2021/12/19 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
さて、世間一般のイベントとしては師走にクリスマスに年末年始と一気に忙しくなる時期である。
故に、人の多くなるエリアの警備警邏に対するシフトや計画も念入りなものが組まれる事になる。
それは、落第街での活動に特化した己の組織…というか、自分自身も、同じ事である。

「………全く。私に一体何をしろと言うのか。
落第街ならまだしも。この街や歓楽街で砲撃戦をしろ、というのか…?」

元々、己の異能は戦闘特化の異能である。
重砲兵と同様…というか、多脚の重戦車の如き異形を大量に召喚して、砲撃で殲滅する。
唯、火力を向ける先が人口密集地か否か、という点はある。
更に言えば、己の異能及び部下達はまあ…見栄えが悪い。
クリスマスのイルミネーションに彩られたこの街で、何をどうしろと言うのだろうか。

「……いくら何でも、クリスマスツリーの飾りにはなるまいが…」

ちょっとだけイメージした。
無数の砲身に飾り付けられたモールだのお星さまだの。
……いや、無いな。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に神代理央さんが現れました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
そもそも、特務広報部は先日の抗争以来些か微妙な立場にある。
過剰な火力。落第街や違反部活に対する強硬な姿勢。
それらは結局のところ、学生主体の常世学園においては本質的に不要な存在なのである。
無い方が良い、と言うべきだろうか。中央政府が崩壊した国ならまだしも、この学園都市は全く以てその様な事は無い。
成長の途上ではあっても、腐敗が横行しているだの。学園及び生徒会の施政が届いていないという訳でも無い。

言うなれば落第街も風紀委員会の過激派も、社会実験の一環でしかない…のかもしれない。
まあ、どの様な思惑があるのか今更知った事では無いのだが。

「……『ヒーロー』にはなれないものな。私も、アイツらも」

そうなりたい、訳では無いが。
それを夢見る者達には、自分達は言うなれば暗部であり汚点だ。
多くの命を奪い、多くの破壊を撒き散らしたが故の因果応報ではあるのだが。
まあ、要するに。あくまである程度。犯罪が零になった訳では無いがあ。
『戦争』をするべき時は、終わったのだ。

「結果としてそれが一番ではあるのだがな。平和であり、日常があり。多少の犯罪で紙面が賑わう。しかして、政府は揺るがず多くの人々は安寧を得られる。
それが叶っているのは、僥倖だと言うべきかな」

クリスマスの装飾に彩られた街の中。
楽しそうな人々が行き交う大通りを、白い吐息を吐き出しながら進む。
そんな分署からの帰り道。今日も島の風紀や平和は、それなりに保たれている。

神代理央 >  
となればまあ。あるいはそれならそれで。
やる事はそれなりにある。放り出していくわけにもいかないし。
今の隊員達を『表』に送り出す為の手続きは煩雑なものになるだろうし、自分が『やらかした』事への責任は…まあ、取らねばならないだろう。

不幸中の幸い、と言うと奇妙な言い方ではあるが。
結果として、風紀委員会の過激派は自分諸共勢いが削がれている。
ある意味で最大の『手駒』だった特務広報部の活動が鈍ればさもあなん、と言ったところではあるが。
結局のところ。彼等には…いや、彼等には、と他人事の様に見てはいけない。
『自分達』には"敵"が必要だった。だがそれは、望んで良い事では無いのだ。
風紀委員個人個人で対応が可能。或いは、特別攻撃課の様な一騎当千の風紀委員を取りまとめた部署で十分。
此の島には『戦争ごっこ』や『軍隊もどき』は、無くて良いなら無い方が良い。

「分かってはいるが、先走ったのが失点だったな。いや、こればかりはどうしようもない事ではあるのだが…。
…まあ、愚痴を零したところでな」

何より、こうして平和な街の日常がそれを証明している。
此の街を守る為に砲兵隊が必要だろうか?
違反部活を叩き潰す為に、戦車や重砲を持ち出す必要があるだろうか?
装甲服を纏った兵士達が必要だろうか?
答えは、否だ。

此の島に、血みどろの抗争や戦争は必要無い。
それを引き起こしてしまったのは、まあ、自分なのだ。

神代理央 >  
身の振り方、を少し考える。

現状として、組織としての明確な敵が存在しない…訳では無いが。
大規模な抗争が起こる危険性が少ない以上は、諸々と早めに動いた方が良い。
落第街の犯罪者も違反部活も、現状で対処出来ているのだ。
ならば先ず考えるべきは過剰な装備や兵器の処分…これは、実家を頼る事になるだろうか。
部下達の処遇については、全力を出すべきだろう。
元より『表』での生活を望んでいた者達だ。正規の身分と纏まった支度金くらいは準備したい。

