2020/11/04 のログ
春日 遥 >  
「……ふふ、そうですね!」

 隠していたわけでも、言い出しづらかったわけでもありませんでしたが。ついこういった話題は意識してかしないでか避けがちではあります。実際、男性がこういった格好をしていることに難色を示す人も、います。
 だけれど――エルネストさんについては、そういったことは気にしていないようでした。胸の中に、安堵の心が広がります。

 にこにこと笑みを浮かべながら、レジに会計に向かうエルネストさんを見送ります。
 ……サイズが少しばかり、違うような気がしましたが――きっと気のせいでしょう。きっと。
 ……そして、レジに示された金額が、それなりの値段です。……本当に大丈夫でしょうか。

「そろそろいい時間ですね……何か他に用事がなければ、帰りもご一緒してよろしいでしょうか……?」

 同じ寮ですから、と付け加えて。

オダ・エルネスト >  
この島に来て以来、最大金額の出費になったな、と少し遠い目になりながら会計金額を眺めた。
大丈夫だ。 大丈夫よ。 お仕事をするから大丈夫だ。―――と心の内で繰り返す。

オダの祖国、アメリカでは同性同士というのも珍しくなかったし女装や男装だったとしても極めれば一流であると認められる世界である。
色々と《大変容》であった国ではあるが「自由の国」というその精神性は今の若者にも受け継がれているのだ。
なにより、今後こういう相談を出来る相手と知り合えた。
その事が彼にとっては非常に大きい。


「ああ、今日はこの買い物が終わったら帰るつもりだ。
 では帰りを一緒にしよう。

 改めて礼を言わせてくれ、今日は助かった」


白い歯をキラリと光らせて、親指を立てた。

春日 遥 >  
 どことなく、会計を終えたエルネストさんが落ちつかないような様子でした。やはり内心厳しいのでしょうか。

「いえ、お役に立てたなら幸いです。それでは帰り道も、よろしくお願いしますね?」

 エルネストさんともう少しお話したいのもありますが――なんというか、放っておけないのです。それに、せっかくの出会い、お話してくれたお方には幸せになってほしいので。
 エルネストさんに聞こえないように。――お願いしますね、みみけだまさま。エルネストさん、良い人ですから。
 ……まあ、よかろう。ハルカの頼みじゃ。聞いてやらんこともない。と。帽子の中から、微かに聞こえました。

「エルネストさんと、エルフのお方に幸運を。……勝負服、役立つといいですね」

 そう言って、微笑みを浮かべて。二人で一緒に帰路につくのです。

 二人が歩く道に、時折宙に浮く不思議な毛玉がいたのは――さて、誰のせいでしょうか。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から春日 遥さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からオダ・エルネストさんが去りました。