2021/11/08 のログ
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に黛 薫さんが現れました。
■黛 薫 >
常世渋谷、ブラックストリート。学園の暗部の1つ。
落第街が追いやられた者の街なら此処は自ら望んで
陣取った悪人の区画と言えるだろうか。
(……コレで、合計7軒目)
そんな街に似つかわしくない少女の姿。
フード付きのパーカーで顔を隠し、足早に歩く。
黛薫は先日から正規非正規問わず幾つもの組織に
接触している。此度の戦火で焼き出されるであろう
『表の街で生きられない者』の受け入れ先を探す為。
落第街には立ち入れない。何の力もない自分は
巻き込まれれば終わりだし、行ってはダメだと
約束してしまったから。
(……でも、何もせずにはいられねーんだ)
落第街暮らしの弊害で表の街に通じるコネは殆ど
持っていないが、常世渋谷の黒街となれば話は別。
総じて頼りたくない相手だが、パイプはある。
■黛 薫 >
黒街の組織に関わりたくない理由は幾つかあるが、
そのうちの1つであり、今回の取引で大きな障害と
なっているのは切れるカードの少なさ。
黒街の組織は落第街の違反部活動よりビジネス的な
側面が強く、突き詰めれば切れるカードはほぼ全て
金に繋がっている。此度の戦火で金銭的な後ろ盾が
実質的に機能しなくなった自分にはやや荷が重い。
(借りちゃダメではねーのかもだけぉ、今後増えねー
以上使い込みたくはなぃし、あーしの金でもねーし)
従って自分が使える手札は『金になる情報』一択。
そしてそれらの情報の放出は、情報を溜め込んで
握っていた事実を晒すことと同義。
無論、他者に不利益が及ばないように最大限の
注意は払うが、自分の信用は口の固さで稼いだ
部分が大半を占めている。
つまり、黛薫にとって情報の放出とは裏社会での
自分の注意度を引き上げ、代償として積み上げた
信用を切り売りするような行為。
(でも、それで1人でも多く助かるなら安ぃだろ)
■黛 薫 >
黛薫は黒街の路地を渡り歩く。治安こそ悪いものの、
落第街とは違って街として認められた正規の区画。
境界線のギリギリ、約束を破らないボーダーの中で
無辜の被害者を減らすために奔走する。
(……合計9軒。今日だけで3軒も行ったか。
あーしのツテは全部で11軒。それ以上は……)
色好い返事を貰えたのは2軒。断られたのは8軒。
支払った情報の質を思えば今後落第街に戻れても
自分の立場はやや悪くなるかもしれない。
「……はぁ」
街角のベンチに座って一息入れる。
もう寒い季節なのに酷く汗をかいてしまった。
厚着しているからとかよく歩いたからではなく、
交渉の場と街中で『視線』に晒されたからだ。
特に、街中を歩く際の心労は以前の比ではない。
異能が進化して以降、他者の視線は嫌悪どころか
恐怖の対象になりつつある。
■黛 薫 >
(……怖ぃ……)
一度恐怖を自覚してしまうと振り払うのは難しい。
肌を這い回る視覚の感触はやがて幻触を想起させ、
しまいには触れているのが視覚なのか自分の心が
作り出した幻なのかさえ分からなくなる。
じっと過ぎ去るのを待っていると頭上から声が
降ってきた。突き刺さる感触は視覚だろうか?
それとも幻覚?頭痛と耳鳴りで何も聞き取れない。
「ご ごめんな さ 」
確認する余裕もなくて、咄嗟に謝罪が口をついた。
怪訝そうな表情から察するに怒っていたわけでは
なさそうで、動揺に羞恥が混ざって冷静な判断が
出来なくなる。よろめきながら逃げ出した。
■黛 薫 >
「う゛、ぅ゛ー……」
路地裏で人目を避けて蹲る。包帯の上から手首を
掻きむしり、開いた傷口から血が染み出した。
唇を噛み締めて泣きそうになるのを堪える。
異能が進化して以降、街を歩くだけで泣きそうに
なる頻度が増えた。目を開いて歩いているだけの
通行人に怯えて、時に湧き上がる不条理な感情を
噛み殺しながら物陰に隠れるばかりの日々。
怖がらなくて良い、疑わなくて良い時間が恋しい。
安らかな時間を与えてくれる相手に心当たりはある。
でも……目を閉じて浮かぶ姿は、ひとり、ふたり。
(……あーしって、浮気者なのかなぁ)
どこまでが『知り合い』で、どこまでが『友人』で、
そして……どこから先が『特別』なのだろう。
■黛 薫 >
黛薫にとって心を許せる相手は『特別』だ。
つい最近までそんな相手はいなかったのに、
何の因果か立て続けに絆されてしまった。
『友人』なら複数人いてもおかしくないはず。
しかし『友人』という言葉で済ませたくない
『特別』が複数人いる場合はどうなのだろう?
