2021/12/09 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にアリスさんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」にクロロさんが現れました。
アリス >  
私は最近よくつるむクロロと。
常世渋谷の中央街に来ている。

「……アガサとアイノがいないと、こう…………」

引きつった笑顔で隣のクロロに話しかける。
なんだね。うん。

「私、場違い感が半端ないなって………」

陰キャインパルス、最大!!
リア充の街にいることに耐えられません!!
コホン、と咳払い。

「とりあえずどっかで遊ぶ?」

クロロ >  
常世渋谷、中央街。
見慣れた光景だ。この行き交う人の群れも何時も途切れない。
今身を預けている女子寮から出かけてダチとやってきたこの中央街。

「お前が行きてェンじゃなかッたか???」

当のダチ、アリスがこの調子。
人込みが苦手なのか、空気が苦手なのかわからない。
ハァ、と溜息を吐いて後頭部を掻いた。
確かにこの町のぎらぎらとした雰囲気は、"今の体"だと煩わしく感じる。
思わず、金色の双眸を細めた。

「そのアガサとアイノッてのがお前のダチ……だッたか?」

「こンぐれェ一人で出来なきゃダチが泣くぞ。
 どこでもいーし、お前に付き合うよ」

はじめておつかいならぬはじめてのとこしぶ(※はじめてとはいってない)
の保護者、クロロ。ちょっと大きめの紙袋を手首にかけたまま
適当にその辺りを指差しながら『リクエストは?』とアリスに促す。

アリス >  
「そうなんだけど! 行きたかったんだけど!」

うん…だけどね………ちょっぴり気圧される。
華々しくてらっしゃる。
キラキラしてらっしゃる。
インスタデュラム映えする街でらっしゃる。

「アガサとアイノは、私の親友」
「そう? じゃあ荷物が増える前にゲーセン!」

そこで荷物が増えるかもしれないけどー!
とニヤニヤしながら言ってしまう。
狙え、アブダクションキャッチャー。
取れ、ミニカピバラちゃんぬいぐるみ工事現場バージョン。

「クロロはいつもの迷彩なんだねー」

ゲームセンター『ガフ・サバイバー』に入りながら言う。
あ、このゲーセン広ぉい。素敵……

クロロ >  
「……まァ、コレから慣れりゃいーだろ?
 お前も素材はいいンだから、似合うンじゃねーの?常渋。知らンけど」

少なくともインスタデュラムやトコッターに自撮りを乗せるのは先の話になりそうだ。
全く、と思いながら彼女の隣で付かず離れずの距離を保ち気だるそうに歩いていく。

「親友、な。大事なンだろ?じゃァ、心配はかけられねェわな」

その為にも今のうちに慣れておけよ。
なんて、からかうように言ってやればカカッと楽しげに笑ってやった。

「またミニカピバラちゃんか?お前も好きだなァ」

あのクレーンゲームの時はよく憶えている。
大好きなぬいぐるみに命燃やすアリスがおもしろおかしくて
楽しそうでよく憶えている。あのビッグサイズにぬいぐるみを手にした彼女の表情も、よく憶えている。
飽きないな、と思いつつ辿り着いたゲーセンはいつぞやのセバより広い。

「流石常渋。広いな。……ア?アー……」

「前にも言われたよ、他の奴に」

自身の衣服に目を配り、首を撫でた。

「オレ様は"ワケ合ッて"今は普通の人間…、…じゃねェ。
 オレ様は燃えてンだよ。常にな。コイツは所謂魔法装束みてーなモンだ」

「この衣服が、オレ様を"人の形"にしてくれる入れモン兼拘束具みてーなモンだ。
 ……まァ、今はちょッと細工してお前等と変わンねェ体になッてるけどな」

禁書庫で見せたあの炎こそ片鱗。
寧ろ、本来の姿と言って良い。難儀な体なのは百も承知だ。
別に隠す事では無いが、それを最初にしてきた相手が相手だから
そのことを思い出し、表情はややアンニュイだ。
それもあるが、更に表情はうげー、と歪む。

