2020/12/05 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に修世 光奈さんが現れました。
■修世 光奈 > 「~♪」
今日は、依頼や学業の合間に友人と遊ぶ日だ。
待ち合わせは、常世渋谷。
けれど前回の…ネコマニャンカフェの時の反省を生かし。
ロク公像の前で待つのではなく、前回に相手が来た方向で待っている。
こうすることで、人混みをある程度避けて早急に合流しようという狙いだ。
ただ、相手が予想外の方向から現れれば合流に手間がかかるというデメリットはあるが。
それはその時だ。そうなった場合は端末を使って連絡を取り合えばいいだろうと。
光奈の格好は、タイツにホットパンツ。
更に上は肌着にセーターを合わせ、その上からオレンジ色のコートを羽織っている。
外では暖かく、中では活発に動くためのコーディネートだ。
たぷたぷ、と端末を弄りつつ、そろそろかな?と周りを伺っている。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に神樹椎苗さんが現れました。
■神樹椎苗 >
すっかり寒くなりだした、冬の始まり。
プードルファーのうさ耳フードのモフっとしたワンピースを着こんで、ネコマニャンの手袋をはめて。
椎苗はハロウィン以来の常世渋谷にやってきた。
相手はすっかり親しくなってしまった、探偵もどきの女の子。
以前待ち合わせた時と同じ駅で降りて、同じように人混みの前までくるのだが。
今回の待ち合わせ場所は、気を遣わせたらしく、駅のすぐ近くだ。
おそらく少女はいち早く椎苗を見つけようとしている事だろう。
そして、探し物が得意な少女は、あっという間に椎苗を見つけて合流するのだ。
(――ふむ)
一度大きく迂回して、待ち合わせ場所の反対側へと回り込む。
そして神木の演算能力をフルに使い、視界内全ての人間の動きを観測し、少女が待っている場所を予測する。
少女の視界すら計算しながら、その外側になるように小さな体を運んでいく。
高次演算能力の恩恵で、周囲のヒトにわずかもぶつかることなくするすると、そして静かに少女へと近づいていく。
そして完全に背後をとる形で、少女に先んじてその姿を視界に収めた。
視界に入りさえしなければ、少女の能力も発揮されない――はず。
そのまま少女の視界を計算しつつ、視線が動くに合わせて完全に真後ろを確保したまま接近していく。
静かに、一歩ずつ。
そして。
「――わ」
大きな声ではないが、声を掛けながらその背中にタッチした。
■修世 光奈 > いくら探し物が得意と言っても。
光奈の基礎的なスペックは普通の人間の女子学生だ。
お腹のぷにぷにが気になるため、多少運動は意識しているものの、その程度。
探索に関する特殊な能力も、幼少からの経験に基づくものであり。
人ごみに紛れ…まるで熟練の暗殺者のごとく背後に忍び寄る小さな影には当然気づけない。
そもそもが、普通に待ち合わせたことしかないため…待ち合わせの相手が悪戯を仕掛けてくる可能性に至れないのだ。
ロク公像を少し離れても人はそこそこ多いものの。
だからこそ、小さな相手ならば紛れやすい。
何か緊急の連絡が来ていないか、一応端末を確認する光奈だったが…
その背中に、小さな手が触れるとびく、と小さく驚いて。
「わっ、え?、あっ、しいちゃん!どこから来たのさ。……びっくりしたー」
一瞬視線が彷徨うのは、待ち合わせ相手に驚かされるとは思っていなかったからか。
かけられた声は、大声ではなかったから…びっくりの度合い自体は大きくないものの。
それでも、気づかないうちに後ろから触られるというのは驚くものだ。
視線を相手に合わせれば、その可愛らしい衣装に気づいてにこー、と笑って。
「…可愛い!まふまふだー♪あったかそー!」
そんな感想を言い出し、うさ耳フードに触れようと手を伸ばそう。
小さい体躯の相手にはとてもよく似合った服装だと思えた。
思わず抱き着いてすりすりしたくなるが、それはやめて置いて。
「来てくれてありがとーね。たまにはちょっと身体動かしたくって。イタズラされるとは思わなかったけど」
怒ってはいないが、意外、という顔をしつつ、お礼を言おう。
■神樹椎苗 >
少女から驚きの声が上がれば内心でガッツポーズを決める。
彷徨った視線が椎苗を見つければ、満足そうに笑っている幼子が居ることだろう。
「ふふ、ちょっとしたいたずら心ってやつですよ」
してやったり。
親しい相手に向けるようなそのいたずら心は、以前よりもずっと距離が縮めた事を示している。
ちょっとしたやり取りを続けるうちに、椎苗の中で少女はとても親しみを抱く相手となっていた。
少女が触れたうさ耳フードは、その触覚をふんわりと刺激する事だろう。
なにせ、触り心地や着心地を追求し、際限なく金銭を投入されているオーダー品なのだ。
その生地も加工も、超が付く一級品である。
「親しみの表現ってやつですよ。
しいだって、イタズラの一つや二つくらい、しない事もねーのです」
――なんて、椎苗がそのようになったのは、果たしていつからだっただろうか。
おそらく、梅雨の季節のころはそんな一面を見せる事はなかった。
夏のころでも、まだまだ他人との間に大きな壁を作っていただろう。
それでも、様々な出会いと交流が、椎苗をこうして子供らしくした。
――少しだけ、人間らしくしたのだ。
「それはそーと、遊ぶのは構わねーのですが、なにをするんですか?
