2021/02/14 のログ
■サヤ > 恥じらう様すら楽しまれながらカメラを向けられると、赤い顔を背けて手で隠した。
これ以上着せかえ人形にされてはたまらない、そして消え入るような声で店員に。
「や、やめてください……。あの、ええと……わ、和服、でしたっけ、私がお店に来た時着ていたようなのは、ありますか…?」
『あまり品揃えはありませんが、ございますよ。』
と店員が答えると、洋装ばかり並ぶ中では浮いてしまうためかカウンター奥から桐箱を持ってきた。
『こちらでしたら普段着としてお使いいただけるかと』
中には白地に薄い桃色で桜が描かれた絹製の着物と、純白の襦袢が仕舞われている。
帯の柄は桜の枝に止まるメジロで、華美になりすぎず、かといって埋もれるほどでもないほどほどの頃合いのもの。
「綺麗……。」
小さく呟いて、大事そうに抱えながら試着室に入っていく。
着慣れているため、手間のかかる着付けも手早く済ませてカーテンを開く。
「これ、あの、私から言っておいてなんですけど、私にはもったいないんじゃ、ないでしょうか…?」
清楚な雰囲気はさきほどのロングスカートより更に増し、もとより日本人形のような顔立ちと髪型も相まって、調和した印象を与えるだろう。
しかしそれでも、むしろ上等な着物であるからこそ、価値がわかって身の丈に合わないような気がしてしまう。
■迦具楽 >
赤い顔を隠しても、その上からシャッターを押すのが礼儀というもの。
しかし、大きいとはいえ普通の服屋。
さすがに和服まで取り揃えては――
「――あるんかい!
さすが常世渋谷に構えてるだけあって、品揃えがすごい」
そうして店の奥から運ばれてきたのは、まさに高級品と見てわかる桐の箱。
普段着として、と持ってくるわりに友禅とはえげつないの持ってきたな、と一瞬思うが。
たしかに、和服は良い物を身につけた方が長く大事に着れるもの。
振袖を作るときに聞きかじった程度だが、着物は身に着ける物のに合わせて、着ている人間が美しくなるともいう。
「いいじゃん、着て見なよ」
綺麗、と呟いた恋人の背中を押して。
試着室の前でそわそわと、期待しながら待つ。
ほどなく開かれたカーテンの向こうから現れたのは、それはもう、綺麗な珠であり、華である。
「――あーあーあー!」
語彙を失って、隣の店員さんをベシベシと叩く。
迷惑そうな苦笑いをしつつも、店員さんもどうやら気持ちはわかってくれているようで。
「あー!
ねえ、あの子、私の、恋人!
ねえ、ちょっと綺麗すぎない? ねえ!」
店員、渾身の苦笑いである。
「滅茶苦茶似合ってる!
似合ってるのにもったいないとかあるわけないでしょ!
買うよ、それも買って帰るからね!」
普段の生活に、これを着こなして清楚に振舞う彼女の事を考えたら。
迦具楽にこれを買わないという手はなかった。
桁が他の服と一桁違ってくるが、冬の食費が浮いてる分で余裕の相殺だ!
「店員さん、他にも似合いそうな着物あったら持ってきて!
それも買って帰るから!」
この店員、見る目が確かである。
と、わかったら止まらない迦具楽だった。
散財? 知った事か、貯蓄ならあるのだ。
大切な人に掛けるお金なんだから、いくら使っても惜しくないのである。
■サヤ > 「あの、あの、迦具楽さん?迦具楽さん、落ち着いて!高いですよこれ、高いですって!」
着慣れた服に着替えたら、恋人は更に興奮して恥ずかしいセリフを叫びながら店員さんをバシバシ叩き出した。
その手を慌てて止める。どう見ても暴走している、着せかえ人形になりたくないから和服を選んだのに、これ以上買い与えられてはたまらない。
「大丈夫です、大丈夫ですから!大事に着ますから!一旦落ち着いてください!」
迦具楽が惜しまないつもりでもサヤは惜しんで欲しいのである。
しかし思わぬ所で上客を掴んだ店員はこの機を逃すまいと、すでに別の桐箱を持ってきており、季節毎に合わせた柄の和服をサヤの背後から迦具楽に見せて微笑んでいる。
■迦具楽 >
着替えて戻ってきた恋人に止められるが、問題ない。
「落ち着いてる、落ち着いてる!