「あッつ……このゲーセン暖房効きすぎじゃね?」

普段は"熱すぎる"位の体。
未だこの空調の文化に慣れない。

アリス >  
「素材の味で勝負できるほど甘い場所じゃないのよ常世渋谷は」
「こう……街に渦巻く欲望とファッションの最先端要素が…複雑に絡みあって…」

両手で何か毛糸のようなものが絡みつくジェスチャー。

「ボーン。木っ端微塵」

爆発しました。自分でもなんのこっちゃわからない。

「うん、アガサとアイノに恥ずかしくない一人前女子になります」

そう! ミニカピバラちゃん!!
あれですあれ!!
ズザザッと空いてるアブダクションキャッチャーの前に移動。

「好きぃ……夢中………カピバラちゃんを抱かないと寝れない…」

そう言われれば。
確かにクロロは人間じゃないんだった。
つい、忘れてしまいそうになるけど。

そういうことを前に百貨店で隣にいた女の子は知っているのだろうか。
クロロのことだから、必要な時に必要なだけ話すだろうけど。

「我慢して、クロロ! 終わったらアイスでもアイスティーでもアイスコーヒーでもおごってあげるから」

お札を崩す。
そして遠慮なく一番大きな硬貨をアブダクションキャッチャーに投入!!

「ふふふ……」

手をワキワキと動かして。
            アニキ
「やっちゃってください、大哥ィ!!」

シンプル。The人任せ。

クロロ >  
「何言ッてンだお前???」

芸術は爆発って事なのか。何もわからん。
流石のクロロもこれには口元への字でしかめっ面。

「そーだな。頑張れよ。色々足りねェけどな、特に頭」

一緒に知能まで爆発するのだけは無しだぜ。
からかえる位の距離感。中々やりやすい。
セレネとは違う気兼ねなさ……と言うと、彼女が怒りそうだ。

そうこう言ってる内にやってきたのはキャッチャーの前。
なんだかセバよりも品ぞろえと言うか、デカイUFOキャッチャーに見える。
そんなカピバラちゃん達が敷き詰められたゲーム機の前で夢心地。
まったく、楽しい奴だなと口角も緩んだ。

「ヘッ、ドッチもオレ様にとッちゃ殺害予告だな」

アイスティーもアイスコーヒーも、普段なら飲み下せば"消火(しに)かねない"。
くつくつと冗談交じりで返せば両手にポケットを突っ込みお手並み拝────。

「……ッて、オレ様かいッ!!」

ズコー。
思わずひっくり返りそうになった。
そう言えばあの時も自分がとったような……。

「仕方ねェな……」

呆れつつもゲーム機の前へ。
あの時よりも大きく、勝手が違う。
だが結局の所は計算の所。まぁ見ておけ、腐っても魔術師。
こういうのは得意なんだ。

10以上で新しいカピバラちゃんをゲット!!
[1d20→20=20]
クロロ >  
そうそう、所詮距離感とアームの強さ。
そう言うのを調整して……耳についたなんか洗い方の指標を示すあれ(余りにも語彙力の無い説明)のあれにこうアームをひっかけて……。


\ストン/


「ヘッ、余裕だぜ」

このように手にするのだ。
カッカッカ、得意気に笑ってやった。

アリス >  
「ごめんすごくテキトーなこと言いました」

テキトーなことを言ったらちゃんと謝りなさいとパパにも言われている。
いやそこはテキトーなことは言わないように教育してパパ。

「いや頭足りるし!! 成績も中の下から中の上キープしてるし!」

自分で言っててなんだけどキープしてちゃダメな位置ですね。
卒業までに追々頑張りたいところ。
追々ね。追々。

「あ、そうだった……なんかクロロのこと普通ピープルだと勘違いしちゃう」

おかしいなぁ。この人類にとっての不思議な隣人のことを。
なんか人間だと思ってしまうのは。

「このミニカピバラちゃんはちょっと控えめサイズだけどね?」
「工事現場マスコットのドケンちゃんとのコラボでジャパニーズ職人スタイルなの!」
「可愛らしい安全確認のポーズが可愛さ爆発夢いっぱい…」