あんまり、しいは誰かと遊んだ経験とかねーのですが」
そう話しながら、自然と左手を少女の方に差し出す。
■修世 光奈 > 「やられたなー。…それにしてもこれ、気持ちいいー…とと、いつまでも触っちゃいそう」
前はそんなことしなかったのに、と良い意味で驚く。
最初は少し壁を感じていたが、その壁が薄くなったような感覚だ。
この友人ともなんだかんだとお話ししたり買い物したりと交友してきたが。
それが、この悪戯に繋がったのならとても嬉しい事だ。
そして、その耳フードは外の寒さも相まってとても魅力的な手触り。
遊びに行く、という目標が無ければ弄り倒していただろう。
「親しみ…、えへへ…嬉しいな。しいちゃんからそう言ってもらえるなんて。
遊び場所は、こっちだよ。私が案内してあげる―」
にこにこと笑う光奈。
コートに包まれた手を出して、差し出された手を緩く握る。
これもまた、ネコマニャン手袋の感触がとても気持ちいい。
傍から見れば友人というより姉妹のように見えるかも、なんて考えつつ…
歩幅をできるだけ合わせ、ゆったりと道を進む。
並んで歩いたり、一列になったりして人混みをすり抜け。
「今日はねー、色々やろうと思ってるんだ。
しいちゃん、ゲームセンターとか行ったことあるかなーって。
後はー…ボーリングとか、ダーツとか、ビリヤードとか!そういうので何にも考えずに遊ぼうよー」
楽しそうに声をかけ続け、色々と遊びの名前を口にして。
今から行くところがそういったことができる場所だと伝えていこう。
少し歩くと付くのは…8階建てほどの大きなビルだ。
入り口も広く作られており、中は全てアミューズメントになっている。
中に入ればまず、ゲームセンターの音が…慣れていなければ五月蠅く聞こえてくるだろう。
■神樹椎苗 >
「ふふん、そうでしょう。
腕のいい職人がいるのですよ」
そうお気に入りの服(と、その職人)が褒められれば機嫌もよく。
浮かぶ表情は、少しばかり子供らしさが見えるようになっていて。
少女に手を引かれ、案内されるまま歩いていく。
細やかに気遣いを感じられる歩みには、素直に感謝を覚えた。
こういうことが出来る少女だから、気を許してしまうのだろう。
「ゲームセンターですか。
そういえば、そう言う場所には入ったことがありませんでしたね」
まったくと言っていいほど、椎苗と縁のない場所だった。
時間が空けば大体は本を読んだり、お菓子を作ったりして過ごしている椎苗だ。
知人と遊びに行くにしても、ショッピングや食事、イベント事がほとんどだった。
やってきた大型施設に踏み込めば、その騒々しさに少し顔をしかめる。
しかし、ゲームセンターお決まりの入り口付近にあるクレーンゲームの群れを見れば。
その一角に、しっかりと視線が止まってしまう。
「――なるほど、プライズ景品ですか。
そこは、盲点でしたね」
深刻そうな表情で、重々しく呟く。
その視線の先にあるのは、もちろん。
ネコマニャングッズが積まれた、クレーンゲームの筐体だった。
■修世 光奈 > 「今度紹介してよー。作ってもらいたーい。
でしょでしょ。悪い人ではないけど…レオ君もそーいう遊び知らなそうだったし。
一緒に遊んでみて、良さそうだったらまたレオ君とも来ればいいんじゃないかな!」
外で着るのはちょっと光奈にとっては羞恥が勝るが。
部屋着としてはとても優秀そうなうさ耳パーカーだ。
寒い日も増えてきたし、そういった服が手に入るなら是非欲しい、と。
更に…会ってみた感覚から、こういった遊びには誘われてないだろうな、とも感じたから。
ならばしいちゃんに遊びを覚えてもらって、より楽しい思い出ができれば、という思いだ。
そんな会話をしながら、アミューズメント施設へと入れば。
「あーごめん。ゲームセンターはちょっとうるさ…………あー………」
