2021/06/28 のログ
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
「……ああ、助かったよ。此の辺りの連中の情報は、半端に違反組織が絡まない分我々では手に入れ難いからな。
偶には、同僚を頼るという事も覚えなければなるまいな」

けばけばしいネオンも客引きの雑踏も遠い黒街の路地裏。
その暗がりに溶け込む様に言葉を交わすのは、風紀委員の制服を纏った少年と私服の少女。

『あまり面倒な仕事を増やされても困るからね。別に、アンタたちに肩入れしようって訳でも無いし。
同じ風紀委員が困ってるから、知っている情報を渡す。それだけよ』

常世渋谷に染まり切った、という様な派手な格好の少女は、幾分呆れた声色と共に少年にメモリーカードを放り投げる。
それを片手で受け取って、少年は小さく苦笑い。

「肝に銘じておこう。私だって、別に同僚諸氏と軋轢を生みたい訳じゃない。
"確認した組織"は、或る程度見逃しておくとしよう」

『そうしてくれると助かるわ。んじゃ、あんまり風紀委員と話し込むと危ないから、行くわね。
偶には分署に遊びに来なさいよ。トイレ掃除させてあげるから』

と、悪口に近い様な別れの言葉と共に少女は立ち去っていく。
常世渋谷の刑事課っていうのは、皆あんな感じなのかな…なんて思いながら、受け取ったメモリーカードを懐に仕舞い込む。

「ま、持つべきものは優秀な同僚というわけだ。
余り刑事課を頼り過ぎるのもどうかとは思うが…」

喧騒もネオンも遠い路地裏で。
懐から取り出した煙草に火を付け乍ら、小さく安堵の溜息。

ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に比良坂 冥さんが現れました。
比良坂 冥 >  
「今の子」

煙草に火をつけ安堵したほんの一瞬
それは少年にとっての"隙"だったのかもしれない
少年の溜息と殆ど同時に、背後から小さな、それでもしっかりと聞こえる声で言葉が投げかけられていた

声の感じからして距離はそんなに離れていない
振り向けば、すぐ目の前にその声の主はいるに違いない、と
そう直感するに十分なほどの距離感の情報を含んだ声だった

そして少年が振り向くならば、聞き慣れた通りの声の主がその場にいるのだろう

「……お友達?」

かくして、その声の主は小さく首を傾げながら、自身の言葉を追うようにそう問いかける

神代理央 >  
流石に驚いて、煙草を取り落としそうになった。
聞き慣れた声ではあったが、流石に突然声をかけられればそれなりに驚く。
ましてその声の主に、こんな所で会うとは思っていなかったこと。
異常なまでに近い距離感を感じる気配。
気配の察知、という面においては鈍い部分のある自分でも、流石に此処まで近づかれれば気付く筈…の距離。

「……同僚だよ。同じ風紀委員の。此処の分署で働いてるんだ」

どうにかその驚きを飲み込んで。
ゆっくりと振り返れば、其処には見慣れた少女の姿。
何故こんな所に、だとか。色々と聞きたい事はあったが――先ずは、首を傾げる少女の質問に、素直に答えるだろう。
そうしなければ、危険が及ぶ様な気が……いや、誰に、とまでは分からないが。
兎に角、そんな気がしたのだ。何となく。

比良坂 冥 >  
そこにあったのは、いつもどおりの、少年のよく知るままの少女の姿
不思議とこの黒街の雰囲気にその姿はマッチしているようにも見える…かもしれない

「……同僚」

言葉を反芻するようにそう応え、傾げていた首をもとに戻してじっと昏い瞳で、少年を見つめる

「……風紀委員ってああいう子もいるんだ」

「……もしかして、結構、女子…多い…?」

じっとりと、今の常世島の気候のせいだけではないような湿気を感じるような視線
別段、少年の答えを疑っているわけでもなさそうだったが、それはそれとして妙に絡みつくような声質
それはなんとなしに危険を察した少年の直感が正しいことだったと思えるような陰湿さを含んでいた

