。
そして残った小型怪異の群れは――脱兎の如く、二人に駆け出した。

水無月 沙羅 >  
「あのドラマ好きですけど、ちょっとリアリティが……。
 いや、そういう話している場合ですか?」

これが余裕というものか、と少し苦笑い。
余裕というより、本来は相手を威圧するためのものなのかもしれないが、人で無く怪異ともなればそれを向ける相手もいない。
それが自分に向かっているのだとすれば、やはり苦笑もするのだが。

「……。」

誰の為にだと思っているのか、と少し眉間にしわが寄る。
書類一つで瀕死の重傷が防げたら苦労はしないのだ、とは今は言えない。
少なくともそんな場合ではない。
書類仕事が大切なのは痛いほどわかってはいるが、それでも、前線に立つという事には大きな意味があった。

「あのですね、物理攻撃が通るって言っても、相手は列車ですからね?
 わかってます?
 兵器を持ってくるならまだしも、私は徒手空拳で……。」

「言うのが遅ーい!!!?」

轟音が鳴り響くのと同時に、耳が裂けるかと思うほどの轟音が鳴り響いた。
少年の操る異形から放たれた砲弾、その威力は自分の肉体がよく覚えている。
流石に直撃すれば、怪異と言えども無傷では済まないだろうという考えは、脆く崩れ去ることになった。


「なっ……!?」

怪異は口を開き、確かに鉄道警察と口にした。
コンテナから飛び出てきた警察官を真似たであろうらしき小型の怪異が、自己犠牲さながらに砲弾に特攻して盾になっている。
これではダメージも通らない。
なるほど、貨物列車を護衛しているというわけだ。
しかし、死も恐れない兵士など、恐ろしい存在もいた物だ。

まだ数のいるその怪異は、此方に向かって走り出していた。


「近づかせないっ!!!」


地面を蹴る、飛び出す。
一瞬にして少年と距離が離れ、子があた怪異の目の前に踊り出す。
極限まで強化、リミッターの外された拳が怪異を殴り、慣性と体重の乗ったその拳は、怪異を吹き飛ばした。

反動で、自分の拳も砕けるが、損傷はすぐに回復する。
だが、この怪異の群れは一匹ではなく群れであり、休めばそれは後方の彼に殺到することになるだろう。

「足止めをします!!!」

大きく足を持ち上げ、地面を踏み抜いた。
タイルは砕け、陥没し、砕けた地面は宙に巻き上がりクレーターが発生する。
簡易的な闘技場の様に、円系に地面が変形する。
小型の怪異を閉じ込める。

当然、普通の人間にできる芸当ではない。
強化されているとはいえ、砕いた衝撃と同じだけそのダメージは自分へと還ってくる。
瞬時に再生されるその脚は、一体どれほどの苦痛を帯びていたのか。

悲鳴は聞こえず、赤く染まる右足だけがそれを証明していた。

神代理央 >  
言うのが遅い、と叫ぶ彼女に手で謝る様なジェスチャーをしかけて――朧車から飛び出した小型怪異の群れに、表情を顰める事になる。

「……此方の火力に対して、物量戦を仕掛けてこようとは。
旧世紀の独ソ戦宛らか。鬱陶しい事、この上ない」

迎え撃つ為には、機銃を生やした多脚が必要か――と思考を走らせかけた時。
己より早く飛び出した彼女の姿に、僅かに表情を顰める。
あの数相手に彼女が飛び出したという事は――確実に、無傷ではすまないだろう。
だがそれは同時に、此の場における最適解でもある。

「……恐らく、あの怪異にはまだ小型怪異が"搭載"されている筈だ!
消耗戦を避けろ!足止めだけで良い!
敵の増援が来る前に、一気にケリをつける!」

魔術を起動。起動するのは、得意とする"収奪"の魔術。
己の魔力では賄い切れない程の砲撃を敢行するには、力を集めなければならない。

「……Gutsherrschaft、起動。収奪対象、視界内の空間に残留する熱、電気エネルギー。
収奪の贅は、我が従僕へ。与えられる施しを、敵を粉砕する力へと変換せよ」

砲弾によって巻き上がる業火の熱が。異空間のビル群を煌々と照らす照明が。次々とエネルギーを失い、消えていく。
それらのエネルギーは全て、魔術砲台を装備した多脚の異形へと集約し――プラズマ光さながらに、異形の砲身はバチバチと光輝き始める。