顔をしかめたのを見て謝り、2階へのエスカレーターに乗ろうと足を向けるが。
突然深刻そうな表情になった相手に、なんだなんだと釣られてそちらを向く。
するとそこには、プライズ景品限定の…このアミューズメント施設のシンボルが入った服を着ているネコマニャンぬいぐるみが色々な姿勢で転がっている筐体。
200円で1回、500円で3回連続で出来る料金体系で、アームで掴むシンプルなタイプだ。
入り口とはいえ、クレーンゲームの筐体は沢山あるのによく見つけたなあ、と感心する。
これが、好き、のパワーだろうか。
「…やってみる?ルール自体は簡単だよ―。」
光奈も、得意というわけではないが…何度かこういった遊びは経験しているため、経験値と言う意味では友人よりあるだろう。
けれど、せっかくの遊びなのだ。実際に体験してもらいたい、と促してみる。
「でも、なかなか取れないんだよねー。このアームが弱くってさー」
こういった仕掛けはどこの施設もしているだろう。
クレーンのアームが商品を掴む力は最低限しかなく…大抵は、掴んでも移動中に落ちてしまう。
何か苦い記憶でもあるのかぐぬぬ、という顔をしつつ…友人と一緒に筐体の前に行き、転がるネコマニャンを眺めよう。
■神樹椎苗 >
「構いませんよ、オーダーすれば大抵のものは作ってもらえますから」
腕は一流、作れる幅も広く、カジュアルな普段着からフォーマルなドレスまでなんでも作れるらしい。
ただし、金額だけは一般学生の支払える域を軽く超えてしまうのだが。
「そうですね、あいつは遊びには疎いほうでしょうし。
少しは普通の学生らしい事も教えてやらねーといけませんね」
うん、なるほど、と頷いて。
すっかりここ最近、一緒に『別の遊び』ばかりしている事を考えて。
もちろん『ソレ』は『ソレ』で楽しいのだが、そればかりはさすがに不健全である。
と、そんな事を考えていたのもつかの間。
ネコマニャンを見つけてしまえば、それが最優先になってしまうのが椎苗である。
普段は一歩も二歩も下がっているように見えるが、好きなものには妙に貪欲なのである。
「ふむ、しかし、アームを操作して拾うだけ、ですよね」
ルール自体は見ればわかる。
その筐体をじっくり観察すれば、どう操作すればいいかも計算できる。
おもむろに三回分のクレジットを購入する。
電子マネー決済が可能になっているのは、現金を持ち歩かない椎苗にとってはありがたい事だ。
「――ふむ」
一回目、失敗。
少女の言う通り、想定以上にアームの力が弱い。
普通につかむにはギリギリの力しかなく、正攻法は難しい。
そして二回目、失敗。
アームの弱さを計算に入れて試みたものの、掴んで持ち上げたが落としてしまう。
どうやら掴んで運ぶだけが攻略法ではないようである、情報の修正。
三回目、失敗。
アームの動きを利用して、景品をずらしてみる。
思った通り、アームは景品を動かしていた、さらに修正。
「――なるほど、大体わかりました」
それからさらに三回分のクレジットを購入すると、すぐに再戦。
一回目で景品を動かし、二回目で角度を変え、きっちり三回目で排出口へ落とした。
筐体下部の取り出し口からネコマニャンぬいぐるみを拾い上げる。
「ふむ、まだまだ最適化できますね」
そして、三度、クレジットを購入。
それからは、プレイするたびにネコマニャンが排出されていった。
必要なプレイ回数は平均して二回ほどだ。
それで椎苗はクレジットを追加するたびにネコマニャンを次々と獲得していく。
それこそ、止めなければ景品が無くなるまで際限なく続けて、ネコマニャン全てを救出する事だろう。
■修世 光奈 > こうなった友人は止まらないことを光奈は知っている。
以前はネコマニャンカフェのメニューを制覇したくらいだから。
だからきっと、やってみる?と言わなくても突撃していったことは間違いないと思うが。