「……"たまたま通りかかったら"、理央くん見つけたから、ついてきちゃった」

そして問いかけられるよりも先に、この場にいる理由を…かなり雑に、説明していた

神代理央 >  
一度煙草を咥えて、甘ったるい紫煙を空に吐き出した。
煙が彼女にかからないように…或いは、彼女から一度、視線を逸らせるかのように。

「…どう、だろうな。半々くらいだとは思うが。
異能や魔術に秀でていれば。そうでなくても、能力とやる気がある生徒は性別に関係無く歓迎しているからな。
男女どちらかが多い、ということは、無いと思うが…」

何故そんな事を聞くのだろうか。
纏わりつく様な湿気は、降り続いている雨の所為…だと、思いたい。
手元の煙草の先端で燻る火種が、まるで暗闇の中に弱々しく輝く松明、の様な気さえしてくる。

「…そうか。だけど、此の辺りは女の子が一人でうろつくには些か危険な場所だ」

「明るい所まで送ってやるから、家に帰ると良い。
私についてきたって、面白い事は何も無いぞ?」

これはまあ、一応事実を含んでもいる。
どうせ此の後は、急ぎではない事務仕事を今のうちにしておこうかな、くらいのものだった。
彼女を人通りの多い所まで送ったところで、何の問題も無い。

…一緒に帰ろう、という言葉が出なかったのは、半ば本能的なものだったのだろうか。
先程の同僚の少女の無事を確かめたくなった…いや、直ぐに分署に戻った筈だから、別に何事もないと分かってはいても。
何故か、そうするべきではないかと、思ってしまった。

比良坂 冥 >  
「……ふーん。危険なお仕事なのにね」

半々ぐらい───
目の前の少年のスケジュールや仕事の危険度、過酷さを顧みれば
十分に多いほうかな、と思う

「……そんなに多いなら、理央くんに想いを寄せてる子がいても、おかしくないね」

くす、と唇を歪ませ、笑う
打診にも似た言葉、しかし他意はなさげに視線を逸らし、危険な場所だと少年が語る路地を眺め回す
確かに暗いし、女の子が一人で…というには物騒な場所なのかもしれない。しかし…

「……私、元々落第街でウリしてた子なんだけど?」

と自分を指差し、疑問形
でもその時も、この少年は似たようなことを自分に言ったっけ、なんて思い出しながら…

「……表まで…てゆーことは、今日はおうち、帰ってこない?」

一緒に帰ろう、ではなかったことに再び小首を傾げて、そう問いかけていた

神代理央 >  
「…まあな。だから、男女関係無く負傷者も多い。
女子委員の保護者には、娘を風紀委員入りを反対する方も多いと聞くからな」

と、喫煙によって取り戻した余裕と、他愛のない世間話の様な会話によって、少年の警戒心も僅かに揺らぐ。
元々、彼女に対して過度に警戒心を抱いていた訳では無いのだ。
無意識、或いは本能的なモノが、理性によって抑え込まれたというべきだろうか。

「……まさか。私の様な男に好意を寄せる女子なんて早々いないさ。
疎まれる事はあっても、その逆は無いよ」

何を馬鹿な、と言わんばかりに笑って見せる。
彼女が一度視線を逸らせた事もあってか、声をかけられた時よりは随分穏やかな態度かもしれない。

「……知っている。だからこそ、だ。
もしかしたら、此処には冥の過去を知る連中がいるかもしれないだろう。
そんな連中に出会ったら、何をされるか分かったものじゃないからな。
そういうところも、これからは意識して欲しい。別に、遊びに行くなとは言わないけどな」

ぷかり、と蒸かした紫煙を視線で追い掛けて。
その先にある彼女の瞳と視線を合わせて、念押しする様に一言。

「……ん、帰るつもりではいるけど…。遅くなるかも知れない。
一度、分署によって行きたいし…本庁にも、ちょっと仕事残してるしな」

今から片付ければ、帰宅は深夜を過ぎるだろう。
流石に其処まで彼女をつき合わせる訳にもいかないし――

「…なるべく早く帰れるように、他の風紀委員にも手伝って貰うから。だから、心配しなくても大丈夫だよ」

と、少女を安心させようと。小さく笑みを浮かべて、言葉を返す。

比良坂 冥 >  
「……早々は、ってことは少しはいる?」

じっ、と再び視線を向けてくる少女

「……あ、『いた』が正しいかな」

まぁいいか、と一人納得するような言葉を付け足して、一歩…歩み寄ると少年の手をとろうとする
それはまるで、今は自分の居場所であるということを主張するような、少し強引な行動