不誠実だと思われないだろうか。
そう思われたら嫌われてしまうのだろうか。
考えれば考えるほど不安で、後ろめたくて。
話す勇気はないけれど隠しているのも苦しくて。
安心したいから側にいたくて、いて欲しくて。
そんな自分本意な思考に罪悪感を覚えてしまう。
苦しいから安心したい、会いに行きたい。
でも、どっちに?そう迷ってしまうことにさえ
疚しい気持ちを感じて思考の迷路に嵌っていく。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に柊さんが現れました。
■柊 >
先日の一件以降、落第街で搾り取れる金銭は激減した
そのため、わざわざ黒街まで態々やってきたわけだが
と、少し重く感じる片手のボストンバッグを疎ましく思いつつ歩いていた
そうすると、ふと通った路地裏に蹲る人影が見え 気になった
ただの興味本位 だが なにかあるかも知れない
そんな期待が胸を高めつつ 人影に向かっていこう
「そこの人、大丈夫ですか?」
声も かけておこう
■黛 薫 >
「えぅ ぁ」
引き攣ったような声。微かに赤く腫れた目元。
見られた恐怖こそあるものの、人目を避けて
休んだお陰で多少の冷静さは取り戻せていた。
ひとまず相手の声が聞き取れたことに安堵する。
「いぁ、ごめんなさぃ。なんでもねーです。
ただちょっと……気持ち悪くなっただけで」
こうやって精神を持ち崩しているところを
見つかって声を掛けられるのは珍しくない。
だから言い訳や理由付けはいくつか用意してある。
しかし今回は咄嗟に引き出せなかったので無難に。
■柊 >
おや と聞こえた声は引き攣ったようなものに聞こえ妙にも思ったがこの街もこの街で色々とある
そういう人もいるだろう そう片付けたかったが
少し興味が 湧いてしまった
「おや、そうでしたか
ですが、男としては放っては置けませんのでどこかで休みませんか」
これではナンパではないか そう思い一人喉奥で笑う
だが気になったものは仕様がない
割と感情で動く男は 人好きのする笑みを浮かべながら
「今なら飲み物も奢りますよ?」
そう、付け加えてもおこうか
■黛 薫 >
人当たりの良い笑顔は黒街では警戒すべきものの
1つと言っても良い。落第街ほど危険ではないが、
直接的な暴力の比率が少ない分『騙す目的』で
声をかけてくる人は珍しくないのだから。
(……とはいえ)
黛薫はその手の相手を見破るのは得意な方。
他者の視覚を触覚で受け取り感情を察する異能。
普段は厄介だが、こういう場面ではありがたい。
「奢りはいらねーですよ、飲み物1杯とはいぇ、
この街で借り作んのは危ねーですからね」
目の前の男性は露骨な悪意を抱いている様子はない。
少なくとも現状は、だが。視線から読み取れるのは
軽めの興味だろうか?心配されているのかどうかは
読み取れなかったが身を案じる言葉をかけてくれた
相手を無碍にするのも躊躇われた。
「いちお、あーしは今休んでる最中でしたよ。
……でも、うん。場所は悪かったと思ぃます。
心配かけてたんなら、ごめんなさぃ」
■柊 >
この笑顔は壁であるがゆえに中々外せないものだが
こういった手合には効果的だろう そう思うがゆえに笑顔を浮かべ続ける
相手から帰ってきたのは それもそうか と納得するような返しであって
「ははは、懸命なご判断です
警戒心が高いのは良いことです
それと、ナンパと感じたならすみません」
相手の言葉 それに好意的な思考が過る
今のところは興味本位と言葉の返しに対する好意だろう
心配の色は ない。
すぐに逃げる猫 相手に対して感じたのはそれだ
「休憩を邪魔してすみません
いえいえ、場所がどこでも声をかけていたでしょうからお気になさらず」
猫好きな男にとって見れば相手を更に興味の対象として認識する。
「では、奢りではあれなのでお互いに何かを買って休憩とかどうでしょう」
■黛 薫 >