「そうそう。……あー…やっぱりか…、って、おー…!」
ルールの理解…というより意欲がやはりすごい。
財力から言えば当然だが、3プレイを押す友人のクレーンゲームを眺める。
1回で取れないのは当然ではあるが…計算能力とでもいうのか。
アームで運ぶのは早々に諦め、ずらすように動かし始めたのを見て驚く。
普通なら、アームを使うことに固執しそうな造りだが、それを無視するのは明確なプランがあるのだろう。
そして、光奈の経験から言えばあっさりと、まず1つめのネコマニャンぬいぐるみが取り出し口に落ちてくる。
「やったねー!これくらいなら荷物にならないし、……え?」
目的のものが取れたから、わあ、と喜ぶ光奈。
けれど、彼女の執念を侮っていたらしい。
すぐに、追加クレジットの音が響く。
そして同じように、ずらし、転がし、あるいは1度目はアームで運んでから2回目で落とすなど、奥の景品すら取っていく。
取り出し口から取り出していくものの両手が埋まってしまい…
「あ、あ、すいません、店員さん、何か袋を―――…!」
楽しそうにしている友人をそうそう止められるはずもなく。
通りがかった店員にお願いして大きな袋をいくつか持ってきてもらおう。
そして、その中にネコマニャンを詰めていき……
圧倒的な財力とテクニックによって、筐体に閉じ込められていたぬいぐるみは全て袋に救出されてしまった。
「す、すご…、…!、あっ、ちょ、ちょっとしいちゃんこれ持ってて!」
最後の一体が救い出されたところで感心した声をあげるも。
そこで、店員が駆け寄ってくることに気づく。
クレーンゲームは、入り口の顔だ。
その中身がなくなったとなれば、次に起こることは…補充だ。
これはまずい。無限に近い友人の財力が合わさればこの店の在庫が枯渇してしまう。
流石にそういった常識はありそうだが、備えておくに越したことはない。
大量のネコマニャンが入った袋で友人の視界を塞ぎ、その間に店員に駆け寄り…事情を説明して補充を遅らせてもらおう。
「あはは、ごめんねー。ほら、次いこー!」
戻ってくれば、袋を受け取って。
補充される前に、2階へと向かおうか。
これほどまでとは思わなかった。思ったよりこのゲームは…友人にとって危険かもしれない。
■神樹椎苗 >
黙々と、瞳を爛々とさせながらクレーンゲームに向かう。
私欲のためにしっかりと神木の演算能力をフルに発揮して、完璧な計算と予測で乱獲を繰り返す。
筐体が空になるのもまた、むべなるかな。
「ふむ、中々面白いもんじゃねーですか。
これならほかにも――んぎゅ」
これだけの筐体があれば、他にもネコマニャンが居るかもしれないと思い、次を探そうとして。
何か巨大な袋を押し付けられた。
視界を塞ぐ大量のネコマニャンが入った袋にひっくり返りそうになりながら、何とか支える。
そして、戻ってきた少女に連れられて、椎苗は二階へと連行されるのだった。
そうこの小娘、好きなモノには加減という物を知らないのだ。
「んふふふ――ネコマニャンがいっぱいです」
少女に連れられながら、大量に勝ち取ったネコマニャンにご満悦。
幸せそうな顔をしながらさて、今度はなにがあるのだろうかと周りを見た。
■修世 光奈 > 幸いなことに、他の筐体は別のマスコットが占有していた。
これなら、あの筐体から引き離せば何とかなるだろう。
(危なかった…まさかここまでとは…)
「そんなに取ってー、部屋に入る?レオ君の部屋とかに置いてもよさそうだけど…」
ふー、と冷や汗をかきながらそこから離れていき、エスカレーターに乗ろう。
生活能力がない、と聞いているから部屋も簡素なのだろうと予想しつつ。
もちろん、持て無さそうな袋はこちらで持とうとすることも忘れない。
たどり着いた2階はまだゲームセンターだ。
ゲームの音量自体は1階より小さいが…