「……ちゃんと帰ってくるなら、よし
 うん…あんまり遅いと寝るのも遅くなっちゃうから…程々にしようね」

お仕事に根を詰めすぎるのもよくない、と
心配にも似た言葉を向けるがその実、自分が少年と長い時間過ごしたいだけの利己的なものも含まれている
そして…

「……私の過去を知ってる人はもう殆どいないから大丈夫だよ」

そう言って、くすりと可愛らしい笑みを浮かべた

神代理央 >  
「……いや、いないだろう。私も、基本的に仕事してばかりだし、そもそも仕事以外の話をする事も少ないからな」

向けられる視線に、僅かに怪訝そうな表情。
まあ、それだけなら気のせいで済む話だったのだろうが。

「……『いた』だなんて。まるでいなくなってしまったみたいじゃないか。
余り縁起でもない事を言うものじゃないぞ」

彼女の言葉の真意に思いを馳せようとして――手を握られる感触に、その思考が中断される。
改めて視線を向ければ、此方を心配する言葉を告げる少女に、クスリ、と笑みを浮かべるだろうか。

「大丈夫だよ。急ぎの仕事は無いから、程々に済ませて帰って来るさ。
冥の言う通り、寝るのが遅くなったら身体を壊してしまうからな」

彼女の利己的な思いには気付かぬ儘。
気遣う言葉に穏やかな表情を浮かべる――が。

「……そうなのか?それは喜ばしい事ではあるが…どうして、そう言い切れるんだ?」

先程の『いた』と言う言葉。
そして、彼女の過去を知る者は殆どいないという言葉。
二つの言葉に、再び不思議そうな…或いは、少女の真意を測る様な。
そんな視線と共に、可愛らしく微笑む少女に、首を傾げてみせる。

比良坂 冥 >  
手を握りしめ、その体温と存在を確かめるように、少しだけ力を込めて

「……そうだね。縁起でもない──」

「……でも私、色んな人に『訊いて』」

「……そういう子達がいたのも、知ってるよ?」

ぽつりぽつり、言葉を連ねる
そのまま繋いだ手に自分の身体を引き寄せるようにして、その腕へと組付いて

「……さあ?みんな、連絡が取れなくなっちゃった。島を出たのかも、ね…?」

なぜそういい切れるのか、という問いに対する答えは…漠然としたものだった
──少女に纏わる不穏な噂は、監視対象であることからも風紀委員で調べればそれこそ埃のように出てくるだろう
しかしどれもこれも噂の域を出ず、過去には幾度風紀委員会に留置されては釈放を繰り返していた
異能抑制のチョーカーの機能不全を疑われ交換されたこともあったが、少女の周りでの事件は収まらない
しかし少女に纏わる噂は、全て噂として立ち消え証拠が出てこないのだ

そして少年…神代理央と出会って以降は事件の起こる頻度が激減していることも、調べればすぐに分かることだろう

「……ねえ理央」

「……風紀委員、やめない?」

腕にくっついたまま、表へと歩き出して間もなく
少女からかけられた言葉はこれまで以上に突拍子もないものだった

神代理央 >  
「……そうか。いや、冥がそういうなら、そうかもしれないな。
とはいえ、関係のない話だ。少なくとも、今の私にはな」

彼女が腕に組み付けば、それを拒む事も無く。
そのままゆっくりと、彼女と共に歩き出す。

「……何にせよ、冥に害を及ぼそうとしないのなら、それでいい。
別に、態々探し出そうとも思わないしな」

「いないのならいないで構わない。だけどそれでも、こういう所を一人で歩くのは控えて欲しい。駄目、とは言わないから。
……それだけだ」

実際、彼女に対する様々な噂――或いは、報告書の類には目を通していた。
だからこそ、出会った時に声をかけ、不安定な彼女を保護する為に自宅に招いたのだし。
証拠が無いのなら。確証が無いのなら。どれだけ不穏な状況の中に彼女がいようとも、それを信じる事にしたのだ。
それは、自分の甘さだとも思うが――こうして一緒に過ごす様になって、彼女には安定の兆しが見えている…とも思う。
ならば、それは少なくとも間違った事では無いのだと、信じたいのだ。

