2021/12/06 のログ
ご案内:「常世渋谷 底下通り」にフィールさんが現れました。
フィール > 「よいしょ、っと」
底下通りでパイプ椅子とカーペット、そして商品の詰まったバックパックを持った小さな影が一つ。

数多ある異邦人が露店を並べる中でも、その姿は小さい。
不慣れながらもカーペットを敷き、商品を並べ、自分が座るためにパイプ椅子を設置する。

並べられた商品は、羊皮紙に描かれた魔法陣。つまりはスクロール。
他には魔力の籠もった宝石や、非売品と書かれた魔導書もある。

バックパックにはまだ物が入っているが…それは、まだ取り出さない。

『要望のスクロール、可能であれば作ります』

そんな張り紙を出しながら、未許可の商売を始める。

フィール > こうして始めた商売だが…当たり前だが売上は伸びない。
宣伝したわけでもなく、かといって長年の信頼があるわけでもない。

そもそも品数が少なすぎる。

並べられたスクロールは火を起こす簡単なものがメインで、複雑なモノ……例えば障壁作成や空間転移等があるが、難易度相応に安全性の問題もある為、売れない。

怖いもの見たさで1点買われたのが精々だ。

「難しいなぁ……」

元々自分が使うために作ったものを、商売用に考え直したもので。
空間転移に至ってはそもそも改良すらしていない。

よくある『使い方が判れば絶大な効果を持つ安物』であり。
それを見抜けるような人間は…そもそもこんな所で魔法具など漁らないのだ。

フィール > 「うーん……」
手持ち無沙汰なので、何か良いスクロールが作れないかと、羊皮紙と羽ペンを手に持って思案する。

日常的に使えて、且つ機械では出来なくて、簡単なもの。

それを基礎として考えては見るものの…何も浮かばない。

そもそもフィールは人間として生きている期間が非常に短く、生活で何が必要なのかも殆どわかっていない。

故に案が思いつかない。

「うーん………」

商売そっちのけで羊皮紙とにらめっこしている。

フィール > 「………うーん。」
未だに羊皮紙とにらめっこしているフィール。
他所で窃盗騒ぎが遭ったようだが…それでもフィールは顔を上げない。

フィールの商品はこれだけ隙だらけなのに盗難に遭わない。

そもそも盗難に合うような高価なものはなく…宝石も数百円程度の代物に魔力を込めただけなのだ。

周りが騒がしくしている中で、一人静かに頭を悩ませていた。