『ああああああああああてめえそこで特攻とか舐めてんのかああああああ、こっちに救助こいよおおおお!』
『くっそ擦りやがってめんどくせえ厨キャラ使ってんじゃねーぞ猿!』
『―――――――――――…』
などと、賑やかではある。
ちなみに最後は無心でダンスゲームをする人だ。
「………。うん、まあ、ここは……うん。次、行こっか。上がボーリングだよ」
何とも言えない。人の闇が凝縮したような場所だ。ここにいるのはよくない
そのまま3階へと向かうとしよう。
3階と4階がボーリングゾーンになっており、3階で受付をして4階で遊ぶ形式だ。
「軽い球使えばしいちゃんでも楽しめるだろーし…とりあえず1ゲームやってみようよ。
周りの人たちとは離れてるから結構静かだしさ」
そう誘ってみよう。
確かに、受付に移る現在の様子は、安全のためかレーン毎に距離が取られており…音楽も五月蠅くなさそうだ。
先程、ネコマニャンを見つけるまで顔をしかめていたことを光奈は気にしている。
異論無ければ、シューズを借りて上へと上がっていこう。
■神樹椎苗 >
「大丈夫です、部屋が足りなければ新しく借りればいいだけですから」
金持ちの発想だった。
これはいずれ、ネコマニャンの部屋などという物が、女子寮に生まれるかもしれない。
そして上がった二階からは、人間から発せられる怒声に奇声。
「――そうですね、次に行きましょうか」
視界に入った内容は、所謂ビデオゲームという物だろう。
対戦ゲームなども多い故の、あの叫びっぷりなのだろうが、あんまり好ましくはなかった。
とはいえ、興味はあるので惜しい気持ちはあるが。
「ボーリングですか。
ルールは知ってますよ、球を転がしてピンを倒すのですよね」
誘われれば当然のように興味を示すだろう。
そして、少女の気遣いには「ありがとうございます」とお礼を言うのも忘れない。
受付は任せて、子供用の小さなシューズを不服そうに借りれば、次のフロアを見て「おー」と声を漏らす。
レーンがいくつも並ぶ光景は特有なもので、時折勢いの良いピンを弾く音が響くのも独特の迫力がある。
騒音はあまり好ましくはないが、これなら気に障るほどのものではない。
自分たちの使うレーンに向かってから、靴を履き替えて球を選ぶ。
これもまた、子供用の軽い球が丁度いい事に不満げだが。
一番状態のよさそうな玉を選んで、レーンに戻る。
「――むう」
少しだけむすっとしつつ、椅子に座る。
自分が子供なのはよく理解しているが、それでも釈然としない気持ちになるのもまた、人間らしくなったが故だろうか。
「それで、ルールはわかりますが、実際にやるのは初めてです。
投げ方とか、教えてもらえますか」
椅子で足を揺らしながら、少女に教えを乞うのだ。
■修世 光奈 > 部屋を増やすという発想には苦笑いしつつ。
対戦ゲームのコーナーは、また今度機会があれば来てみようと提案し、上へ。
受付で不満そうにしていても子供用しか合わないのだから仕方ない。
光奈も体格に合った靴とボーリング球を選ぼう。
「そうそう。………あー、あれだよ、大きい靴とかは成長してからのお楽しみって感じで。」
ただ、友人のそんな様子は気になるため…フォローは入れておく。
友人の目的が果たされれば…成長もするのだろうと。
名前を入力したため、ひらがなで『こーな』『しいな』と…頭上のモニターに表示されており、得点もそこに表示されている。
今はまだどちらも投げていないため空欄だ。
「いいよー。私も上手いわけじゃないけどね。見よう見まねだし。
じゃあ、丁度私が先だから、投げるねー。見てて!」
ピンクの球を持って、身体の正面で持ち。
少し離れたところから助走をつけ…一度球を持った腕を振り子時計のように後ろに振り、勢いを付けて―――
ただ、脚と手の連動が素人らしく上手くいっておらず。
「―――――!
