2022/08/11 のログ
ご案内:「裏常世渋谷」に蘇芳那由他さんが現れました。
■蘇芳那由他 > ――気が付いたら僕はスクランブル交差点のど真ん中に突っ立っていた。
確か、常世渋谷を適当に目的も無く散策していた筈だが…何でこんな交差点のど真ん中に突っ立っているのか。
暑さで頭が沸いて記憶の一部が吹っ飛んだのか、実はもう既に日射病になりかけてるのか…。
「……うん、でもおかしいな…さっきまで凄い人の数だったのに…誰も居ない、ような…?」
よいしょ、と背中に担いだ刀袋を背負い直しながら交差点のど真ん中から周囲を茫洋とした表情で見渡す。
静まり返った街並み。気のせいか空もまだ真昼間の時間帯だというのに曇りみたいに薄暗い。
これは…新手のストライキ?等と、頓珍漢な事を考えながら一先ずここに居てもしょうがないと歩き出す。
「……さっきまでの喧騒が嘘みたいだなぁ。…まるで廃墟に迷い込んだ、みたいな。」
実際、廃墟とは行かないが街全体が微妙に経年劣化というか古びた感じがしないでもなく。
まさか、自分が【裏常世渋谷】と呼ばれる空間に迷い込んだのだと、少年は気付きもしない。
■蘇芳那由他 > 「……う~~~~ん…?何か変な感じがする…ような…?」
恐怖心が無く、脅威を感じ取れない少年だが流石に何か引っ掛かるものは感じたらしい。
歩きながら周囲の街並みを茫洋とした表情で観察するが、矢張り『変』だとは思ったらしい。
けれど、具体的にそれがどうして変なのかまでは分かる筈も無く。
歩みは続けながら、ふと時々視界の端々に映る『黒い影』のような物に気付いた。
「…何だろう、誰か居るのかな…?」
足を一度止めれば、所々に見え隠れする黒影を目を細めて凝視する。
ゆらゆらと蜃気楼のように漂い揺らめくソレは。人の形をしているが別の何かにも見えて。
「…何かの魔術か異能かな?もしくは…異邦人的な感じとか?」
じわじわと、黒い影が足を止めた少年を取り囲むように増えてきている事には気付いていない。
…何せ、危機感が欠落しているのだ。ましてや、少年は【怪異】というものを知らない。
■蘇芳那由他 > 「……あれ?」
じわじわと黒影の包囲網が狭まってくれば、やっと気付いたのか些か怪訝そうに。
それでも、慌てず騒がず動じもせず…無駄に平静なまま、担いでいた刀袋をそろそろと下ろして。
紐を解いて袋から、柄と刃だけの…錆と刃毀れで酷い有様の刀を取り出して。
「…まぁ、素手よりは…僕、剣術さっぱりだけど。」
刀を右手に持ちつつ、その右手と刀の柄を刀袋にて軽く縛り付けておく。
一応、武器を手放さない為の素人措置だ。そもそも、この数と包囲網は多勢に無勢だけど。
「…よく分からないけど、このまま突っ立ってたら死ぬだけだっていうのは把握したし。」
けど、飛びぬけた戦闘技能が無い少年にとって、ここを突破して逃げ切るのは少々厳しそうだ。
かといって、このまま何もせずに死ぬのは…まぁ、人間死ぬ時はあっさり理不尽に死ぬけど御免被りたい。
「…すぅ~…はぁ…。すぅ~…はぁ…。」
何度か軽く深呼吸、右手に握り締めた刀の柄の感触を一度確かめてから、真正面へと目掛けて駆け出す。
速度は遅くは無いが速くも無い。それでも、得体の知れない黒影に真っ向から怯まず挑むのは勇気か無謀か。
■蘇芳那由他 > そもそも、こんな得体の知れない黒影の皆さんと真っ向勝負する気も、まして全部切るつもりもない。
何故なら僕は『弱い』からだ。全部相手にしていたらそれこそ死ぬだけ。
前方との黒影の間合いをダッシュで詰めれば、右手の錆刀を下段に構える。
構え、といっても剣術のど素人なので不恰好だが、今はそんなのはどうでもいい。
やがて、黒影が刃の届く距離に至れば、黒影の右腕らしき部分が歪な形状の『爪』へと変化する。
「!!」
同時、爪を振り被り、袈裟の軌道で振り下ろしてくる黒影に対して、少年は身を低くして思い切り前へと飛び込み前転。
結果、学生服を掠めて切り裂かれはしたものの、飛び込み前転の勢いでかろうじて怪我は回避。
そのまま、黒影の『足元』…大きく開いていた股と股の間を抜けるようにして通過。
回転の勢い任せに立ち上がれば、後は後ろを振り返らずに再びダッシュで逃走するのみ。
「…まぁ、そりゃ逃げるよね…僕みたいなのが敵う訳ないじゃない。」