己の大技。収奪した魔力と己の魔力を乗せた膨大な魔力をレーザーの様に薙ぎ払う魔術砲台。
しかし、その威力故に、どうしても準備には時間がかかる。
その間、当然朧車が大人しくしている訳もなく――

『朧車・カ号』 >  
鉄道警察は、ニンゲンの少女によって防がれた。
男のニンゲンは、魔力を集めて何かをしようとしている。
あのニンゲンたちは両方とも、貨物の安全を脅かす相手だ。

であれば、守らなければならない。
貨物を。荷物を。その安全を。

「…………乗務員に告げマス。貨物保護の為、至急敵対勢力へ対処してクダさい」

鉄道警察を排出したコンテナの後方。
巨大な貨物車の扉が開き――中から現れるのは、有象無象の小型怪異たち。
姿も形も大きさもバラバラの怪異たちは、地面を蹴り、宙に浮かび、風に乗り。
あらゆる手段を用いて、二人に迫る。

その速度たるや、座して待つには余りに早すぎる。
少年が魔力を充填し終える前に、容易に蹂躙されてしまう様な、数の暴力が二人に迫る――!

水無月 沙羅 >  
「いやいや、何の冗談ですかそれは……!」

これでは分断した意味がない。
単独で居ては蹂躙されるのを待つばかりだ。
走るより早く、足を踏みしめて飛ぶ。
敵を足場に、あらゆるものを飛び越えて少年の元へ。

彼に近づけさせることだけは避けると、その眼前に躍り出る。

大きな異形の操作には脳に負担がかかる筈だ。
その間、機銃を撃つような小型の異形を動かせるのかを自分はしらない。
知らないという事は、それを踏まえたうえで行動しなくてはいけないという事だ。

あの数から少年を守り切る。

その方法を考える、しかし、数というのは絶対的で、小さな人間に出来る事は限られている。
それでも出来る事があるとすれば。


「あれは私が引き受けます!!!」


アヴェスター・ザラスシュトラ、沙羅の異能。
不死性ではなく、痛みを返す物だったソレは、ステージを上がり付加されたもう一つの能力が存在する。

周囲に向けられる攻撃、危害、痛み、害する意思を自分に向けさせるという、拒絶とは相反する、受け入れる力。
足止めをするにはそれしかない。

少年を柔かに後方へ投げ飛ばし、その力を小型の怪異全てに向けて発動した。


「お前たちなんかぁっ!!」


あの時に、私が傍に居れば。

こうして守ることもできたのに。

不死の少女は、その身を盾に怪異の群れにに身を差し出した。

神代理央 >  
最早『軍勢』と呼べる程の勢いで迫る小型怪異の群れ。
彼女が築いたクレーターすら乗り越えて、迂回して。
唯、我武者羅に駆ける怪異の群れに、思わず舌打ち。

朧車を攻撃していた異形も迎撃に回すが――如何せん、大口径の砲弾は弾幕を張るに能わず。
数を減らす事は出来ても、畏れを知らず吶喊する群れを止める事は出来ない。

かくなる上は、多少無理をしてでも異形を増やすか。
或いは、"真円"を呼びだすべきか。
だが、その判断を下すよりも前に動いたのは――やはり、彼女の方だった。

「引き受けるって、お前、あの数をっ……!?」

言葉を言い切る前に、後方に投げ飛ばされた。
幸い、手心を加えられた彼女の"投擲"は己に大したダメージを与える事無く後方へと至らせる。
揺れる頭を振りながら、その視界に映ったものは――

「――……沙羅っ――!」

叫んだ言葉は、果たして彼女に届いただろうか。
魔力の充填は――未だ終わってはいない。

『朧車・カ号』 >  
乗務員と鉄道警察の生き残りは、ワタシの命令を受け付けない。
ニンゲン"二人"に向かう様に指示を出した筈だが……気付けば、少女へとワタシの部下たちは殺到している。
まあ、大した問題ではないだろう。部下が向かっているのなら、私も動かねばならないだろうから。

「発射しまス。発車しまス。
この列車は、旅客鉄道でハありマせん。
各駅にて停車致しませんのデ、御了承クダサい」

高らかに汽笛の音を立てて、ゆっくりとその巨体が動き始める。
線路の上を滑り始めた大質量の列車は、二人を轢殺しようと車体を軋ませ、動き始める――!