2021/12/01 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」に追影切人さんが現れました。
■追影切人 > 時を遡ること、凡そ3時間前。男は警備部の仕事でとある商業施設の警備員をしていた。
島の流行の発信源と言えなくも無い賑わいを見せる街中。
そんなものをぼんやりと眺めながら、時々欠伸を噛み殺しつつも彼なりに職務は遂行していた…のだが。
―3時間後―
「いやいや、勘弁しろっての。つーかどうやって出るんだっけかこれ?」
丁度、昼の休憩に入り別の警備部の生徒と交代、軽く伸びをして歩き出した直後に”ここ”に入り込んだ。
最初、一瞬にして訪れた静寂と昼間にしては矢鱈と暗い周囲に不審げに視線を巡らせていたが。
「あー…裏常世渋谷、だっけか?ここ。何時ぞやの朧何とかっつー暴走特急怪異が暴れまくってた…。」
記憶をぼんやりと手繰り寄せつつ、どうせ誰も居ないので警備部の制服の襟元を緩めつつ一息。
ついでに、制服の胸ポケットから煙草の箱を取り出して中身を1本口に咥えつつ。
「――んー…これ、義眼の中に仕込まれたGPSだと座標どうなってやがるんだろうな…。」
下手に反応消失(シグナル・ロスト)に表でなっていたら、後で事情聴取や報告書の提出が面倒過ぎるのだが。
まぁ、そんな訳で3時間程ほっつき歩いているのだが…明確な出口が見付からないので、これはいよいよマズいんじゃないかと。
■追影切人 > 本来なら、人間が長時間この空間に居ると体調悪化など不利な影響が多々出てくる…らしい。
が、男はそんなの関係ねぇ!と、ばかりに先ほどから体調が悪化する様子は今の所は無い。
「つか、普段の常世渋谷がざわざわ騒がしいから、この静けさが逆に違和感しかねーなぁ。」
警備部の一員として、あちこちの施設の警備に出向く事がある。
必然、常世渋谷にも何度も足を運んではあちこちの施設警備をしてきた訳だが。
しかしまぁ、職務中にこうして唐突に入り込むのは初めてだし、そもそも予測出来ない。
「確か、怪異とかその他訳わからんのとか色々居やがるって話だけど意外と何もいねぇな。」
指先まで黒い布がきっちり巻かれた左手をゆるゆると振りながら暗く静かな街を歩く。
左腕の怪異化した部分になんとも言えない熱を感じるが、それ以外は特に体調の異常も無い。
「まぁ、雑魚の怪異なら素手でもいいんだが――…」
問題はそこそこの怪異が出てきた場合だ。
自身の戦闘スタイルや特性上、どうしても本領発揮するには刃物が必要になる。
先ほどから、そういうのも探しているのだが中々に見付からないもので。
■追影切人 > 「包丁とかカッターナイフでも…いや、もう最悪ガラスの破片とかでもいいか…?」
”斬れる物”だったら取り敢えず何でも良い。出来ればやっぱり刀剣類が理想だがそれはそれ。
街並み自体は表と変わらないが、矢鱈と荒廃しているイメージだ。
試しに近くのデパートにも立ち寄ったが、荒れ果てているというか物が不自然に無かった。
ついでに、包丁とかカッターナイフも無かった。
仕方ないので、割れていた窓ガラスから大きめで長めの破片を複数失敬するしかなかった。
「…まぁ、無いよりはマシだが、一回ぶった斬ったら即座に壊れんだろうなぁ。」
取り敢えず、ガラスの破片を一つ右手に持ちながら探索は続く…いや探索したい訳じゃない。
出口か何か…取り敢えず脱出しないといけないのだ。むしろ外でサボり扱いになっていたら後が怖い。
ご案内:「裏常世渋谷」に藤白 真夜さんが現れました。
■藤白 真夜 >
時を遡ること、凡そ15分。
珍しく表に出られたから買い物兼人間観察でも、と常世渋谷に足を運んだだけなのに――この私が踏み入れただけで“裏返る”だなんて思ってもなくて。
「あーあー……。
参ったわ。まだ安定してないのが裏目に出たのかしら。
確か出る方法は記憶の中にあるはず――」
色の消え失せた影絵のような景色。
人一人として居ない街並。
裏常世渋谷。
けれど、迷い込んだ赤い女は狼狽えては居なかった。
表の人格は祭祀局に務めている。この場所への対処法も、朧気ながらなんとか覚えていられたはず。
「確か鳥居に――、」
“ソレ”に出会うまでは。
黒く濁った、ヘドロのようなかたまり。
不定形に蠢き、しかし明らかに人工物で出来た黒ずんだ何かが織り交ぜられていた。
“朧”に揺らぎ、しかしそれは明らかに壊れた電車の外殻を纏った、亡霊じみた黒い粘液。
「は?
