2021/12/06 のログ
ご案内:「常世渋谷 底下通り」にフィールさんが現れました。
■フィール > 「よいしょ、っと」
底下通りでパイプ椅子とカーペット、そして商品の詰まったバックパックを持った小さな影が一つ。
数多ある異邦人が露店を並べる中でも、その姿は小さい。
不慣れながらもカーペットを敷き、商品を並べ、自分が座るためにパイプ椅子を設置する。
並べられた商品は、羊皮紙に描かれた魔法陣。つまりはスクロール。
他には魔力の籠もった宝石や、非売品と書かれた魔導書もある。
バックパックにはまだ物が入っているが…それは、まだ取り出さない。
『要望のスクロール、可能であれば作ります』
そんな張り紙を出しながら、未許可の商売を始める。
■フィール > こうして始めた商売だが…当たり前だが売上は伸びない。
宣伝したわけでもなく、かといって長年の信頼があるわけでもない。
そもそも品数が少なすぎる。
並べられたスクロールは火を起こす簡単なものがメインで、複雑なモノ……例えば障壁作成や空間転移等があるが、難易度相応に安全性の問題もある為、売れない。
怖いもの見たさで1点買われたのが精々だ。
「難しいなぁ……」
元々自分が使うために作ったものを、商売用に考え直したもので。
空間転移に至ってはそもそも改良すらしていない。
よくある『使い方が判れば絶大な効果を持つ安物』であり。
それを見抜けるような人間は…そもそもこんな所で魔法具など漁らないのだ。
■フィール > 「うーん……」
手持ち無沙汰なので、何か良いスクロールが作れないかと、羊皮紙と羽ペンを手に持って思案する。
日常的に使えて、且つ機械では出来なくて、簡単なもの。
それを基礎として考えては見るものの…何も浮かばない。
そもそもフィールは人間として生きている期間が非常に短く、生活で何が必要なのかも殆どわかっていない。
故に案が思いつかない。
「うーん………」
商売そっちのけで羊皮紙とにらめっこしている。
■フィール > 「………うーん。」
未だに羊皮紙とにらめっこしているフィール。
他所で窃盗騒ぎが遭ったようだが…それでもフィールは顔を上げない。
フィールの商品はこれだけ隙だらけなのに盗難に遭わない。
そもそも盗難に合うような高価なものはなく…宝石も数百円程度の代物に魔力を込めただけなのだ。
周りが騒がしくしている中で、一人静かに頭を悩ませていた。