「ってもう取ってらっしゃる!?」

受け取って両手で抱きしめる。
なんたる可愛らしさ!!
                   アニキ
「ありがとうクロロ! さっすがですぜ、大哥ィ!」

店員さんに大きめビニール袋をもらってカピバラちゃんをIN。
ああ。もうこの時点で幸せゲージ振り切れてる。

「1ゲームで取ったから払い戻しもしてもらっちゃった」

へへー。とちゃっかり財布に硬貨を戻した。

「そういえばクロロって何をしてもらったら嬉しいの?」

クロロ >  
「テキトーでもなンでもいいが、そのセーセキはこう、なンつーか……」

「微妙」

THE・普通……よりチョイした?
不足しているのかそうでないのかツッコみに困る。
まぁ、なんだ。頑張れよ。態度はちょっと哀れみめいている。

「…………」

"普通ピープルだと勘違いしちゃう"。
眉間に皺を寄せ、首を撫でた。

「……オレ様は、人間のはずだ……」

ゲームセンターの騒音に消えてしまいそうなほどに小さな声。
人間のはずだ。今はただ、異能のせいで、記憶がないだけで。
ちょっと"普通"じゃないだけで、本当は唯の人間のはずなんだ。
今更ながら自覚し始めた事に、胸に掛かった靄に。
未だ答えは出ない。だが、今は悩む時間でもない。

大きなビニール袋を抱えて幸せそうなアリスを見て
そんな事を考えるのを止めた。そう喜んでくれるなら、それでいい。
そう、それでいいんだ。

「次からはちゃンと自分でとれよ。……ア?」

"してほしい事"。
つい最近も似たようなことを聞かれた気がする。
どうして彼女達はそう言う事を考えるんだろうか。
少し目を反らし、頬を掻いて思案中。

「なァ……」

一声。

「逆にお前は何してもらッたら嬉しいンだ?」

問い返した。

アリス >  
「微妙じゃない」
「二軍のスーパーサブだッ!!」

いつか輝くベンチウォーマー!!
とっておきたい最終兵器!!
それが私、アリス・アンダーソンなのだ!!

……いつかスタメンに使ってね。

人間のはずだと言った言葉が。
そのかき消えそうな小さな声が聞こえてしまって。

それでも、私は。弱いから。
踏み込むのが怖いから。
       ・・
聞こえなかったフリをした。

喜んだままの表情で、無邪気を装う邪悪さで。
私は………

「えー、いーじゃない。得意な人を頼ってもー」

笑顔で振り返って。

「去年サンタさんにもらったミニカピバラちゃんの抱き枕」
「とーっても! 嬉しかったからあのお礼の話をしたんだけど?」

クロロ >  
「──────……」

頼っても、か。
こういう感じのを望んでいた気がする。
頼られて、自分が助けると決めた事を背負って、関わると決めた相手と自分なりに関わり抜く。
空っぽの頭を必死に使って"スジ"を通してきた。
こうして笑いかけられるのが、バカやってるのが一番気楽で。
一番、望んでいた関係なのかもしれない。

揺らぎが出来てしまった自分の心に
"弱音"を聞かれてしまった事なんて、気づきはしない。
ふ、と何処か力なく笑って、適当なゲーム機の前に立った。

「そーかよ。ソイツは良かった」

嗚呼、そうだな。
お前が喜んでくれるならそれでいいんだ。
そうやって笑ってくれるなら満足だ。『そこまで』でよかったんだ。

「……なァ、アリス」

「お前、親友とつるんでると楽しいか?
 つるむのそーだし、なンつーか、"共有"?するような事あるか?」

アリス >  
相手の言葉を聞いてから、十秒ほどの…
もっと長かったかもしれないけど、それくらいの。
沈黙を守ってから。

「クロロ」

笑顔で空いている手で店外を指して。

「歩きながら話そっか」

カピバラちゃんのぬいぐるみの入った袋を持ったまま歩く。
クロロにこれ以上関わるなと言われそうで。
怖くて。少し早足になってしまった。

「あるよ、女の子三人だからね」
「色んなことを共有してる……」

「特にほら、私は惨劇の館事件の生き残りだし?」
「あ、話してなかったっけ……とにかく、敵が多いから」

歩きながら話す。
誰も私達のことなんか気にもとめない。
無関心の街。常世渋谷。

クロロ >  
「おう」

アリスの言葉に二つ返事。
紙袋を手首にぶら下げたまま、隣を歩く。
そこ行く人々なんて、自分たちの事に気にも留めない。
彼等にとっても自分たちの言葉なんて"騒音"なんだろう。

今は返って、ありがたい話だ。
体の特性上普段こうして人込みに隠れる事はあまりない。
大抵は魔術で温度を下げたりするとは言え、燃える事に変わりはないのだから。
心なしか早足な足取りに気づいていたが、その理由まではわからない。
いや、多分。考えたくなかったのかもしれない。