大丈夫、私は冷静だー!」
冷静じゃないやつのセリフである。
慌てて止めた甲斐もなく、迦具楽は複数の桐の箱に飛びついていく。
「平気平気、お金はあるから――」
漫画で表せば、きっと目がぐるぐると渦巻いてる事だろう。
この機を逃すまいとした店員に案内されるまま、迦具楽は迷わず端末を取り出して一括払いするのである。
大丈夫、貯蓄がちょっと減るだけ。
ちょっと(数百万)だけ。
■サヤ > 「あ、あああーー……!!」
目の前で二人で一年は暮らせるであろう金額が引き落とされると、サヤは崩れ落ちた。
日々十円百円単位でコツコツ倹約してきた分が一息で消し飛ぶ、消し飛んで有り余る、サヤの全財産も超える額が、穏やかな、しかし底知れない笑みを浮かべた店員の手によって服に変わった。
「か、迦具楽……さん……!」
目に涙すら浮かべながら、迦具楽の手から端末を奪い取ろうとする。しかし時既に遅し、店員は笑みをより深めて『お買い上げありがとうございます』と深く頭を下げた。
■迦具楽 >
「どうしたのサヤ?
すっごいいい買い物出来たじゃない!」
もちろん、恋人の愕然とした心情には気づかないのである。
迦具楽はばっちり満面の笑みだ。
これまで稼いできた金額と使ってきた金額の桁が、ちょっとだけ違うだけなのである。
買った物は郵送してくれるらしい。
もちろんそこはサービスである。
上客を逃すまいとするサービス精神である。
「あ、最初に着たやつ、そのまま着ていくから用意してもらえる?
ついでに、ちょうどよさそうなコートも一つお願い」
『かしこまりました』
そして、勝手に着ていくことにされる雰囲気。
しかもこの期に及んでアウターまで用意するつもりだ!
■サヤ > 「い、いくらかかったと思ってるんですか…!わた、私、払いきれませんよ…!」
サヤの収入は寿司屋のパートである。金銭感覚が迦具楽とは根本から違っていた、言ってしまえば貧乏臭いのである。
そんなところに目の前で数百万が飛べば、天地が轟いたのような衝撃を受けるのも当然であった。
もはや続く迦具楽の言葉を耳から耳へ通り抜けていく。
茫然自失のサヤは最初に着た白のVネックとミモレ丈のスカート、そして
『ではこちらの白のノーカラーコートですと、Vネックが映えますし、白で纏まって柔らかな印象ですよ。』
とウール素材のコートを迦具楽に見せてから渡す。
ぎくしゃくとした動きでサヤが試着室のカーテンを閉め、機械的に着替えて、出てくる。
首元の露出はそのままに、ふわりとしたコートが足元までを覆っている。
和服を着ていた時とは別の意味で人形めいた姿で、サヤは何も考えないことにしていた。特に店員の渡してきた、明らかに上質な素材をしたコートの値段などを
■迦具楽 >
「いいのいいの、ほら、バレンタインの贈り物って事で!
私がサヤに着てほしいものなんだから、サヤは気にしなくていいのっ」
とはいえ、自分の年収なみの金額が目の前で動けば、気だって動転するってものだろう。
そこはまあ、年俸数千万の金銭感覚だった。
「あ、いいねえ、じゃあそれでお願い」
店員に二つ返事で答えて、それもさらっと支払ってしまう。
試着室から出てきた恋人を見ると、とても嬉しそうに笑うだろう。
「うん、やっぱりすごく似合ってるよ。
綺麗だね、サヤ!」
そして、茫然自失とした恋人の手を握るのだ。
■サヤ > 手を握られると、その馴染んだ感触と熱、そして漂う迦具楽の香りに、ようやっと手放しかけていた意識を取り戻す。
「あの、ええと……あ、ありがとう、ございます……。あの、ほんとに、嬉しいです……その、せ、精一杯、お返ししますから、えと……。
あの、言っていただければ、どれでも着ますから……、自分でも、出来る限り、ええと……着るようにします。
せっかくいただいたんですから、ちゃんと、使いたいですし……。」
艶のある黒いハイヒール、少し身長の上がった分、いつもより真っ直ぐに紅の瞳を見つめて。
「あらためて、ありがとう、ございま…っと…!」
頭を下げようとして、慣れないハイヒールにバランスを崩して倒れそうになる、正面に迦具楽がいるなら、抱きつく形になるだろうか
■迦具楽 >
「お返しなんていいんだって。
私は、サヤが嬉しそうにしてくれて、綺麗だったり、可愛かったり、楽しそうにしていてくれれば十分なんだもん。
だからうん、気が向いたときに着てくれたりしたら、十分だよ。