……――!」
文字通り、電車の一両ほどはある体積で、蠢くスライムのように飛びかかってくる。
当たれば間違いなく致命傷で、しかしその動きは体積のせいもあるのか緩慢だった。
かろうじて横飛びに避け――、
「――斬り裂け」
カラダから外気に染みるように漏れ出た赤い霧が、言葉と同時に刀へとカタチを為し、その粘液めいた黒い塊を切り裂き――ぼきり、と刀が折れた。
―現在―
「――無理ーーー!!」
それは15分前のこと。
今は、遠く響く女の悲鳴とともに、
金色の左目を持つ男の先で、裏路地から飛び出し――
その直後、色の無い街並を壊しながら飛び出す――黒い電車の残骸を纏った粘体のようなナニカ――に追われていた。
「……ちょっ!そこの生きてるひと!
助けなさい!なんとかして!」
そのまま、あなたのほうへと走りこんでいく。
背後に、どぢゃどぢゃと黒い泥と金属のかけらを溢れ落とし、進む先にあるものを砕く怪異を引き連れながら。
■追影切人 > 「取り敢えずさっさと出るに越した事ぁねぇんだ、が――……あン?」
右手に持ったガラスの破片を器用に手の中でくるくる回し弄びながら、ボヤき混じりに静寂の街を歩く。
…と、いきなり進行方向にある裏路地から人影が飛び出してきた!
最初、怪異の類かと思ったが――その人物を追いかけるように続いて飛び出してきたのは――…
「…はぁ?いきなり何なんだよ――いや、つーかテメェ何を引き連れてきてんの!?」
人影――学園の生徒だろうか?爛々と輝く赤い瞳と黒髪が特徴的な、見た目古風の美しさがある少女。
彼女の言葉に、思わず突っ込みを入れつつも、流石にこれはもう迎撃するしかない訳で。
「…流石にありゃあ、雑魚怪異…とは言い切れねーな…。」
彼女がこちらへと走りこんでくれば、入れ替わるように一歩無造作に前へと出る。
右手に握り締めたのは、名のある剣でも魔的な妖刀でも無く――”ただのガラス片”のみ。
「……どっかで見たような外見だな………あ。」
思い出した。以前、この裏常世渋谷で色々なタイプが出現していた『朧車』と名付けられた怪異。
…それを模した怪異だろう。踏み込みざまに無造作に右手を一閃――…
『■■ィィィィィィィィィィィィッッッッ!!!!??』
金属が軋むような悲鳴じみた音を影の朧が撒き散らす。
一閃と同時に、空間そのものを引き裂くような凄まじい…ただ切れ味だけを追求したような。
そんな横薙ぎの斬線が迸り、影の朧を真っ向から食い止めた…かに思えたが。
「……チッ!やっぱただのガラス片じゃ一瞬足止め程度かよ。」
舌打ちと共に、動きが一瞬止まった怪異を見据えたまま即座に後方へと跳躍。
…で、有無を言わさず先ほどの女の腰を抱くように掻っ攫って――ダッシュ!勿論逃げるつもりだ。
「…ったく、ハズレ籤引かされた気分だなぁオイ!で、お前なんか刃物持ってない!?」
と、女を肩に担ぐようにしながら凄い速度で走りつつ尋ねる男。彼女の扱いが地味に酷いが気にしている場合ではない。
ただし――もう復帰した例の怪異が再び迫ってきているが。矢張り一瞬の足止め程度にしかなっていない。
■藤白 真夜 >
「――え?」
斬った。
あの、鉄とか泥とか固くて柔らかいよくわかんないやつ。
私の異能じゃ、あの質量に巻き込まれてどうにもならない。
私の刀は切れ味はソコソコだしそもそも持ち合わせた属性でなんとかする代物で、斬る力自体は“人ぐらい”しか斬れないから。
思わず。
逃げる脚も泊めて、その“業”に見入っていた。
「……えーっ!?なにそれーっ!すごい!アナタそれどーやったの!?」
絶句していた顔はあからさまに思わぬ出会いに喜ぶかのように綻び、興味深げにあなたを見つめ――、
――見つめてるうちに、なんか米俵みたいに持ち上げられていた。
「きゃ。
……ちょっと。そこはお姫様抱っこじゃないの?」
漏れ出た声はかすかで、触れられ抱え上げられても余り動揺はしていなかった。
むしろ――、
「これ楽でいいかもー!」
能天気に楽しそうに言いながらも――
抱えられたまま、腕を振るう。
何かをふるい落とすようなそれは、赤い軌跡を伴った。
血だ。
それが液体であるのは一瞬で、すぐさま赤い霧のように空に解ける。
「穿て!」
言葉とともに、赤い霧はカタチを得た。
刀だ。
中空に七本並んだ刀は、命令と共に黒い電車ヘドロへと降り注ぎ――その質量に呑まれ砕けた。
一瞬の足止め程度にはなるかもしれなかったが、やはり効いていない。
「何がハズレよ!?超レアなんですけど!シークレットってヤツ!