ダンダン!という音と共に球を放る。
少し狙いが外れた球は、ガーターにこそならなかったもののピンたちの右側に当たり…4本ピンが倒れる。
「あちゃー、久しぶりだから失敗しちゃった。えっと、こんな感じで投げて2回ごとに点数が決まる感じだね!
投げ方は両手でえいって投げてもいいけど…どうする?」
片手で投げるとかっこいいが、安定せず。
安定させようと思えば若干情けない姿になってしまうし、速度もでない
どうするかな、と聞いてみよう。
■神樹椎苗 >
少女の投げる様子を、しっかりと観察する。
見れば、腕力で投げる物ではなく、上手く遠心力を使って球を転がす必要があるようだ。
「ふむ、大体わかりました。
大丈夫ですよ、これなら。
――ああでも、右手がふらつくと邪魔ですね」
言いながら、立ち上がって動かない右手を腰のポケットに押し込んだ。
そして左手でしっかり球を握る。
魔術を使わなければ非力で貧弱な椎苗には、指三本で保持するのは中々大変だったが。
「む、む――これは中々」
少し難儀しつつも、なんとか球を抱えて、レーンに上がり。
見よう見まねで投げようとして――後ろに球がすっぽ抜けた。
■修世 光奈 > 光奈の二投目もなかなかうまくいかず、また4本倒れ。
8、という数字がモニターに表示される。
そして、これは腕力が必要なスポーツではない。
むしろ、力に頼ろうとすると失敗する。
いかに全身の力をスムーズに球に伝えるかが大事ではあるが…
「お、っとと。しいちゃん大丈夫?」
球が後ろにすっぽ抜けても、光奈が戻った待機場所までは少し間があるため、特に問題は無い。
それよりも、指を痛めていないかなどが心配だ。
怪我も、死ぬことすらも平気だという友人だが…やはり、そこは気遣ってあげたい。
球を拾いつつ、近づいていこう。
「指とかケガしてない?見せて見せて」
ボーリングを選んだことを少し悔やむ。
軽い球もあるから大丈夫だろう、と思ったのだが。
一度球を床に置いて、手を取って確かめよう。
■神樹椎苗 >
ごとん、と音を立てて転がる球はむなしく。
重さのなくなってしまった左手を、寂しそうに握ったり開いたり。
「へいきですよ。
うっかりしてましたね。
しいの握力じゃ、素直に遠心力に頼る訳にもいかねーですね」
むう、と眉を顰めながら、少女に左手を見せて。
大丈夫だと示したら転がった球を今度は手のひらの上に載せて抱えるように持ってくる。
そして、床に置いてから指で保持して、少しだけ浮かせるようにしながら滑らせる。
今度は無事にレーンの上を転がっていった球は、スピードこそないが綺麗に進んでいく。
――が、勢いが弱いからか横にぶれていって、結局、端っこの一本をひっかけるだけだった。
「――ふーむ。
これはもう少し工夫する必要がありそうですね」
非力なら非力なりに、何かうまいやり方があるはずだ。
そうして考えながら二投目にも挑戦する。
もちろん、結果はまた横にブレてすこん、と一つ引っかけるだけ。
「これは中々手ごわいですね。
でも少しわかってきましたよ」
左手をにぎにぎしながら、静かに気合の入った目でレーンを眺める。
どうやら、上手くできそうで、出来ないところに、やる気が出たらしい。
そしてそのまま、一投ごとにあれだこれだと工夫しながら、熱中する事だろう。
少女の心配をよそに、椎苗は椎苗で、しっかり楽しんでいる事はきっと伝わるだろうか。
■修世 光奈 > 大丈夫だと言われれば、辞めさせるのもなんだか悪い気がしてそのまま見守る。
「お、おー……!」
力は確かに足りていない。
後にすっぽ抜けたことを考えると振り回すのは辛そうだ。
けれど、床も使って力を更に使わないように投げる友人に関心の声をあげる。
先程のクレーンゲームと同じように少しずつ上手になっていく…そんな友人の姿を新鮮に思い。
心配するだけではなく、光奈も楽しんでいく。
少しでも手助けになるようにと、できるだけ綺麗な形を意識しつつ。
喉が渇いて来れば、近くにある自販機で飲み物でも買ってこよう。
「お。今のはうまくいったんじゃない?いえーい」
そうして、熱中してくれば…一本ではなく何本か倒せることも増えてくるだろうか。
そうなれば、ハイタッチをしようと手を差し出し、はしゃいで。
(………楽しそうでよかった)
熱中してくれた理由は光奈には察せなかったが。
けれど、真剣な表情でいろいろ工夫して投げる友人に思わず笑顔が緩む。