出かける時とかにでも、たまにさ、ね?」
いつもより少し高い視線を、微笑んで受け止める。
手を握り合って見つめ合うそんな光景を見せられた店員さんは、相変わらず苦笑いだ。
きっと、バカップルな上客ができたなーとか思われている事だろう。
「えへへ、どういたしまし――おっと。
はは、まずはゆっくり慣れないとね」
洋服に靴に、慣れない衣服は案外大変なモノ。
しっかりと抱きとめて、再びしっかりと腕を組むだろう。
■サヤ > 「……はい……。今更ですけど、あの、迦具楽さんと一緒で…私、幸せです……。」
しっかりと抱きとめる腕、衝撃を緩和したとはいえ、自分の体重を預けてもびくともしないその力強さに、ときめくものを胸に感じる。
店員の苦笑いを気に留めず、すっかり二人の世界。
「はい、ええと……慣れるまで、このままで……。」
腕を組んで、寄りかかるように肩に頭を預けながら店を出る。
店員が感情のこもらない声で『ありがとうございました』とその背に声をかけた。
「本当に幸せです………。」
通りを歩きながら、もう一度、耳元で。
■迦具楽 >
幸せそうにはにかみながら、体を預けてくれる恋人に、頬が緩んでしまう。
ああ、なんて可愛い恋人なんだろう、と思いながら、自分も幸せに浸る。
店を出るとき、店員の声が随分と無機質だった気がしたが、もうどうでもよかった。
「へへ、私も幸せだよ」
耳元に聞こえた声に、少し照れながら答える。
一緒に歩く通りは、周囲のカップルなんて目に入らない。
寄り添いながら歩くだけで、幸せだった。
「えへへ、デートに誘って正解だったかな」
恋人と並んで歩く渋谷の中央通り。
次はどこに行ったら喜んでくれるかな、と、そんなふうに考えているだけで、とても楽しい時間だった。
■サヤ > しっかりと体を支えて歩いてくれる。いくらになったかわからないほど払って、私が綺麗になるならそれでいいと笑う。
組んだ腕に更に体を密着させる。普段ならはしたないと顔を赤くするだろうが、今はそれよりももっとくっついていたかった。
「はい、誘っていただいて、ありがとうございます。でも、もうあんな衝動買いしないでくださいよ?
私は、あなたと一緒に暮らして、こうして一緒に歩くだけで、もう十分に幸せなんですから。」
あんまり散財を重ねられてはその生活が崩れてしまうかもしれない。妻として釘を差しておかなければ。
「でも、嬉しいです、えへへ……。」
似合うと言って買ってくれた服、可愛いと言ってくれた装い、嬉しくないはずがない。
春の日向のような温かい笑みを浮かべて、いつもより近い顔を見上げる。
その日はずっと、ハイヒールに慣れた後もくっつきっぱなしでデートしていたそうな。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から迦具楽さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からサヤさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に劉 月玲さんが現れました。
■劉 月玲 > 「~~♪」
片手に袋を持ちながらセンターストリートをうろうろ。
お口には小さいチョコをたまに放り込みながら。
バレンタインという日のおかげでチョコが豊作である。
いろんな種類のチョコがこの日には集まるので
たくさん買って一か月ぐらい楽しむ算段だ。
■劉 月玲 > あちらにいけば果実のチョコ。
こちらにいけばアルコールのチョコ。
あ、アルコールチョコは買えなかった。
「歳だけなら20歳過ぎてるはずなんだけどなー」
ぶーぶー文句を言いながらドライフルーツが混ぜられたチョコをもくもく。
■劉 月玲 > 大福の中にチョコを入れたり、ミルクにチョコを入れたり、アイスクリームに入れたり。
「美味しいけど、冬場にアイスクリームって売れるのかな」
とはいいつつ、露店で売られていたチョコアイスクリームをぺろぺろ。
■劉 月玲 > 「ん、あっちにもチョコ!」
今日はバレンタイン。
男子にあげるものはないけれど。
自分にあげる用に沢山買い込むのだった。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から劉 月玲さんが去りました。