「………突然だな。どうした、急に。
冗談にしては、随分とキツイと思うが」

そうして、表通りへと歩きだして間もなく。
彼女から告げられた言葉に、僅かに驚いた様に瞳を瞬かせて。
どういう意味だ、と言わんばかりの声色で、言葉を返すだろう。

比良坂 冥 >  
少年の言葉は全て自分の安全を守るほうへと、向けられていた
大事に思われ、ぎゅっと組んだ腕にしがみつくようにして俯き気味に頬を染めている様子は年頃の少女さながらに見えただろう
──しかし

「……冗談、じゃないよ」

「……風紀委員なんかやめて、もっと私と一緒にいて…?
 ずっと理央が一緒にいてくれるなら、私…大丈夫だから…」

ほんの僅かに見上げる、暗い瞳
告げられる言葉も、先の発言が冗談などではなく本気なのだということを伝えるには十分なもので

「……そのほうが、きっと、いいよ…。
 理央のやりたいことは、絶対に風紀委員にいないと、できないこと…?」

少女の言い分は、シンプルだった
二人でいる時間をもっと増やしたい、可能ならば、それこそ一日中だって
少年、理央という空間を専有したいという想いに満ちていた
そして尚、問いかけるのは…風紀委員における活動にとられている時間───その全てが少年の目的と合致したものではない、と仮定したもの

「……ね?そしたらもっと、理央と一緒にいれるし…私も、安心、安全で…幸せ」


少年の在り方を否定せぬままに、自身の我儘を最大限通そうとと試みる…そんな"誘惑"だった

神代理央 >  
「……………」

先程よりも表通りは近い。それなのに、人々の喧騒は随分と遠くから聞こえる様な気がする。
己の瞳には、じっとこちらを見上げる少女の瞳しか映っていない。
自分と一緒にいたい、と告げる少女を、じっと、見つめ返していた。
時間にすれば、ほんの数秒。
けれどそれは、随分と長い時間に、感じた。

「………確かに、冥の言う通り。"俺"のやりたい事は、風紀委員じゃなくても出来る事なのかもしれない
もっと上手くやる方法だって、あるのかもしれない」

「……でも、今更投げ出す訳にはいかない。
こんな仕事と破壊しか能の無い様な俺でも、頼ってくれる奴等はいる。慕ってくれる部下だっている」

「冥の事も勿論大事だ。だけど、アイツらを置いて風紀委員を辞めるっていうのは、出来ない」

穏やかな声色で、少女に告げる。
思えば、こうやって少女の"我儘"を拒否するのは初めてかもしれない。
今迄は、少女への庇護欲も勿論ではあるが――自分を全て受け入れる様な少女に、甘えていたところも確かにあったのだ。

「…だから、風紀委員を辞める事は、出来ない。
俺は神代理央である前に『鉄火の支配者』だからな。
俺は、自分の務めを果たさなきゃいけない」

「…………ここまで来れば、一人で帰れるだろう?
今日は家に帰って休むと良い。夜更かしは、肌に悪いぞ」

そうして、少女の我儘と誘惑を静かに拒絶して。
しがみつく腕を、そっと離そうとするだろう。
もう少し、少女と過ごす時間を取れる者に、監視役を変わるべきだろうか、と。
少女の身と心を案ずるが故に、そんな事を考えながら。

比良坂 冥 >  
「──そっか」

そう言うと、少女は視線を外し、俯く
少々の落胆と、悲哀の籠もった声だった

「……しょうがないよね」

頼ってくれる仲間が
慕ってくれる部下が
つまりは、自身の目的そのものと同じくらいに
大事なもの、が出来たということ──

言い聞かせるような言葉をじっと聞いていた少女は
組んでいた腕を離そうとする少年に、少しだけ、抵抗した
腕を離さなかったのだ

「………」

無言のまま、視線をあげてその顔を見る

「──夜更かしはお肌に悪いけど、理央と一緒にいれないと私の心にも悪いから」

昏い瞳の眼を細め──キスをせがむように、ほんの僅かにつま先立ちになって顔を近づけた