連れてきてよかった、と思える時間だ。
熱中していればあっという間に1ゲーム終わるだろう、
合計点数は上回っているだろうが…最早光奈には点数はどうでもよく。
「えへへ、どうだった?こー、ピンがばたばた倒れるのが楽しいと思うんだけどー」
次のゲームを行うかの確認を放置したまま…順番待ちをする椅子に座り。
かすかに汗をかいた顔で聞いてみよう。
■神樹椎苗 >
何とか数本倒せるようになって、ハイタッチを構える少女に苦笑しながら左手を合わせて。
そんな事を繰り返しながら、何とか1ゲーム投げ終える。
どうだった、と問う少女に、へなへなと椅子にもたれながら。
「て、手が上がらねーです」
左手がぴくぴくと痙攣していた。
フィジカル的によわよわな椎苗の腕は、最期の一投で限界だったようだ。
「でも、上手く倒れた時はおもしれーですね。
倒れないと悔しくなりますが、その塩梅がわるくねーです。
――ただ、ちょっとハードでした」
くたぁ、と椅子の上でへにゃりとたれる。
左手が早くも筋肉痛を訴え始めていた。
■修世 光奈 > 「あはは……。飲み物奢るよー。お客さんも少ないみたいだし、ちょっと休憩しよー」
沢山お客さんがいると、ゲームをしないなら交代を促されそうだが。
時間的な空白なのか、客はそれほど多くはない。十分に休憩することもできるだろう。
「身体動かすのも大事かなーってさ、ほら、レオ君も色々動けそうだし、一緒に何か遊べたらいいかなって」
今回、こういった場所に誘ったのは。
勿論、光奈が身体を動かすことに対して積極的だから、というのもあるが。
上手くいってはいるようだが…より二人に色々遊んでほしい、というのもあり。
少しでも、楽しいと思ってくれれば万々歳だ。
「でも、今なら簡単に色々できそうだねー。ふふふ……」
まだ体力がある光奈がなにやら怪しい笑み。
ぐったりしている友人の後ろに回り込めば…まだ被っていればフードを脱がして、その長い髪に触れようと。
「色々弄れそうだなーって思ってたんだ。おっきなお団子とか作れそうじゃない?」
何て言いながら。拒否されなければ優しく触れ始めるだろう。
■神樹椎苗 >
休憩にはもちろん同意して、そのまま椅子の上で脱力する。
使っても鍛えても筋肉が付かないのもまた、成長しない弊害だった。
「ん、あいつはまあ、確かに体力はありますね。
こういう遊びなら上手くやりそうですが、さっきのクレーンゲームとかは下手そうな気がします」
もちろん、想像でしかないが。
なんて話しているうちに後ろに回り込まれて、襟の中に納まっていた髪を引き出される。
「んー、なんですかー」
優しく触れられ、髪の間を指が通れば少しくすぐったい。
「お団子くらいはたまにやりますよ。
料理の時は後ろで結んだり、前髪も上げたりしますしー」
特に髪を弄られる事に抵抗はない。
それが親しい相手となればなおさらだ。
椎苗の髪はとてもしっとりとして艶があり、さらさらとした手触りをしている。
枝毛や切れ毛も見当たらず、一本一本がとても細い髪質をしていた。
非常に色の淡い髪からは、ふわりと果実のような甘い匂いがするだろう。
■修世 光奈 > 「あはは、確かにこー…色んなことに不器用?っていうか。そんな感じだよね」
それが、光奈からレオへの印象を犬のようだ、としている。
確かに友人の言う通りの得意不得意がありそうだ。
「そういうのいいよねー。私も早く伸びると良いなー…
わ、綺麗な髪…。でも、これも弊害っていうか。体質って考えると…ちょっとフクザツだなあ…」
触れたその髪は…綺麗なまま時間が止まっているような感触だった。
女子としてはうらやましい限りだが…これもまた、友人が普通ではない証拠だ。
だから複雑、と評しつつ…簡単に纏めたり編んだりと遊び始め。
「…そういえば、メッセージのことだけどさ。
焦らなくていいと思うよ。だって、レオ君はしいちゃんにめろめろだし。
無理しなくても…解決してから、とか。それでもいいと思うよー。
そりゃ、しいちゃんがそうなりたいって思うなら…そういうことができる方法も探したり…してみるけど」
ふと、そんな遊びをしていた時に思い出すこと。
結構過激なメッセ―ジだったなあ、なんて思いつつ。
レオ君のことを深くは知らないが…思いは伝わってきた。
だから焦らなくてもいいだろうと提案はする。
しっかりお団子を作った後、またゆったりと解き始めて。
■神樹椎苗 >
「そうですか?