「……女三人揃ッて、ッて奴か?」

「よく知らねェけど、お前はお前で苦労してるッて事か?
 ……名前からして修羅場みてェだけど、お前……、……」

付けようがないケジメと彼女は前に言っていた。
"敵"を作ってしまったのは、そう言う事なんだろうか。
初めてあった時、禁書庫で慌てふためいた彼女を落ち着かせるために色々聞いた。今でも覚えている。

「……敵ッつーのは?」

横で歩きながら、何気なく尋ねた。

アリス >  
誰もいなくても変わらないのに。
誰かがいていっぱいの街を歩く。
この街にはきっとなんでもあって。

なんにもないんだ。

「私とアガサは……転移荒野に出現した謎の館の調査チームにいたの」
「私、戦える異能だったし。バイト気分で」

「でも、中は人間を拷問したり、改造したりする怪物が跋扈してた」

「異能も使えなかったし、大勢死んじゃったし」
「助かったのは私とアガサだけ」

「その命、二つ分助かるのも……何の代償も払わなかったわけじゃない」

振り返って、クロロの顔を見る。
私の顔にはどんな表情が張り付いていただろう。

「爆弾、あったから。起爆させた……私が」
「館も、怪物も、生き残ってた被害者も全部吹き飛ばして」
「私はアガサを守ったんだ」

「色んなこと、あったよ。見殺しにしたとか噂されたり」
「被害者の家族に殺害予告受けたりさ」

これを話すたびに。心が軋む。
信じられないくらい力が抜けて、真っ直ぐ歩いて帰れるかもわからなくなる。
それに……見殺しにしたんじゃない。

殺したんだ。私が。この手で。

「引いたでしょ?」
「私、そういう女なんだよ」

「大勢、この手で粉微塵にして笑ってる……そんな女」

クロロ >  
大勢の人間が死んだと彼女は言った。
それを決断したのは彼女で、そうならざるを得なかった状況なのかもしれない。
当事者でない己がとやかく言う資格は無い。凄惨な光景、後味だっただろう。
だから一言、問いかける。

「……アリス」

クロロ >  
 
            「──────その選択は、後悔してンのか?」
 
 

アリス >  
 
「………るわけない」
 
絞り出すような、感情と声。
どんなに酷い目に遭ったからって。
どんなに忘れたい最悪の思い出だからって。

「……後悔するわけない………っ」

助かったアガサの前で。
あの行動はしないほうがよかったなんて。
言えるはずがない!!

「私は間違っていても………」

「私の取った行動は絶対に間違ってない……!!」

その時、私はようやく。
自分が泣いていることに気づけた。

「後悔なんて、しちゃいけないんだ」

アガサは。私のヒーローだから。
ヒーローを守る人が。一人くらいいたっていい。

そう信じていても。現実はこの空のように冷たい。

クロロ >  
「──────……」

どれだけ過酷な決断でも彼女は受け入れるとそう決めた。
悲痛な覚悟だ。きっと今でも思い返せば潰れてしまうのかもしれない。

「そうか。お前が決めた事ならなンも言わねー」

それが彼女の決めた事ならば、口を出すのは"スジ"違いだ。

「けどな、"無理"はすンな。
 泣きたい時は泣きゃいいし、苦しい時は素直に苦しいッて言ッとけ」

「一生付きまとうような苦しみかもしれねェけどな。
 だからッてそンなモンは積もらせンな。定期的に出しとけ」

「じゃねェと、お前が潰れちまうよ」

決断に今更泥を塗るとか、揺らがせるとかではない。
辛いものは辛い。弱音を吐く権利は誰にでもある。
今の自分がそうであることにクロロは気づかない。
篝火とは、飽く迄暗がりに迷える人々を照らす灯火なのだ。
だからただ、其処に揺れるだけでいい。誰かを背負って、導くだけでいい。


共感も共有も、いらない──────。


「……だからその分笑ッたりしようぜ。
 オレ様は笑ッてる方が美人ッたろ?」

「お前とこうしてつるンでるのは嫌いじゃねェよ」

ニィ、と口角を吊り上げた。
燃える炎の熱が空虚な事に、自分自身さえ気づかない。

「……そのアガサッて奴も、アイノッて奴もお前の事支えてくれンだろ?
 女三人でキョーユーしてる事も多いだろうしな。なァ、知ッてるか?」

「そうしときゃ、喜び二倍の悲しみ半減」
『分かち合えば喜びは二倍。悲しみは半分』

「……、……らしいぜ?」

空白の記憶を刺激する、確かに"誰かが言っていた言葉"だ。
それが誰なのかわからない。自分の隣に、人影が見えた気がした。幻だ。
淡い風を纏った、黒髪の……いや、思い出せない。
そんな自分を、思わず鼻で笑ってしまった。

