2021/10/17 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に修世 光奈さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にジェレミア・メアリーさんが現れました。
修世 光奈 > 今日は少し特別なデートの日だ
わざわざ部屋を出る時間をずらし、服飾店に寄って頼んでいた品に着替えてから待ち合わせ場所へ向かう
目指すのは、いつものロク公像前

そこは少し様変わりしていた
辺りを見れば、まだ本番でないにも関わらず
ハロウィン用の気合の入ったコスプレをした人が幾人か。

魔女っ子やカボチャ頭、何かのアニメのキャラクターなどなど
常世渋谷はおしゃれな街だが、いつも以上に色とりどりである
上から見下ろしたりすればさぞ楽しいだろう

「…う、うーん。ちょっと大胆すぎたかな?
で、でも…これくらいならいっぱいいるよねー」

そんな中、時計を気にしながらそわそわと彼を待っている私はと言えば
蝙蝠っぽい飾りに、ドレスのようなひらひら服
寒さ対策に簡単な上着を羽織って…現代風吸血鬼!

一応付け牙も付けていて口の中がもごもごするがらしさも出ていると思う
問題はと言えば肩が大胆に出ていることぐらいか

ただ、街の雑踏の中には見ているだけで心配になるスリットが入っている人や
それこそ風紀委員に補導されそうな全身タイツの人も居て
あれは許可を取ってやってるから大丈夫なんだろうか、なんて思ったりする

「~♪」

ともあれ、街の浮かれた雰囲気もあるけれど、少し違った服装でデートできるのは楽しみだ
彼はあまり仮装などする印象はないけれど…今日は何だか準備をしていたように見えたし
いつも通りでももちろんいいけれど…ちょっとは期待しつつ、楽し気にジェー君の姿を捜そう

ジェレミア・メアリー >  
世間一般ではそろそろハロウィーンの季節だろう。
それはこの常世島でも変わらない。
特にこの若者の街、常夜渋谷は顕著な表れだろう。

「……アレ、大丈夫なのか……?」

道行く人の中に点々と点在するコスプレ。
ミイラ男に魔女、フランケンシュタイン……。
中にはよくわからない踊るパンプキン頭とかもいるし
どう見ても際ど過ぎるような恰好をした輩もいる。
もしかして、普通の異邦人もいるんだろうか。
こっちからみれば、存外コスプレと大差ない格好の文化の人もいるわけだし。
ああいうの、捕まえるべきなんじゃないだろうかと思ったりもするが
今日は非番で無礼講……の、ようなもの。
多少のハメ外しは大目に見るとしても、それで軽犯罪が多発する可能性も否めない。
……まぁ、今の自分が人の事言えた義理でも無いか。

「…………」

何時ものハットは置いてきた。
西部劇のものとは違う、何処となく杜撰だが目深な黒のハット。
じゃらり、と動くたびに体に巻き付いた鎖が音を立て
人波を風切る黒のコート。口に咥えた煙草の煙がより雰囲気を際立てる。
今や吸血鬼の代名詞となった高名なハンター。【ヴァン・ヘルシング】だ。
……尤も、この格好がその彼の格好ままとは言い難い。要するに吸血鬼ハンターのコスプレ。

「(……コレ、結構目立ってないか……?)」

コスプレしている以上、ある程度人目を浴びるのは仕方ない。
彼女切っての規格にお願い。縁がない事だからこそ挑戦してみたが、落ち着かない。
この45口径も今や凶器としての威光ではなく、コスプレ完成度を高める立派なアクセサリーだ。
やれやれ、と気恥ずかしさにハットを目深にかぶり速足だ。
とにかく、早く彼女を見つけよう。ロク公の前まで一目散すれば、光奈の姿を目にすることが出来た。

「やぁ、待たせた?……なんだか、ちょっと派手過ぎない?
 僕もあんまり人の事言えた感じじゃないけど……」

そそくさと携帯灰皿に煙草を潰し、早速声を掛けた。
とにかく、この格好で一人でいるのは色々気まずいので、それはもう速足で近づいてったとも。

修世 光奈 > 混沌としているとはいえ、街はどちらかといえば良い雰囲気だ
浮かれてはいるものの、それに乗じて何か犯罪が、という様子も今のところない
あくまで、みんな楽しんでいるのだろう

そんな中、待ち合わせ時間近くになると
少しざわついた声が聞こえる
かっこいいー、だとかの興味の声だ
その声の方に眼を向けてみれば…

(う、うーーーわ…………ずる……、ずるい…………!)