其処までいけば、特務広報部は実質的な解散を迎えるだろう。
本来は風紀委員会内部の憲兵隊の様な役割を期待した組織は、過激派の飼い犬と成り果てて…最後は、過激派と共に消える。
良いオチがついたものだ、と小さく含み笑いを零す。

「落第街の支援については、其処まで考えなくても…というか。
放っておいても世話を焼く面々が多いからな。心配は無いだろうが」

無情な事を言ってしまえば。
今でもあの街に情けをかけようとは思わない。
だが、情けをかける人々を否定するつもりも無い。慈善と慈悲は、世の中を円滑に動かす為に必要なものだ。
だから、極論触れない様にすれば良い。
今更、あの街の為に募金箱を抱える気にもなれない。
何より、元々風紀委員会は『善人』の組織であり。
あの街で狼藉…というか、風紀委員会の印象を限りなく低下させていたのは自分だ。
自分があの街で善行を働いても偽善にしかならないが、本心から行っている者達を見て貰えればそれで良いだろう。
此方が動くより、静かに"シーン"から消えた方が波風も立たない筈だ。
後は、時間と『個人』の活躍が風紀委員会の評判を解決してくれる筈だ。

其処まで済めば。終われば。

「『鉄火の支配者』も、鉄火場が無ければ案山子でしか無いものな?」

小さな苦笑い。
日が暮れる時間が早くなり、寒さが増してきても尚、明るい表情で人々は巨大な街を行き交う。
此処を戦場にするなど、あってはならない事ではあるし。
他のエリアも同様だ。
そして、落第街が戦場に成り得ないのなら。『支配者』が君臨する盤面は、もう存在しない。

駒は尽きた。盤面は閉じられた。
後は、後片付けをして、終わらせるだけなのだ。

神代理央 >  
(取り敢えずは、そんなところか)

やるべき事は、ぼんやりではあるが見えて来た。
後は粛々と進めていけば良いだろう。
それが済めば、審問会くらいは覚悟の上だが…その時はまあ、風紀委員会を素直に離れる事になるだろう。
その準備も進めておかねばならないだろうか――

「……いや、それは流石に驕りが過ぎるな。
一体、誰に何を引き継ぐつもりなんだ。私は」

"落第街の住民を巻き込んで、違反部活と抗争する為の引継ぎ?"

そんなもの、誰が望むのだろうか。

(自分の立ち位置は必要無い、と認識しておきながらこれだからな。未練がましい、というか何と言うか…)

内心自嘲する。
だが、そうやって自嘲出来るだけ大分マシなのだろう。
良くも悪くも、しがみ付く理由が無くなったのだ。
だからこうやって、自嘲する"余裕"がある。

「その後は…どうするかなぁ。風紀委員会の後、か。
考えた事も無い……いや、考えた事も無い方が問題なのか…?
難しいものだな……いやはや、我ながら度し難い、というか…」

神代家の跡取りとしての義務を果たす為に、実家へ戻るべきなのか。
まだ力不足だ、と言われれば。何処かで指導者としての教育を受けるべきなのだろうか。
一度、調べてみるのも良いかも知れない。

「まあ何にせよ。時間は無い訳では無い。潤沢では無いが、不急だからな。必要不急……語呂が悪いな…」

小さく背伸びをして、少年は歩幅を大きくする。
厳めしい風紀委員会の制服に、少し怪訝そうな視線を向けられながら、道を開ける人々。

神代理央 >   
まあ、何にせよ。
学園都市の平和が保たれているのであれば、それで十分だ。

義務は果たした。
やるべき事は、ある程度は…出来ただろう。
自分の選択に後悔はしない。それはずっと決めていた事だし、己の信条だ。
そしてそれは、今でも変わらない。
此の島には戦争は不要だった。と言う事を我が身で示せただけでも、きっと価値はあったのだ。

「………って、信じたいな。実際のところはどうだか、分かんないけどさ」

難しいね、なんて。子供らしい声色で溜息を吐き出せば。
何時もの様に、尊大に傲慢に。少年は歩幅を速めていく。



街には、ちらほらと雪が降り始めていた。
ホワイトクリスマスになれば良いな、と、ぼんやり願いながら。

神代理央 >  
 
 
『後片付け』の準備の為に。積み上がった書類の山脈を削り取る為に。
少年の歩みは、忙しない儘に。街を後にするのだろう。
 
 
 

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から神代理央さんが去りました。