しいとしては、手入れもいらねーので、楽でいいのですが。
これだけ長いと、洗うだけでも大変なのですよ」
案外、普通の人間のようになったなら、バッサリと切ってしまうかもしれない。
目を閉じて、髪型を変えられて、遊ばれながら、されるがままにされている。
こうしたふれあいも、いつの間にか抵抗がなくなっていた。
「――そうですね、少し焦っていたかもしれません」
少女にメッセージの内容を触れられれば、うっすらと瞼を開ける。
青年との関係には満足しているのだが、したい事があれば叶えてやりたいと思っていた。
だからこそ、少女にも話していない、『三年』という時間制限を無自覚に意識していたのだろう。
「ふむ、あの件はもう少しじっくり考えるとします。
まあ今でも十分満足させてやれますしね。
物は使いようですから」
何をするつもりなのか。
思春期の青年に応えるために、また妙な情報収集でもしているようだ。
「お前の方はどうなんですか?
以前の買い物は役に立ちましたか?」
と、お団子を崩している少女に問いかける。
以前、ショッピングの際に選んだアイテムを思い出し。
少女の恋人との間に、彩りが加わったのだろうかと。
■修世 光奈 > 周りとは少し離れているし、傍から見ればただ単に女子同士でじゃれているだけだ。
誰も深刻な…あるいは聞かれたくない話をしているとは思うまい。
ボーリング球が転がる音やピンが派手に倒れる音も、それを助けている。
「そうそう。…まあ、リードしてるっぽいのもやっぱりすごいけど…私なんて、大抵まかせっきりだし…
でもレオ君遠慮しそうだし…しいちゃんくらい積極的?な方がぴったりなのかなあ…」
この前は何とか積極的に出れたが。
あれはあれで思い返してみると死にたくなるほど恥ずかしい。
逆に教えてもらうことが多いかもしれない。
ぼかして話してはいるもののやはり少し顔は赤くなる。
「あ、あーそれね。…えっと、うん。すごく役立ったよ。メッセージでも言ったけど…その、覿面?だった…。怖いくらい。
その、しいちゃんも服装とか変えてみたら喜ばれる…かも?」
好みは人それぞれではあるが。
やはり、いつもと違う、というのはスパイスになり得ると最近実感している。
見る限りこの友人は衣装持ちではあるし、お金もあるだろうから…スパイスの種類には事欠かないだろうと。
「そうそう、それでさー。カレに好みをしつこく聞いたら…髪は長い方が好きなんだって。
だから、ちょっとずつ伸ばしてるんだ。目標はしいちゃんぐらいかな」
せっかくだから、かなり長くまで挑戦するようだ。
お団子を崩せばそのまま、ぽんぽん、と相手の髪を撫でて。
流石にこんなにきれいな髪にはならないだろうけれど…しっかり育てていきたいと思う。
「そういえば、この上にダーツとかあるよ。あんまり身体動かさなくて済むし…休憩したら、やってみよう!」
まだまだ遊ぶ気らしい光奈。
情報交換…というか、心を許した友人らしいあけすけな会話をしつつ。
ゆったりと、アミューズメント施設を楽しんで行く事だろう。