彼を見慣れた私でさえ、思わず固まってしまう


元々、彼は容姿としてはかなり整っている
本人はすごく嫌がるだろうけど、雑誌のモデルなんかも余裕でできるだろう
…彼女贔屓を抜きにしてもあり得る話だと思う

背も高いこともあって普段でもある程度人目を惹きつける彼
そんな彼が、普通であるなら引かれそうな黒づくめで現れた

残念ながら元ネタはわからなかったけれど…歩く度に揺れる鎖やマント
いつもとは違う雰囲気のあるハットに包まれた彼はそれはそれは目を引く

そんな彼が近づいて来れば、もちろん視線はこちらにもフォーカスし
示し合わせたわけでもないのに、似たようなテイストの衣装になった私と彼はちょっとした笑いに包まれる

(見てみて、あれ合わせ仮装じゃない?)
(気合入ってるー!あれってさ、あれってさ、あなたに狩られたーいってことなのかな?)

元ネタを知っているらしい周囲からはそんな声が聞こえてきて
あの恰好は『狩る』側なのか、と妙な知識を得てしまう
断じて、そんなふしだらな理由でこの服を選んだわけじゃない
けれどそう見られても仕方のない組み合わせではあった

「…待ってないよ。うん。
あはは、まあ、ハロウィンだし…こ、これくらい普通だって!
…でもジェー君、すっごく似合ってる…、ちょっとびっくりしちゃった」

速足で近づいて来れば、ざわざわは少し大きくなるが
許可証を立てかけたストリートダンスパフォーマンスが近くで始まればそれも収まってくる

ほう…とちょっと見惚れたりしてしまいながら、笑って

「じゃー適当にあるこっか。色んな所でイベントやってるみたいだし、いっぱい回ろ!」

もうこうなったら気にしてる場合じゃない。
ぐい、と彼の腕に抱き着いて見上げよう

ジェレミア・メアリー >  
「(……いやいや、そんなに目立つかな……もっと目移りするだろ、ホントは)」

なんだか自棄に視線を感じる…というか
明らかに此方を意識したようなひそひそ話が聞こえたり聞こえなかったり。
寧ろ、こういう格好した異邦人とかこの島じゃ探せば幾らでもいるはずだろうに。
……いやまぁ、だらかと言って異邦人が珍しくないかって言われるとそうではないだろうけども。
要するに、頼むからあんまりうわさ話にしないでくれ、と内心思ってしまった。
だって、恥ずかしいじゃないか。

「そ、そっか。似合ってるかどうかはわからないけど……
 昔見た映像作品でさ、たまたまそれっぽいのがあったから自分なりに選んでね」

ある程度人にも手伝ってもらった結果出来上がった格好だ。
似合ってる、と彼女に言われるのは悪い気はしない。
気はしないが、どうしよう。想像以上に目立ってしまった。
彼女は普通だと言うが、ちょっとコレは早急に場所を移した方がいいかもしれない。

「あ、うん。とりあえず行こうか」

そう思った矢先に、彼女から抱き着いてきた。
気を使わせたかな?と思ったが、此方としても丁度いい。
頷いて、ハロウィーンに浮かれる街並みを拝見しよう。

人込みが右往左往するメインストリートでも
自分たち以外にもそう言った格好をする人間の数はまちまちと見える。
寧ろ、異邦人であることを生かしてなのか、まさに"ぽい"格好の住民もちらほら。

「……ここまでくると、コスプレなのか現地人なのかわからないなぁ。
 案外、本物のかぼちゃ頭が混じったりしてるかもね」

そう言えば、常世島には実際に生きたかぼちゃの生物もちらほら目撃されてるらしい。
そう考えると、案外嘘とは言えないかもしれない。
通行の邪魔に成らないように広げられた露店やパフォーマンス。
おどろおどろしくどこか可笑しなハロウィーンの雰囲気満載だ。

「まだもうちょっと先なのに、皆気が早いなぁ。
 ちょっと目移りしそうだけど、光奈はどう?面白そうなもの見つけた?」

修世 光奈 > 単純に奇をてらった仮装の人なら他にもたくさん居るし
同じような吸血鬼のコスプレをした人もちらほら見える
ただし、その素材が違う…!