「いぁ?あーしは別にナンパでも気にしませんが。
ナンパだったら万が一があっても遠慮なく通報
出来ますんで」
パーカーのフードに付いているのはウサギの耳。
提げているアロマストラップは犬を模している。
肉球もパーカーの意匠に盛り込まれているものの
指3本なので猫ではない。統一感の無さを思えば
性格を猫に当て嵌めるのも丁度良いかもしれない。
服の裾の砂埃を払いながら立ち上がる。
蹲っていたお陰で尚のこと小柄に見えた少女は
立ち上がってもかなり目線が低い。ざっと見て
貴方より30cmほど背が低いのではなかろうか。
黒街を歩くにはあまり相応しくない容姿だ。
「ま、そんぐらぃなら付き合っても構わねーです。
気分悪くした後って喉渇く気ぃするんすよね」
少女の言葉は端々に警戒するような刺々しさを
感じさせる。しかし、改めて貴方との身長差を
認識して以降は意識して声量を上げている。
身長差がありすぎると声が聞こえにくいからと
気遣っているのかもしれない。
■柊 >
「あー それは困りますねぇ
そう感じてもらわなくてよかった」
胸をなでおろしたのだが安心の色はないだろう
特に気にもしていない様子だ
相手の格好を見れば 統一感のなさが逆に可愛らしく感じ、満足そうな色を思考に宿す
「おや」
思っていた以上に小さく 声を出してしまった
見下ろす形となった相手、それで少し心配そうな色を出したか
この街で生き抜いているのだ 何かしらあるのだろう
そう考えすぐに心配そうな色は消え去った
「あはは、分かる気がしますね
イライラで喉が渇くんでしょうか」
相手の言葉から感じつ刺々しさは、逆に相手にはちょうどよい感じがし
微笑ましいような そんな視線と思考を混ぜた
「ああ、声を大きくしなくても大丈夫です
耳は良いほうですので」
声が此方の慎重を確認した後に上がったのを確認
気づかているのだろうか そう感じ告げた
「さて、無事な自販機でも探しましょう」
そう言って、踵を返しとりあえずは路地裏から出よう
相手がついてきているのを確認しながら路地裏を出たら
歩幅を小さくし、無事な自販機を探すだろう
■黛 薫 >
外見は人当たり良く、しかし心配して声をかけた
風体でありながら『視覚』には殆ど心配の感情が
浮かばない。善人ではなさそうだが、今のところ
此方を害する意図も見えない。
(……愉快犯とか、享楽タイプか?)
警戒は怠らないがひとまず危険はないと判断する。
黒街は公的に街として認められた区画の中では
最も治安が悪い。とはいえ落第街と比較すれば
遥かにマシ。暴漢に破壊された自販機もいずれ
修理の手が入る。
そんなわけで、自動販売機はすぐに見つかった。
財布から150円を取り出し、ペットボトル入りの
コーヒーのボタンを押す。……出てこない。
500mlより僅かに容量が多かったそのコーヒーは
160円という何とも中途半端な値段。無言で10円
追加投入し、改めて購入。
「しっかしまぁ、路地裏の女の子捕まえとぃて
ナンパでもなく付き添ぃとか、珍しぃっすね。
あーたお人好しとか言われるタイプです?」
指摘を受けてか、声量は元に戻った。
■柊 >
もしや迷子だったりするか そうも考えたが相手は一見はこの街に慣れている
その線はないだろう そう感じ、どんな人間なのだろうかと
時折視線を投げては知的欲求を脳に過ぎらせる
すぐに見つかった自動販売機 相手が買い終わるのを待って
追加で10円払ったのには吹き出しそうになるが笑顔で堪えた
その後は、重く感じていたボストンバッグを下ろし
此方がかうばんとなり、缶コーヒーでも買おう
出てきた温かい缶を取り出してはプルタブを引き起こし口をつけた
「お人好しですかー 最近はとんと言われませんねぇ
むかーしむかしは言われてたような?」
そんな曖昧な返事を返して 肩を竦めた
はぁ と深い息を吐き 相手へと視線を流し、首をかしげる
「貴女は、何をしてらしたので?