アリス >  
「ぐ、うう………」

涙をゴシゴシ、袖で擦って。
どこかで聞いた話をそのまましてる、みたいに。
何かを言い返そうとして。
相手を睨むように見上げていたけど。

すぐに、ため息を一つ。

「……ありがとう」

「きっと、この罪に相応しい罰を受ける日が来る」
「でもそれは今日じゃないし、ここでもない」

「でもクロロさんは気軽にレディーに美人とか言ったから減点でーす」

べ、と舌を出して。
まだ、ちょっと充血してた瞳で。
すぐに笑顔を作って。

「次、どこいく?」
「私、アガサとアイノにクリスマスプレゼントを選びたいの」

「そのためにバイトもしてる……安全なやつ」

お小遣いとかじゃなくて。自分で稼いだお金で。
親友と。目の前の悪友にも。
何かをしてあげたい。そう思っていた。

クロロ >  
本当なら、その涙を拭う事は出来ない。
人の涙でさえ自分には凶器になるのだ。
だからこそ、それに気づいた時に、見上げた顔を、アリスの目元をぐぃっと指先で拭った。
指先に滴る彼女の涙を、金色の双眸は一瞥する。

「…………」

暖かくて、何処か物悲しい感じがする。
この状態でしか感じる事の無い、"濡れる感触"。

「───────やッぱ、わかンねェや」

感情を共有する、互いを愛し合う感情。
likeとlove。クロロの感情の隔ては大きかった。
今言った言葉の実感も、自分に好意を向ける女神の感情も
未だ、わからないし、『必要ない』とさえ、感じてしまっているなんて──────。


だから。


「ヘッ、どーいたしまして。レディにしちゃァ色々発展途上みたいだけどな」

歩幅を広げて、アリスの"一歩前"に出た。
飽く迄自分の立ち位置は……『隣』じゃないんだ。
黄緑の髪が揺れ、振り返れば"いつもと"変わらない笑みでアリスを見やる。

「悪ィな。辛気臭ェ話振ッて。詫びッてワケじゃねェが今日の飯はオレ様が奢ッてやるよ」

「それと……」

手首の紙袋を一回転させて、御開帳して中身を見せた。

「少し早めのプレゼント。選ンだのはオレ様じゃねェけどな」

中身は白のクラシカルブラウスに、黒のスカートとリボンタイ。
ちょっと細工をして、魔術でサイズが合うように仕込んだものだ。
荷物持ちは男の仕事。帰り際に渡すつもりだ。

「じゃァその辺の雑貨屋行くか。ホラ、ダチのプレゼント選ぶンだろ?」

「行くぞ」

そっと彼女に手を差し伸べた。

アリス >  
涙を拭われると、ふふんと笑って。

「……簡単に乙女を理解できるなんて思わないで」

発展途上と言われると、いつもの調子にするために。
声音、チューニング。OK。
声量、調整。OK。
周りに迷惑をかけない、それでも精一杯の。

「発展途上ゆーな!」

と言って、笑った。
 

紙袋の中身を見せてもらうと、数度瞬きをして。

「あー……あの百貨店の?」
「スイマセン、ナンデモナイデス」

口を噤みながら、それでも口角が上がる。
私にも、買ってくれてたんだ。

差し出された手を握って。

「もちろん! 今日はゴチになりまーす!」

そのまま歩き出していこう。

クロロ >  
小さな手を握る大きな男の手。
太陽のように暖かな手で小さな手を包み、扇動するように歩いていく。
互いに交わる温もりの感触。

「───────……」

簡単に理解できるものではない。
乙女と言わず、わかっている。人間の感情なんて、わかりはしない。
わからない。だけど、そう……。


"これが良い事"なんて、わからなかった。


「(やッぱオレ様は……、……)」


本当に───────……。


振り払うように首を振り、進んでいく。
今は考えるのを止めよう。

後は楽しく彼女と、何時ものように馬鹿笑いするのを共有するだけだ。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からクロロさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」からアリスさんが去りました。