(恥ずかしがってるなあー…)

ハットはいつもとは違うが、仕草は同じだ
彼がそれを目深に被るのは、大抵何か隠したい感情がある時
この場合は、恥ずかしがっている可能性が高い

そんな彼は可愛いと思うし、他の人が知らない一面を知っているのは優越感だ

「ん!いこいこ。歩かないと損だよー」

ただ、それほど目立っていても歩き出せばある程度雑踏に紛れられる
何せ周りはお祭り騒ぎ
多少目立つカップルが居ても、通りを賑やかに彩るパフォーマンスたちの方が目を引くだろう

「あ、それ毎年思うんだー。かぼちゃじゃなくても、明らかに仮装のレベル超えてる人?とか居るし…ほら、あれとか」

そう言ってきょろきょろしてみれば
トリックなのか、メイクなのか。頭が逆さまの状態になったまま歩く人や
ワイヤーなど見えないのに浮いているように見える人も居る
異能もあるだろうから一概に本物とは言えないだろうが、かなり混沌としている

「あはは、そうだね。本番はもうこの辺歩けなくなるだろーし…その時は、家でゆっくりしよっか」

この時点でこの賑わいだ
本番もいつも凄いし、人混みが少し苦手な彼だから…その日は家でのんびりかぼちゃのスイーツでも食べていていいかもしれない

「ん―――…、どうしよっかなー。私も迷うけど…ん?」

光奈が目を留めたのは、とあるパフォーマンスだ
お菓子をあげて幽霊を満足させよう!と立札が置かれており
内容はお菓子を投げて幽霊に当てるゲーム

ただし、幽霊は悪戯したいから避けるぞ!という言葉も可愛い幽霊のイラストと共に描かれている
見てみると、お客さんが一人で参加する催しの様で、現在も挑戦中だ

魔女の仮装をした女生徒が飴玉を投げつけるが、酷くアクロバットな動きをするシーツを被った幽霊がそれを躱して女生徒の肩にタッチ
それで悪戯されたことになり、魔女は悔しそうながらも楽しそうに友達と感想を共有している

一応当てられれば、特製のメダルと小さなお菓子詰め合わせがもらえるという小規模なイベント的なもの

「ねね、あれやっていい?なんだか楽しそうじゃない?」

一仕事終えた幽霊が、無駄に可愛い仕草で挑戦者募集!の看板を揺らしていて
滅茶苦茶な動きが気になったのか、くい、と彼の袖を引いてみよう
こういう時もアクティブな催しを選んでしまうのはもう性格故だ

ジェレミア・メアリー >  
ともかく、彼女が喜んでくれたのならそれで十分だ。
折角見繕って貰ったこの服も、浮かばれるものというものだ。
恐らく、これ以降着る機会はなさそうだし。仕方ない。
折角人に見繕って貰ったものだが、毎日こんな服着てるなんて流石に色々と困る。

「……アレはこう、メイクとかしてないんじゃないかな?わかんないけど……」

魔術によるパフォーマンスなのか、それとも素であんな感じなのか。
人様に迷惑をかけている訳じゃないから別にいいんだが、あれは確かに目立つ。
と言うより、逆さまパーツとか全く以て不気味じゃないか。
思わずぎょ、と目を丸くした。そうだな、ハロウィーンと言えば元々ホラー要素だ。
ああいうビックリドッキリなのがいても何らおかしくは無い。
……今ちょっと目が合ったか?勘弁してほしい。すぐハットで遮った。

「(……そう言えば、この格好に至るまで色々着せられたっけな……)」

同じ風紀の先輩。
悪戯好きな白妖精。若干頼む相手を間違えたと当初は後悔したが
やはり、その美的センスは確かなものだった。
まぁ、このハンターに至るまでになんか変なカボチャ付けられたり
包帯ハチャメチャにされたり、なんだか明らかに玩具にされた気がするけど。

「(あの人も、こういうお祭り事好きなのかなぁ)」

なんて、ぼんやり考えた。
このコスプレのお礼もかねて、何か甘いものでも買っていこうかな。
……と、デート中に先輩とは言え、他の女性の事を考えるのは良くない。
んん、と軽く咳ばらいをして一旦脳内から追いやった。先輩、ごめん。

「ハハ、そうだね。光奈も迷子になっちゃうだろうし」

最早人込みと言うよりすし詰め状態になるのは目に見えている。
流石にそう言うのはご遠慮願いたい。クリスマスの時のように、彼女とのんびり家で過ごそう。
はてさて、そう話し込んでいると中々面白い催し物を彼女が見つけてくれた。
如何やら、あの幽霊に飴玉を投げるタイプのアトラクションらしい。
白布を被って"いかにも"な顔が描かれた幽霊の格好。……本当にコスプレ?
なんだか、やけに幽霊にしてはアグレッシブと言うか、動きすぎじゃないか。
もしかして、中身は本物……。