ああいや、休憩してたのは分かってますが」
ただの散歩にしては危ないだろう
そんな意味を視線に込めたが まあ、はぐらかされるだろうと腹をくくっている
■黛 薫 >
「昔、なぁ。三つ子の魂百までってヤツすかね。
最近見せてなぃよーな優しさがたまたま今日
出たんなら、あーしは幸運に感謝しねーとだ」
笑いを堪えていた姿に気付いていたのだろう。
内容こそ当たり障りないが、声は不機嫌そうだ。
ペットボトル入りのミルクコーヒーを一口飲む。
『よく振ってお飲みください』のラベル表示に
気付くと、蓋を閉め直してボトルを振った。
「ただの散歩。……なんつっても信じねーよな。
行きずりの相手に話す義理なんざねーですが、
言ってしまえば野次馬みてーなもんですよ。
こないだ風紀委員と違反部活動?がなーんか
派手にやらかしたって噂になってたんすよね。
流石に落第街に踏み込むのはマズいとしても、
ココならそーゆー話出来るヤツもいるかなって
思って来たのよな。あーたも何か知ってます?」
嘘と本当を織り交ぜて話す。野次馬ではないが
風紀と落第街の衝突を知って来たのは事実だし、
内容をぼかしてはいるもののその衝突に関わる
『お話/取引』に来たのも本当だ。
ついでに相手が此度の衝突に関する情報を
握っていないかにも探りを入れておく。
■柊 >
「あはは、そうかもしれません
私もこんな可愛い子に出会った幸運に感謝を
おっと、ナンパではありません」
不機嫌そうな 声色 それでバレていたのに気づき
申し訳ありません と内心愉快に感じつつお詫びを
一口飲んだ後 蓋を締め直しボトルを振るうのを眺める
所作が一々可愛らしく感じられて 小さく笑って 微笑ましい感情に支配される
「まぁ、あんなになってましからねぇ」
路地裏での様子 それを思い出し、再び肩を竦め
もう一口飲もう そう思った瞬間、憎悪のような感情が飛び出した
「ああ、あれですか……面倒なことになりましたよねぇ
風紀のお偉方でも揃ったんですかね
あんな軍隊を持ち出せて更に此方の街を一掃しにかかる。
おかげさまで商売も上がったり……あの鉄火、やばいですよねぇ」
なんとなし探りを入れに来たのには気づいた
それに此方の感想も含めつつ続けて
ま、私はすぐに逃げましたが そう笑みを深め言ってみよう
■黛 薫 >
「お世辞ならいらねーーんですよ、ホントもぅ。
女引っ掛けたぃなら歓……いぁ、常夜街かな?
どーでもイィですけぉ、あーしみたぃなのに
言い寄ってるとソッチ趣味の噂立ちません?」
軽く指を振って互いの身長差を示して見せる。
軽口もほどほどに風紀の話題を切り出した直後、
振っていたペットボトルを取り落としそうになる。
手を滑らせたという様子ではなく……例えるなら
針を突き刺されて痛みに悶えたような反応。
幸い蓋を閉めていたし、落とす前に掴み直せた為
中身のコーヒーは無事だった。ゆっくりと震える
息を吐いて、吸って。その顔色は青褪めて見えた。
「商売上がったり、っつーコトはあーた落第街で
仕事してんだな?逃げて来たのは感心ですけぉ、
もしナンパじゃなぃって建前でウリの誘いとか
かけてきたらフツーに通報するかんな」
■柊 >
「ははは、お世辞ではありませんよ
貴女みたいな可愛い娘さんとはお近づきになりたいですよ
愛に噂も糞もありませんから」
指を振り身長差を語る相手に力強くそう告げた が
これではまたナンパではないか 本心でそう言いながら
たはは、と額を軽く叩いてみせたが 引かれそうだ とは思い
憎悪が、漏れ出したものの すぐに気を静め
見ていた相手の様子 憎悪の瞬間に見せたあの反応
何となくの、能力に当たりがつけられた
「ええまぁ、逃げて来ましたねぇ
関心と言ってくださるとはありがたいですが
ウリの誘いではありませんよ」
この相手に表情で壁を作るのは無理そうだ
それに、ごかいも解いておこう と懐から名刺を取り出し差し出そう
相手が受け取るのならば立場や会社名、電話番号が目に入るか