刃物は私も大好きだけど、今のしかない!」
言いながらも、女の周りを漂う赤い霧から赤い刀がカタチを為し、その度ヘドロの怪異へと撃ちだされ砕けていた。
(……さっき斬れたのって……)
あの御業。
なんかよくわかんないガラスみたいなのでも、あんな冗談みたいな切断を行った。
そういう異能なのかもしれない、なら――
「コレでいい?」
男の目の前に、並走するかのように赤い刀がカタチを為す。
特別な何かがあるわけじゃない。ただ、全体が赤いだけ。
少しだけ気合を入れて造ったソレは、刃が薄く紅く光り、色のない街並の死んだ光を映していた。
ご案内:「裏常世渋谷」に追影切人さんが現れました。
ご案内:「裏常世渋谷」に追影切人さんが現れました。
■追影切人 > 男のソレは剣術でも何でもない。
力強い剛剣に非ず、速度を追求した魔剣に非ず、不可思議な力を宿した絶技に非ず。
――”業”…または”概念”。斬る事”だけ”に特化した人間の極致(まつろ)だ。
「あぁ!?ただ斬っただけだろーが見て分かんだろ!!つーか、テメェ能天気過ぎだろーが、状況分かれ!!」
初対面の美少女相手にこの口の悪さだが、まぁ普段はもうちょっとマシだ。
単にすこーし厄介そうな怪異と遭遇戦になったので、若干昂っているだけである。
「お姫様抱っこぉ?そういうのはイケメンにでも頼んどけ、あと贅沢言うな!」
クソったれが、と思いつつも担ぎ方は無造作だがある程度配慮は彼なりにしている。
…いや、ちょっと待て。凄い楽しそうなんだがこの女。何か余計な気遣いはいらない気がしてきた。
そして、女が生み出した赤い刃が7本――彼女の号令と共に後ろから迫る怪異に殺到する。
…が、その勢いと質量に即座に赤い刀は全て砕かれてしまった。
チッ、と後ろを一瞥してその結果を確認すれば舌打ちを一つ。さて、どうすっか…。
「今の貧弱なのしかねーのかよ!!…クソ、贅沢も言ってらんねぇし…!!」
思わず悪態が毀れるが男に悪気はこれでも一切無い。
むしろ、彼女が刀を生み出す過程を見ていた…血刀、というものか。
(おもしれー能力だが、決定打には全然って所か。だったら――)
人前で使うなと言われているが仕方ない。怪異化が進行するが、左腕のソレを使うしかないと思った矢先、
「―――ハッ!無いよりマシだ!!」
彼なりの乱暴な口調で、併走する赤い刀を無造作に引っ掴んだ。
先ほどの打ち出した血刀と違って、力を込めているのか薄く紅に輝く色彩が色の無い街並みを写す。
「――おい、テメェを下ろしてる余裕がねぇからこのまま仕掛けるぞ。揺れるから舌噛むなよ!!」
彼女に声を掛けると同時に、いきなり身をクルリと反転。
右手は彼女を担いだまま、左手に持った鮮血刀を緩く握り締めて――…
「―――ぶった斬る。」
静謐なくらい静かな声色で物騒な一言が風に紛れて消える。
次の瞬間、轟音と破壊と共に迫る怪異へと――鮮烈さを伴う赤い斬線が迸る!!
『■■■ィィィィィィィィィ●●●ァァァァァァァァッッッッッ!!!!????』
先ほどよりも激しい金属を掻き毟るような悲鳴じみた音が響き渡り。
”13”の斬線が怪異へと刻まれ、そのヘドロじみた影も残骸も切り裂いて弾き飛ばす。
――…が、相手も”残骸”の模倣とはいえそこそこの怪異。
ここに来て――…
「――――チッ!往生際の…!!」
咄嗟に赤い刀を翳して――”担いだ女を守るように”最後の怪異の抵抗。
爆散して飛び散る残骸の礫弾をガードするも、男は幾つかのソレをまともに食らって吹っ飛ぶ。
「――悪い奴はモテねぇぞ、クソ野郎が!!」
ダメ押しに更に赤い刀を再び一閃。今度こそ纏めて切り裂いて怪異を完全にバラバラに飛散させようと。