「……いや、足はあるな。ヨシ」

一瞬表情が強張ったが、足があるなら幽霊じゃない。
今頃、世の中の足のあるタイプの幽霊諸兄は大層ご立腹かもしれない。

「わかったわかった。いこういこう」

そのまま袖を引っ張られるままに、係りの人へと二人で歩いていき
一通りの説明と受付を得て受け取る二人分の飴玉。
途中、「お似合いですね!」とかカップルの事囃し立てられたけど、とりあえず笑ってごまかしといた。

「さ、やろっか。光奈」

遊びと言えど手は抜かない。
手の飴玉を軽く弄びながら、まずは彼女のお手並み拝見。

修世 光奈 > 異能でほとんどなんでもありなこの島だ
慣れは多少あるけれど、未だに眼を疑う仮装が横を通り過ぎていく
今にも目玉が落ちそうなゾンビなどもすれ違うが、そこはお祭り

腐臭などは当然しないし、むやみやたらに脅かしてくるわけでもない
ただただ道行く人を驚かせるだけの仮装たちだ

彼が何事かを考えている間に、私は私できょろきょろする
聞けば教えてくれるだろうけど、できるだけ考え事の邪魔はしないように
もしかしたら、仕事の事とか考えているかもしれないし

「ならないよー?行ったとしたら、ジェー君にこうしてくっついてるし」

こんなお祭り騒ぎの中なら、いつもより引っ付いてもあまり見られない
彼は私のだ!と全力でアピールしながら楽しそうな方へ歩いていく

そして、機を見計らって彼に声をかけ、パフォーマンス会場へ

幽霊は…確かに足はあり、人間であることがわかるが、動きは人間離れしている
体操部とかその辺の人だろうか
地面に足が付く瞬間はあるけど、時々完全に空中を蹴ったりしていたような…

シーツの幽霊の顔は可愛らしくデフォルメされて描かれているが、
あれはあれで、迫ってこられると中々怖そう

受付を済ませれば、飴玉がたくさん入った小さな籠を渡される
飴玉はいっぱいあるけれど、投げないとダメで…例えば籠ごとぶちまけるのはルール違反だ
それならショットガンみたいに前にたくさん投げればいいのでは、と思うけど。
幽霊のジャンプ力も大概なため、上に逃げられる可能性が高そう

幽霊との距離はそれほど離れていないから、投げられるのは普通なら2回か3回くらいかな?

お似合いですね!なんて言われればギャラリーからひゅーひゅー、と口笛が飛んでくる
けど、私はむしろ恥ずかしがらずに、どうだ、このかっこいいのが私の好きな人だ、と胸を張る
ここでおどおどしてはそれこそ釣り合わない。かっこいい彼に頑張ってついていくのだ

「おー!やろやろ。ジェー君はそこで見ててね…」

挑戦は一人ずつ。
先に前に出て、飴玉を構える
これでも部活の助っ人なんかして、動体視力や運動には自信がある
さっきの動きも見ているし、シーツ…つまりはためていている幽霊の身体に当ててもいい、とのことだから、なんとかなるはず…!


――トリックオアトリート!


そんな、ハロウィンらしい掛け声と共にゲームが始まる
幽霊が真っすぐ駆け出し、距離を詰めてくる

「ここ!」

まずは足を狙っていくつかの飴玉を投げる
当然、幽霊は避けようとするが、左…平行に動いたのがラッキーだ

運動部でもよくあることだが、方向転換するときに踏ん張る時には一瞬人の身体は止まる
なら、避けてからこっちに向かってくる、その瞬間を狙って―――!

「えええええっ!」

だが、本命の二投目…上にも厚くなるようにしっかり投げたいくつかの飴玉は
なんと正面から躱されてしまった
上への逃げを警戒しすぎた分、多少正面は弾幕が薄くなっていたものの

シーツすらも操り、映画か何かのように飴玉がすり抜けていくような避け方
実際にすり抜けているわけじゃないし、こういう場合も想定して練習を積んできたんだろうけどそれでもすごい