「所謂闇金です。今ならそうですね
貴方の可愛らしさとキャンペーンで年利20%とかなりお得ですよ」
まあ、相手は借りないだろうとは思っての言葉だ
年利20%など、一般の金融だ
■黛 薫 >
「…………ふーーーん……」
愛に関する弁論には何とも言い難い表情をしたが
思いの外引いた様子はなく、蔑みもしなかった。
「闇金が闇金って名乗るのも、何かなぁ。
いぁ、あーしが借りる気ねーって分かってて
言ったんでしょーけぉ。にしても『雲雀』か」
名刺を受け取り、思案するような仕草を見せる。
自分の情報をどこまで晒して良いかを考えて。
「……ま、イィか。こんな街で休んでたんだから
あーしが不良学生ってのもバレてんでしょーし。
『雲雀』の話ならあーしも聞ぃたコトあんだわ。
確実に返せる自信があるならそこにしとけとさ。
もっとも、借りる気ねーのは変わりませんけぉ。
返せなきゃウリの話がマジになりかねねーもん」
軽く肩を竦め、手帳を取り出して頁を1枚破る。
その後名刺を挟んで内ポケットにしまい直した。
「生憎、あーしは名刺なんざ持ってねーですが。
休憩に誘ってもらった分の恩と先に自己紹介
してもらった分合わせて、何も返さねーのも
落ち着きませんので?連絡先だけで御勘弁な。
女の子の連絡先、貴重だぞ?」
ナンパだのウリだの話していたから冗談めかして
言いつつ、名前と連絡先をメモして名刺に代えた。
不安定な字で『マユズミ カオル』と記してある。
■柊 >
「あははー これは失礼いたしました」
何とも言い難い表情 それは少し場を気まずく感じた
だが、引いた様子はなく蔑みもされなかったので あれ、とは首を傾げた
「こんな場所でお金貸してる方でまともなのはいないでしょう
まあそうですね。借りるって言われたら飛び上がりましたね」
それはそれで困ります とは肩を竦め
闇金が年利20などは正気の沙汰ではない
言わなければいいのに、安堵の色が伝わっただろうか
「まあ、能力も少しは検討がつきました
おや、知っていてくださって嬉しい限りですよ
ははは、それはまあ。させますけど?
可愛いので」
相手は見目麗しく感じるため、何事かなければ確実にウリに回すだろう
手帳を取り出し、一枚破るのに視線を流し首を傾げた が
「おや、連絡先をいただけるとは幸運ですね
ははは、はい。貴女のような可愛い人の連絡先だけで十分です」
冗談めかした後の言葉 それに名前と連絡先が書かれた
紙を受け取りしばし眺めた後 懐にしまい込み
「どこかで……ああ、口の固いお人です?」
間違っていたらすみません そういった後
確認するように 覗き込むか
■黛 薫 >
「……やっぱあーたお人好しの側じゃねーの?」
善人には程遠いが、外面だけでなく『視覚』から
読み取れる内面も救いようのない悪とは違う。
わざわざ言葉に出しているから、余計に。
しかし『雲雀』の取立ての苛烈さは一時期の間
立場の弱い貧者の内で闇金の怖さを端的に示す
教訓として語り種になったほど。
(……でも、さっきチラついた『憎悪』を思ぇば
その噂も、あながち嘘じゃねーんだろーな)
軽々しく容姿を褒める言葉を乱用しているのは
元々が軽い性格なのか、それとも言われる度に
蓄積する此方の動揺を見通してのことだろうか。
ペットボトル入りの冷たいミルクコーヒーを
一口飲んで顔に上りつつある熱を冷ましていく。
「あぁ、うん。知ってんなら話は早ぃな。
いちおそーゆー評判で通っちゃいますけぉ、
生憎と荒事には向かなぃ性質ですんで?
今回の衝突が終わるまでは、あーしの方も
商売上がったり、っつーワケなんですよね。
何せ小物だから再開の目処すら立たねーの」
今は何か依頼されても引き受けられない、と
暗に伝えたのには理由がある。此度の戦火で
焼け出されるであろう落第街の弱者のために
少しだけ握っている情報の紐を緩めたから。
もしいずれ依頼を受けられるようになっても、
『口が固い』という信用が残ってくれるかは
五分五分といったところか。