実際、ギャラリーは滅茶苦茶に湧いているし、私も肩ぽんされるまで頭が追い付かなかった

「ま、負けた………!」

完敗であった
うー、と悔しそうにしつつ、彼にバトンを渡そう。頑張れー!という言葉も添えて

ジェレミア・メアリー >  
「そうかな?誰かに攫われちゃうかもね。……まぁ、僕が先に攫うけど」

万一と言う事もあるけど、それだけは譲れない。
一応人前だけど、こういう事はしっかり一度はアピールしておかないと誰かに攫われてしまう。
……まぁ、言っといてなんだけど恥ずかしくなったのは事実。
何でもない、とは言わないけれど、軽く首を横に振って熱さまし。

さて、それはそれとしてお手並み拝見。
なんだかギャラリーが多いせいかやたらさっきから囃し立てられてる気がする。
そう言う周りの連中も、カップルとかいるんじゃないのか。
何でこっちばっかり標的に…彼女がチャーミングすぎるからか。
まぁ、そんなことはさておきお手並み拝見。

幽霊も幽霊で早いというか、縦横無尽と言うか。
人間離れした動きをしている。いやまぁ、幽霊なんだけど。
にしてもあの幽霊、自由すぎやしないか。
光奈の方も負けじと飴玉を投げているが、正面から渾身の一撃が躱された。
そして、刹那の一瞬。一瞬でタッチされてしまった。

「……速いなぁ」

ゴーストと言うよりはカミカゼと言うか。
思ったよりも相手も本気らしい。
此処は男の子。ちょっと闘争心に火がついたし
折角の彼女の手前。良い所は見せないと。

「任せてよ、光奈」

ニヤリ、と口角を上げて前に出た。
籠の中に入った飴玉を一つ手にして、幽霊と対峙する。
一発。決闘の作法で、一発で十分だ。
ハットの隙間から覗く、碧眼がゴーストを射抜くホークアイ。
集中力に合わせて景色が、音が、徐々に狭くなっていく。
残されるのは、ゴースト一匹。瞬きはしない。
異能のおかげで、時の感覚さえ遅く、遅く───────。


─────────ヒュン。


刹那、空気を切り裂き飴玉がぽて、と幽霊に当たった。
凡そ掛け声とほぼ一緒。ゴーストが僅かな機敏を見逃さずに、まさに早撃ちならぬ"早投げ"。
ふぅ、と一息ついたころに漸く音と、景色が戻ってきた後に、気取った笑顔に光奈に振り向いた。

「どう?」

なんて、ね。

修世 光奈 > 「……そーいうこと言うー…」

ぷく、と片頬を膨らませる
独占欲は当然私にもあるけれど、彼に返されるとそれはそれでもにょもにょした気持ちになってしまう
かくして、妙な雰囲気の吸血鬼二人組ができあがった

それはそれとして。
学生が多い島だからこそ、遊びにすら真剣だ
安全には十分気を使っているが、異能も、培った経験も全て注ぎこまれた遊び

「ぅー、強い…。頑張れ!任せたよー!」

そんな遊びなら、全力を出しても負けることがあるのは当然だろう
悔しくはあるがしかし、彼なら頑張ってくれると信じている
負けるにしても勝つにしても…彼の姿を見るのが楽しみだ

幽霊もまた、強敵の気配を感じ取ったのかじり、と緊張した様子を見せる
今まで以上に気合を入れて、何としてもタッチしてやる、という気概を見せたが…

「あ」

その声をあげたのは、私だったのかギャラリーだったのか
始まった瞬間にあっさりと、ぽこん、なんて音を立てて幽霊に袋に包まれた飴玉が当たる

幽霊すらもぽかんと呆けていたが…
遅れて

わあーーーーー!
きゃーーーーーーーーー!!

そんな歓声がギャラリーから湧く
受付も遅れてぱちぱち、と拍手が響く

一回の歓声の爆発が終われば、かっこいいーだのという賞賛の言葉が降り注ぐ
係員が、ジェー君にお菓子詰め合わせとメダルを渡して

「ほんっと…ずるい!かっこいい!…さいこーにすごかったよ、ジェー君」

幽霊を一撃で満足させるその技は一瞬だったけど綺麗なもので
ただ、その代わり、滅茶苦茶目立ってしまったので…

「!」

女としての、カン。
彼に連絡先を聞こうと迫ってくる仮装女子が居る!
…多分だけど。

彼がそっちを向くとは思えないけれど…
用心するに越したことはないのだ
彼は意外に純朴だから、綺麗なおねーさんに誘惑されたら気が気じゃない

「…よし、じゃあ次いこ次!、ほらほら!あっちのジェラート屋さんとかよくない?」

ちょっと急かすように次の場所へと彼を連れていこう
少しだけ振り向いて、彼は私のものだ、とアピールだ

ジェレミア・メアリー >  
湧き上がる歓声、囃し立てるギャラリー。
こういうのは悪くない気分だ。
前はちょっと鬱陶しい気分だけど、このメダルとお菓子も思い出の一つになるだろう。

「……ハハ」

それにしても、ちょっと喧し過ぎる気もする。
キッドはともかく、ジェレミアはもう少し静かな雰囲気が好きだ。
流石にちょっと苦笑い。褒められるのは悪くない。
けど、流石にこれは目立ちすぎたかもしれない。
押し寄せる人もいるものだから、困ったように頬を掻いた。
ちょっとこれ以上寄られたらたまらない。
連絡先とかは流石に教えないけど、光奈の手前というのもある。
足早に場所を移した方がいいかもしれない。

「ゴメン、そろそろ……わ、わかってるって光奈。行こう」

やんわりと断りを入れて、そのまま光奈に引っ張られるジェレミア。
……一番の懸念点とすれば、他の風紀委員に見られていないか、という所。
今は特に、こんな状況見られたら今度なんて言われるかわかったものじゃない。
明日にでも笑い話に変えられるぞ。それだけは、勘弁だ。
はぁ、と思わずため息を漏らしてしまった。
どうか、あの人ごみの中に自分を知る人が居ませんように……。

そんなこんなであっちあっち、と指差されるジェラート屋。
飲食関係も今はハロウィーン限定メニューが押し出されており
まさに、何処もかしこも、といった具合だ。

「そんなに引っ張らなくてもいいのに……ん、ジェラートか。うん、いいね」

「けど、お菓子貰ったばっかりなのに、太るよ?
 せっかくだし、パンプキンジェラート食べてみる?」

軽口を挟みながら、せっかくだしハロウィーン限定メニューを提案する。
やはり、この手の甘味と言えばカボチャメニュー。
あの独自の濃厚な甘味とジェラートのさっぱりさがマッチしている一品らしい。
どうする?と彼女の案も訪ねてみよう。

修世 光奈 > やっぱり彼が目立つのは良くない
いや、彼が褒められているのはとても嬉しいんだけど
それはそれとして、複雑な気分ではあるのだ

押し寄せる人の波を避けるように彼を連れ出す
ここまで大騒ぎになるとは思っていなかった。これも祭りの効果か…

幾人か、私の友人もいた気がするが
まあ、私はもう彼氏がいることはバレているから、揶揄われるぐらいだろう
彼の方はどうかわからないが…また落ち込んだりしていたら励ましてあげよう

「いやいや、あそこにいたら大変なことになってたから!
………いいの!今日ぐらいは。また運動すればいいんだから」

運動部の助っ人もまだ続けているし、バイトもしている
問題はそのバイトでも美味しいスイーツが振舞われることだが

「じゃあ、せっかくだしパンプキンジェラート食べる!
ジェー君もちょっと食べようー」

これくらいなら大丈夫だろうとジェラートを差し出す
流石に観衆は追いかけて来ることはないため、安心して注文しつつ
店員さんから、ジェラートをを受け取ってまずは一口

「~♪」

甘い味に、顔がほころんで幸せになる
これだけ幸せなこともなかなか無い
好きな彼と一緒に、美味しいものを食べる
だから、彼にもおすそ分け
あーん、とジェラートを差し出したり、また楽し気に街を歩いて

いくつかの催し物に楽しく参加して今日もデートをしっかり堪能したでしょう――

ジェレミア・メアリー >  
「大変な事って…大袈裟だよ。その、なんていうか。
 光奈の思うようなことにはならないよ」

要するに多分、やきもちでも焼いたって事なんだと思う。
それだけはないってこっちは断言できる。
一途、だとは思うし何より今は他の女の事なんて微塵も考えれはしない。
ちょっとだけ困ったなぁ、といった感じで頬を掻いた。
けどやっぱり、そう言うのは可愛いと思う。

「まぁ、少しくらい肉がついた方が可愛いとは思うけどね。
 ……ん、いいの?それじゃぁ、ちょっとだけ食べようかな」

甘いものに興味が無い訳じゃないし
彼女に食べさせてもらえるというのは少し嬉しい。
口を開けて、食べさせてもらう濃厚なカボチャの甘味に舌鼓しつつ
今日もまた、彼女と一緒に長い時間を過ごしたという。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からジェレミア・メアリーさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から修世 光奈さんが去りました。